(2016/5/9 00:00)
ゲーミングノートPCと言うと、ハデで大きくて厚くて重いというイメージ。しかしTSUKUMOの「G-GEAR note N1583J-710/T」(以下、N1583Jシリーズ)は、このイメージを払拭するモデルである。つまり、落ち着きあるデザインでそこそこの大きさに収まって比較的スリムで比較的軽いという具合だ。よくわからないという方にはこう説明しよう……「スタンダードノート風」だけど「ゲーミングノート級」のPCだ。
ゲーミングノートPCでは定番なのが「ブラック/レッド」のカラーリング。しかし「N1583J」シリーズはブラックカラーであるがレッドはない。ただし、地味な事務用ノートPCとは異なり、シャープな直線によるカッティングを用いた個性あるデザインだ。ゲーミングPCらしくキーボードバックライトも備えているし、電源ボタンもユニークな形状だが、やはりレッドが用いられていないことで落ち着いた雰囲気を醸し出している。コテコテのゲーミングノートPCに抵抗があったという方には待望の製品と言えるだろう。
15.6インチノートPCなのに2.7cm厚で2.5kg! 3cm×3kgを切ってきた
「N1583Jシリーズ」のサイズは385×271×27mm。接地面積は15.6型ノートPCなりだが、注目して欲しいのは厚みの部分。3cmオーバー当たり前のゲーミングノートPCのなかでは、とてもスリムに仕上がっているのが特徴だ。このスリムなボディを実現するため、本製品は光学ドライブを搭載していない。インストールにDVDメディアを用いるゲームタイトルでは別途USB接続などの光学ドライブを用意する必要が生じるが、昨今ではOriginやSteamなどのダウンロードサイトを利用することも多く光学ドライブを利用するとしても本体内蔵である必要性は少ないだろう。
重量は約2.5kg。こちらも15.6型なら3kgオーバーが当たり前というのがゲーミングノートの世界なので、それらと比べるとかなり軽量に感じられる。
……と、このようにゲーミングノートPCにおける障壁であった“3cm厚×3kg超”という常識を打ち破るサイズ感が「N1583Jシリーズ」の魅力である。デザインと合わせて、ゲーミングノートPCらしさはかなり薄まっている。周囲の人に対しても「普通のノートPC」だとだまくらかせること間違いない。かくれゲームオタクにはピッタリだ。
ではゲーミングPCで重要なスペックについて見ていこう。今回紹介するのは2モデルある「G-GEAR note N1583Jシリーズ」のうちSSD&HDDデュアルドライブ構成の「N1583J-710/T」だ。
スペック | |
---|---|
CPU | Core i7-6700HQ(4コア、2.6GHz、最大3.5GHz) |
GPU | Intel HD Graphics 530(メインメモリからシェア) + GeForce GTX 970M(VRAM 3GB) |
メモリ | DDR4 SODIMM(PC4-17000、4GB×2) |
チップセット | Intel HM170 Express |
SSD | 250GB(M.2、Serial ATA 3.0) |
HDD | 500GB(Serial ATA 3.0) |
ディスプレイ | 15.6インチフルHD(1,920×1,080ドット)、ノングレア(パネル駆動方式非公開) |
光学ドライブ | なし |
無線LAN | Intel Dual Band Wireless-AC 8260 802.11a/b/g/n/ac |
OS | Windows 10 Home 64bit |
「N1583Jシリーズ」のCPU&GPUスペックは、Intel Core i7-6700HQ+NVIDIA GeForce GTX 970Mとなっている。どちらも最上位というわけではないが、それに次ぐスペックと言ったところ。「N1583Jシリーズ」はフルHDパネルを採用しており、この解像度でゲームを楽しむには十分な性能だ。そして販売価格も10万円台半ばの設定なので、どちらかと言えば頂点を目指すスペックというよりは、コストとパフォーマンスのバランスを重視したモデルと言える。
CPUのIntel Core i7-6700HQは4コア/8スレッド対応。モバイル向けとは言えモバイルノートPCで一般的なデュアルコアCPUのCore i7とはコア数が異なる。昨今のゲームタイトルでは推奨スペックにクアッドコアを掲げているものも多いので、これを満たすという点で重要なポイントだ。動作クロックは定格が2.6GHz、ターボブースト時の最大クロックが3.5GHz。TDPが一般的なモバイル向けCPUよりも大きい45W枠なので、ノートブックPCとしては比較的高クロックであるところも心強い。
メモリはDDR4 SODIMMを4GB×2枚、計8GB搭載している。動作モードはPC4-17000(DDR4-2133)。DDR3世代よりも高クロックでありながら、駆動電圧は1.2Vに引き下げられ、性能/電力費に優れている。メモリスロットは4本なので、最大32GBまで拡張できるところもパフォーマンス重視の方や、この落ち着いたデザインと高いスペックをワークステーション用途に活用したい方にとって注目すべきポイントだ。ただし、底面カバーを開けてアクセスできるのはスロット×2本まで。残る2本はどうやらキーボードの裏にあたる部分に設けられているようで、簡単にはアクセスできそうにない。この点からか、購入ページを見ると、メモリの増設は同社のサポートに依頼することをオススメする一文が添えられている。
GPUはNVIDIA GeForce GTX 970Mを搭載するが、CPUに統合されたIntel HD Graphics 530も利用可能で、この2つのGPUをNVIDIA Optimusテクノロジによって自動的に切り替える構成を採用している。つまり、非ゲーム時には省電力なIntel HD Graphics 530を、ゲーム時にはパフォーマンスの高いNVIDIA GeForce GTX 970Mを利用する形だ。
ゲーム用GPUのNVIDIA GeForce GTX 970Mは、ほぼデスクトップにおけるGeForce GTX 960に相当するパフォーマンスだ。CUDAコアは1,280基、GPUクロックは定格が924MHzでこれにGPU Boostによるオーバークロックが加わる。メモリはGDDR5を3GB搭載しており、動作クロックは5Gbps、メモリバス幅は192bitとなる。本体のディスプレイがフルHDパネルなので、この解像度であれば多くの現行タイトルが、高~最高画質で楽しめるだけのパフォーマンスである。
「N1583J-710/T」のストレージは昨今人気のデュアルドライブ構成だ。前述のとおり光学ドライブは搭載しないが、システム側に速度重視のSSDと、データ側に容量やコストパフォーマンスで優れるHDDを搭載している。SSD側はM.2 SSDで容量は250GB。接続インターフェイスはSerial ATA 3.0となる。HDD側は2.5インチの一般的なHDDで容量は500GB。接続インターフェイスはSerial ATA 3.0接続。システムドライブが250GB、データドライブが500GBでは足りないと感じる方には、BTOによるカスタマイズも可能で、SSD側は500GBまで、HDD側は1TBまで選択できる。なお、底面カバーを開けて内部を見ると、実はもう1本M.2スロットがある。BTOでは用意されていないが、M.2 SSDを増設してトリプルドライブ構成もできそうだ。
ディスプレイはノングレアの15.6型フルHD(1,920×1,080ドット)パネルを採用している。パネル駆動方式の仕様は公開されておらず、IPSではないようだが、視野角は比較的広く、浅い角度から見た際の色調の変化も比較的少ない。
本体内蔵のスピーカーは、2chステレオであるがオンキヨー製スピーカーを採用している。これにソフトウェアDSPの「Sound Blaster X-Fi MB5」を組み合わせており、メディアプレーヤーやユーティリティからテスト再生してみると、ステレオスピーカーではあるが確かにノートブックPCにしてはよい音質で、マイルドなものの立体感も感じられた。
ネットワークは無線側がIntel Dual lBand Wireless 8260-AC、有線側はRealtek 8168チップによるギガビットイーサという構成だ。スタンダードな構成ではあるが、性能面では不足ない。
キーボードはテンキー付き。15.6型サイズにテンキーを搭載しているために、エンターキーとテンキーの間にこれを分けるスペースはない。またキーボード左側では、タブやCapsLock、半角/全角キーなどの幅はほかよりも詰まったものとなっている。キー自体は大き目であるしストロークもあるので、レイアウトの点だけが残念だ。一方で、ゲーミングPCらしさを感じるのは、「W」、「A」、「S」、「D」キーにある矢印や、5段階に発光量を切り替えられるホワイトバックライトだろう。
フルHD&高~最高画質で最新タイトルが楽しめる
それではベンチマークで「N1583J-710/T」のパフォーマンスをチェックしていこう。パフォーマンスと冷却に関しては「Control Center」から指定できる。「パフォーマンス」も「エンターテインメント」もスコアに明確な差は表れなかったが、「パフォーマンス」を指定し、ほかベンチマーク中はGPUの指定を「NVIDIA Control Panel」からGeForce GTX 970Mに固定し計測している。一部のゲームやベンチマークでは、自動認識の場合にIntel HD Graphics側が用いられることもあるので、そうした場合はNVIDIA Control Panelを確認し、タイトル毎(プログラム)、あるいは全て(グローバル)で使用するGPUを指定しておくとよい。
CINEBENCH R15
まずはCPU性能の計測でよく用いられることの多い「CINEBENCH R15」のスコアから見ていこう。ゲーミングノートでは標準であるが、モバイル向けとはいえクアッドコアCPUを搭載しているためにCPUスコアは一般的なノートブックのそれを大きく上回る。600cb台後半であれば、デスクトップ向けのCore i5を上回る。一方、CPU(Single Core)に関しても、4GHz台のデスクトップ向けCPUからは引き離されているものの、最大3.5GHzというモバイル向けCPUでは比較的高いクロックであることが高いスコアを実現している要因だ。このとおり、CPUに関してはデスクトップのメインストリームに引けをとらない。
テスト項目 | スコア |
---|---|
CPU | 681cb |
CPU(シングルコア) | 150cb |
PCMark 8 v2.7.613
続いてはシステム性能を判断する際に用いられる「PCMark 8」。デスクトップのゲーミングPCには及ばないものの、スコア自体を見ればメインストリームデスクトップと互角と言える。逆にノートブックと比較すれば、「CINENEBCH R15」と同様、本製品がクアッドコアCPUであるために、Home、Creative、Workともスコアは高めだ。そしてCreativeではGeForce GTX 970MのGPUパフォーマンスもプラスされ、4,849ポイントという高スコアとなっている。このように、非ゲームの普段作業でも、十分な快適度が得られることがわかる。
「PCMark 8」テスト項目 | スコア |
---|---|
Home | 3,861 |
Coreative | 4,849 |
Work | 4,973 |
3DMark
グラフィックス性能のベンチマークとしてはまず「3DMark」で確認していこう。GeForce GTX 970MのスコアはFire Strikeで6,698ポイントと、確かにデスクトップのGeForce GTX 960と互角といったあたり。
3DMark v2.0.2067 | スコア |
---|---|
Fire Strike | 6,698 |
Sky Diver | 19,628 |
Cloud Gate | 21,526 |
Ice Storm | 84,689 |
API Overhead DX11 single-thread | 1,368,939 |
API Overhead DX11 multi-thread | 1,390,277 |
API Overhead DX12 | 11,454,799 |
「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド」ベンチマーク
実ゲームタイトルで、とくに国内における人気タイトルとして「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド」の公式ベンチマークを試してみた。DirectXの設定では、DirectX 9と11を選べるが、「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド」はそこまでグラフィックス負荷が高くないため、DirectX 11としている。表ではスコアの横に、レポート出力ボタンで得られるレポートに記載されている平均fpsを添えている。
「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド」を快適にプレイできる目安は30fps。1,920×1,080ドット解像度、DirectX 11の最高品質を選んでも十分にこれを満たすことができる。どうしてもより高いフレームレートを望む場合のみ、画質オプションを引き下げればよいだろう。
「FFXIV: 蒼天のイシュガルド」ベンチマーク DirectX 11版スコア | スコア | |
---|---|---|
最高品質 | 7,366ポイント | 56.941fps |
最高品質(DirectX 9相当) | 9,893ポイント | 77.908fps |
高品質(デスクトップPC) | 8,419ポイント | 65.634fps |
「World of Tanks」/「World of Warships」
「World of Tanks」と「World of Warships」の2タイトルは国内でも人気。MODを考慮しなければグラフィックス負荷としては低めであり、そのうえ30fps出ていれば十分に楽しめる。解像度は1,920×1,080ドット、アンチエイリアス設定は「World of Tanks」を「TSSAA-HQ」に、「World of Warships」は「High」として、そのほかの画質オプションは、選択できるオプションのうち最大のものを選んでいる。
リプレイデータを再生し、うち240秒間でFRAPSから計測したところ、最小フレームレートはどちらも51fpsで、平均フレームレートは60fps台半ばとなった。アンチエイリアスを最大に効かせたうえで、最高画質に引き上げているため、映像はなめらかかつ美麗だ。
「Tom Clancy's The Division」
もう一段階グラフィックス負荷が重いタイトルになる「Tom Clancy's The Division」のパフォーマンスも確認してみよう。解像度は1,920×1,080ドットとし各画質オプションを切り替えながら、内蔵ベンチマークを実行している。「Tom Clancy's The Division」の内蔵ベンチマークは最小fpsを表示しないため、このグラフのみ最大fpsと平均fpsのグラフとなつているので注意してほしい。
「Tom Clancy's The Division」では、平均フレームレートで見れば最高画質でも30fps以上出ている。ただしFRAPSを用いて1分間のフレームレートを見たところ、最小フレームレートは18fpsほどのようだ。いちおう映像で見る限り、ひどく画面がカクカクするようなことはなく、まずまずスムーズに流れるため、これでよしとするのもあり。ただしゲームが進んでよりグラフィックス負荷の高いシーンになった際の不安はあるので、この点からすると高画質設定あたりが妥当だろう。また、60fps欲しいという場合は中~低画質設定まで落とすのがよい。
「Rise of The Tomb Raider」
最後は現行タイトルのなかでも比較的グラフィックス負荷の高い「Rise of The Tomb Raider」。ゲーム内蔵ベンチマークを用いて計測しているが、最小/平均/最大の各数値は負荷が重い「地熱谷」のものを採用している。DirectX 11/12双方で計測したが、最小/平均のフレームレートはDirectX 11のほうが若干高い傾向のようだった。
さて、「Rise of The Tomb Raider」の快適ラインは30fpsだが、これを満たす画質オプションは中設定あたりとなる。ただし、30fpsを多少割り込む高画質設定でもほとんどのシーンでスムーズな描画が得られるので、こちらを選んでもよいだろう。
最高画質は、平均フレームレートで見れば十分なのだが、最小フレームレートが極端に落ち込んだ。映像を確認すると、ベンチマーク開始当初は十分にスムーズな映像が流れているが、後半になってオブジェクトが増えると極端にカクカクしだし、最終的には映像が止まったような状態になる。比較的珍しい傾向なので、GPU-Zでログを取得し確認したところ映像がカクカクし始める直前からVRAM使用量が2900MB台に突入していることがわかった。つまり、最大fpsや平均fpsが示すとおりGPUの処理能力は、30fps程度を満たすだけの余裕があるが、高画質化のためのデータがVRAM容量をオーバーしてしまい、ここにボトルネックが生じていると説明できる。
GeForce GTX 970MにはVRAM増強版がないため、最高画質で楽しみたいという方は、GeForce GTX 980M以上を搭載するモデルを選ぶべきだ。ただし「Rise of The Tomb Raider」の難しいところは最高画質以上がある点。全てをMAXに引き上げるとGeForce GTX 980Mでも怪しいところで、そうなるとGeForce GTX 980搭載モデルやGeForce GTX 970MのSLIクラス以上が求められる。この点で、多くの場合画質への妥協が必要となる。高画質設定でも映像はかなり綺麗なので、ゲームグラフィックスを楽しむという点では十分に満足できるだろう。
「CrystalDiskMark」
最後はストレージ性能をチェックしておこう。本製品は一般的なSerial ATA 3.0接続のSSDを用いるため、とくに速さをアピールしているわけではないが、どの程度の転送速度があるのか「CrystalDiskMark 5.1.2 x64」で計測してみた。
SSD側のシーケンシャルリードは562.2MB/sec、同ライトは511MB/secと、こちらはSerial ATA 3.0インターフェイスの帯域の上限に迫るパフォーマンス。実際のところこの程度のパフォーマンスが出ていれば体感速度には十分に高速。PCI Express接続のSSDならさらに高速なスコアを叩き出すことは事実だが、これを体感できるかと言えばそのようなシチュエーションはそこまで多くない。Serial ATA 3.0接続のSSDは、費用対効果の点で現在もっともよい選択ではある。また、4K Q32T1のリード/ライトが300MB/sec前後出ている。シーケンシャルにおけるトップスピードのみを求めるPCI Express接続のSSDの一部モデルはこれより遅いこともあるので、ここも体感上の快適さを得られるポイントとなっている。
HDD側に関してはシーケンシャルリード/ライトともに100MB/se台前半だ。2.5インチ、そして5,400rpmモデルということもあり、転送速度としては遅く感じられるが、データドライブとして運用する想定であるため、そこまで問題となることはないだろう。
このように、本製品のストレージは、SSD側が価格性能比を、HDD側が価格容量比を重視した構成となっている。どうしてもここの速度を向上させたいならば、交換するのもよい。
「羊の皮を被った狼」でありコスパもよい
N1583Jシリーズの注目点は、やはり見た目に尽きる。一見するとスタンダードノートPCのようにも見えるが、その内部にはゲーミングノートPCのスペックが詰め込まれており、そのパフォーマンスはベンチマークの示すとおりである。コテコテのゲーミングノートPCのデザインではなく、落ち着いたデザインである点はゲームをプレイする場所を選ばず、比較的軽量である点から、本機を持って友人宅に遊びに行く、そこでLANにつないで対戦するといったプレイスタイルが可能になる。そして、家族のいるなかでは「変な目で見られずに済みそうだ」というのもポイントかもしれない。
ゲーミングパフォーマンスに関しては、GeForce GTX 970Mを搭載する点から、トップを狙うものではなく、「中画質よりも上」で実用的なフレームレートを出せるというポジションだ。その上で、10万円台半ばという、ゲーミングノートPCとしてはお買い得感のある価格帯に収まっている。コストパフォーマンスのよいゲーミングノートPCを求める方にも、魅力的な製品と言えるのではないだろうか。