★ PS3/Xbox 360ゲームレビュー★
シェパードの戦い、ついに大団円!
プレーヤーの決断が、銀河の歴史を変えていく
「 マスエフェクト 3」
ジャンル:
  • SFシューティングRPG
発売元:
  • エレクトロニック・アーツ
開発元:
  • BioWare
プラットフォーム:
  • PS3
  • Xbox 360
価格:
7,665円
発売日:
2012年3月15日
プレイ人数:
1人(オンライン4人)
レーティング:
CERO:D(17歳以上対象)

 銀河を舞台にした壮大なSFドラマが、ついにフィナーレを迎える。「マスエフェクト 3」は、BioWareの開発するSFRPGで、プレーヤーは主人公シェパードとなり、宇宙船を駆り銀河をかけめぐる。今作では地球は機械生命体リーパーによって壊滅されるというショッキングなシーンからスタートする。リーパーは今や全銀河を覆いつくさんとしている。この脅威にシェパードは、人類は、そして全銀河の生命体はどう立ち向かうのか?

 「マスエフェクト 3」はこれまで張り巡らされた伏線を回収し、そして壮大なクライマックスに繋げていくシリーズ最終章だ。アクション性が苦手な人も、ストーリーより戦闘を楽しみたい人にも対応したゲームモードも搭載し、より間口が広い作品となっている。さらにシリーズ初となるマルチプレイモードも搭載。SFRPGの決定版とも言える作品である。本稿では、「マスエフェクト 3」の魅力を紹介したい。


■ 壊滅する地球、力を合わせられない人々。銀河の未来は1人の男に委ねられた

主人公シェパード。彼の警告にもかかわらず、銀河は危機にさらされる
壊滅する地球。シェパードは地球と銀河全体を救うため、脱出する
サーベラスのリーダー、イルーシブマン。彼は何を企んでいるのか

 地球人類は、プロセアンと呼ばれる異星人の文明の遺物である「マスリレイ」の発見により、大きな変革を迎える。マスリレイは銀河を繋ぐゲートだった。このゲートを通じて人類は他の異星人と接触、遙か昔にマスリレイや、宇宙ステーションのシタデルを利用し、交流を行なっていた銀河統治組織「評議会」に加盟することができた。

 主人公シェパードは人類で初めて評議会のエージェント「スペクター」に任命され、様々な事件を解決していく中で、仲間を得て、異星人達の歴史を目にしていく。そしてこの宇宙はある周期で機械種族「リーパー」が、文明を滅ぼしているのを知る。前作「マスエフェクト2」で、シェパードはその証拠をつかむのだが、彼の警告は聞き入れられなかった。そしてついにリーパーの侵攻が始まる。準備をしていなかった地球は、彼らの攻撃に為す術もなかった。

 シェパードの目の前で、地球の大都市がリーパーの軍勢に蹂躙されていく。シェパードは上官のアンダーソンに促され、地球からの脱出を決意する。しかし、脱出の寸前、アンダーソンは言う「自分はここに残り、同胞を支援する」。こうしてシェパードはアンダーソンに地球を託し、自らは異星人達の支援を得るため、彼の船「ノルマンディー SR-2」で宇宙に旅立っていくのだった。

 この後、シェパードは評議会のあるシタデルに向かうが、シタデルはリーパーなど知らないというように、各種族が“政治の駆け引き”に明け暮れていた。リーパーとの戦闘すら、自分たちの種族を有利にする材料にしようとしていたのだ。シェパードは銀河を巡り各種族のもめ事に対処しなくてはならなくなる。シェパードは銀河の人々を戦いに向けて団結させられるのか? 地球を救うことはできるのだろうか?

 プレーヤーはシェパードとして銀河を巡り、さまざまな事件や戦争に介入していく。要人の救出や、異星人の歴史的問題、侵略を進めるリーパーへの対処から、暗躍する犯罪組織との交渉など、様々な難問がシェパードを待っている。さらに「サーベラス」という不気味な存在がある。

 サーベラスは人類の幸福のみを考え、他の異星人を排斥しようとする組織だ。「マスエフェクト2」でシェパードは彼らに助けられたことがきっかけとなり、しばらく協力していたが、関係を断ち切っている。今回、サーベラスの不気味な目的の一端が明らかになる。サーベラスはリーパーの力を何らかの形で利用しようとしているのだ。今作で大きな鍵を握る組織だ。

 魅力的な仲間も「マスエフェクト 3」の特徴だ。特にこれまで2作をプレイした人には彼らの変わらないところと、シェパードとの“絆”によって変わった部分に深い思いを抱くだろう。筆者もいろいろ彼らとの冒険を思い出した。「マスエフェクト 3」は「マスエフェクト2」のセーブデータがあれば、前作の結果を引き継ぐことができる。データを引き継ぐことで、思い入れはさらに深くなるだろう。

 もちろん本作がシリーズ初挑戦というプレーヤーにとって、キャラクター達との出会いは驚きの連続だろう。彼らとの会話でどんなことがあったかは推測できるし、「ジャーナル」を読むことで各異星人達の複雑な歴史の一端も学べる。本作で興味を持ち、これまでの作品を振り返ってみるのも楽しいだろう。

 ゲームシステムとしては、よりわかりやすく、戦いやすくなった。TPS感覚でバリバリ戦っていけるが、ちょっとクエストによってアクションの難易度が高いと感じる部分もある。これまでもそういった声が多かったのか、「マスエフェクト 3」では通常の「RPGモード」に加え、戦闘が簡単になっていて話の選択などに集中できる「ストーリー」と、反対に会話の選択肢が少なくTPS感覚で戦いが楽しめる「アクション」という2つのモードが加わった。自分の好みに合わせて新モードを選ぶのもいいだろう。

 さらに1度クリアしても、パワーアップを引き継いで進められるモードまで用意されており、より手軽に1度目とは違った選択肢を選んでのプレイも可能になっている。今作だけ何度も繰り返しで楽しむことも楽しそうだ。プレーヤーはストーリーを進めながら同盟軍を募っていくのだが、善人プレイだけでなく、悪人プレイも楽しめるのが本作の面白いところだ。

 1度目は前向きに楽しみ、2度目はあえて絶望的な状況に突き進むというのもありかもしれない。選択肢は無数にあり、ゲームの「幅」を楽しむのも良いだろう。特に今作は、シェパードは重すぎる決断を重ねていくことになる。「全く違う未来」を確かめることができるというのは、まさにゲームだからこその楽しみであるといえるだろう。


リーパーの巨大兵器に蹂躙される地球。上官のアンダーソンは、地球に踏みとどまることを決意する
火星にはリーパーに対抗する兵器の設計図があるという。しかし、サーベラスの襲撃を受けていた。サーベラスは兵士にリーパーの力を与えていた。彼らの真の目的は?
銀河の中心のシタデルは、戦争から遠く離れていた。評議会も危機に対して自分たちの種族を優先し、議論を繰り返すばかりだ
頼りになる仲間達。アサリ族のリアラ、地球人のジェームズ、クォリアン族のタリ


■ 仲間と力を合わせ、様々なアビリティで戦い抜け

各キャラクターは様々なアビリティを持っている
アビリティは成長させることで、方向性が変わる。自分なりの戦闘スタイルを追求していこう

 「マスエフェクト 3」では、これまで同様、3人の仲間と共に戦いに挑む。主人公のシェパードは、ショットガンやサブマシンガンなど、いくつもの武器を使いこなす。プレーヤーの選択で、銃器中心の戦闘スタイルから、重力や衝撃波を操る「バイオテック」や、敵の機械を暴走させたりハッキングできる「テック」といった特殊能力のスペシャリスト、または複合クラスにもなれる。

 また今作では“接近戦”の要素が強化されており、テックやバイオテックを使うときに現われる「オムニツール」を武器として使用することも可能となった。今回筆者は「ヴァンガード」というバイオテックと戦闘の複合クラスを選択してみた。全身に衝撃波をまとい、テレポートのように瞬間移動して体当たりをする「バイオテックチャージ」が得意で、接近戦攻撃も衝撃波を放つ強力なものとなる。

 仲間もまた様々な能力を持っている。地球軍兵士の「ジェームズ」はヴァンガードタイプだが、グレネードを使った範囲攻撃のアビリティを持っている。「リアラ」は精神文明が発達したアサリ族でバイオテックが得意。感覚に優れたトゥーリアン種族のギャレスは、スナイパーライフルが得意だ。彼らにもそれぞれアビリティが設定されており、レベルアップで得られるポイントで強化していく。

 アビリティを上げていくことに多くのポイントが必要となる。複数の弱いアビリティを持つか、強力だが少ないアビリティを持つかなど、プレーヤーによっても成長は変わってくる。アビリティはさらに成長させることで、範囲を大きくするか、効果を強めるかなど、特性も選択していく。

 ゲームでは戦闘フィールドに向かうごとにメンバーを選択するが、それぞれの特性を考えて組んでいきたい。例えば、機械生命体の「ゲス」を相手にするときは、彼らと敵対するクォリアン族の「タリ」を連れていくと有利だ。戦闘に向かうときは敵の種類がわかっている場合が多い。戦闘スタイルによって、アーマーを持っている敵に強い仲間、バリアを張る敵に有効なスキルを持ってる仲間、TPOを考えて起用していきたい。

 もちろん、敵との相性が多少合わなくても、ルートを変えたり、距離を取ったり、工夫をすることで、充分戦っていける。筆者の場合、あまり起用しないと、メンバー選択場面で「俺(私)も使ってくれ」と言われている気がして、積極的にパーティメンバーを変えて戦った。戦闘の合間の仲間同士の会話もバリエーションがあり、演出も楽しい。

 今作では序盤からサーベラスの盾を持った敵に手こずった。後ろに回り込むか、盾以外の場所を撃てば良いのだが、リアラの重力場を発生させ敵を宙に浮かせる「シンギュラリティ」を使うと無力化できる。タリの「サボタージュ」は一定時間ゲスを味方にしてしまう。アビリティや武器は「パワーリング」や「武器リング」を呼び出して指示する。慣れてくると瞬時に使いこなせるようになるのが楽しい。

 戦闘では、敵のAIは狡猾でこちらの死角から回り込み、包囲攻撃を仕掛けてくる。物陰に隠れようとしても、思わぬところから攻撃を仕掛けてきたりする。仲間のアビリティや、状況に合わせた武器の切り換えをしていかなくては勝ち残ることは難しいだろう。さらに巨大な戦闘ロボットや、大型リーパーなども登場し、戦いは激しくなっていく。歯ごたえのある戦いを楽しめるだろう。


シェパードもまたキャラクタータイプの選択で大きく戦い方が異なる。ヴァンガードは瞬間移動して体当たりをする「バイオテックチャージ」が使え、格闘攻撃も衝撃波で敵を吹き飛ばすものになる
敵を凍らせる銃弾を放つ「クライオバレット」、敵を宙に持ち上げる「シンギュラリティ」、まとめて敵を攻撃する「フラググレネード」
仲間に指示を出す「パワーリング」。サーベラスのロボット兵器「アトラス」、砲台で戦うシーンも


■ 直径10万光年の銀河を旅する冒険。人々の未来は?

マスリレイを通じて島宇宙を巡る。リーパーに侵略された地域も
「マスエフェクト 2」に登場したミランダとの再会も
対リーパーの戦力を、何処まで集められるだろうか

 シェパードはノルマンディーSR-2を駆り銀河を飛び回る。銀河は宇宙を繋ぐプロセアンの遺跡「マスリレイ」で繋がっており、これらを経由して様々な星系に赴くことができる。「マスエフェクト 3」では銀河の探索は緊張感のあるミニゲームとなっている。シタデルではさまざまな人が必要なものを探している。失われた聖典だったり、遺物だったり、時にはサーベラスの技術だったりもする。

 そして、それらの内いくつかは惑星を探知することで入手できる。ノルマンディーを惑星付近まで持って行き、“サーチ”を行なうことで、反応を探ることができる。反応があった場合は惑星に近付き、衛星軌道上から惑星表面を探知する。こうして反応を特定し、探知機を打ち込むことで、様々なものを入手できる。

 しかし星系マップでのサーチはリーパーに察知されてしまう可能性がある。サーチを行なうとリーパーの警戒メーターが上昇、いっぱいになるとリーパーの宇宙船が現われる。リーパーの船に捕まってしまうと即座にゲームオーバーだ。他星系に繋がる地点か、マスリレイに行かなくては、彼らからは逃れられない。今作での惑星探査はこの緊張感が面白い。

 「マスエフェクト」の銀河には様々な問題がある。凶暴な戦闘種族クローガンは、科学偏重のサラリアンから凶暴性を恐れられ、種族全体の出生率を下げさせられている。タリ達クォリアンは、コンピューターから自我を持つゲスを生み出したのだが、ゲスの反乱により故郷を追われ、巨大船団でさまよう民になっている。小さなところでは犯罪組織の関係や、評議会に選ばれないような種族の問題、非人道的な実験が起こした事件もある。

 いくつかの問題は解決したが、多くの問題は残ったままだった。中には、解決したかと思っていたものが、不意に頭をもたげるようなこともある。「マスエフェクト 3」では、リーパーとの戦いを前に、これらの問題が噴出し、そして大きな変化を待っている。プレーヤーはこれまで以上に大きな問題に取り組み、決断しなくてはならない。

 「ひょっとしたら違う解決方法もあったのではないか」という、苦く重大な決断を繰り返しながら、来るべきリーパーとの戦いに備えなくてはならない。本作の展開は非常に派手で、スケールの大きさは他の作品の追随を許さない。SF作品ならではの、壮大さをたっぷりと味わって欲しい。銀河の命運はプレーヤーの手に委ねられており、歴史はシェパードの決断によって変わっていくのだ。

 1人の主人公と仲間達を3作によって追っていくというRPGシリーズはそう多くない。これだけのボリュームと密度を持ったシリーズが世に出て、完結を迎えられたことをまずは祝いたい。ただ、現在はPS3ユーザー向けにはシリーズ最初の「マスエフェクト」が発売されていない。今後何らかの形で、PS3ユーザーもこのトリロジーを通してプレイできるようになって欲しい。

 「マスエフェクト 3」は優れたSF作品だ。人類がもし宇宙に進出できたら、他種族と出会ったらどうなるか、それは日常から遠く離れた想像を可能にする。そして他種族が抱えている問題もまた、ひょっとしたらこれからの人類が遭遇する問題なのかもしれない。SFは、常に突拍子もない設定を提示するが、そうすることで「人間とは何なのか」を問いかけているのだ。ユニークな異星人と宇宙船、未来兵器という古き良き「スペースオペラ」の要素を踏襲しながら、ただの娯楽作にとどまらない、深いテーマ性も併せ持っているのである。


太陽系マップでサーチ、衛星軌道から探査を行なう。遺物を得ることで戦闘能力をアップグレードできることも
ノルマンディーの船内では仲間やクルーとの交流も。独特のユーモアも面白い
ロボット兵器に乗り込んだり、巨大リーパーと戦うことも
多彩なシチュエーションが用意され、登場人物もも3部作ならではの“厚さ”がある。右は凶暴な種族クローガンだ


■ 4人で協力し、敵を撃退するマルチプレイモード

種族を増やせるかは運任せなところもあるが、人間以外のキャラクターも作れる
“パック”を購入することで様々なアイテムが得られる

 「マスエフェクト 3」の大きな特徴としては「マルチプレイ」がある。ゲームモードは4人で挑戦できる協力プレイで、多彩なマップが用意されている。基本的には敵の波状攻撃をしのぐ、というものだが、「ポイントの機械を起動しろ」、「ターゲットを時間内に倒せ」という目標を提示されることもある。

 マルチプレイのキャラクターは最初はロックされていて人間しか作れないが、様々な特性を持ったキャラクターが作れる。装備の強化や、他種族のキャラクターを作るにはゲーム内マネーで「パック」を購入する。パックには、「リクルート」、「ベテラン」、「スペクター」があり、高価なものほど良いアイテムが出るが、出現はランダム。「引き」がいいと、優秀な武器や、他種族が入手できる。パックには使い切りの強化アイテムもあり、有効に使えば、戦場で活躍もできる。

 サーバーは共通で外国のプレーヤーとも楽しめる。キャラクターは戦いを通じて静養させていける。ずっとマルチばかりやっているのか、かなり育ったキャラクターを使っている人も。このため最初はアシスト的な活躍しかできないが、それでも協力プレイは楽しい。大事なことは、孤立しないこと。敵は強力であり、支援がないとあっという間に倒されてしまう。倒されても一定時間内なら味方に蘇生してもらえる。死んでしまってもウエーブを乗り切れば復活できる。

 マップは複雑に入り組んでおり、敵は複数のルートから侵攻してくる。いかに生き残り、チームに貢献するか。ここでの戦い方が、シングルプレイでも活きてくる。1プレイは20分ほどで、最後はシャトル到着までの防衛戦になる。クリアする達成感と、キャラクターが成長していく感覚が楽しく、つい続けてプレイしてしまう。シングルプレイとは違った魅力をもったモードだ。


マルチプレイは、力を合わせて戦う感覚がとても楽しい。キャラクターを強化して、もっと活躍したくなる

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(2012年 3月 15日)

[Reported by 勝田哲也 ]