★ PSPゲームレビュー★
サッカークラブの全権監督となり、国内外のあらゆるチームで指揮がとれる
「サカつく」シリーズ史上初の新趣向を実現
「J.LEAGUE プロサッカークラブをつくろう!7 EURO PLUS」
ジャンル:
  • スポーツ育成シミュレーション
発売元:
開発元:
プラットフォーム:
  • PSP
価格:
6279 円
発売日:
2011年8月4日
プレイ人数:
1~2人
レーティング:
CERO:A(全年齢対象)

 第1作目の登場から今年で15周年を迎えたスポーツ育成シミュレーションの定番、「サカつく」シリーズの最新作「J.LEAGUE プロサッカークラブをつくろう!7 EURO PLUS」(以下、「サカつく7」)。本作はプレーヤーがサッカークラブの全権監督となって就任したクラブで指揮を執り、リーグ優勝などの「公約」を達成するなどして自身の名声を高めたり能力をアップさせ、最強監督の育成を目指すという内容になっている。

 なお、筆者は本レビュー記事を作成するにあたり、監督エディットの初期設定時に自分の名前をつけ、前職は「ゲームクリエーター」、顔や髪形はデフォルトのままに設定し、さらにボーナスポイントを振り分けることで習得できる監督能力を「多彩な実践練習」、「多彩な攻撃練習」、「FWの潜在能力を見抜く」の3種類のスキルを選択。クラブはオリジナルクラブ(架空のチーム)を選んでJ2リーグからゲームを開始して、通算5シーズンをプレイした時点で執筆している。よって、6シーズン目以降のストーリー展開などについては触れることができていないことをあらかじめご了承いただきたい。

 また、本作をプレイするにあたっては、タイトル画面から選べる「データインストール」のメニューをあらかじめ必ず実行しておくことをお勧めする。本作はゲーム中にメニューを切り替えるなどするごとにデータを読み込むので、インストールすることでロード時間が大幅に短縮できるのはありがたい。1度インストールを済ませてしまえば、以後は試合中のムービー再生時などごく一部の場面でしかロード時間が発生しなくなるので、十分な空き容量があるメモリースティックDUOを必ず用意してからプレイしよう。



■ 「公約」の達成度でプレーヤーの評価が決まり、クラブと同時に監督自身を育てられるのが本作のミソ

 初回プレイ時はプレーヤーの分身となる監督データを作成するところからまずはスタート。名前や顔のデザインなどの個人データを入力したら、歴代の「サカつく」シリーズと同様に、指揮を執りたいチームをオリジナルクラブまたは実在のJリーグか欧州6カ国の下位ランクのクラブ中から選択する。以下、ユニフォームなどのデザインおよびチーム名(オリジナルまたは海外クラブを選択した場合)を決めたら本編の開始となる。

 本作はターン制でゲームが進行する。各月ごとに1カ月を4週間、さらに1週間を前・後半の2期に分けた期間を1ターンとし、1カ月間に8ターンを消化していく。各ターンごとに「練習」、「人事」などのどのメニューを実行するかはプレーヤーが任意に決めることが可能で、やりたいメニューの実施をすべて終えたら「日程進行」を選ぶと次のターンに進む。

 新シーズン(1月)が始まったら、まずはスポンサーと契約を結んで収入を確保し、プレーヤーの補佐役となるコーチおよびスカウトと契約を締結する。その後、本シリーズを何度もプレイしている人にはおなじみの同一リーグ内の1チームの中からライバルチームを選択する。2シーズン目以降は、契約切れとなったコーチ、スカウトおよび選手との契約交渉をまとめて行なうだけでなく、他のクラブから監督就任のオファーがあった場合には新たなクラブに移って指揮を執ることも可能となる。実在の人物に例えれば、現レアル・マドリードのモウリーニョ監督のように小さなクラブからスタートして、己の実力で世界ナンバーワンとも言われる評価を勝ち取ってメガクラブの指揮官の座を射止める、といった楽しみ方ができるというわけだ。

今作も例年のシリーズ作品と同様に監督の顔やユニフォーム、エンブレムなどのデザインを自由に設定可能。スポンサーやコーチとの契約もプレーヤーに課せられた重要な仕事だ

 さらに本作では、毎年初めに「プロモーションプラン」を決定する。手持ちの予算を超えない範囲で、「財源確保プラン」、「地域新興プラン」、「サポーター獲得プラン」、「信頼獲得プラン」、「オールマイティプラン」のいずれか選ぶと1年の間に実施できるプロモーションの数が割り当てられ、スケジュール表から実施したい時期を選んで「チラシの配布」や「選手サイン会」などのプロモーションを実行できるようになる。プロモーションや試合の成果によって試合の入場料収入が増えるだけでなく、コアサポーターを獲得すると試合中の声援で味方のモチベーションを上げたり、ブーイングを飛ばして相手のモチベーションを低下させる効果が発生するのも「サカつく7」ならではの大きな特徴だ。

プロモーションの種類は実施時期に適したものを営業部がアドバイスしてくれるので、プレーヤー実施の有無だけを決めればいいのでとても簡単。コアサポーターを増やせば、より試合を有利に戦える

 そして本作のキモとなるのが、シーズン開幕前に必ず監督としての「公約」を決めなくてはいけないこと。「公約」はシーズン終了後の達成状況によって監督の名声値が人気がアップし、名声が高くなると強豪クラブから監督就任のオファーが届くようになる。「公約」には解雇条件も同時に付記され、もし運営に失敗してこの条件を満たすと監督自身が解雇され、他のクラブへ移籍しなければいけなくなるという仕組みだ(解雇されてもゲームオーバーとはならない)。

 筆者が最初にプレイしたケースでは、1年目の「公約」はシーズンはJ2リーグで9位以内、解雇条件はナシという内容でスタート。2年目以降は複数の種類から「公約」を自由に選べるようになり、リーグ戦の総得点60点以上や選手を新規獲得するなどのノルマや、1シーズンで赤字を出したりサポーター数を減少させたら解雇などといった条件が提示されるようになった。

 また、達成状況はサッカー評論家としてテレビや専門誌でもおなじみのセルジオ越後氏が登場してプレーヤーに対して本物と同様に辛口の口調で評価をしてくれる。PSP版で登場した前作「サカつく6」のオシム元日本代表監督に説教されるのと同様、サッカーファンにとっては実に嬉しい演出だ。

シーズン終了後には、サッカーファンにはおなじみのセルジオ越後氏がプレーヤーの達成状況を本物さながらに激辛口調で採点してくれるのが楽しい

 最初のシーズンが始まったら、「監督」メニュー内にある各種操作およびメニューの利用法を実際に試しながらマスターしていくチュートリアル機能を兼ねた「ミッション」を毎ターン実行していくのが基本となる。「ミッション」には「選手を検索してみよう」、「特別練習してみよう」などのテーマがあり、それぞれ達成するごとに難易度に応じたポイント(経験値)が毎月末にまとめて加算される。また各ミッションをクリアした分とは別に、「ケガ人ゼロ」、「2連勝」などのさまざまな条件を満たすことでも経験値がどんどん獲得できるようになっている。

 経験値を集めたら、同じく「監督」メニュー内にある「経験値配分」を選択後、必要分のポイントを支払うことでさまざまな監督スキルを入手できる。「ミッション」の種類はかなり多く、最初は面食らってしまうかもしれないが、獲得経験値が少ないものは簡単な操作ですぐ達成できるので、ポイントの低い「ミッション」の中から気になるものをどんどん選んで実行していけばいい。1シーズン通して「ミッション」をこまめにクリアしていけば、基本操作やシステムの内容は自然と理解することができるだろう。

 ただし、「ミッション」を実施するうえで注意したいのは、獲得条件を満たしてもその旨をプレーヤーに知らせる演出(秘書が祝福する)が直後には発生せず、達成後さらに「日程進行」を実行してから発生すること。また、達成までに数週間以上かかる「ミッション」については、実施期間中に他の「ミッション」を並行して進めることができず、その間には説明どおりにちゃんと操作できたかどうかを確認する手段が何もないので注意が必要だ。

 また、同じ2週間の実施期間がある「ミッション」でも、選手を鍛えるための「キャンプを張ろう」はキャンプの開始時点で即達成となるのに、「クラブハウス施設を設置しよう」を選ぶと建設開始直後ではなく、2週間後に秘書が「完成しました」と言うまではノルマ達成とはみなされないなど、「ミッション」達成のタイミングに統一感がない。

 例えば基本操作を覚えるだけの「ミッション」については、操作を完了させた時点で達成を知らせる演出が必ず出現するようにしたほうが、特にシリーズ初心者にとってはよりわかりやすかったのではないだろうか。あるいは、「ミッション」を「練習」や「人事」などのテーマごとに分類して、異なるテーマのものであれば同時に並行して実行できるようにしてもよかったように思われる。

ミッションを達成するなど、諸条件を満たすと経験値がもらえる。集めた経験値を使って監督スキルを習得させればどんどん監督が成長するという仕組み



■ 練習メニューの設定と支出計算を大幅に簡略化。シーズン中にゲームオーバーとなるリスクが低くなった

 筆者が今作をひと通りプレイしたうえで、ゲームシステム面において白眉だと思ったのは選手たちの練習メニューの作成方法。過去の「サカつく」シリーズでは、毎ターンごとにプレーヤーが練習メニューを選んで入力するタイプのものが多かったが、本作では監督および契約したコーチのスキルなどによって自動的にメニューが作成されるようになっている。戦術やフォーメーションなどのデータについても、「コーチに任せる」を選べばすべて自動で決めてくれるので、操作の手間をとことんまで省いてくれる。ただし、疲労がたまった選手がいた場合は「臨時休養」を実行して休ませておかないとケガをしたり試合中にファウルをしやすくなるリスクが大幅に高まるので、コンディションの確認はこまめに行なうことが肝要だ。

 「練習」メニューには、特定の選手を最大3名まで選んで、通常よりも効果的な練習をさせられる「特別練習」や、試合で活躍するなどして覚醒ポイントのたまった選手のみが実施できる「覚醒練習」も並行して利用できる。しかも「特別練習」では、特定の選手同士を同時に起用すると通常よりも練習効率が高まる特殊効果が存在することもある。さらに有料の「秘蔵っ子設定」を使用して秘蔵っ子に指名した選手は、実施直後と終了直前に2度発生する面談や「特別練習」などと併用した結果次第で特殊な能力を覚えたり、監督に対する忠誠度のパラメーターをアップさせることも可能だ。

 これらのメニューをうまく利用することで、選手のオフェンスやディフェンスなどの基本パラメーターが上がるのはもちろん、特定の条件を満たすと入手できる「ダイナモ」、「スペース・スナッチャー」、「ムービングFW」といった新たなプレイスタイルや、「大舞台に強い」、「ダービー男」、「ビッグマウス」などのユニークな特殊スキルをたくさん習得することができるようになるので、選手のコンディションに注意しつつどんどん実施してゲームを楽しみたい。

 練習システムにおいて、筆者が唯一気になったのは選手にケガが発生した場合の演出。疲労のたまった選手はアイコン(顔マーク)が冴えない表情に変わるので、リスクの有無はある程度事前に推測できるものの、いざケガ人が発生すると次ターン開始時に秘書からいきなり「先日負傷した○○選手は全治○週間です」と何の前触れもなく言われるため、筆者は初めてこのメッセージを見たときには思わずビックリしてしまった(しかも全治42週間の重傷だった……)。

 試合中にケガが発生した場合は実況やムービーでその経緯がはっきりと確認できるのに、練習中の場合はあまりにも唐突にケガ人発生と言われてしまい、納得感がいまひとつ得られなかった。例えばコーチが「○○選手のコンディションが低下して危険な状態です」とアドバイスしてくれるとか、あるいは秘書のセリフを「コンディションが低下したまま練習を続けさせたのがよくなかったようですね」などと変えたほうがよかったのではないだろうか。

 それから選手アイコンについても、スランプや自信過剰の天狗状態になった選手は固有のデザインに変わってしまうため、通常なら表情を見ればひと目で確認できる疲労のたまり具合が一切わからなくなってしまうのも正直厳しい。しかもオーバーワークをさせた選手には、ケガとは別に選手寿命が縮まる(と、思われる)イベントがたびたび発生するのでなおさらつらい。異常事態が発生したことによるペナルティの要素を盛り込むこと自体はまったく問題ないが、疲労度のチェックだけはいつでもできるようにしてほしかったところだ。

通常の練習メニューは自動的に決まるので、あとはコンディション管理にだけ注意すればいい。お気に入りの選手には「特別練習」「覚醒練習」「秘蔵っ子設定」を実施させればさらに効率よく強化ができる

 クラブの資金繰りに関するシステムについても、「サカつく7」には過去のシリーズとはひと味違う画期的なアイデアが盛り込まれている。本シリーズでは、ゲーム中に運営資金がショートすると即ゲームオーバーになるのが通例だが、本作では途中で資金がゼロになっても、シーズン終了までにマイナスを解消していればゲームオーバーとはならない。つまり、ゲーム開始直後にキャンプや新選手の獲得に多くのお金をつぎ込んでもさほど心配する必要はない。リーグ戦が開幕すると、ホームゲームでのチケット売上やテレビの放映権収入が入ったり、また他のクラブから移籍のオファーがあった選手を売却した場合には移籍金と返還された給料が即入金されるようにもなっているので、シーズン中にゲームオーバーのリスクをほとんど負うことなくプレイできるのは好印象。

 また、選手の年俸は契約時に一括で支払われ、さらに高額年俸および移籍金が発生する選手については、交渉を開始した時点で年末に残金をまとめて支払う分割払い方式に自動的に設定してくれる。以前の「サカつく」シリーズのように、毎月引き落とされる施設の運営費や給料などの諸経費をいちいち計算する必要がないのは遊びやすい。このような計算の手間を極力省いた本作のシステムは、ちょっとした空き時間を利用して遊ぶ携帯型のゲーム機向けにはとても適した設計であり、筆者としても大歓迎だ。

 一方、「プロモーションプラン」を決定するときの費用の支払い方法と運営システムには慣れないうちは注意が必要だ。「プロモーションプラン」は新シーズン開始時に購入するのを忘れたり、資金が足りずに買えなくなった場合、以後1年間すべてのプロモーションが一切実施できない。また、前年中に実施せずに残ったプロモーションのストック分を翌シーズンへ持ち越せない点は覚えておきたい。できれば、最初の数シーズンだけでも、新シーズン開始時点で予算に合わせたプランを自動的に提示してくれるとか、途中からでも一定の金額を支払えばプロモーションが実施できるようなフォローがほしかったところだ。

収入は即座に入金され、必要経費の計算が簡単なのも「サカつく7」ならでは。通常は一括払いだが、移籍金が足りない選手でも分割払いで獲得が可能。ただし、シーズン開始当初に「プロモーションプラン」を実施できる最低限の資金(3千万円以上)を残しておかないと後で大変なことに……

 試合中の画面においては、キックオフ前に「試合を見る」と「結果を見る」の2種類の再生方法のいずれかを選択する。「試合を見る」選択時は、ゴール前でチャンスまたはピンチのシーンになると3DCGで描かれたフィールドに画面が切り替わり、華麗なフェイントや豪快なシュートを繰り出す選手たちの動きを見ることができるようになり、サッカー好きであれば思わず「カッコイイ!」と声をあげてしまうほどのダイジェストシーンが堪能できる。

 一方、「結果を見る」を選ぶとダイジェスト映像を省略して高速再生されるようになるので、プレイ時間を短縮したいときにはとても便利だ(ただし、試合中に一切指示を出せなくなる)。ゲームを初めたばかりのうちは試合中に選手交代や戦術変更などの指示を自由に出せる「試合を見る」を、チームがある程度強化され、相手より明らかに実力が上だと判断できた場合は「結果を見る」を選ぶといいだろう。

試合中はときどき再生される3DCGで描かれた選手たちの動きが実にカッコイイ。時間を短縮したい場合は、試合開始時に「結果を見る」を選べばあっという間に試合が終わる

■ 本作の面白さのキモは、人対人のコミュニケーションにあり

 本作をプレイして筆者が最も面白いと率直に思ったのは、監督の能力成長と並行して随時行なうことができる選手とのコミュニケーション関連のシステム全般。

 シーズン中はソリが合わない選手同士が衝突して不満が爆発したり、あるいは天狗状態になって練習を勝手に休んだり、スランプになって本来の実力を発揮できなくなる選手などがひんぱんに発生する。そんなときは「面談」を実行して選手を呼び出し、適切なメッセージを複数の選択肢の中から選ぶことで解決できる。さらに監督スキルの「威厳がある」を習得したり、「秘蔵っ子」システムなどを利用して「キャプテンシー」の特殊スキルを覚えた選手を用意しておけば、「面談」以外にも臨時イベントが発生することで問題をより迅速に処理できるようになったりもする。

 ちなみに筆者は、3年目のシーズン中に仲のいい選手同士のグループがまっぷたつに分かれてしまい、事態の収拾にかなりの時間を強いられるというケースに遭遇した。この間、選手同士の連携がまったく向上しないというなんとも酷い目に遭ってしまったが、解決する方策をあれこれ試行錯誤すること自体はとても面白かった。

 選手の移籍および契約交渉においては、契約年数や移籍金・年俸を相手の選手やスカウトの言い値のまま決めずに、わざと低い条件を提示してから交渉を開始するのがとにかく面白い。1回の交渉につき条件提示できるチャンスは3回あり、その間に「交渉ゲージ」を満タンにできれば晴れて交渉成立となるが、たとえ満額を提示しなくても選択肢の中から適切なメッセージを選んで相手を説得することでもゲージが上昇するので、いかに値切らせて契約を成立させるかにチャレンジすることで駆け引きの面白さを味わえるだろう。

 選手の獲得交渉とは逆に、他のクラブから所属選手の引き抜きのオファーが来ることもある。選手獲得の打診は1年目からひんぱんに発生するので、成長のピークを過ぎて衰えたり、連携がなかなか向上せずに活躍しない選手をなるべく高い値段で売却して資金獲得を狙うのもひとつの楽しみ方だ。

「面談」や契約交渉におけるコミュニケーションや駆け引きの場面が楽しい。選手のコンディションが悪化すると試合の勝敗にもかなり大きく影響するので、けっしておろそかにしてはいけない

 個々の選手ごとに、能力値とは別に設定されている監督に対する忠誠度は「面談」で呼び出すなどして気にかけてあげることで上昇させることが可能。特に忠誠度の高い選手は、プレーヤーが他のクラブに移った際にいっしょについて行きたいと言い出し、次のシーズン開始から2カ月以内に旧クラブに移籍のオファーを出せば比較的簡単に交渉を成立させることができる。手塩にかけて育てた文字どおりの「秘蔵っ子」とともに、世界各地のクラブを渡り歩くというストーリーを思い描きながら楽しめるのも本作ならではの醍醐味だ。

 ただし注意しておきたいのは、せっかく育てても契約最終年のシーズン終盤になるとフリー移籍扱いとなり、最悪の場合は移籍金ゼロで他のクラブに引き抜かれてしまう場合があること。お気に入りの選手は、あらかじめ忠誠度を上げたりシーズン中に「契約延長」コマンドを実行して何としてでも契約更新を成立させておくことが必要だ。

忠誠度の高い選手が新天地について来るので、慣れない新クラブに移っても勝手知ったる相棒がいっしょにいれば実に頼もしい。契約最終年の選手は、シーズン終盤にフリー移籍扱いなると引き抜かれる恐れがあるので注意しよう

■ まとめ:ゲーム全体の難易度など、プレイしたうえで見えたもの

 最後に本記事のまとめとして、5シーズン分プレイしたうえでのゲーム全般の難易度について述べていくことにしよう。

 まず試合に勝てるかどうかについては、リーグやカップ戦などのレギュレーションを問わず、過去に筆者がプレイしたどのシリーズ作品と比べても1番苦労したというのが率直な印象だ。旧作では3、4年目でJ2リーグで優勝し、J1に昇格できた経験を筆者はこれまでに何度も経験しているが、今回は1年目がJ2で10勝24敗8分で22チーム中18位。それでも2年目開始時には、J2の5チームから監督契約のオファーがあり、中には公約ノルマにJ2優勝を掲げるクラブもあった。ここでは移籍せずに同じクラブとの契約更新したところ、2年目のリーグ戦は16勝10分16敗で13位。さらに3年目も同じクラブで、3位以内でのJ1リーグ昇格を「公約」に掲げて戦ったが、積極的な選手補強も実らず14勝14分14敗で15位に沈んでしまった……。

 4年目には格上となるJ1のFC東京から就任オファーがあったので、元のオリジナルクラブへの未練および愛着を残しつつもこれを受託。「公約」は7月に開催されるチャレンジカップという大会での優勝としたが、日本代表クラスや有力外国人の助っ人が所属していたにもかかわらず、最もレベルの低いカップ戦で延長PKの末に1回戦で無念の敗退。J1リーグでも思うような成績を上げられずに13勝11分11敗で10位となり、さらに年末恒例のニューイヤーカップでも準決勝のPK戦で惜敗して、またもセルジオ御大にカミナリを落とされる始末(苦笑)。単に筆者がヘタだった面ももちろん否定できないが、今作は所属クラブに関係なく、そう簡単に高い勝率をコンスタントにあげられないよう調整されているようだ。よって格上の相手には守備を固めてカウンターや引き分けを狙ったり、休養をこまめにとって選手のコンディションを高い状態に常に保つなど、いつにも増して臨機応変な戦い方が要求されることになるのは間違いないだろう。

 また「公約」については、その内容によって★マークで5段階の達成難易度がついている。1年目のシーズンに自動で課せられる、「J2で9位以内に入る」の難易度は5段階評価の3なので平均的という評価ではあるが、実は前述したカップ戦で優勝するという「公約」も同じく3の評価である。後からわかったことではあるが、4シーズン目でも達成できなかった「公約」と同じ難易度を最初に設定してあるのはちょっと難易度的に高いかな? と感じられる。プレーヤーにより大きな成功体験を味わってもらうためにも、初年度は難易度最低の「公約」を用意するべきだったのではないだろうか。

 シーズン中の資金ショートのリスクは少ないとはいえ、選手補強に使える予算はもちろん無限大ではなく、交渉で失敗ばかりを繰り返していてはいつまで経っても戦力が増えない。しかし、幸いにも本作では自分のクラブのユースに優秀な若手選手が高確率でやって来るように調整されているようなので、人材確保についての難易度バランスはうまく取れているという印象だ。

 1クラブのオーナーではなく、全権監督として世界各地のクラブを指揮して回れるのが魅力の「サカつく7」。筆者がこれまでに経験した歴代のシリーズの中でも試合に勝つことの難しさを最も実感したとはいえ、試合に勝ってタイトルを狙うだけでなく、プレーヤーの分身である監督を強化しつつお気に入りの「秘蔵っ子」を育てるなど、試合中の戦術策定ではなく人を育てることにより大きなウェイトを置いたことで、本作は今までのシリーズ作品にはない新しい楽しみ方を提供することに成功している。昨今のサッカーゲームはジャンルやプラットフォームを問わず、必要以上に戦術やフォーメーションに固執したマニアックなものが散見されることに違和感を覚えていた筆者にとっては、本作の示したより「人」にフォーカスした方向性はとても新鮮に思え、素直に楽しむことができた。

 独創的な新システムがいろいろ導入されていながらも、シリーズ作品を何度も遊んだ経験のある人であれば、今作もマニュアルを読まなくてもすぐに楽しめるだろう。反対に初心者にとっては一部の仕様がややわかりにくい印象を受けたり、また最初の数シーズンは十分な戦力が揃わず、勝率がなかなか上がらないなどの理由から、今作から「サカつく」シリーズを始めようという人は慣れるまでに正直かなりの時間を要するものと思われる。

 末筆にて恐縮だが、15年間も多くのプレーヤーに支持されてきた日本を代表するサッカーゲームの人気シリーズであるからこそ、新しいアイデアに毎回チャレンジするのと同時に、サッカー好きであれば初心者でもよりなじみやすいシステムの構築についても今まで以上にとことんまで追求していただければと思う次第である。


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(2011年 8月 10日)

[Reported by 鴫原盛之 ]