コーラス大柳の「ためにならないインディゲームレポート」

iPhone SEとiPad Pro(9.7インチ)をゲーマー視点で評価する

オールA9、メインメモリ2GBが実現するインディゲームの世界

 こんにちは、コーラスの大柳です。

 先日、AppleからiPhone SEと9.7インチ版のiPad Proが発表されました。ぶっちゃけていうと、どちらの製品も発表の随分前からリークされていた情報と寸分違わぬ内容だったので、明らかにiOS黎明期の頃のワクワク感はなく、淡々と発表会を視聴していました。今回のポイントとしてはiPhone SEが発表され、最新のA9プロセッサを搭載し、メインメモリが2GBのデバイスがiPhone 6sよりも買いやすい価格帯で手に入るようになったことです。これはSIMフリー機でも64GBモデルで64,800円(税別)ですから、随分手を出しやすくなったのではないかと思います。

【iPhone SE / iPad Pro(9.7インチ)】
人気機種の宿命か、発表前から寸分違わぬ情報がリークされてしまっていた

 今回、一部併売の旧世代機は残っているものの、主要なラインナップがすべてA9、メモリ2GB以上となったことでiPad ProからiPhone SEまで、どれを買っても表現力はほぼ同じに平均化されました。あとは画面の大きさとか、3D Touchの有無だとか、用途にあわせてデバイスを買えば良いだけで、どれを買っても等しく同じ物が同じように動くという環境は、とてもシンプルでアプリケーションの制作者・利用者ともに利益のある素晴らしい環境が整備されたと言えます。

 私見ですが、これにてiOSデバイスのスペック底上げが一段落ついたと言っても良さそうです。今後登場するであろうゲームは、コンソールゲームにまた一歩品質が近づくのではないかと考えています。これによって最低限でもiPhone 5s以前のデバイス(iPhone 4s、5、5cなど)はそろそろ用途的にも寿命を迎えるのではないでしょうか。これらのデバイスを愛用している方はそろそろ買い換えの検討を本格的にする頃だと思います。

 スペックが底上げされることは、ゲームファンにとっては歓迎すべきことで、A9プロセッサ搭載によって(主に海外の)ビジュアルにこだわったコアゲームを最高の状態でプレイすることができますし、現行世代機のメインメモリがようやく2GBで横並びになったことで「落ちた」だったり、「起動しない」だったりといったメモリに起因しそうな問題の軽減に期待がもてます。

 今回発表されたiPhone SEがゲームファンに適しているかという点については個人的にはノーです。大きなスクリーンの方が迫力があってゲームが面白くなるからに尽きます。iPhone 6s Plusの5.5インチとiPhone SEの4インチは、画面の大きさにして1.5インチ(約3.8センチ)ほどですが、ゲームや映像を見る際の迫力は段違いです。一度5.5インチの画面を見てしまうと4インチはかなり見劣りします。目に飛び込んでくるビジュアルや情報量の多さに慣れてしまうと、もう元に戻れないこと間違いなし。取っ替え引っ替え買い換えるような物でもないので、最初から一番イイ奴、つまりiPhone 6s Plusを買うのが正しい選択なのです。

 また、最近はPCなどからの移植も増えてきました。そのようなゲームの場合ビジュアル全体が繊細でキャラクターも小さく描かれている場合が多く、小さい画面であるほどプレイしにくいという欠点もあります。また、iPhone SEの場合はストレージが最大64GBです。これもゲームファンにとっては悩みどころで、1GB超のゲームも増えてきた昨今、やはり128GBモデルが欲しいところです。(ちなみに今回iPad Proの方は256GBモデルも登場しています)と言うわけで、片手で十分に取り回しができるiPhone SEの登場を待ち望んでいた人も多いかとは思いますが、私は上記の理由で“ゲーマーであれば”iPhone 6s Plusをオススメします。大事なことだから2度言いました。

【iPhone 4s、iPhone 5s、iPhone 6s Plusとの比較】
iPhone 4s、iPhone 5s、iPhone 6s Plusとの比較。やはりデカいほうが迫力ある
キャラクタの小さいゲームもデカい方がプレイしやすい

 一方で9.7インチ版のiPad Proは、悩ましいところです。このサイズはタブレットとしてはもっとも使いやすいサイズで、前世代のAirシリーズは売れ筋のモデルでした。Appleもそれを承知しているからこそ、12.9インチ版と同等のスペックにカメラなど一部上位の機能を持たせて普及を狙っているのでしょう。ウェブ閲覧してよし、ゲームしてよし、Kindleならマンガがほどよく読みやすく、映像鑑賞にもちょうど良いといった感じで、とにかく汎用性があります。電車内で使ってもかろうじて迷惑のかからない大きさと言えるでしょう。

 iPadはどのモデルでもゲーム機としての相性は良いのですが、一度iPad Proの12.9インチの大画面でゲームを体験してしまうと、やはり9.7インチの画面には見劣りしてしまいます。しかしどちらのサイズでもゲームは快適にプレイできるので、あとはゲーム以外の用途や使用頻度で決めるのが一番でしょう。普段から持ち歩く機会が多いのであれば9.7インチの方が向いています。モバイル用途を考慮すると、カバーやジャケットなどボディを保護するアクセサリーは従来モデルからの大きさを受け継いだ9.7インチモデルの方が圧倒的に豊富なので、この点でも優れています。(逆に言うと12.9インチ版は純正品以外ほとんどありません)まずはApple Retail Storeなど実際の店舗で比較しつつ、一番納得できるモデルを購入するという流れが正解かもしれません。256GBモデル一択で!と言いたいところですが、さすがに高価なので、256GBか128GBいずれかお好みで。

【iPad Pro 9.7インチと12.9インチの比較】
9.7インチと12.9インチはこれだけの差がある。用途で選ぼう(写真はiPad ProとiPad Air)

 蛇足ですがY! Mobileなど一部キャリアではiPhone 5sが併売が継続されています。安いからといって今からこの機種に手を出すのはあまり賢明ではありません。新品でもなかみは一昨年発売されたものですから、3世代前のスペックです。一部大作ゲームなどで早々にiPhone 4sなどメインメモリ512MBのモデルが足切りされた経緯を考えると、iPhone 5、5c、5sといった1GBモデルもゲームの質が全体的に底上げされると、どこかの時点で足切りされる可能性は高いでしょう。

 また、タブレットは安くあげておきたいということであれば、型落ちしたiPad Air 2も値下げされて入手しやすくなりました。プロセッサは1世代古いA8Xですが、現時点でゲームをひっくるめて性能に不足はありません。しかもメインメモリは2GB搭載しています。……なんですが、1万1,000円の差でゲームが確実に楽しくなる4つのスピーカー、最新のプロセッサ、ついでに4Kビデオも撮影できるカメラが手に入ることを考えると、やはりゲーマー視点からはオススメできません。

 結局のところ「大は小を兼ねる」、「最新の一番良いモデルを買う」という私のApple製品に対する持論は変わらなかった、ということでまた次回お会いしましょう。

(大柳竜児)