★ Xbox 360ゲームレビュー★
ポーズを決めて必殺技を決めろ!
スーパーヒーローになりきれる格闘アクション
「 パワーアップ ヒーローズ」
ジャンル:
  • 格闘/ヒーロー
発売元:
  • 日本マイクロソフト
開発元:
  • Ubisoft
プラットフォーム:
  • Xbox 360
価格:
5,880円
発売日:
2012年1月19日
プレイ人数:
1~4人
レーティング:
CERO:B(12歳以上対象)

 Xbox 360 Kinectに新たな格闘ゲーム「パワーアップ ヒーローズ」が登場した。本作は様々な種類の“スーパースーツ”をまとい、超人的な力を武器に、アメコミヒーローのような超絶バトルを繰り広げるのだ!

 光弾を撃ち、ダッシュで敵に接近、パンチとキックの連打を浴びせ、さらに光の鞭やマイクロブラックホールを出して攻撃……。ヒーローならではの派手な戦い方が魅力だ。「パワーアップ ヒーローズ」では、Kinect によって臨場感溢れる戦いが体験できるのである。


■ アバターキャラがヒーローに! 様々なスーツを使いこなせ

スーパースーツで、アバターキャラクターがヒーローに変身
誰もが真似した必殺技のポーズをすると、両手でエネルギーボールを発射できる
敵を倒し、次々とスーツを入手していく

 地球は、“マリグナンス”という悪の存在に侵略されつつあった。マリグナンスは宇宙船で地球に飛来し、強力な力“エミッター”を使って次々に人類を支配しようとした。このマリグナンスの魔の手から地球を救おうとしたヒーローがいた。彼の名は“ヴォルタ”。しかしヴォルタは敗れ、時間を稼ぐことしかできなかった。ヴォルタが力つきる直前、次なるヒーローを見つけ出す。それがプレーヤーなのだ。プレーヤーはヴォルタから力を引き継ぐと、プレーヤーの体はスーパースーツに包まれる。プレーヤーのパワーを察知したのか、マリグナンスの手下が現われる。プレーヤーは新たなヒーローとして、地球を救うため戦うのだ!

 「パワーアップ ヒーローズ」は、アメコミヒーローのような超能力を駆使して戦いを繰り広げる対戦格闘ゲームだ。スーパースーツは様々な特殊能力を持っており、光弾を発射したり、ダッシュできたり、多彩な必殺技が使える。瀕死のヒーローから力を受け継ぐという非常にベタなオープニングも楽しい。アメコミ映画の「アイアンマン」や「スパイダーマン」のような、超人同士の超絶バトルを楽しめるゲームである。

 「パワーアップ ヒーローズ」はKinect 専用のゲームで、キャラクターへのコマンドは実際に体を動かして行なう。パンチを繰り出せば光弾を撃ち、足を上げれば相手に一瞬で近付きキックを繰り出す。そしてポーズを取ることで発動できるのが、「スーパーアタック」である。腕を高く掲げたり、両手を翼のように広げたり、スーパーアタックに応じたポーズを取ることで技が発動する。「ウルトラマン」の光線技や、「戦隊もの」の変身ポーズのようなポーズを取ることで、画面上でド派手な技が発動するのだ。

 次々と敵を倒していく「キャンペーンモード」では、敵を倒すことで、新たなスーパースーツを獲得できる。最初の戦闘以降には2つのスーツを持って行くことが可能だ。スーツには様々な特性があり、特殊能力を駆使して戦う。敵の力を次々と吸収していくのは、「ロックマン」を思い出させる。また、平成の「仮面ライダー」シリーズでは、状況に合わせて姿を変える“フォームチェンジ”の能力を持つヒーローも多数いて、スーツチェンジはそれを思い起こさせる。ゲームファンに加え、特撮ファンにもアピールできる魅力を持つ作品だ。

 面白いのは、登場するキャラクターがXbox 360のアバターに対応しているところ。自分のアバターがヒーローになりきっているのは独特の面白さがある。このアバターはヘルメットを“オン”にすれば隠すこともできるが、アバターの顔が出ている方が、絵としても楽しいし、自分が戦っている感じがしてより感情移入できること請け合いだ。

 「Kinectで格闘ゲームを!」というアイディアはKinectを触ったユーザーならば誰もが思うことだが、意外にもKinect専用格闘ゲームはまだ少ない。本作はこのテーマに果敢に挑んだ作品だ。本作を海外で展開するUbisoftは「ファイターズアンケージ」も発売している。「ファイターズアンケージ」が拳やキックでやりとりする、リアルな感触のゲームだったのに対し、本作は光弾や、光線、さらには必殺技で爆弾やゾンビまで出てくる、派手なSFバトルがセールスポイントだ。特撮作品や、漫画の「ドラゴンボール」のような戦いを、Kinectで体験できるのである。


オープニング。ヴォルタから得た力で、マリグナンスの手下となった人間達と戦いを繰り広げて行く
スーパースーツは様々な能力を持っている。倒すことでその力を吸収し、自分の力にできる
必殺技のスーパーアタックは、スーパースーツの個性を活かした派手なものだ


■ 光線技に格闘、ド派手なスーパーアタックで強力な連続技“チェイン”を決めろ

格闘戦。光ったところで攻撃すると威力が増す
スーパーアタックの中には、技を当てると敵に隙を生み出すものも。チェインのチャンスだ
スーツを代え、さらにチェイン技を当て、チェインを繋げていく

 バトルの詳細を説明していこう。本作での戦いは常に1対1で行なわれ、敵との距離によって、離れて向き合い光線技やスーパーアタックで戦う「通常」と、ダッシュで近づくことでパンチやキックが届く「接近戦」の2つが用意されている。

 通常の距離から、膝を曲げて前に突き出すキック動作をすることで、キャラクターが敵に向かってダッシュし、接近戦に移行する。この時、接近したプレーヤーは“オフェンス側”となり、一定時間一方的にパンチやキックを繰り出して敵を連続攻撃できる。攻撃の際に体の一部が赤く光ることがあり、光った部位で攻撃を繰り出すとより強力な攻撃ができる。攻撃が終わると「FINISH」の表示が出て、いち早く入力をした側が大きく相手をはじき飛ばし、通常の距離に戻る。

 反対に敵に接近された場合は、“ディフェンス側”となる。この時は、画面に表示される防御ポーズで敵の攻撃を防ぐ。「FINISH」により通常の距離に戻り、仕切り直しとなる。接近戦への対応策としては、敵がダッシュで近付いてきた時、ディフェンス側は素速くキックを出せば、カウンターで相手にダメージを与えられる。また、体を傾ける“ドッジ”を使って、接近戦を回避することも可能だ。

 お互いが離れている「通常」距離では、光弾や必殺技の攻防となる。パンチの動作をすると、“ショット”という光弾を放つ。この光弾の威力は低いが、相手の技を妨害するのに有効だ。この光弾は敵のダッシュにかき消されてしまうので注意が必要だ。

 そして、本作の目玉である「スーパーアタック」は、この通常の距離の時に出せる。1つのスーツには3種類のスーパーアタックが用意されていて、専用のポーズを取ることで発動できる。ヴォルタの「エレキウイップ」は右手を天井に着き出すと光の帯が天空にのび、振り下ろすことで相手を打ち据える。「エナジーボール」はおなじみの“波動拳”や“かめはめ波”のポーズで両手の中にエネルギーを溜め、突き出して放つ。「サンダーアタック」は両手を上に掲げ、地面に向かって下ろすことで雷を地上に落下させる。

 マグマの力を操るスーツ「スコーチ」は拳を突き上げ、地面を叩くことで、衝撃波を前方に向けて発射する「ラバウェーブ」を放つことができる。両手を大きく広げることで敵の攻撃から身を守る「ファイアシールド」を展開できる。「ボルケーノロック」はジャンプすることで地中から燃える岩を呼びだし、パンチで発射するド派手な技だ。「カオス」は宇宙の力を使うというスーパースーツだ。「ブラックホール」で敵の動きを止め、「メテオシャワー」で隕石をぶつける。発動まで時間がかかるが、指定した場所に天空から攻撃を加える「サテライトレイ」は強力だ。

 これらスーパーアタックの中には、「チェイン」と呼ばれる連続技が狙える技もある。ブラックホールやラバウェーブ、エレキウイップ等は、当てることで一定時間敵を無防備にでき、ここに追い打ちができる。ここにスーツを切り替える「スーツチェンジ」を使い、もう1度チェイン発生技を繰り出すことで「スーパーチェイン」になる。さらにそこに技を重ねることができれば、「ウルトラチェイン」となる。チェインで気をつけたいのは、スーパーアタックはクールタイムがあり、1度使うと再使用に時間がかかることだ。せっかく技が当てられたのに、他の技が準備中で追い打ちができない、という事態は避けたいところだ。

 スーパーアタックは準備に時間がかかるため、技を見てからドッジで避けても充分間に合う。敵のスーパーアタックをかわしたときが、当てるチャンスだ。技の範囲や発動タイミングを覚えれば、より効果的に当てられる。大技は決まらないことも多いが、「パワーアップ ヒーローズ」の最大の楽しさである。なんと言っても“ポーズ”をとって技が発動するのが楽しい。漫画や特撮ヒーロー、格闘ゲームのキャラクターの技を真似をしたことは誰でもあるだろう。本作ではそれらのポーズで本当に技が出るのである。ある意味“夢”を実現したゲームといえるだろう。


遠距離でパンチすると、光弾を発射する。キックで格闘戦を挑む。右はディフェンス時の操作だ
ヴォルタの「エレキウイップ」と、「エナジーボール」。右は敵の攻撃をかわす「ドッジ」
スコーチの「ラバウェーブ」、「ボルケーノロック」、「ファイアシールド」


■ 多彩なスーパースーツが登場。画面分割の対戦も可能、もちろん通信対戦も

死者をまとわりつかせるネクロの「スカルアーミー」
スコーチXの「ブローファイア」。Xがつく敵は技がより強力になる
スースセイヤーの「イーグル」
オフラインでは、最大4人でのトーナメントも可能

 「パワーアップ ヒーローズ」では様々なスーツが登場する。「シャドウ」は日本+中国のオリエンタルなスーツ。頭を抱えるようなポーズで発動する「気」は、しばらくチャージすると敵が行動不能になる。「刀」は居合いのように刀を抜く構えて、抜く動作で相手を斬る。「蛇鎖」は敵に向かって延ばすと捕らえることができ、引き寄せて攻撃する技だ。

 「スーツセイヤー」はネイティブアメリカンの呪術師のイメージ。「ネクロ」は死者を操る不気味なスーツだし、「バイオニック」はミサイルやガトリングを使う、現代兵器の化身のような能力を持っている。バイオニックの武器は「アイアンマン」を思い起こさせる。忍者のようなシャドウとバイオニックが筆者のお気に入りだ。また、スーツセイヤーの敵を爪で切り刻むスーパーアタック「タイガークロウ」は、使用した後は「X-MEN」のウルヴァリンのように両手から爪が生え、近接攻撃がアップするところもニヤリとさせられる。

 キャンペーンではさらに、ステータスやスーパーアタックが異なる「シャドウX」や「バイオニックX」といった名前の後ろにXがついたスーツも登場する。この他戦いを繰り返すことでレベルアップし、パワーアップを得ることもできる。敵は強くなり、プレーヤーはよりうまい技の繋がりや有効な戦い方を学んでいかなくては、勝つことは難しくなるだろう。

 さらに本作は、プレーヤー同士の対戦も可能である。友人を招いてのオフラインでの画面分割の戦いに加え、Xbox LIVEでの通信対戦にも対応している。Xbox LIVEではランクマッチで世界中の人と順位が競える。しかしネット対戦は、日本での発売前のためか、何度か対戦を検索したが、対戦相手が見つけられなかった。発売後にまた挑戦したい。

 一方、オフラインでの画面分割の対戦は、友人に協力してもらって、体験することができた。敵の技をどうつぶすか。隙があればスーパーアタックを準備し、時には攻撃にカウンターを合わせる。技の出が早いスーツや、当たり判定の広さなど戦い方もわかってくる。何より画面に向かって技を当てようと四苦八苦するのが楽しい。駆け引きはやり込むとさらに高度になると感じた。オフラインでの対戦はさらに、最大4人まで参加できる「トーナメント」も可能だ。友人を家に呼んだとき、盛り上がれるだろう。

 「パワーアップ ヒーローズ」は、アクションにかなり試行錯誤が感じられる。基本技は左右のパンチか、膝を上げてのキックのみで、大きな動きは必要ないし、スーパーアタックも技の入力がうまくいかずにやきもきすると言うこともない。慣れてくればさらに素速く技を繰り出すこともでき、より思い通りの戦いが展開できるようになる。1回戦うと心地良い疲労感があるのがリアルで楽しい。さらに対戦では技の読み合いもあり、より集中してプレイするので、かなりエネルギーを消費する。Kinectのゲームならではの楽しさを満喫できる作品だ。

 欲を言えば、シンプル過ぎるゲーム展開と、キャラクター性の弱さという点が気になった。このシステムに感情移入しやすい“原作”がつき、キャラクターゲームとしての側面もあれば、もっとゲームにのめり込めたと思う。また、ヒーロー(スーパースーツ)ごとのキャンペーンが用意され、ストーリーが展開すればさらに楽しさは広がったのではないだろうか。技の攻防がシンプルな部分は、対戦では楽しいが、キャンペーンでは単調さも感じる。接近戦で必殺技が狙えるスーパースーツや、遠距離攻撃に特化したスーパースーツなど、戦いのやりとりももっとメリハリがあれば、より臨場感のあるゲームになったと思う。

 とはいえ、本作が提示する「Kinectでの格闘」は大きな魅力がある。何より、ポーズを取ると派手な技が発動するのが、とても楽しい。ヒーローへの憧れは“男の子”なら誰でも持っているだろう。年齢制限がついているのは少し残念だが、多くの人に魅力を感じさせるゲームである。友人との対戦は盛り上がること請け合いだ。そして本作が提示した操作性とゲーム性が、今後さらに発展して欲しいと思う。


ヴォルタの「サンダーアタック」、カオスの「ブラックホール」、バイオニックの「ガトリングガン」
バイオニックの「エアストライク」、シャドウの「刀」と、「蛇鎖」
対戦メニュー。通信対戦の他、画面分割の2人対戦も
Kinectの前に2人並んで対戦。技の読み合いになり、かなりエキサイティングだ

Amazonで購入

(2012年 1月 18日)

[Reported by 勝田哲也 ]