使って試してみました! ゲームグッズ研究所
連載第342回
キングストンのゲーミングヘッドセット「HyperX Cloud」を試す
音の再現力が高い、PS4、PS Vita、PCなどに使える高品質ヘッドセット
(2014/5/30 08:00)
当連載は、ゲームライフに役立つグッズを発掘し、実際に使用してみようという試みをレポートするものである。ネタに困ったときはお休みしてしまうかもしれないので不定期連載である。ちょっとした投資や工夫で、よりよいゲームライフを送っていただけるよう、鋭意努力していく所存である。
5月30日、キングストンテクノロジーのゲーミングブランド「HyperX」より、本格ゲーマー向けのヘッドセット「HyperX Cloud ヘッドセット」が発売される。PCだけでなくプレイステーション 4やPlayStation Vita、スマートフォンやタブレットなど幅広く使える製品だ。今回は、発売前にこちらの製品をお借りできたので、フィット感や各部の詳細、音質をチェックしつつ、ゲームプレイでの使い勝手も試してみた。
キングストンのゲーミングブランド「HyperX」より、プロゲーマー向けヘッドセット登場!
キングストンテクノロジーといえば、PC用のメモリなどのPCパーツのブランドとしてご存じの方も多いだろう。そんなキングストンが立ち上げたゲーミングブランド「HyperX」の、ゲーミングヘッドセット「HyperX Cloud ヘッドセット」が5月30日に発売される。Amazon.co.jpの限定発売となっており、販売価格は9,980円(5月29日現在)。
スウェーデンのゲーマー向け周辺機器メーカーであるQPADと共同開発されたヘッドセットは、53ミリ径の大型ドライバを採用したダイナミック方式の密閉型ヘッドフォン&マイクの製品。原音を忠実に再現する規格「Hi-Fi」オーディオの製品であり、クリアで細かい音も逃すことなく再現してくれる。
対応機器については、ステレオミニジャック用のプラグで接続するワイヤードタイプの方式なので、様々な機器に使用可能だ。Windows PCはもちろんとして、PS4、PS Vita、iOS/Androidのスマートフォンやタブレット等に使える。もちろん単体のヘッドフォンとしてはさらに対応できる機器は増える。
本体フレームはアルミ製で、頭頂部にはスーパーソフトパッド入りヘッドバンド、耳当て部には低反発イヤークッションを採用。どちらもレザー素材が使われており、快適な着け心地となっている。イヤーパッドはレザータイプの他に、交換用にベルベット素材タイプも付属している。
マイクは自由に角度を調整できるフレキシブルアームタイプで、ヘッドフォン部分から着脱が可能。着脱部分にはカバーもついているので、外して使用するときの見栄えも良い。
接続ケーブルの長さは約1mで、先端はヘッドフォン接続のミニジャックと、マイク接続のミニジャックの二股タイプ。ケーブルはしっかりと編み込み皮膜でカバーされており、丈夫で断線しづらそうな作りだ。柔らかでケーブルの曲げクセがつかず、取り回ししやすい。
リモコン付きの1mのケーブルが組み合わせ可能で、リモコン部分にはダイヤル式のボリュームコントローラー、押しボタン式で押している間だけマイクがミュートになるボタンと、スライダースイッチでオンオフを切り替えるマイクミュートが搭載されている。
この他に2mの延長用ケーブルや、二股のジャックをひとつにまとめる10cmのケーブル(iPhone用とされているが、汎用利用できる)、ミニジャックのオスメスを入れ替えるアダプターが付属している。様々な機器、シーンに対応できる。収納ポーチも付属しているので、付属品の保管や持ち運びもしやすい。
この他の主な仕様は以下のようになっている。
「HyperX Cloud ヘッドセット」の主な仕様 | |
---|---|
ヘッドセット部分 | マイク部分 |
トランスデューサタイプ 53mmのダイナミック方式 | トランスデューサタイプ バックエレクトレットコンデンサー |
動作原理 密閉式 | 動作原理 圧力勾配式 |
周波数応答 15Hz~25,000Hz | ポーラーパターン カーディオイド |
公称インピーダンス 60Ω(システム当り) | 電源 A/Bクラス電源 |
公称SPL 98±3dB | 電源電圧 2V |
THD+N(歪み率) <2% | 消費電流 最大0.5mA |
耐電力特性 150mW | 公称インピーダンス 2.2kΩ |
イヤーサウンドカップリング 密閉型ヘッドフォン | 周波数応答 100~12,000Hz |
ノイズキャンセリング機能 約20dBa | THD+N(歪み率) <2%(f = 1kHz時) |
ヘッドバンド圧 5N | 最大 SPL-105dB SPL(THD 1.0%(1KHz時 )) |
重量(マイクとケーブルを含む)350g | マイク出力 -39±3dB |
ケーブルの長さとタイプ1mケーブル、2m延長ケーブル、および10cm iPhone用ケーブル | マイクブームの長さ 150mm(S字管を含む) |
接続ステレオミニジャック用プラグ(3.5mm) | カプセル径 6×5mm |
接続ステレオミニジャック用プラグ(3.5mm) |
フィット感が良く、細かな音も聴かせる音質の良さが印象的
実際に使用してみた。まずはヘッドセット全体の感触から見ていくと、アルミニウムのフレームでがっしりとした剛性感があり、そこに取りつけられている各部のパーツはラバーコーティングされていて、サラサラと手触りが良い。高級感のある仕上がりとなっている。
着けてみるとフィット感が抜群によく、ピタッと頭と耳に吸い付いてくれた。頭頂部が当たるヘッドバンドにはスーパーソフトパッドが入っていて、ぷにぷにと柔らかく、イヤーパッドは低反発素材のクッションが仕込まれていて適度な弾力がある。レザーの感触もサラサラと心地良い。付属のベルベット素材のイヤーパッドも、毛羽立ちが柔らかくて違った心地良さがある。
クッションの効果が高いこともあり、側圧、頭頂部ともに軽い着け心地だ。重量感も350gという数値ほど感じさせない。イヤーパッドの凹み部分は約6.5×4cm(縦×横)とそれほど大型なものではないものの、すっぽりと耳を包んでくれるし眼鏡をかけている人でもツルが痛くならないだろう。
装着の直後には、その耳周りの密封感の高さに驚かされた。周囲の音が格段に消えて静寂に包まれる。遮音性が高く、再生音に集中できた。価格以上の品質の良さを感じられるポイントだ。逆に、ベルベットタイプのイヤーパッドは周辺音を遮断しない作りになっているので、好みに合わせて使い分けできる。
なお、低反発素材入りのイヤーパッドという点は、熱のこもりが気になるかもしれない。今回の試用では時期的にまだそれほど気にはならなかったのだが、レザー素材とベルベット素材のどちらも、もっと暑い時期になると熱がこもると思われる。メッシュ素材のようなより通気の良いものも付属していたら、より良かったかもしれない。
ケーブルの取り回しは、ケーブルが布製の紐のように柔らかくてクセもつかないので、絡まったりせずに扱いやすい。前述のように編み込みの保護もされているので、耐久性に期待できる。
リモートコントローラーを見てみると、こちらもヘッドセットの各部パーツ同様にラバーコーティングされていて手触りはサラサラ。適度な大きさのコントローラーで、ボリュームダイヤルも触りやすい。特筆すべき点はマイクミュートが押しボタン式と切替え式の2種類搭載されていることで、一瞬だけなら押しボタン、席を外すならオフに切替えてと、シチュエーションに合わせて使い分けられる。
Windows PCに繋げ、音楽やゲームプレイを試していく。まずは音楽を試聴したのだが、これが非常に良かった。一切のノイズ感がなく、低・中・高のいずれの音も透き通っている。抜けていく高音には遠ざかっていくような奥行き感も感じられるところがあり、定位感がくっきりとしている。音の分離も良く、中心から左右へと広がっていくような時も滑らかに広がっていき、消えていくわずかな音まで聴かせてくれる。
付属のイヤーパッド両方を交換しつつ聴いていったのだが、遮音性の高いレザータイプは、その密封感の高さから静寂時の空気感も際立たせてくれる。一方、遮音しないベルベットタイプでも、周囲の音が聞こえやすいだけで音の聞こえ方には大きな違いは出ない。どちらもでも価格以上の音質と思えるぐらいに楽しめた。
製品紹介の音質の特徴に「低音域を高めている」とあるのだが、確かに迫力のある低音ではあるものの、目立ちすぎて邪魔になるようなものではなかった。大口径のドライバーを活かした無理のない低音だ。いわゆるドンドンと前面に思いっきり出るようなものではなく、自然さとのバランスが上手く取られている。
この時に聴いた楽曲は、スィープレコードの「リッジレーサー 20th アニバーサリーリミックス」、Lauryn Hillの「The Miseducation Of Lauryn Hill」、Passion Pitの「Manners」、Sing Like Talkingの「Second Reunion」、RAM RIDERの「ラジオボーイ」などなど。情報量の多いDJミックスから、ボーカル曲まで、和洋問わず色々と試してみたが、クセのない音質のおかげでどのジャンルも聴きやすかった。細かな音もしっかりと聞こえてきて、音の情報量をしっかりと再現できるヘッドフォンだ。
続いて、PCゲームのプレイを試してみた。プレイしたタイトルは、「バトルフィールド4」や「Left 4 Dead 2」など主に研究所員が最近遊んでいるFPSタイトル。実際に使ってみると、こちらも非常に良好だった。例えば、「バトルフィールド4」では研究所員が普段使っているヘッドフォンでは聞こえていなかった「射撃時にわずかに鳴るガキンッという金属音」を聴き取れたところに驚かされた。これまでに聞こえていなかった音の情報が加わることで、遊び慣れたゲームも様子が変わってくる。左右の音の分離も良く、くっきりと距離感まで伝わってくるものがあった。低音もバランスのまとまりを保ったままに強く出ているので、迫力も大幅に増してくる。
PS4でも試してみた。DUALSHOCK 4のステレオヘッドフォン/マイク端子に、iPhone用ケーブルを介して「HyperX Cloud ヘッドセット」を接続する。特別な設定は必要なく、リモコンも全ての機能(音量調整、2種類のマイクミュート)が利用可能だ。
PS4では主に「メタルギア ソリッド V グラウンド・ゼロズ」をプレイしてみたのだが、ブレや揺らぎのない芯のしっかりとした音質なので、キャラクターのボイスも聴きやすい。低音域が強めで迫力が増している一方、中・高のバランスがよくクセのない音質で、小さい細かな音もしっかり聞こえてくる。音の情報量でゲームプレイをより豊かにしてくれていた。
もちろんヘッドセットなので、マイクを使ってのボイスチャットを楽しんだり、SHARE機能での動画やストリーミング配信時に声をつけることができる。後述のマイク性能についてでも触れるが、マイク音声は調整なしでも充分な音量があり、相手にしっかりと伝わる。マイク音声を加えてのSHARE動画で、ゲーム中のBGMに声がミックスされている状態でも、マイク音声は聴き取りやすい(こちらも後述するが、マイク音声は少々ガサつきがあり、これが逆にゲームBGMとの音質に違いが出て聴き取りやすいところがあった)。
この他にも、利用用途はたくさんある。PCやPS Vitaでは、Skypeの通話にも利用可能だ。実際に試してみたが、PCでのSkype通話では相手の声がくっきりと聞こえるし、マイク音声も充分な音量で伝わっていた。PS VitaのSkaypeアプリでも同様に良好な通話が楽しめた。
また、iOSやAndroidのスマートフォンやタブレットでも、音楽を聴くときはもちろんとして、通話にも利用できる。こちらも音質は良好だった。こうした様々な機器に使える良さは、接続コネクタがステレオミニジャックであることに加え、ステレオとマイクのジャック1本化もできるiPhone用ケーブルが付属しているところが大きい。音質の良さとマイク音量の大きさはどの機器に使う上でも嬉しいメリットだ。
マイクの性能も確認してみた。PS4のマイクレベル設定でマイク音声の大きさや質を確認してみたのだが、音量は調整無しで「適正」の表示になり、製品そのものの性能だけで充分な大きさで入力できていた。音質の方は少しガサつきや音割れが出ていて、クリアさや滑らかさがもう一歩欲しかったところ。ただし、前述のようにゲームBGMの音質とは違いが出るので、聴き取りやすい特徴的な音声とも言える。マイクの指向性はそこそこ高く、手が届く1m圏内の音は拾うが、それ以上に離れるとだいぶ小さくなっていた。
マイク音声については、当連載の第339回で行なったのと同様に、PS4上でのマイク音声を収録したファイルを下に用意した。そちらもチェックしてみてもらいたい。
音質を重視する人に向いている高品質・高音質のヘッドセット
ヘッドフォンは品質も音質も良く、価格以上のものを感じさせる。ゲーミングブランドの製品ながらも、音楽視聴にも充分に使える音質の高さには驚かされるぐらいのものがあった。音の再現力が高く低音が力強いながらもバランスはいい。音にクセがなく、透き通っていて滑らかだ。
装着時のフィット感の良さもポイントで、圧迫感が少なく、長時間の利用にも向いている。マイクが着脱式なので、普段はヘッドフォンとしてマイクを外したすっきりとした状態で使い、必要な時にマイクを装着するといったスタイルでも使えるのも嬉しいところ。一方、マイクの性能は音量が充分にあり聴き取りやすくはあったのだが、ガサつきのある割れ気味な音だったのは少々残念だ。
全体をまとめると、マイク性能は実用できれば構わないが、音質には妥協したくないという人に向いている製品と感じた。様々な機器に使える汎用性の高さという利点もあり、これからヘッドフォンまたはヘッドセットを購入しようという人や、これまで低価格なヘッドセットを使っていたが1ランク上の製品に乗り換えたいという人に、ぜひチェックしてみてもらいたい。