ゲーミングPCレビュー
MASTERPIECE a1500BA1
CPU・GPUの発熱を効率よく処理する意外な内部設計
(2013/8/9 10:00)
CPU・GPUの発熱を効率よく処理する意外な内部設計
次は実際に使ってみた感触やPC内部の様子を見ていきたい。本体はアルミ製PCケースのメーカーとして知られるアビーと共同開発した、G-Tune MASTERPIECE シリーズ専用シャシー。素材はやはりアルミで、背面のみスチール。ミドルタワー型としては比較的大きめながら重量はそれほどでもない。
デザインは曲面が少ない、ほぼ直方体の無駄のないスタイル。作りが丁寧で、サイドパネルなど分離するパーツごとの隙間もなく、アルミだからといってたわみもしない剛性の高さが感じられる。この辺りの作りが荒いとケースの一部がかすかにガタつき、内部から発せられる振動によるビビリ(共振)で不快な音を発したりする。本機はファンがかなり強力に回っているはずだが、ケースから来る不快な音は感じられない。
さてその騒音だが、本体内部から発せられる音はさすがに小さいとは言えず、起動直後からファンが風を送る音がはっきりと聞こえる。ただ音質は低い送風音が主で、甲高い風切り音のようなものではないので、あまり耳障りには感じない。TDP220WのCPUとハイエンドのデュアルGPUを搭載するだけに相当な騒音を覚悟していたのだが、既存のハイエンドゲーミングPCの枠を超えるほどの轟音ではなく、むしろ「この程度で済むのか」と感じた。
そして面白いのが、ベンチマーク中などの高負荷時の騒音。自動ファンコントロールで騒音が一気に強まると思っていたが、ほんのかすかに高めのファン回転音が混じるだけで、ほとんど変化が感じられなかった。ビデオカードには3つのファンが搭載されているが、これらの騒音が比較的小さく抑えられているのだろう。CPUの冷却に関しては、水冷ユニットを搭載していることで、高負荷時でもあまり差が出ないのだと思われる。
排熱については、かなり面白い設計になっている。CPU用の水冷ユニットであるCooler Master Seidon 120XLは、ラジエーターを2つのファンで挟み込んだような製品で、一般的にはケース内の背面に取り付けて使う。しかし本機では、前部の中央辺りに取り付けて、前面の吸気ファンになる形にしている。CPUの排熱をわざわざケースに戻すようにも見えるが、おそらく冷たい外気をラジエーターに当てることで、CPUの冷却を最優先にした配置だと思われる。
吸気ファンはこれ以外に前面下部に1つ。排気ファンは背面に1つと電源の内部ファンとなる。CPUクーラーからの排気はまっすぐケースの後ろまで抜ける形で、その途中にビデオカードの排気が重なる。その一方は電源から抜けるが、もう一方は背面上部に取り付けられた内部ファンで、強制的に上部へと引っ張り上げられる。これでCPUとGPUの排熱を、背面の上下から排出する空気の流れを作っている。パーツの配置や配線は、空気の流れを強く意識しており、実に洗練されている。
本機で注目されるのは、否応なくCPUとGPUだと思われるが、実際に使ってみるとそれ以外の部分の優秀さが見えてくる。洗練された排熱周りは、個人が自作で実現するのは相当難しいはず。騒音が思ったより小さく感じられたのも、内部を見れば納得できる。449,800円の値段に相応の満足感が得られる……かどうかは人それぞれだが、ただハイスペックなだけではない、これでこそハイエンドという完成度の高さが感じられる、見事な仕上がりのゲーミングPCだ。