モバイルゲームレビュー

ついつい熱中する正統派RPG
オリジナル部隊を育てて、一年戦争に挑め

「機動戦士ガンダムU.C.RPG」

  • ジャンル:RPG
  • 配信元:バンダイナムコゲームス
  • 開発元:ジー・モード
  • 利用料金:月額315円
  • プラットフォーム:iモード
  • 対応機種:FOMA 903i/703i以上
  • 発売日:2月1日(配信中)
  • アクセス方法:メニューリスト → ゲーム → ゲームパック → ガンダムゲームモバイル




 株式会社バンダイナムコゲームスの運営する「ガンダムゲームモバイル」では、オンライン対戦ゲームや格闘アクション、シミュレーション、パチスロなど、幅広い「ガンダムゲーム」が配信されている。2月1日からは、モバイルオリジナルのRPG「機動戦士ガンダムU.C.RPG」がラインナップに新たに加わった。

 本作はシリーズ第1作「機動戦士ガンダム」の世界を舞台にした、コマンド選択式のオーソドックスなRPG。ガンダムを題材にしたゲームは数多くあれども、“一年戦争”を真正面から描いたRPGは意外なほど少ない。本作はこれまでにないアプローチのゲーム性を重視したガンダムゲームとなっている。

 ストーリーは「機動戦士ガンダム」をベースにしており、アムロ・レイやシャア・アズナブルなど作中のキャラクターも登場し、ときには彼らがパーティーに参加することもある。“ガンダム好き”にとってはニヤリとできるシーンやセリフも再現され、ファン心理を刺激する要素も備えている。タイトルに含まれている「U.C.」は「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」ではなく宇宙世紀(Universal Century)のこと。一年戦争に関する派生作品も世界に含むことを示唆し、すでに「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」、「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」のキャラクターや機体も登場している。今後も、新規クエストと新しい機体が続々と追加される予定だ。


【スクリーンショット】
アムロやシャアは、専用機体とともに部隊に参加。3月からはプレーヤーも「ガンダム」が製造できるようになっている
クリスやアイナなど、ガンダムヒロインが登場。戦場に華を添える



■ プレーヤーは遊撃部隊となって、さまざまな任務を遂行

 プレーヤーは“一年戦争”と呼ばれる地球連邦軍とジオン軍の戦争に、物語の裏側で活躍する遊撃部隊として関わっていく。どちらの陣営に参加するかはプレーヤーが選択可能。ゲームオリジナルのパイロットキャラクターとモビルスーツなどの機体を組み合わせて部隊を編成し、様々なクエストを遂行するのが目標だ。明確なストーリーは特になく、クエストをこなしていく中で一年戦争が垣間見える構成でゲームは進む。

 クエストとはプレーヤーに与えられる任務のことで、クエストを達成すると機体を改造するために必要なアイテムや資金を得ることができる。これらをうまく運用してより強い機体を手に入れつつ、上位のクエストを攻略していく。部隊を強化するためのマネジメントと、強化アイテムの獲得がゲームの柱となっている。


【スクリーンショット】
“実戦演習”という名目でチュートリアルも用意されている。すぐにシステムは理解できるだろう
自分だけの“最強部隊”を作り上げ、激しい戦いを生き残らなければならない


 実際のゲームプレイでは、マップ上にクエストを受けられる拠点があり、拠点を選択すると受注できるクエストの一覧が表示される。クエスト一覧からはクエストの概要や難易度の目安、クリア条件などを確認でき、その中から受任するクエストを決定。クエストが始まるとフィールドマップへ移行し、上官やオペレーターから状況や目的の説明が行なわれる。

 実例を挙げると、連邦軍サイドの「ミャンマー」で受けられるクエスト「追撃!トリプルドム」では、ジオンの部隊に強襲されるホワイトベース隊を救援するべく出撃し、ボスキャラクターの“黒い三連星”の撃破がクリア目標となる。プレーヤーはフィールドマップ上を移動し、ランダムエンカウントで遭遇する敵部隊を倒しつつ、ボスキャラクターのいる地点へと向かう。ボスを撃破できればクエストが終了し、クリア報酬などを受け取って完了だ。クエストを遂行することで新たなクエストが出現することもある。なおクエストは達成・未達成に関係なく、何度でも挑戦が可能だ。


【スクリーンショット】
クエストにはボスキャラクターが配置されていることが多い。機体性能、パイロット能力ともに高い強敵だジオン側のクエストでは、ガイア、オルテガ、マッシュの“黒い三連星”とともに戦うことにクエストの内容を確認する画面。達成目標と達成時に獲得できるアイテムが表示されている



■ “ハック&スラッシュ”とガンダムの意外(!?)なハーモニー

 敵との戦闘はコマンドを選んで行動を決定する、オーソドックスなターン制のコマンド選択式。毎ターン、パイロットの行動を決定し、敵味方の行動が能力に基づいた順番で処理される。全員の行動が1回ずつ終われば、ターン終了。次のターンに移る。機体に設定されてる「BODY」のヒットポイント(HP)が0になると戦闘不能になり、戦闘に参加した味方全員が戦闘不能になれば敗北、逆に敵全員を戦闘不能にすれば勝利となる。

 相手にダメージを与えるには、機体に装備されている武器の中から1つを選択し、攻撃する敵機体を指定する。攻撃の度に各武器に設定された「EN(エネルギー)」か「弾数」を消費するが、ENと弾数の回復や、戦闘不能になった機体の復活、機体のHP回復は、基本的に「修理」を行なうしかない。修理には資金が必要なので、やみくもに戦ってダメージを受けたり、攻撃で弾を消費したりするのは、直接、資金不足に繋がってくる。特に序盤はクエストで得られる資金も少ないので、効率のいい戦闘を心掛けないと戦力増強に資金を回せなくなるだろう。


【スクリーンショット】
セイバーフィッシュの25mm機関砲は弾数が100あるが、1回の攻撃で5発ずつ消費する機体の性能は常に把握しておくべきだ武器の中には付加効果があるものも。「ザク1」のショルダータックルは、一定の確率で相手の行動をキャンセルする「スタン」の効果を持っている
「ガンダム」は強力な武器を多く持ち、全ての能力値が非常に高い機体だ


 本作の魅力を端的に伝えるならば、“ハック&スラッシュ”+“ガンダム”とでも言うべきだろうか。敵の撃破やクエストの遂行で得た経験値や強力なアイテムでキャラクターを強化し、さらに高難度のクエストに挑戦するプレイスタイルがハック&スラッシュ。物語を追うことよりも、戦闘の楽しさやキャラクターの育成に重点が置かれており、レベル上げやアイテム集めに没入してしまうタイプのゲームという意味でもある。本作は「ガンダム」という素材の持ち味を引き出しながらも、まさにハック&スラッシュ的な、熱中度の高いRPGに仕上げている。繰り返し楽しく遊べるように工夫の施された、パイロット育成、機体改造と製造、戦闘システムは秀逸な出来だ。


【スクリーンショット】
最初は手も足も出なかった相手に勝てるようになると、部隊が強くなったことを実感できるクエストクリアでアイテムや資金を得て、部隊を強化



■ パイロットの育成し、個性を見極めて部隊のメンバーを配置

 連邦軍かジオン軍のどちらかを選択し、新たにゲームを開始すると、デフォルトの4名のパイロットとともに、選んだ勢力に応じた初期機体が与えられる。パイロットには6種類の能力値と「成長TYPE」が設定されており、経験値を得てレベルアップすることで能力値が上昇し、「スキル」を獲得する。成長タイプは「格闘TYPE」、「近距離TYPE」、「遠距離TYPE」、「NEW TYPE」の4種があり、それぞれ得意分野に応じて成長する。なお「NEW TYPE」は晩成型の成長を表わしているようで、原作にあったような“ニュータイプ専用機体”がゲーム内に登場するかは記事執筆時点では不明だ。

 スキルは戦闘を有利に進めるための特殊な能力で、さまざまな種類がある。例えば、戦闘で先制攻撃を行なえるものや、攻撃した相手に状態異常を与えるものなどだ。スキルは獲得したあとにセットすることで初めて効果を得られる。パイロットにどのスキルをセットするかで戦略の幅が大きく広がるので、プレーヤーの腕の見せ所でもある。経験値を獲得するのは、敵を撃破したときのみ。強い敵を倒すほど得られる経験値も多いので、強敵を倒す戦略を練ることが大切になってくる。

 パイロットはデフォルトの4名だけでなく、オリジナルのパイロットも作成が可能で、部隊には最大8名までパイロットを登録できる。「自分だけの部隊」を追求するなら、ゲーム開始直後にオリジナルパイロットを4人作成してしまうのもいいだろう。


【スクリーンショット】
顔グラフィックスと氏名、成長タイプ、能力値を決定してオリジナルのパイロットを作成オリジナルパイロットは能力値も設定できるので、より個性が際立ったキャラクターを作れる
パイロットの能力を表示する画面装備するスキルを選択する画面



■ リソースマネジメント力が問われる機体改造&製造

 ゲームスタート直後、プレーヤーは初期戦力だけでクエストに挑むことになる。クエストは自分で選択できるので、初めのうちは簡単なクエストを攻略すればいいが、より難度の高いクエストを達成するためには戦力増強が欠かせない。そこで必要なのが本作の要となる、機体の「改造」と「製造」だ。改造は所有しているモビルスーツなどの機体をパワーアップさせることで、2通りのやり方がある。1つは「改造アイテム」を使って機体の能力値を上げる方法で、もう1つが「素材アイテム」を集めて、所持している機体を上位の機体に「グレードアップ」する方法だ。

 「HPup」、「運動性up」、「近距離up」などの改造アイテムを消費すると、機体の能力値や武器攻撃力がアップする。改造前よりも確実に機体が強化されるため即効性は高いが、改造できる回数が機体ごとに決まっているため、上限回数以上の強化はできないのが欠点である。

 機体のグレードアップには特定の素材アイテムと資金、そして元になる機体が必要になる。グレードアップすることで機体の能力値は高くなるが、大きく性能が変わってしまう場合もあるので、必ずしも戦力増強になるとは限らない。しかもグレードアップを行なうには、元となる機体をある程度まで改造しておかねばならず、下手なグレードアップは戦力の低下すら招きかねない。


【スクリーンショット】
機体にENupの改造を施す「ジム」を「ジムキャノン」にグレードアップ


 特定の素材アイテムと資金を消費して、新たに機体を開発するのが製造だ。機体の製造はグレードアップと違い、せっかく改造した機体を失わずに戦力を増やせる有効な手段である。ただし製造には「設計図」が必要で、グレードアップによって設計図が入手できるという手順になっている。このために、リスキーな面を持つグレードアップを行なう意味が増してくるのだ。製造のためにはグレードアップが必要で、グレードアップには改造が条件。相互に影響を与える3つの方法をバランスよく組み合わせて部隊の強化を行なわなければ、総合的な戦力の向上にはならない。強い部隊を作り上げるマネジメント力が求められ、プレーヤーの頭を悩ませる。

 改造アイテムや素材アイテムは、クエストでの目標を達成した時や、敵を倒した時などに獲得できる。貴重なアイテムはクエストで入手するしかないため、アイテムを手に入れることがモチベーションになっていく。さらにガンダムファンだと、思い入れのある機体や原作に登場した機体を作りたくなってしまい、機体の製造やグレードアップすること自体がプレイの動機として成り立っているので、のめりこみ感は非常に強い。


【スクリーンショット】
素材アイテムと資金を消費して「ザク1」を製造改造アイテムや素材アイテムの一部は資金で購入することもできる



■ 機体とパイロットの個性を活かした戦術がカギ

 モビルスーツには、一部を除き前述のBODY以外にHEAD、ARMS、LEGSにそれぞれHPが設定されている。BODY以外のHPが0になっても戦闘不能にはならないが、不利な影響を受けてしまう。例えばHEADが0になれば攻撃の命中率が低下し、ジムの場合だとHEAD部に装備されている60mmバルカンが使用できなくなる。

 BODYのHPを0にするのが戦闘を早く終わらせる方法だが、BODYはHPの数値が高いために簡単には破壊できず、相手の攻撃が強力な場合はこちらが先にやられかねない。結果、ARMSなどのメイン武器が装備されている部位を先に破壊し、相手側の攻撃を封じ込める戦術も生まれてくる。相手のモビルスーツを分析・研究して、味方の能力に適した戦術を編み出すのは、シミュレーション的でかなり面白く、原作で知っている知識が活かせるのも心をくすぐってくれる。

 ただし、基本的に攻撃したい部位を狙うことはできない。となれば、戦術など立てようがないと思うかもしれないが、ここで活きてくるのがパイロットの装備したスキルだ。一部のスキルによって攻撃部位を指定できるので、スキルの運用が効率のよい戦闘のためには大きな意味を持ってくる。機体と武器の性能、パイロットのスキルを考慮して部隊を編成するのも、ついつい熱中してしまうポイントだ。

 またスキルの中には、ここぞという時の奥の手「覚醒スキル」が存在する。覚醒スキルは通常のスキルと違い、クエスト中に一定以上の撃破数に達しなければ使用できないが、使いどころを見極めれば効果は絶大だ。また戦闘に参加する機体が特定の組み合わせになると、「合体攻撃」のコマンドが使用可能になる。参加者全員が一斉に強力な攻撃を繰り出せるので、色々と組み合わせを試し、成立するパターンを探すのも楽しみの1つだ。


【スクリーンショット】
スキルは、発動させるための武器系統が決められている。狙い撃ちする「ロックオン」のスキルはバズーカ、狙撃ライフル、キャノン、ミサイル系統の武器でないと使用できない合体攻撃「トリプラー」が発動。マシンガンとバズーカ、格闘攻撃を連続で叩き込む



■ モバイルにマッチした新機軸のガンダムゲーム。何度も繰り返して遊ぶのが楽しい

 筆者が個人的に評価したいのは、プレーヤーの部隊が連邦軍とジオン軍、両陣営を自由に行き来できる点だ。両サイドのストーリーを楽しめるのはもちろん、連邦軍にいながらジオン軍のモビルスーツを使用できるし、その逆も可能だ。機体選びと戦術に幅が出る上、原作ではありえないような“妄想満載”の部隊編成ができるというわけだ。ちなみに筆者の脳内では「鹵獲した『ザク1』を連邦軍が特殊部隊に配備して……」という勝手な妄想ストーリーが生まれている。それは行き過ぎにしても、陣営を問わない機体編成は、まさに“原作の陰で活躍した特殊部隊”という感じを醸し出している。

 本作では、強い機体、新しい機体を手に入れ、部隊の充実を図ることが最大のプレイ動機になっていく。そのためには繰り返しクエストに挑戦することになるのだが、クエストは数分程度で終わるように設計されている。ちょっとした時間に遊べるための工夫であり、短い時間で少しずつ結果が出るので、プレイへの意欲が途切れにくい。短く遊んでも満足感が得られ、目標がはっきりしているのでいつまでも楽しさが持続するのだ。これはモバイルゲームとしては非常に理想的な遊ばせ方であるように思う。モバイルゲームとハック&スラッシュの相性のよさをあらためて認識した。またコマンド選択式RPGなので、片手で楽に操作できるのもポイントが高い。


【スクリーンショット】
勢力選択画面。タイトル画面に戻ればいつでも勢力を変更できるジオン側の初期機体である「ザク1」は、連邦軍の初期機体に比べてかなり強力。「ザク1」を連邦側でも使用するのが序盤攻略のコツ


 現時点では、クエストは“一年戦争”の序盤しか配信されておらず、製造できる機体の種類も少ない。クエストや機体は追加配信される方式なので、これからの展開が楽しみだ。ただし、熱烈なファンの多い“一年戦争”を題材にしているだけに、原作とのデータや設定の相違が気になる人も多いだろう。また機体改造の方法次第で、バランスが破壊するようなシステムの粗さも目立つ。今後はゲームとしての完成度とファンの想いを、バランスよく両立することが課題といえる。

 正直なところ、プレイするまでは“オリジナル部隊で一年戦争に挑む”というシチュエーションに興味はそそられなかったのだが、実際に遊んでみると、あえて原作のストーリーを追うことに重点を置かず、“ゲーム”的な楽しさが優先されていることに気づいた。気軽さと熱中を両立させた正統派のRPGとして、多くの人、特に「ガンダムは好きだけど、ガンダムゲームはちょっと飽きたな」と食傷気味のシリーズファンにはぜひ遊んでいただきたい。


【スクリーンショット】
「コレクション」では、ゲームに登場した機体や使用されたBGMを閲覧できる。BGMはゲームオリジナル以外に、アニメで聞き覚えのある曲も使われている


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(2010年3月29日)

[Reported by 山科明之進 ]