(2015/5/14 00:00)
3月にNVIDIAからGeForce GTX TITAN Xが発表された。第2世代Maxwellアーキテクチャを採用した初のウルトラハイエンドGPUとして注目を浴びているTITAN Xは、1枚で最新の3Dゲームを4K解像度でプレイできる製品としてNVIDIAに位置付けられており、その性能がうかがえる。そして4月にはTITAN Xを搭載したゲーミングPCがマウスコンピューターのG-Tuneシリーズのラインナップに加わった。その試用機をお借りすることができたので、レビューしていってみよう。
スペックからその性能をチェック
4月9日にマウスコンピューターから発表された「G-Tune NEXTGEAR i640PA5-SP2」はNVIDIAの最新フラグシップGPUであるGeForce GTX TITAN Xを搭載した強力なゲーミングPCだ。まずはそのスペックから見ていくことにしよう。
【スペック表】
G-Tune NEXTGEAR i640PA5-SP2 | |
---|---|
CPU | Intel Core i7-4790Kプロセッサー(4コア/4GHz/TB時最大4.4GHz/HT対応/8MBキャッシュ) |
GPU | NVIDIA GeForce TITAN X(GDDR5 12GB) |
チップセット | Intel Z97Expreessチップセット |
メモリ | 32GB(DDR3 SDRAM PC3-12800、8GB×4) |
HDD | 2TB(7,200rpm) |
LAN | 1000BASE-T(オンボード) |
PCケース | G-Tune NEXTGEAR専用ハイグレードATXケース |
電源 | 700W(80PLUS Bronze) |
OS | Windows 8,1 Update 64bit版 |
さて、上記スペックを説明していく前に、BTOについて説明しておこう。BTOとはBuild to Orderの略で、日本語で言えば受注生産方式だ。G-Tuneを購入する際には、まずベースとなるマシンを選び、それで問題なければそのまま購入することができる。
このときに、もうちょっとストレージの容量が欲しい、もうちょっとメモリを増やしたいといったときに対応してもらえるのがBTOだ。このBTOのメリットはさまざまだが、とくに大きいのはPCの知識がほとんどなくても好きな構成にすることができること。PC自作をやったことがなくてもメーカーが組み立ててくれるし、保証もなくなることがない。上記スペックはあくまでもi640PA5-SP2のベースの仕様であるため、ここからBTOでパーツの追加やグレードアップができるということも覚えておこう。
さて、それではまずCPUから説明していこう。PCの頭脳とも言うべきCPUはIntel Corei7-4790Kだ。4790Kはメインストリーム向けCPUとしては1番性能の高い製品で、特定のチップセットを搭載したマザーボードであればオーバークロック(OC)を行なうことができるというもの。通常時の動作クロックは4GHzで、処理の負荷状態によって4.4GHzまで自動的にOCを行なう機能を備えている。4790KにはCPUコアが4つ入っており、その1つ1つが2つの処理を同時に行なえるHyper-threadingに対応している。4コア×2スレッドで、8つの処理を自動的に行なうことができるのでマルチスレッド処理(いくつもの処理を同時に行なうこと)に強い。
OCの条件とはチップセットであり、本製品に採用されているIntel Z97との組み合わせで可能になるため、i640PA5-SP2ではOCができる構成になっていることがわかる。IntelZ97で採用されるCPUソケットはLGA1150というもので、この上にはIntel X99というチップセットで採用されるLGA2011が存在する。ただし、こちらの位置付けはウルトラハイエンドとなっており、複数のビデオカードの利用やサーバー用途などで使われるもの。価格もぐっと高くなる。最初に書いたとおり、i640-PA5-SP2に搭載されているビデオカードである、NVIDIAの GeForce GTX TITAN Xは1枚で4K解像度のゲームプレイを楽しむことができるわけだから、このIntel Z97との組み合わせがベストマッチと言えるだろう。
メモリは8GBのモジュールを4枚搭載し、合計32GB。ストレージには2TBのHDDを採用している。メモリに関しては文句なく十分な容量だし、ストレージも容量だけで見るなら問題ないモノだ。SSDを選択していないのはちょっと残念だし、ゲームのプレイにどれほど影響するかが心配な読者もいるかもしれない。しかし、実際のところ、ゲームのローディング時間に影響が出る程度で、ゲームプレイ時にはストレージの性能はほとんど影響を与えない。これはこれで削れるところを削った構成とも考えられる。もし心配であれば、BTOでSSDを追加したり、HDDからSSDにストレージを変更したりするといった方法もあるだろう。
PCケースはG-Tune NEXTGEARシリーズでおなじみのG-Tune NEXTGEAR専用ハイグレードATXケースが採用されている。こちらは筆者の世代ならピンと来るかもしれないが、某超人プロレス漫画に出てくるキャラクターに似たフロントフェイスを持つATXケースだ。動作音を低減するための前面扉を採用しており、天板部の手前にはUSB 3.0とUSB 2.0のポートがそれぞれ2つ。そしてメモリカードリーダーとマイク、ヘッドホンの端子を備えている。
電源には700W仕様の製品を採用している。本製品のCPUとGPUの組み合わせで考えると容量的には十分だ。この電源は一定の性能と信頼性を保証する80PLUS Bronzeに対応している。
OSにはWindows 8.1 Update 64bit版がプリインストールされている。筆者が執筆中に、本製品のサイトのBTO項目を確認したところ、Windows 8.1 Proのほか、オリジナルデザインテーマを適用したものも選択できるようだ。また、Windows 7 Professional 64bit版へのダウングレードしたモデルも用意されている。
GeForce TITAN XはどんなGPU?
さて、上のスペックのチェックであえてほとんど解説しなかったのがビデオカードのGeForce GTX TITAN Xに関してだ。このビデオカードがこの製品のキモになるため、ここで詳しく解説しよう。
TITANの名前はNVIDIAのウルトラハイエンドクラスGPUにのみ付けられる製品名で、TITAN Xは現在販売されているGeForce GTXシリーズ 900系の最上位GPUであるGeForce GTX 980の1クラス上に位置付けされている。下がTITAN XとGTX 980の仕様表だ。
【GPU比較表】
GPU名 | GeForce GTX TITAN X | GeForce GTX 980 | GeForce GTX TITAN Black | GeForce GTX TITAN |
---|---|---|---|---|
開発コードネーム | GM200(Maxwell) | GM204(Maxwell) | GK110(Kepler) | GK110(Kepler) |
製造プロセス | 28nm | |||
DirectXサポート | 12.0 | 11.2 | ||
シェーダープロセッサ数(CUDAコア数) | 3,072基 | 2,048基 | 2,880基 | 2,688基 |
ROP数 | 96基 | 64基 | 48基 | |
L2キャッシュ容量 | 3,072KB | 2,048KB | 1,536KB | |
ベースクロック | 1,000MHz | 1,126MHz | 889MHz | 837MHz |
ブーストクロック | 1,075MHz | 1,216MHz | 980MHz | 876MHz |
メモリタイプ | GDDR5 | |||
メモリバス幅 | 384bit | 256bit | 384bit | |
メモリクロック | 7,010MHz | 7,000MHz | 6,008MHz | |
メモリバス帯域幅 | 336.5GB/s | 224GB/s | 336GB/s | 288.4GB/s |
メモリ容量 | 12GB | 4GB | 6GB | |
TDP | 250W | 165W | 250W |
表は1番左が「i640PA5-SP2」に搭載されているGeForce GTX TITAN Xで、その右が現行のGeForce GTX 900系の最高位のGeForce GTX 980、さらに右に、1世代前のKeplerアーキテクチャを採用したGeForce GTX TITAN Blackと無印のGeForce GTX TITANを並べてみた。
この表を見ると、Kepler世代のTITANやTITAN Blackだけでなく、同世代のGTX 980と比較しても、大幅にパワーアップしていることがわかる。処理する能力を決定づけるCUDAコアやROPの数だけでなく、メモリバス帯域幅も向上している。搭載しているビデオメモリも12GBとなっており、旧世代のTITANシリーズの2倍、GTX 980と比較しても3倍だ。いかにTITAN Xの処理能力が優れているかがわかるだろう。ちなみに、現在市場で流通しているGTX 980を搭載したビデオカードの相場価格は7万円~8万円ほどだ。これに対し、TITAN Xの搭載ビデオカードの相場価格は15万円~17万円となっている。しかし、この価格差なりの価値はあると断言してよいだろう。
写真で見る「i640PA5-SP2」
では、ここからは、実際の製品の写真を見ながらレビューしていこう。ここで注意していただきたいのが、筆者の使用した試用機と違うパーツが使われている製品が手元に届く場合があるということだ。マウスコンピューターが販売しているG-TuneシリーズのパーツはOEM供給を受けているため、メーカーの都合により、供給を受けられなくなる場合もある。このような場合には、マウスコンピューター側で、同等の製品を調達し搭載する。たとえばA社から供給を受けていたIntel Z97マザーボードの生産が終了してしまった場合、同等の後継製品やB社のIntel Z97マザーボードを採用することもある。中身がまったく同じ構成ではないといっても、基本的には同等のパーツが使われるため、ユーザーにとって不利益になるわけではないが、一応覚えておこう。
ベンチマークで「i640PA5-SP2」をチェック!
せっかく実機があるのだからその実力を測ってみよう。TITAN Xは1枚のビデオカードで4K解像度でのゲームプレイを可能にすると言う。4K解像度とは3,840×2,160ドットで、現在主流のフルHDである1,920×1,080ドットの倍のサイズだ。ただ、倍のサイズと言っても面積は4倍となっており、GPUが処理するデータの量も4倍になってしまう。つまり、あえて大雑把に言えば、同じ快適度でゲームをプレイしたいのなら、フルHD解像度のときの4倍の処理能力がGPUに必要となってしまう。
この点がネックとなっており、実際のところ現時点では4K解像度のディスプレイはそれほど主流とはなっていない。しかし、最近になって、安価な4Kディスプレイも発売され、同時に4Kに対応できそうな処理能力の高いGPUも出てきている。もちろん、ゲームをプレイしない人にとっては、ある程度のグラフィックス処理能力がありさえすれば、4Kで快適なPC環境を整えることができる。しかし、やはり最先端の3Dゲームをプレイするにはつらいのだ。
では、実際のところ「i640PA5-SP2」の実力はどうなのだろうか。4K解像度が出力可能なモニタを使ってベンチマークソフトを走らせてみた。使用したモニタはマウスコンピューターの「iiyama ProLite B2888UHSU」(28型4Kモニタ)で、4K解像度で60Hz表示が可能なDisplayPort 1.2に対応した製品。当然接続はDisplayPort経由で60Hz表示を行なっている。
ちなみに、前半のベンチマークソフトであるCINEBENCH R15やPCMark、3DMarkは独自のポイントで性能を表わすため、ベンチマークソフトのことを知らない人にとって見ると、読んでみてもよくわからない可能性が高い。これは、このベンチマークソフトは、このくらいの性能であれば何ポイントくらいの結果が出るという蓄積があって初めて比較ができるようになるため、あまり詳しくないのであれば、後学のために、「i640PA5-SP2」程度のPC構成であればこの程度のポイントが出るということだけ記憶にとどめておき、その先のValley Benchmarkまで読み飛ばしてしまえばよいだろう。また、逆にベンチマークに精通しているのなら、PCMark 8や3DMarkの結果にあるリンク先も参照されたい。各ベンチマークの詳細なテスト結果を見ることができるだろう。
CINEBENCH R15
CPUの処理能力を測るのに適したベンチマークソフトで、映画などのCGを作成する際の計算を行ない、その性能を比較することができる。結果はCPUが842、シングルコアの性能を測るCPU(Single Core)が171となっている。CPUはLGA1150では最高クラスのCore i7-4790Kが使われているため、当然ながらこの結果は高い数値だ。
テスト項目 | 数値 |
---|---|
CPU | 842 |
CPU(シングルコア) | 171 |
PCMark 8
Futuremarkが提供するPCの総合性能をチェックするためのベンチマークソフト。どこか一部分が突出していても高得点は出ないため、TITAN Xのような強力なビデオカードを搭載していても、結果がよくなるとは限らない。実際結果は4,455と、このクラスの製品としてはそれほど振るわないものだった。これはストレージにHDDを採用しているためで、SSDを搭載してれば5,000ポイントは超えただろうと予測される。しかし、個別に見てもそれほど悪い性能ではなく、結果として4,400ポイントを超えているということは十分にバランスの取れたPCであることがわかる。
テスト項目 | 数値 |
---|---|
PCMark 8 | 4,455 |
3DMark
3DMarkはFuturemarkの鉄板ベンチマークソフト。主に、3D性能を見ることができる。デフォルトの設定で動かしているため、実際にはフルHD解像度でベンチマークが行なわれている。DirectX 11世代のテストを行なうFire Strikeの結果は14,193と驚異的な結果だ。少し前までは、10,000ポイントを超える結果を出すためにはSLIを行なわなければとうていムリだった。3D処理の能力の高さを示す結果だ。
テスト項目 4K(3,840×2,160ドット) | 数値 |
---|---|
Fire Strike | 14,193 |
Sky Drive | 31,277 |
Cloud Gate | 28,948 |
Ice Storm | 172,781 |
Valley Benchmark
Valley Benchmarkは広大な山岳地形を3D表示しつつ、そのフレームレートを計測するベンチマークソフト。プリセットを使用し、Extreme(1,600×900ドット)とExtreme HD(1,920×1,080ドット)の2つを計測した。また、4K解像度にあたる、3,840×2,160ドットは設定できないため、そのほかの設定はExtreme HDの状態を引き継いで、解像度を設定可能な最大である2,560×1,440ドットにして計測した結果も調べている。フレームレートとは、1秒間に何回の画面描画を行なえるのかという数値でfpsという単位で表わす。一般的にはアクション性の低い3Dゲームの場合30fps程度があればある程度快適にプレイ可能とされており、アクション性の高いものでは60fps以上が快適と言われている。
ちなみに、Vailey Benchmarkはベンチマークソフトだが、実際のゲームで使用するのを前提として開発された3Dエンジンと言われている。注目してほしいのは平均フレームレートだ。結果としてはExtremeで110.3fps、Extreme HDで90.6fpsとなっている。このエンジンが採用されているゲームが発売された場合には、この解像度であれば十分快適にプレイできることがわかるだろう。2,560×1,440ドットの結果は56.0fpsだ。Valley Benchmarkはかなり処理負荷の高いベンチマークのため、この解像度でも60fpsを切る結果となっている。
テスト項目 | 平均 | 最少 | 最大 |
---|---|---|---|
2,560×1,440ドット | 56.0fps | 15.2fps | 104.9fps |
Extreme HD | 90.6fps | 30.4fps | 175.1fps |
Extreme | 110.3fps | 39.0fps | 186.8fps |
「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」ベンチマーク キャラクター編
こちらは人気国産MMORPG「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」(FFXIV)の公式ベンチマークソフト。「FFXIV」をプレイする前にゲームクライアントが動作するか、性能が十分かを確認することができる。結果はポイントで表示されるが、それとは別に快適度が表示されるため、そちらを指標にして実際のゲーム環境での動作状態を予想することができる。結果は、4K解像度でも最高品質の設定で7,313(非常に快適)と出た。これは評価としては最高のものであり、4K解像度でも快適にプレイすることができることがわかる。
テスト項目(最高品質) | 数値 |
---|---|
4K(3,840×2,160ドット) | 7,313(非常に快適) |
フルHD(1,920×1,080ドット) | 19,780(非常に快適) |
「バトルフィールド4」
最大64人の大人数でプレイできるオンライン対戦が人気のFPSタイトル。シナリオモードも作り込まれており、筆者も楽しんでプレイさせてもらったタイトルだ。テストはキャンペーンの再プレイでTASHGARを開始。主人公たちが車で移動しているシーンでフレームレートを計測した。フレームレートの計測には、Frapsというソフトを使用している。「バトルフィールド」には描画負荷をプリセットで変更できる機能があるため、そのうちの最高、高、中の3つを計測した。結果は4Kの最高設定でも60.867fpsと、アクション性の高いゲームであっても快適にプレイできる数値が出ている。
最高 | 高 | 中 | |
---|---|---|---|
4K(3,840×2,160ドット) | 60.867 | 85.283 | 105.73 |
フルHD(1,920×1,080ドット) | 117.733 | - | - |
CrystalDiskMark 3.03
CrystalDiskMarkはストレージの性能を見るためのベンチマークソフトだ。本製品に搭載されているストレージはHDDだが、実際にベンチマークを行なうとReadやWriteで200MB/s近い結果が出た。SSDの速度が500MB/s程度であるため、半分以下の性能だが、一昔前のHDDと比較すると相当な性能アップだ。HDDよりもSSDの方がゲームの読み込み時間などが早く終わるのは間違いないだろうが、これほどの性能であれば致命的とは言えないだろう。また、前述のようにゲーム中の動作にHDDの性能が影響することはほとんどない。気になるのならBTOでSSDを追加したり、増設したりするとよいだろう。
実力は折り紙付き。現状最高のゲーム環境を手に入れられる
ベンチマークの結果は読者の目からみてどうだっただろうか。筆者としては、1枚のビデオカードでこれだけの性能を出せることに少々驚いている。実際に4Kモニタを利用してゲームを動かしてみたが、メーカーの言う1枚のビデオカードで4K解像度のゲームをプレイできるという事を証明もできたと言ってよいだろう。
「i640PA5-SP2」であれば、自作PCと違って保証もついてくる。何かわからないことがあればサポートに連絡を取ることもできるだろう。BTOでカスタマイズすればさらに高性能な構成にグレードアップすることも可能だ。
今回紹介した構成での直販価格は279,800円、税込みで302,184円だ。安くない買い物とはいえ、これだけの性能を持ったPCがこの価格で手に入る。現状最高のゲーム環境を手に入れたいのだったら間違いなくその価値のある1台だ。