PS4「GRAVITY DAZE」レビュー

GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動

キトゥンの魅力も倍増した! PS4で進化した「GRAVITY DAZE」

ジャンル:
  • アクション・アドベンチャー
発売元:
開発元:
  • ソニー・コンピュータエンタテインメント
プラットフォーム:
  • PS4
価格:
5,292円
発売日:
2015年12月10日

あらゆる部分がブラッシュアップされたPS4版

 2012年にPlayStation Vitaで発売され、その斬新なゲームシステムでゲームファンをアッと言わせた重力アクション・アドベンチャー「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において彼女の内宇宙に生じた摂動」(以下、「GRAVITY DAZE」)が、グレードアップしてプレイステーション 4向けソフトとして帰ってきた。

 PS Vita版からさらに美しくなったグラフィックス、フレームレートの60fps化、ギャラリーモードの搭載などをプラスし、「GRAVITY DAZE」の重力を操る独特なアクションの本質はそのままに、PS4ならではのリッチな環境で同作を楽しめるようになった。本稿では、現在発売中の本作のプレイレポートをお届けしよう。ゲームシステムのおさらいを交えつつ、筆者がこの作品をプレイして感じたことを述べていきたい。

【スクリーンショット】
リンゴの木が登場するインパクト大のオープニングも健在

重力を操る能力を使い、壁に立つキトゥン

 まずは、「GRAVITY DAZE」を知らない人のために、ゲームの基礎的な部分を説明しておこう。本作は、重力アクション・アドベンチャーと銘打たれていることからもわかるように、主人公のキトゥンが使う「重力」を用いた能力が大きな特徴となっている。ゲームデザインは、3人称視点のアクションゲームをベースにした箱庭系作品と言えばわかりやすいだろうか。しっかりとした本筋のストーリーがありつつも、サイドミッションやチャレンジミッションなど、気分転換のような感覚で楽しめる“寄り道要素”も充実している。

 そして、本作を本作たらしめているのが、先述した重力アクションだ。360度、あるゆる方向へと、飛ぶのでなく、落ちていく。重力を操り宙を舞う、その浮遊感や疾走感は、あきらかにこれまでのアクションゲームでは味わえなかった感覚だ。初めてPS Vita版をプレイした時の衝撃は、今でもはっきりと覚えている。魔法や特殊能力に重力を使うキャラクターはこれまでのゲームにも登場していたが、本作における「重力」とは、本当の意味でプレーヤーに重力を体感させることなのだ。

 前置きが長くなってしまったが、ここでPS4版に話を移したい。PS Vita版のリリースから3年、満を持して登場したPS4版「GRAVITY DAZE」。基本的な内容は同じなのだが、PS4だからこそ可能なブラッシュアップが施されており、それがプレイ体験の質向上や豊かさにつながっている部分は大きい。

 ちなみに、筆者は本作を40インチ前後の液晶テレビでプレイしたのだが、やはりPS Vitaのスクリーンと大画面テレビでプレイするのとでは、迫力が全然違うことを実感させられる。大画面のため、キトゥンを始めとするキャラクターの印象まで変わってくるのだから面白い。もちろん、解像度の向上によってグラフィックスも美麗になっているため、プレイしてすぐに「あっ、めっちゃ綺麗になってる!」と感じることができた。

 加えて、背景グラフィックスにも手が加えられている点を評価したい。本作は、空中都市「ヘキサヴィル」を始めとする、どこか懐かしさを感じさせる街並みも大きな魅力。ミッションを受けるのもいいが、当てもなくヘキサヴィルの街中を探索するのも楽しみの1つだと思っているので、背景グラフィックスの向上は個人的にはかなり嬉しい。ちょっぴり妖しさを感じるヘキサヴィルだが、PS4版になって、さらに魅力的な街になったと言えるだろう。

【スクリーンショット】
ヘキサヴィルは広大だ。時には力を抜いて、観光気分で探索してみるのもいいだろう

 また、キトゥンをはじめいくつかのモデルは新しく作られたものなのだとか。どうりでキトゥンも、PS Vita版より数倍増し(私見)で可愛くなったように見えるのだ。

 また60fpsのフレームレートがもたらすなめらかな動きも、アクション性を要とする本作にとっては大きな改善点だ。キャラクターを動かしているだけで楽しい……そんな魅力が60fpsのフレームレートが実現されたことが理由として挙げられるのは間違いないだろう。本作をプレイして、美麗なグラフィックスに高フレームレートを両立させられるPS4のパワフルなマシンスペックを改めて実感できるだろう。

 また、気になる操作性だが、個人的には「DUALSHOCK 4」と「GRAVITY DAZE」は非常に相性が良いと感じた。PS Vitaと「DUALSHOCK 4」は異なるデバイスのため、操作感覚に多少の違いはあるものの、違和感を覚えるレベルではまったくないということを、はっきりと言っておきたい。むしろ、右スティックの使いやすさ(主にエイミング)などを考慮すると、個人的にはPS4版を推したい気持ちが強いというのが正直な感想だ。

【スクリーンショット】
記憶を失った少女キトゥン。序盤から謎に満ちた展開だ
中盤、キトゥンのライバルとも言える「クロウ」も登場。キトゥンを敵視してくる彼女の目的は?

ネヴィとの戦いこそ重力アクションの真骨頂。ボス戦はやや強めだが、その分達成感も大!

 「GRAVITY DAZE」と言えば、正体不明の敵「ネヴィ」(敵の総称)との戦いも外せない要素と言える。ネヴィは空中に浮いている敵も多いため、重力アクションを駆使しなければ戦えない。正直言ってネヴィとの戦いは重力アクションに慣れる必要があるため、プレイし始めのころは思うように操作できず歯がゆい思いをするかもしれない。ネヴィには弱点となるコアがあり、その部分にエイミングしないとダメージを与えられないというのも、初心者にとっては「難しそう」と思わせる要因となっているだろう。

 ただ、先ほど「コアを狙わなければダメージを与えられない」と書いたが、コアを狙うこと自体はさほど難しくないし、コア自体が大きめな上、重力キックはコアに向かって自動追尾するので、アクションゲーム経験者であればすぐに慣れると感じた。

 しかしながら、ボス戦だけは厳しい戦いになると思っておいたほうがいいかもしれない。ボスの動きにはパターンがあるのだが、そのパターンを掴むまではゲームオーバーを繰り返すことも多いと思うし、実際筆者もそうだった。

 ただ、それは裏を返せば、強い敵を苦労して倒す達成感にもつながるので、諦めずに頑張ってみてほしい。ここだけの話だが、筆者は、最初のボスを苦労のすえ倒したとき、思わず「よっしゃあぁぁ!!」と叫んでしまった。正直言って、クリアしてこんなに興奮したのは久しぶりだ。

 ちなみに先ほど少し触れたが、エイミングは、右スティックだけではなくモーションセンサー(PS Vitaのようにコントローラーを傾けて狙いを定める)でも可能。モーションセンサーのほうがより直感的に操作できるかもしれないが、筆者は普段から慣れ親しんでいる右スティックのほうがしっくりきた。右スティックを使用した方が、細かく狙いを定めることができるからだ。この辺りは好みの問題もあるので、両方試してみて、使いやすいほうを選ぶのがいいだろう。

【スクリーンショット】

 色々書いたが、重力アクションを使ったバトルこそ、「GRAVITY DAZE」の醍醐味の1つであり、重力アクションの真骨頂であることは間違いない。重力アクションを自由自在に使いこなせるようになってくると、なんだかキトゥンと一体になった気がしてきて、得も言われぬ高揚感が湧いてくる。友達がいるところでプレイして、「俺の重力アクションを見ろ。すげえだろ?」とドヤ顔になってみるのも悪くない。重力アクションを極めるところまで極めたら、素直に「美しい」と思えるレベルになると筆者は思っている。そんな上級者のプレイを延々と観賞するのも、本作の楽しみなのかもしれない。

オンリーワンの輝きを放つ「GRAVITY DAZE」。2016年発売の「2」も期待大

 筆者は現在、メインストーリーはほぼ終わり、それが済んだらチャレンジミッションに挑戦しようと思っている次第。PS4版では、PS Vitaでダウンロードコンテツとして配信されていた「スパイ編」、「軍隊編」、「メイド編」を完全収録しており、「スパイ編」はプレイ済み。残る「軍隊編」と「メイド編」をじっくり楽しもうかと思っているところだ。

 そしてここまでプレイして思ったのは、やはり「GRAVITY DAZE」のプレイ感覚は、「GRAVITY DAZE」でしか味わえないオンリーワンのものだということ。本作のクリエイティブディレクター外山圭一郎氏は過去に「SIREN」シリーズでユーザーの度肝を抜いた名クリエイターだが、「GRAVITY DAZE」でもその手腕はいかんなく発揮されている。

 それにしても、なぜ外山氏の作品は、こうもプレーヤーの心に残るものが多いのだろう。そんなことを考えていたら2016年発売予定「GRAVITY DAZE 2」が楽しみで仕方なくなってきたので、「2」への期待を膨らませつつ、この辺で筆を置きたいと思う。

【スクリーンショット】
ミッションをクリアすることで追加コスチュームが手に入る
PS4版で追加されたギャラリーモード。600点以上の設定画やイラストが収録されている
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(御簾納直彦)