PS3ゲームレビュー

たくさんの仲間と共に戦い抜く!
大人数の魅力と自由な戦術を楽しめる斬新なFPS

「MASSIVE ACTION GAME」

  • ジャンル:アクション・シューティング
  • 発売元:ソニー・コンピュータエンタテインメント
  • 開発元:Zipper Interactive
  • 価格:4,980円
  • プラットフォーム:プレイステーション 3
  • 発売日:1月28日 発売
  • プレイ人数:1人(オンライン専用 1ゲーム64人~256人)
  • CEROレーティング:C(15歳以上対象)


 「最大256人が入り乱れる戦場へ!」。従来のFPSタイトルとはひと味もふた味も違う魅力を持つ「MASSIVE ACTION GAME(以下、『MAG』)」のレビューをお伝えしていこう。昨年にも「MAG」はβテストレポート(前編/後編)をお伝えしたが、それから製品の発売に至るまでのあいだに「MAG」は予想以上に注目を浴びるゲームとなった。

 今回のこのレビューでは、βテストレポートでお伝えした基本やゲームの雰囲気を踏まえつつ、256人による対戦のもようや、「どんなプレイをするとより楽しめるのか」という、一歩先まで踏み込んでみようと思う。「MAG」は、FPSながら、気軽に遊べる要素と、大人数プレイの楽しさがある。その一方、戦術の理解度によってスルメのような味わいも感じさせてくれたタイトルだ。



■ 近未来の世界で繰り広げられるPMCの戦いに参戦!

最大256人という1ゲーム当たりの参加人数がウリの「MAG」。規模だけの大味なゲームではなく、その中身は非常にタクティカルだ

 「MAG」の世界は西暦2025年の現実社会。近未来の世界ではPMC(民間軍事会社)によって戦争が代行されていた。巨額の戦争ビジネスの中、世界的企業として生き残ったのは3社。「株式会社ベイラー」、「S.V.E.R.(セイバー)」、「レーヴン工業」だ。傭兵であるプレーヤーはこの3大PMCのいずれかに参加してシャドー戦争と呼ばれる公にされていない“影”の戦争へと身を投じていく。

 「MAG」は「PlayStation Network」(PSN)を使ったオンライン専用のFPSタイトルだ。ストーリーモードのようなオフラインで1人プレイができるモードは用意されていないのでお気をつけ頂きたい。

 ゲーム自体はとてもシンプルな作りで、FPSの“オンライン対戦ツール”という表現がしっくりくる。メインとなるゲームモードは64人、128人、256人対戦の3種類で、選んだモードのゲームに参加し、経験値を獲得してスキルをアンロックしていく。そしてまた、次のゲームへと参加していく。プレイの流れはこのようになっている。従来のFPSのようなルームを立てて参加したりといった形式ではない。

 キャラクターデータはPSNのアカウント1つに対して、1つ作れる。所属できるPMCは1つに固定され、基本的には途中で所属を変わることができない。他のPMCに所属しているプレーヤーとは敵同士としてしか一緒に遊ぶことはできないので、最初のPMC選びは慎重に行ないたい(ただし、レベル60になると熟練モードになり、移籍できる)。

 各PMCには、外見的な特徴、装備の特徴、ホームマップという違いがある。外見的な特徴は画像を見てもらうとわかるとおりで、ベイラーはスタンダードな兵士風、セイバーは異彩を放つ独特な外見、レーヴンは近未来的な装備に身を包んでいて鎮圧部隊のようなイメージを受ける。

左からセイバー、レーブン工業、株式会社ベイラー。外観や装備、ホームとしているマップに違いがある

 装備の特徴というのはメインウェポンの個別の性能等のことで、種類や数には違いはない。装備は全て現代兵器だ。メインウェポンの種類を列挙すると、

・アサルトライフル
・サブマシンガン
・ショットガン
・マシンガン
・スナイパーライフル
・ハンドガン

 があるが、この種類や内訳の数はどの勢力も同じ。ただし、初期装備のアサルトライフルで言えば、ベイラーはM4A1、セイバーはK-74u、レーヴンはホリス A3といったように、武器そのものの違いがあって、性能や特徴にも違いがある。

3大PMCが3つの地域で戦闘を繰り広げる。1つの地域にゲームモード別で3マップあり、PMC3社分で全9マップとなっている

 メインウェポンについてはどれが強いとか弱いというものではなく、“どう扱うのか”が大事。例えば、ライトマシンガン(軽機関銃)は、弾数が多く掃射に向いていて複数人数相手にも撃ち負けないため強い印象があるが、命中精度はかなり低い。的確に撃ち抜いてくるアサルトライフルには負けるし、初弾の速さや連射ではサブマシンガンに劣る。相手を近づかせない足止め的な使い方が最も向いているだろう。そのほかの武器も自分の動きにあったものを選ぶのが大事だ。

 メインウェポン以外にはサブウェポンやアクセサリもある。重装備のロケットランチャーやグレネード、地雷。回復や修理を行なう救急キット、修理キット。その他、センサーに干渉する機器などがある。サブウェポンやアクセサリについても種類はどのPMCでも同じで、特定のPMCだけの種類というものはない。

 外見や装備の違いもさることながら、もっと重要なのはPMCごとのホームマップが固定されていることだ。勢力別にゲームモードが異なるマップが3種類ずつあって、3勢力分で合計9種類となっている。どのゲームモードでも2勢力が攻撃側と守備側にわかれて戦う事になるが、この攻撃側と守備側は常に固定されている。3カ所のホームマップでは常に守備側で、その他マップの場合では攻撃側になる。

PMC別のホームマップ

 

256人対戦マップ

128人対戦マップ

64人対戦マップ

レーヴン

フロレス湾移管

カラス研究所

ダリエン ネットワーク

セイバー

アブシェロン石油精製所

アラルクム機械工

シルダリヤ アップリンク

ベイラー

アリエスカ ターミナル

エルク湾兵站

コッパー丘



■ 参加人数もプレイも異なる3種類の作戦を戦い抜く!プレイの基本と初歩的な戦術を解説

 ここでは、メインのゲームモードになる“32人対32人の「妨害作戦」”、“64人対64人の「襲撃作戦」”、“128人対128人の「制圧作戦」”について解説していこう。

 「MAG」は1分隊が8人で構成され、プレーヤーはその1人として自動的に配備される。64人対戦のゲームなら4分隊vs4分隊、128人対戦のゲームなら4分隊を1小隊として2小隊、128人対128人なら4小隊で構成される。

 なお、この3種類のゲームモードの他に、操作を学べるチュートリアルの「演習」と、同PMCのメンバーと戦う「鎮圧」というモードもある。いわばチュートリアルとトレーニングのようなモードだ。

・64人対戦の「妨害作戦」

A、Bのポイントを制圧し、その後に出現するCポイントを破壊する「妨害作戦」。画像はBポイントに対し正面から進んでいるところ
Bポイント内部。もう片方のポイントが確保されるまで維持しなければCポイントは開放されない

 妨害作戦は64人が参加するモードだ。攻守それぞれ32人ずつで、8人編成の分隊が4つ展開していく。4人の分隊長が隊を指示することになる。

 マップ中央にあるAとBの2カ所のポイントを守備側は防衛、攻撃側は確保するのが目的だ。攻撃側が2カ所のポイントを確保するとCという3番目のポイントが出現。攻撃側はこのCポイントに爆弾を仕掛けて破壊できれば勝利、守備側は時間がなくなるまで防げば勝利となる。攻撃側の手順を箇条書きにまとめると以下のようになる。

・Aポイント、Bポイントを確保する
・AB両方のポイントを確保するとCポイントが開放される
・Cポイントに爆弾を仕掛けて爆破する

 比較的シンプルで規模も控えめなゲームモードだが、それだけに戦術の成功や失敗がはっきりとわかりやすいモードでもある。まず大きなポイントは、AとBのポイントは攻守双方のスタート地点の、ほぼ中間地点(若干、守備側寄り)にあるということだ。互いの陣営側から距離を縮めていってポイント付近で攻防を行うことになる。そのため正面から展開していくと素直な銃撃戦になっていくのだが、それは膠着状態ができあがるということとイコールになってしまう。

 守備側にとっては膠着状態で時間が過ぎていくのは問題ないが、攻撃側にとっては致命的。そのまま防衛側が左右にも展開して防衛ラインがきっちりできあがっていくと、どんどん崩しづらくなってしまう。さらに酷くなると、防衛ラインを上げられて攻撃側が全く前に進めなくなるという泥沼が待っている。

 こうした膠着状態に持ち込まれないように、常に相手軍を崩すことが攻撃側の狙いになる。これには様々な戦術があるだろう。プレーヤーの数だけ戦術があるというわけだ。戦術を考え、コミュニケーションを取りつつそれを全員で実行するというのは、「MAG」の最大の魅力と言っていい。

 1つ戦術の基本例を挙げると、ポイント地点の左右を進み、相手側の領域へと展開していき、ポイントに相手を近づけさせないように牽制するというやり方がある。ポイント地点を目指して正面からやりあうと単純な数の押し合いになりがちで、マップにもよるが守備側のほうが有利なことが多い。それをポイント地点の左右に展開することで打開する。

横から大きく回り込み、ポイントに入る前の相手を撃っているところ。これを左右からやると、相手はポイントに入れないので楽にポイントを維持できる。もちろんこの戦術の次はポイント左右スペースの奪い合いが始まる

 意識としては、“ポイント地点に相手を近づけない、入らせない”というような考え方になる。左右に展開して横から相手を撃っていれば、相手側はおいそれと前(ポイント地点)へ進めなくなるというわけだ。これにはピンポイントな攻撃を得意とするスナイパーも有効で、自陣地の奥から正面を伺っているスナイパーは戦術的にはあまり役に立たない(ポイント地点にたどり着いている敵を対象にスナイプしても大きな効果にはならない、ヘッドショット以外はすぐに蘇生されてしまう)のだが、ポイント地点よりも奥へ進んで側面から相手をスナイプし足止めするスナイパーはとても効果的だ。その間に他の味方が中央を楽に進んでポイント地点を確保できる。

 これは戦術の基本例だが、“相手が警戒しなければならない方向を増やす”というのは重要なこと。A、Bのポイントについては奪い合うのではなくて、相手をA、Bポイントから遠ざけるゲームだと思ってもらえば、いろいろと他にも戦術が湧いてくるだろう。

 Cポイントの攻防についてはまた少し事情が変わってくる。互いの分隊が1カ所に集中する総力戦なだけにパワーゲームな面が強くなり、それがクライマックス感たっぷりなのがいい。ポイントとしては、攻撃側はCポイントへの侵入ルートを多く使うこと(方向を増やして注意を分散させる)、突入のタイミングをあわせる(しっかりと防衛されているところを散漫に攻めても崩しづらい)、防衛側は侵入口に入る前をできるかぎり叩く(中に入られてからは混戦のパワーゲームになりがちなのでそれを防ぐ)、などがポイントになるだろうか。攻撃側の勝利は突破力とタイミング、そこから開いた突破口から押し込んでいく波状攻撃が鍵を握っている。

画像左はちょっとわかりづらいが、相手がポイント地点の横から斜め前へと射撃しているところ。ポイント地点の前でクロスするように撃っていれば、ポイントに近づきづらいというわけだ。画像中央と右はCポイントが開放された場面。A、Bの2カ所に分散していた互いの戦力がCポイント1カ所に集中する


・128人対戦の「襲撃作戦」

128人で争う「襲撃作戦」。施設の数が一気に増える。APC等の乗り物もあって、その活用はとても重要になってくる
 128人で争う「襲撃作戦」は、「妨害作戦」と比べると一気に要素が増えて、「MAG」らしさを体感できるゲームになっている。それでいて256人対戦の「制圧作戦」よりは控えめの規模というモードだ。攻守それぞれ64人ずつが参加、64人のうちわけは8人の分隊が8個となっていて、1分隊の隊長である分隊長が8人、その上に4分隊ずつを束ねる小隊長が2人いる。

 「襲撃作戦」の目的は、攻撃側は“試作型車両を奪うこと”、守備側はそれを阻止することだ。試作型車両を奪うというのは、守備側陣地の最奥にある試作型車両に乗り込んで、攻撃側陣地まで戻るということで、そこにたどり着くまでの道を切り開くことであり、車両が通る道を確保するということでもある。

 攻撃側のおおまかな流れとしては以下のようになる。

・バンカーを破壊して守備側の再復活ポイントを遠ざける
・対空砲を破壊してヘリや輸送機からの再復活を可能にする
・レーダーや迫撃砲、車両置き場等を破壊して守備側の戦力を低下させる
・バリケードや門を破壊して車両が通れるようにする
・目標である試作型車両を手に入れて、回収ポイントへと運ぶ

 このようにステップを進めるように目的を達成するというゲームになっている。

前方の銃座がある建物がバンカー。守備側の再復活ポイントだ。手前の車両がAPCで、攻撃側の再復活ポイントになる。移動できる再復活ポイントという重要な要素だ。この画像の状態はAPCがこんなに前へ出てはすぐに破壊されてしまう。あまり良くない動きだ
バリケードや門を破壊してAPCが先へ進んでしまえば、そこから仲間が再復活して一気に各施設の破壊を狙える
APCをはじめ仲間の脅威を取り除くためにも、バンカーの銃座を破壊しよう

 攻撃側の最初の難関はバンカーとの戦いだ。バンカーとは簡易の基地のことで、強力な銃座も設置されている。バンカーは守備側の再復活ポイントになっているので、これを破壊しないとその奥にはなかなか進めない。バンカーの近くには門やバリケードがたいがいあって、それも破壊しないと車両が通れない。特殊車両を奪って戻ってくるには、こうした門やバリケードの破壊も必須だ。

 だが、門やバリケードを一時的に破壊したとしても、バンカーから出撃した敵がそれを修理してしまう。要するに、バンカーという再復活ポイントを潰さないことには話が始まらないのだ。バンカーを破壊されると守備側の再復活ポイントはマップのずっと奥、特殊車両のあるあたりになる。

 バンカーを壊すには、バンカーに接近して爆弾を仕掛けないといけない。だが、簡単には近づけない。そこで大きなポイントになるのが、APCの存在だ。APCは攻撃側の分隊のいくつかに割り当てられていて、スタート地点から発進する。APC自体が通常の攻撃をほとんど受け付けない強力な乗り物であるとともに、攻撃側の動く再復活ポイントになっているのが重要なポイントだ。バンカーの近くに隣接すれば破壊も容易になる。だが、そのAPCはバンカーの銃座の攻撃やロケットランチャー等によって破壊されてしまう。あまり前に出しすぎるのは得策ではない。

 APCをバンカーに接近させやすくする意味でも、分隊が近づきやすくなる意味でも、バンカーの銃座を破壊することがまず重要なポイントになる。銃座はロケットランチャーやグレネード、銃撃でも破壊できる。銃座が破壊されればAPCの分隊が近づきやすくなり、あとは一気に押し込むようにすれば、バンカーも破壊できる。

 逆に守備側は、バンカー自体を守るとともに、銃座を修理キットで修理することも大きな役目になる。128人対戦の襲撃作戦も256人対戦の制圧作戦でも守備側に同じことが言えるが、修理の役割は非常に重要で、活躍の場も多い。

 「MAG」のゲームモードを一言で表現すると、“壊し、壊され”という駆け引きがポイントとなる。撃ち合いによる“殺り、殺られる”という要素はもちろんだが、それよりも重要なのが“壊し、壊され”だ。おおまかな流れを見てもわかるように、特殊車両を奪うための障壁になる様々な施設の破壊がどの段階でも重要になっている。攻撃側はあの手この手で壊し、守備側は直して耐える。この攻防だ。守備側のほうが基本的には後手にまわるパターンが多いので、守備側の戦力がだんだんと削られていくというイメージだろうか。守備側はいかに耐えきるかがポイントになってくる。

 バンカー周辺での最前線の攻防が終わると、一気に攻撃側の分隊がマップ全体へと進んでいく。一方の守備側は試作型車両近くの再復活ポイントからになり、各種施設周りでの攻防を交えつつ、試作型車両が格納されているあたりのエリアに戦力が集中していく。ここからの戦略の広がりは様々、というか状況に応じて臨機応変に、柔軟に素早く対応できるかがポイントになる。そこも「MAG」の魅力の1つといえるだろう。

 ここまで襲撃作戦の基本的な流れやポイントをまとめてみたが、これはあくまで基本形。最初にバンカーをスルーして、こっそりと対空砲を狙ってみるのもいい。対空砲はバンカーの向こうにあるので、守備側にすぐに修理されてしまう可能性は高いが、そのぶんバンカーが手薄になって破壊しやすくなるかもしれない。対空砲だけと言わず、もっと先のバリケードやレーダー施設、迫撃砲などをそーっと壊してまわるのもいい。

 ただし、そうした行動が必ずいい結果に繋がるというわけでもないのが「MAG」の面白いところ。最初のバンカーを越えられず、進展のないままゲームが終了するときもある。「MAG」は遊ぶ材料を用意しているゲームだが、それをどう使っていくのかはプレーヤー次第。そこがわかってきてうまく遊べるようになってくると、さらに「MAG」が面白くなってくるはずだ。

APC同様に重要なのが対空砲の存在。対空砲を破壊すれば航空部隊からのパラシュート降下やヘリコプターからの前線再復活が可能になる。つまり再復活ポイントをガラッと変える要素なわけだ。攻撃側は対空砲を破壊すること、守備側は守り、壊されたときにはできる限り修理するのが重要になる


・256人対戦の「制圧作戦」

256人という最大規模で戦う「制圧作戦」。マップの端から始まっていき、最終局面ともなれば画像のように中央に全戦力が集中する。激しいゲームだ

 「MAG」の最大の魅力である“256人”という大人数の戦いが楽しめるのが、この「制圧作戦」だ。制圧作戦では、攻守が128人ずつ、8人の分隊が16隊という大所帯での戦いになる。分隊を指示する分隊長16人に加え、4分隊で1小隊として指示する小隊長が4人、さらにその小隊長をまとめる司令官が1人参加する。

 制圧作戦の目的は、巨大な拠点を制圧しダメージを与えて破壊することだ。攻撃側のおおまかな流れは以下のようになる。守備側は以下の流れを阻止する。

・「燃焼塔」を確保する
・バンカーを破壊して守備側の再復活位置を下げる
・対空砲を破壊してパラシュート降下による再復活をできるようにする
・「冷却塔」を確保する
・ポンプ制御室(アルファベットで表示されるポイント)を制圧してダメージを蓄積する
・ダメージが最大になると施設の破壊完了、勝利となる

 施設を破壊して進行ルートを確保していくという点は128人対戦の「襲撃作戦」に近いところがあるが、より複雑で長大な戦いが繰り広げられる。参加人数は2倍となり、戦場の規模、臨場感、激しさは2倍以上のものがある。段階的に目標が開放されるのが特徴で、燃焼塔を確保すれば冷却塔が、冷却塔を確保すればポンプ制御室が出現する。これをショートカットすることはできない。

 ゲームは東西南北の4隅から始まる。攻撃側は中央へ向けて東西南北でそれぞれ1小隊(4分隊)が展開、守備側は各燃焼塔近くにあるバンカーからのスタートとなる。バンカー周辺で燃焼塔とバンカーを攻撃、守備する攻防が展開される。バンカーと燃焼塔の位置関係はマップによって違いがあるので、どちらを先にすべきというようなことは言えない。

画像の中央にある塔が「燃焼塔」。これを確保し、同じ外観の「冷却塔」を確保すれば、最終ポイントの「ポンプ制御室」が開放される

 ただ、何度か書いているようにバンカーは守備側の再復活ポイントなので、バンカーが健在な限り、燃焼塔をはじめとした周辺施設の確保や破壊は難しい。バンカーを破壊すれば、守備側の再復活ポイントはマップ中央のポンプ制御室近くになるので、まずはそれを狙っていくことになる。

 燃焼塔を確保すると、マップの少し奥のあたりに冷却塔が出現する。攻撃側はこれを確保しつつ、対空砲を破壊してパラシュート降下やヘリコプターからの前線再復活を可能にすることがセオリーになる。もちろん、バンカーの合間をくぐり抜けて先に対空砲を狙ってしまうというのもありだ。そうして守備側を揺さぶり、手薄になったバンカーを狙うというのも効果的。

 冷却塔を確保すれば、いよいよ最終目的であるポンプ制御室が出現する。ポンプ制御室はA~Hまでのアルファベットで表示されるポイントで、ここを攻撃側が確保するとメーターにダメージが溜っていく。確保しているポンプ制御室の数が多いほどダメージの蓄積は早く、守備側が確保してもダメージは回復しない。

 このポンプ制御室の攻防は壮絶なものだ。ポンプ制御室はマップ中央付近に東西南北で2カ所ずつ設置されている。ほとんど隣り合わせぐらいの距離だ。そこに四方から進行してきた攻撃側の分隊が押し寄せる。一方の守備側はマップ中央から全部隊が出撃していく。ポンプ制御室へと入るための門が次々に爆破され、それを守備側の工兵が次々に直していく。大人数対大人数のパワーゲームであるとともに、協力して攻める、守るという感覚も非常に高い。

戦力が集中する「ポンプ制御室」の戦いは熾烈。画像は制御室の門を必死に直している工兵と、その彼らを必死で守るの図。100回壊されたら200回直してやれ!というテンションだ

 ポンプ制御室の門に爆弾が設置され破壊される。修理キットを持ったプレーヤーが駆け寄り、修理を開始する。それをさせまいと攻撃側のプレーヤーが工兵を狙う。修理中で丸腰の工兵を守ろうと、他のプレーヤーが前へと進む。工兵を守ろうと戦う兵士を近くから回復してサポートする衛生兵もいる。工兵はその姿を横目に「ありがたい」と感じているだろう。みんな1つの目的のために共に戦っている。協力しあっているという感覚がものすごく感じられる場面だ。

 中央でこうした激戦が繰り広げられるなか、こっそりとマップの端へ進んでバンカーや対空砲を修理するという攻防もチラホラと行なわれる。直してしまえば攻撃側の再復活ポイントがマップの端に戻り、大きく立て直せるわけだ(対空砲だけ直してもすぐにまた壊されるだけなので、それを守るためのバンカーもセットだ)。だが、それを見越して修理をさせまいと巡回しているプレーヤーもいる。

 攻撃側の隊長による航空支援の爆撃が降り注いで地面が揺れる。次々と破壊される門。ポンプ制御室が確保されてダメージが溜っていく。激しい銃撃や爆発がとめどもなく繰り返される。この激しさ、大人数が展開しているワラワラ感、共に協力しあっているという感覚は、強いカタルシスを呼び起こす。特に、残りの制限時間とダメージの蓄積がギリギリで接戦になっているときはものすごい。自分にとれる最善の行動は何かを瞬間的に判断して時間が終わるそのときまで戦い抜く。


画面の上部にある“ダメージ”と書かれたゲージが、ポンプ制御室を確保することで溜っていくダメージ。これが時間内に最大になれば攻撃側の勝利、防げば守備側の勝利だ。戦術がうまくハマらないと最初のバンカー周辺すら突破できないときもある。戦術の理解と意思の疎通が重要だ



■ 戦術の基礎を身につけたら次は隊長となって仲間を引っ張っていこう!

隊長は分隊の目標地点を設定できる。隊員にとって重要な行動の指針であり、隊長の指示次第でパフォーマンスは大きく変わってくる
戦術支援を使えるのも隊長だけ。画像は爆撃が炸裂したところ。ドーン!ドーン!という爆音とともに周辺を爆発が包む。戦術支援はいずれも強力なだけに、活用次第で戦局は大きく変わってくる

 「MAG」の特徴的なシステムがこの“隊長になる”というものだ。レベル15以上で分隊の隊長に立候補できるようになり、分隊長の経験が高くなれば小隊長、さらに司令官にもなれる。

 隊長の役割はもちろん、隊員に指示を出すこと。目標地点を設定して隊員に自分の分隊は何をするべきなのかを示す。隊長の指定した目標地点で行動すれば経験値にボーナスがつくこともあり、隊員にとっても重要な存在なのだ。また、隊長、小隊長、司令官のそばにいる仲間には、リーダーシップボーナスという能力向上の効果がつく。指示に従い、ともに行動するのが隊員にとって大きなメリットなわけだ。

 隊長でのプレイは決して難しくはないが、ルールと施設等の仕組みは理解しておかないといけない。重要なのは戦術の組み立てだ。この施設を落とせたら次はこちらにすぐ行くべき、というような展開の道筋が見えているかが指示のポイントになる。うまい隊長のもとでプレイすると、ゲームの仕組みや組み立てが勉強になるところもあるだろう。

 その判断の難しさは、混戦や接戦であるほど大変になるが、そのぶんうまくプレイして勝利できた時の喜びは格別。スピーディーな展開のときは指示をどんどん変えていかないといけないが、その“忙しさが面白い”と感じるところがあるだろう。「妨害作戦(64人)」<「襲撃作戦(128人)」<「制圧作戦(256人)」というようにゲームモードごとに複雑になるため、隊長の難しさも上がっていく。

 隊長だけに備わるもう1つの要素が「戦術支援」。分隊長では強力な爆撃や敵をレーダーに映すUAV探索など、小隊長だとそれに加えて掃射やガス爆撃、さらに司令官ではリスポーン時間に影響するバリケードや緊急出撃、レーダーを使用不可にするジャミングといったものも使える。いずれも普通の隊員にはない特殊な効果を持っている。

 戦術支援は施設のない「妨害作戦(64人)」では使えず、「襲撃作戦(128人)」で一部が、「制圧作戦(256人)」では全て登場する。制圧作戦では参加人数のこともあり、広範囲に影響する戦術支援の効果が勝敗の行方に大きく影響してくる。



■ プレイスタイルを大きく左右するスキル選び。装備も状況に合わせて変えられるよう用意しよう

レベルアップして得られるポイントでスキルの獲得や装備のアンロックができる
装備は5種類の組み合わせを事前に作っておける。シチュエーションに合わせてスタイルを変えられるようにしておこう
再復活のタイミングで装備のセットを変更できる

 ゲームモードも理解し、隊長にも挑戦しはじめた。そのあたりから悩ましくなってくるのが「スキル」だ。レベルアップに応じてもらえるポイントでスキルを獲得できる。身体能力をアップさせるものもあれば、特殊な装備も用意されている。どんな能力と装備を獲得するかで、自分がどんなスタイルでどんな動きをする兵士になるかが決まってくる。

 スキルの中でも、とりあえず取得しておいたほうがいいのは、仲間の体力を回復できる「医療キット」や仲間を蘇生できる「蘇生キット」。これがあれば、衛生兵として仲間を回復する役割ができる。逆に、これがなければその役割はプレイそのものができない。損することはないので、真っ先に取得しよう。

 そこから先は個人のスタイルによって異なっていくので、一概にどれがオススメということもない。とりあえず無難なのは、武器に左右されずどんな状況でもプラスになる身体能力系のスキルだろうか。使っている武器の安定性を高めるグリップ類や精度を高めるスキルもいい。

 爆発物取扱技能のガスグレネードも定番の1つで、突入のタイミングを作るのに最適なスモークグレネード同様に視界を遮る効果があり、かつ、広範囲にガスによるダメージも与えられる。

 こうしたスキルや装備によってプレイスタイルがガラッと変わってくるのも魅力的で、例えばセンサー系統に影響する精密機器や、サイレンサーなどの“敵に発見されづらくなる”ものに特化すれば、ステルス活動的なプレイが可能になる。また、戦っているうちに自分なりの組み立てが見えてくるところもあるだろう。

 こうした装備の組み合わせは、持てる装備にポイント制限があり、どれもこれも一緒に持ち歩くというわけにはいかない。組み合わせは5セットを作っておけるが、ゲームモードやシチュエーション、攻撃側なのか守備側なのかといった違いで、使い分けできるように作っておくのがオススメだ。

 例えば「襲撃作戦(128人)」や「制圧作戦(256人)」で攻撃側のときは、修理より医療キットのほうを重視しておくとか、守備側ならその逆に修理を重視したセットにする。バンカーの銃座やAPC等を破壊するためにロケットランチャーを入れているセットも用意しておきたい、というように、目的別に作っておくのがいい。セットの基準はシチュエーションだけでなく、例えば他の仲間の役割を見て、足りていない部分を補完するための使いどころや切替どころが色々あるだろう。

 ちなみに、ポイントを消費して獲得したスキルや装備は再スペックでふり直しすることもできる。再スペックは何度も自由にできるわけではなく、再スペックポイントという経験値同等のポイントを消費して行なうので、ある程度スキルを試していったあと、2、3回は再スペックのふり直しで整えることもできる、というぐらいに考えておくといい。



■ 協力し合って戦っている、みんなが戦術を考え実践している、そういう感覚を楽しめる新機軸のFPS

大人数がまとまった動きを楽しめるよう、仕組みがしっかりとしているゲームだ。それだけに、一緒に戦っているという感覚が強く感じられて独特の魅力になっている

 ゲームの目的ははっきりと設けられているが、それをどういう戦術や展開で達成するかを考えるのはプレーヤー自身。ただし、1人1人が好き勝手に行動するということではなく、目標を指示する隊長という存在があり、その隊長という役割もまたプレーヤーがなるという面白い仕組みになっている。

 この独特な仕組みによって戦術がきちんと形になってくるし、その戦術自体もプレーヤーが考え伝えて実践しているという仕組みになっている。一緒に協力しているという感覚も高まっていくというわけだ。隊長という仕組みがなかったら、大人数がぐちゃぐちゃに動き回っているだけのゲームになっていただろう。大人数の魅力を面白くプレイできるようにうまく工夫されている。

 128人対戦の「襲撃作戦」、256人対戦の「制圧作戦」ともなってくれば、大きな目標の他に戦況を左右する様々な施設がマップ全体に散りばめられている。それらをどういう順に手を付けていくかは自由であり、臨機応変に対応していくことが求められる。

 そうした戦術には“これが正解”というものはなく、今回この記事に書いたのもほんの一例やセオリー的なものだけ。ちょっと難しそうな印象を受けた方もいるかもしれないが、遊びながら理解していけば、とてもシンプルなものだ。理解することで仲間との意思疎通をしている感覚や、一緒に協力しているという面白さが強まってくる。大人数の臨場感や激しさもテンションを高めてくれる。ハマると抜け出せなくなるような魅力だ。

 最後に、現状プレイしていて気になった部分をまとめておこう。まずマップによっては攻守に優劣の差を感じるところがあるのだが、攻守がマップごとに固定されているので、PMCごとの優劣に繋がっている。単純にゲームのバリエーションを増加させる意味でも、早期に攻守の入れ替えがされるようになって欲しいと思う。

 細かな不具合やバグ等もあるにはあるのだが、そうした部分を含めて今後のアップデートによる調整や修正に期待したいところだ。ラグ等に関しては発売直後から比べるとサーバーなどが増強されて、かなり目立たなくなった。大人数が1ゲーム内で同時に動いていることを考えれば、全体の水準や安定度は非常に高い。

 オンライン配信つながりで言えば、DLC等による拡張にも期待していきたいところ。新たなマップの配信等が定期的にされていけば、ずっと遊び続けたくなる定番ソフトの1つになっていくだろう。

(C)Sony Computer Entertainment America Inc.

(2010年3月1日)

[Reported by 山村智美 ]