- ジャンル:
- 3Dアクション・シューティング
- 発売元:
- 開発元:
- プラットフォーム:
- PSP
- 価格:
- 6,279円
- 発売日:
- 2011年4月7日
- レーティング:
- CERO:B(12歳以上対象)
地球を守るために巨大生物と戦う……なんと甘美な響きか。「いきなり何言ってんの?」といぶかしがられそうだが、昭和生まれの特撮世代には、そんな属性が幼少期から無意識のうちに刷り込まれている。東映、東宝、円谷など、各社が世に送り出した魅惑の作品群。巨大生物やヒーローたちの力強い動きに、TVや劇場スクリーンの前で胸躍らせる日々。だが、子供たちの憧れは、そうした主役にばかり集中していたわけではない。怪獣を迎撃する自衛隊や防衛組織の面々。圧倒的な存在にヒューマンパワーで立ち向かう姿は、フィクションという枠を超えてブラウン管やスクリーンの向こう側から“弱者を守るために戦うことの尊さ”を教えてくれた。
侵略者から地球を守るための組織。作品により呼称や設定はさまざまだが、子供たちはそれらすべてを網羅する表現として“地球防衛軍”というワードをよく用いた。ごっこ遊びなどでも地球防衛軍は頻繁に登場し「○×隊員!」などとお互いを呼び合って「やぁー!」、「ビビビビビ!(光線音)」、「ガオー!」などとギャーギャー騒ぎまわり、特にアテがなくとも「町内をパトロールだ!」と体力が続く限り公園や路地裏を駆け抜けていく。“ごっこ”なので特別なルールはないが、みんなでシチュエーションを再現/体現することで体内の何かが満たされ、それがもう楽しくて仕方ない。
一般に、こうした遊びの感覚は成長するにつれ希薄になっていくとされるが、残念ながら筆者を含む特撮世代の多くは、体内に蓄え続けた“甘酸っぱい憧憬”が減るどころか肥大化する一方で、満たしてくれる新たなモノを常に追い求める。「モノ」とは、新規作品、DVDやブルーレイで再発される旧作、関連グッズ、特撮をモチーフにしたビデオゲームの数々を指すが、今回ご紹介するPSP「地球防衛軍2 PORTABLE」も、そんな特撮世代を直撃する逸品のひとつだ。
本作は、2005年7月に発売されたプレイステーション 2用ソフト「SIMPLE 2000シリーズ Vol.81 THE 地球防衛軍2」をリメイクしたもので、パッケージやスクリーンショットを見て「アレか!」と思い出された人も少なくないだろう。筆者は2003年6月発売のPS2「SIMPLE2000シリーズ Vol.31 THE 地球防衛軍」以来のファンで、SLGアレンジされた「SIMPLE2000シリーズ Vol.103 THE 地球防衛軍タクティクス」以外のシリーズ作品はひととおりプレイさせていただいており、本作の発売日を心待ちにしていた。シリーズのファンはすでに地球を守るべく日々奮戦しておられるだろうが、初見もしくはまだという人は、本レビューを参考にしていただければ幸いだ。
■ とても気になる操作系 ~PS2の右スティック操作をPSPでどう再現?~
歴戦のEDF隊員たちが1番気になるのは、内容以上に「操作系」だろう。シリーズ初体験の人に説明すると、本シリーズは操作系が「ノーマル」と「テクニカル」に大別されている。ノーマルは対空と対地で攻撃ボタンを使いわけるもので、テクニカルは右アナログスティックで照準を動かし、自分で狙いをつけて攻撃する。この点、意図どおりに狙いをつけられないノーマルは高難易度でほとんど使い物にならず、テクニカルが事実上の基本となっていた。今作は「ノーマル」、「テクニカルA~C」といった4通りの操作方法が用意されている。
アクション | テクニカルA | テクニカルB | テクニカルC | ノーマル |
移動 | アナログパッド | アナログパッド | 方向キー | アナログパッド |
照準 | □○△×ボタン | 方向キー | アナログパッド | - |
射撃 | Rボタン | □ボタン | □ボタン | □ボタン |
ジャンプと飛行 | Lボタン | ×ボタン | ×ボタン | ×ボタン |
ズーム | 方向キー・上と右 | △ボタン | △ボタン | 方向キー・上(下でカメラを水平) |
武器変更 | 方向キー・下と左 | ○ボタン | ○ボタン | ○ボタン |
一覧表でまとめてみたが、若干付け加えると、陸戦兵の緊急回避(左右に移動しつつLボタン)と乗り物の乗降(セレクトボタン)、協力プレイ時に仲間を助ける(セレクトボタン)は、ノーマル、テクニカルA~Cで共通となっている。
ざっくり言えば、本作ではテクニカルの照準を「方向キー」、「アナログパッド」、「右側ボタン4つ」いずれで代替するか、という話なのだ……が、ぶっちゃけてしまうと歴代隊員は「テクニカルA」が1番しっくりくるはずだ。移動と照準が左側に集中するBとCは「敵の熾烈な攻撃を避けつつ撃つ」がデフォルトの本シリーズでは使い勝手が悪い。エアバイクや戦車で距離を稼ぐ戦法を除けば、足を止めて流暢に敵を狙い撃てるような状況はほとんどなく、筆者としてはテクニカルAが万人向けではないかと考える。「ボタンだと照準操作が大雑把になるのでは?」という先入観もあったが、実際プレイしてみると水平および垂直方向に関してはむしろ狙いがつけやすく、ベストではないが決して悪くない。小一時間ほどすると指にも操作が染み込んできて、細かい調整もできるようになってきた。照準スピードは1.00でプレイしているが、このあたりは個人差が大きいので色々試していただきたい。
一応ノーマル操作にも言及しておくと、アナログパッドで移動、□ボタンで射撃、○ボタンで武器変更、△ボタンで空の敵を攻撃、×ボタンでジャンプまたは飛行、LRで左右に平行移動、方向キー上でズーム、下でカメラを水平。最寄の敵を自動的に狙ってくれるのはありがたいが、敵が密集していると射撃のたびに視点がもの凄い勢いで動きまくり、3D酔いしやすい筆者は数分で気分が悪くなってしまった。そんな筆者もテクニカルでは難なくプレイできており、同様の体質の持ち主はノーマルでめげる前にテクニカルA~Cに切り替えてみてはいかがだろうか。オプションのカメラ演出と画面振動をOFFにしておくと、よりプレイが安定するはずだ。
ノーマルは自分で狙いがつけられないため、難易度が低いうちはいいが先々かなり厳しくなる。個人的には、同じテクニカルでも移動と照準が左に集中するBとCよりは、左右でわかれているAのほうがプレイしやすい。照準スピードはお好みに合わせて要調整 |
■ 過酷なミッション ~まずは最低難易度から地道にコツコツ~
出撃前、プレーヤーは操作キャラと兵装をメインメニュー「装備」で決めておく。「陸戦兵」は重火器の扱いに優れた戦闘のエキスパートという設定で、元々のヒットポイントが高く兵装もバランスのいいものが揃っている。無敵時間がある特殊動作「緊急回避」は、陸戦兵しか使えない強力なアドバンテージ。「特殊部隊ペイルウイング」は、特殊な光学兵器と飛行ユニットを装備した精鋭部隊。画面右側のエネルギーゲージを消費して攻撃および特殊動作の「飛行」が行なえる。ヒットポイントは初期値・伸び率ともに陸戦兵より低く、飛行で有利なポジションをキープしつつ兵装の利点を前面に押し立てていく戦い方になる。
兵装は、陸戦兵とペイルウイングともにふたつを戦場に持ち込める。最初はわずかな武器しかないが、ミッション中で敵を倒すと出現する緑色「武器アイテム」を取ると、クリア後のリザルト画面で武器がゲットできる。重複もあるため常に新しい武器を得られるとは限らないが、見つけたら忘れず取っておくといい。防弾チョッキ型アイコンのアイテム「アーマー」は、最大ヒットポイントを増やしてくれる。赤い十字マークつきアイテムは「回復アイテム」で、円筒よりも箱型のほうが回復量が多い。
プレーヤーキャラに関する基本システムは以上のとおりで、リメイクという点を差し引いても昨今のゲームとは思えないほどシンプル。だが、撃って敵を倒すという“基本部分”が極めてよくできており、圧倒的な物量で襲い掛かってくる大量のザコや超巨大メカ、クリーチャーの数々、ダメージで瓦解するオブジェクト、ド派手な爆発や光線エフェクトとの相乗効果で、これ以上ないくらい豪快かつ爽快なプレイが楽しめる。マルチプレイに対応したぶん、オリジナルに比べると各オブジェクトの造形やモブの減少、処理落ちする場面がやや目立つ印象もあるが、基本的なプレイ感覚はほとんど損なわれていない。この点に関しては、おおいに讃えるべきだろう。
ゲームはミッションクリア型。前述のとおり陸戦兵もしくはペイルウイングを操作して、ミッションごとに出現する巨大生物などの侵略者と戦う。巨大な昆虫、怪獣、未確認飛行物体、歩行兵器を相手に、いち隊員の視点で戦闘任務にあたる。ベタではあるが、過去のビデオゲームではほとんど見られなかったシチュエーションがきちんと提示されており、特撮が好きでアクションシューティングをたしなむ人であれば「たまらん!」の一言だ。
各ミッションは、敵を全滅させる、目標撃破、時間の経過など一定の条件を満たすとクリアとなり、新たなミッションが選択できるようになる。繰り返しになるが、ミッション中は倒した敵が落とす武器アイテムとアーマーは必ず拾っておくこと。初期兵装やヒットポイントでは強敵に太刀打ちできず、アイテム類は面倒でもコツコツ拾っておかないと先々苦戦を強いられることになる。キャラクターの成長は陸戦兵とペイルウイングでそれぞれ独立しているため、不慣れなうちはどちらか一方に集中したほうがいいだろう。
「アイテムでパワーアップってことは、とにかく育てて最強キャラを作れば誰でもクリアできる?」とナメてかかる人もいそうだが、本シリーズはそんな生易しいゲームではない。アイテムを稼ぎやすいミッションはあるが、そこでひたすら伸ばしたところで“基本”が身についていない隊員は単なるカカシでしかない。まず陸戦兵とペイルウイングで基本戦術がまったく異なるし、兵装によっても大きく変化する。効率的な運用方法を実践で身に付けないと、力押ししようにも限度がある。
難易度を上げないと高レベルの武器アイテムが出現しない点も、重要なポイントのひとつ。ミッションも後半になるとステップアップ風に強い武器アイテムの出現確率が高くなるが、ハード以下では「それなり」のものしか手に入らない。難易度イージーで後半ミッションを何度もクリアしたところで、出現する武器アイテムのクオリティはたかが知れている。入手には運が大きくからんでくるので、その時々で「ちょっときついかな」という難易度を目安に、稼ぎやすいステージを繰り返しプレイするのが完全クリアへの第1歩だ。
B級特撮作品のノリで、さまざまクリーチャーが出現。難易度が低いうちは力押しもきくが、上げるたびにアプローチを変えていかないと先々えらい目に遭うことは必至。武器アイテムとアーマーをコツコツ集めながら、自分なりの戦い方を身につけていこう |
■ ついに実現したオンラインマルチプレイ! ~かなり重めだが4人のEDF隊員による共闘は圧巻~
本作はリメイクにつき新ステージや新武器などがいくつか追加されているが、最大最強の目玉はなんといっても「最大4人までのマルチプレイ」への対応だろう。初代「地球防衛軍」をプレイしたとき「あぁ……これオンラインで不特定多数と一緒にプレイできたら最高だろうなぁ……」と何度も妄想したものだが、4人とはいえ遂に実現した。プレイステーション 3のアドホックパーティにも対応しており、当然ボイスチャットも可能。全世界の隊員たちと一緒に戦える、まさしく夢のような環境だ。
実は、初報で「4人同時プレイ」を目にしたとき「ウソでしょ?」とにわかには信じられなかった。というのも、本シリーズは基本部分からオンラインプレイに向いていない。相応の広さのマップは、ビルなどのオブジェクトがほぼすべて破壊可能。雲霞のごときザコの群れに、画面を覆いつくすほどの攻撃エフェクト。オフラインでも処理落ちが普通なのに、現行システムのままで実装は無謀じゃないのか? とさえ思った。
通常、こうした無理がある(ありすぎる)システムをオンラインプレイに発展対応させるとき、いくつかの選択肢がある。たとえば、オンラインプレイ専用マップを用意したり、破壊できるオブジェクトを減らす、もしくは破壊できなくする、ザコの数を減らす、エフェクトを軽くするなどの妥協案が考えられるが、これらのアプローチは本シリーズの魅力が大きく損なわれるか、下手をすればアイデンティティそのものが根底から覆されてしまう。新規層なら耐えられるかもしれないが、少なくとも筆者や歴代隊員たちは悲嘆に暮れるはずだ。
では開発元は、どういう結論を導き出したのか。世に出てきたものは、オンライン、オフラインともにまったく同じミッションがプレイできるという驚愕の代物だった。アプローチは極めてシンプルで「無理なものは無理」とばかり、オフラインに比べるとかなり重めの処理で、フレームレートも低い。敵の数など負荷のかかり方で動的に変化はするが、体感レベルだと平均フレームレートは15以下。4人でド派手な武器を延々と連射するストレステストみたいな真似をすると、通信エラーが発生することもある。
正直、シリーズ初というユーザーが4人マルチプレイを体験したなら「ちょっと重いよねぇ、厳しくない?」と難色を示すかもしれない。だが、歴代隊員としては、声を大にして言いたい。本シリーズのテイストを保ったままオンラインマルチプレイを実現しているということは「魚に足をつけて陸上トラックを走らせるのと同じくらい凄いこと」だと。インフェルノの蜘蛛の攻撃力は相変わらずぶっ壊れレベルのままだが、それを含めて「『地球防衛軍』シリーズのことを1番よくわかっているのは、やはり開発元なんだなぁ」と痛感させられる。理想をいえば最低限の処理落ちで遊べるのが1番だが、まずは“地球防衛軍シリーズらしさ”を損なわないレベルでオンラインプレイを実現していることを評価したい。
オンラインマルチプレイの魅力は、同じ世界観を共有しながら4人一緒に遊べるだけではない。シングルプレイではほとんど出番がなかった「ネタ武器」の数々も、オンラインマルチプレイなら話は別。シリアスな稼ぎプレイの場でもない限りは、激しい戦いの最中における“一服の清涼剤”ともいうべき存在になってくれる。キャーキャーいいながら遊びたいときは最高のオモチャだ。
■ 携帯機向けとしては十二分の内容 ~価格は少々お高い印象?~
なんだかんだで約6年前のタイトルのリメイクということもあり、かつてゲーム内のモブばりにマゾヒスティックな悲鳴をあげつつプレイしていた古参隊員が、どれほど戦場に残っているかは定かではない。だが、アドホックパーティを介したオンラインマルチプレイは、隠遁生活中の元隊員たちを再び戦場に駆り立てるほどの吸引力がある。新規層についても“名作、傑作は色あせない”ということもあり、独特のプレイ感覚は多くの若い隊員たちを魅了し、世界観のなかへと誘っていくはずだ。
だが……さまざまな事情はあるのだろうが、唯一“価格設定”だけは、微妙に釈然としないものを感じる。元々本シリーズは、サンドロット過去作品のシステムをほぼ踏襲してPS2「SIMPLE 2000シリーズ」として世に送り出された。フルプライスの骨格を持っていたこともあり、冒頭で触れた2003年6月発売の「SIMPLE2000シリーズ Vol.31 THE 地球防衛軍」は「2,000円で、このボリュームとクオリティ! なんてお買い得!!」と大絶賛された。かくいう筆者も「コレは凄い!」と1発で気に入ってしまい、ヘタにも関わらず全難易度をクリアするまで延々とプレイ。本作のベースであるPS2「SIMPLE 2000シリーズ Vol.81 THE 地球防衛軍2」も、蜘蛛の壊れっぷりに泣かされてハーデストどまりではあったが、ペイルウイングなどの新要素が殊のほかうれしく、寝食を忘れて楽しませてもらった。
Xbox 360「地球防衛軍3」も、期待感で全身をパンパンに膨らませつつ発売日を指折り数えて待ち続けた。次世代機クオリティの美麗なグラフィックスを前に、シンプルではなくなった価格設定に文句を付ける気持ちにはなれなかった。さて……それを踏まえたうえで、今回のPSP「地球防衛軍2 PORTABLE」である。通常版が5,040円、ダブル入隊パックが6,279円。「3」同様にリメイクだが、システム面などで削られた要素はなし。新ステージ、新武器に加え、決定的な要素としてアドホックパーティ対応の4人マルチプレイがある。要は、ここにどれだけの価値を見出せるか、だ。
これはあくまでも筆者のいち意見にすぎないが、正直「もうちょっと安ければなぁ」というのが本音だ。ダブル入隊パックなら友人知人とわければ1本約3,000円になるが、全ユーザーがそういう形で購入できるわけではない。「じゃぁ4,000円くらいなら納得したの?」と問われれば、それはまた微妙な話なのだが……。
最後に文句がポロリとこぼれてしまったが、全体としては本当によく仕上がっていると思う。今やっても蜘蛛相手にインフェルノで戦いぬける気はしないが、それでも「また挑戦してみようか」というテンションにさせられるのは、本作独特のプレイ感覚がいまだ色あせない圧倒的な魅力を備えているからだ。今回はクリア勲章がオフライン、オンラインと別なので、完全クリアへの道のりはさらに険しくなっているが、携帯機なので出先で合間にコツコツとプレイする手もある。「徹頭徹尾カジュアルに!」という人にはおすすめしづらいが、アクションシューティングが好きで、さらにあなたがB級特撮が大好物なら、本作は“運命の出会い”になりえる1本だ。
http://www.d3p.co.jp/
□サンドロットのホームページ
http://www.sandlot.jp/
□「地球防衛軍2 PORTABLE」のページ
http://game.watch.impress.co.jp/
(2011年 5月 2日)