★PS3/Xbox 360ゲームレビュー★

血の十字架を胸に、ダンテが進む修羅の道
文学的な薫り高い硬派なアクションゲーム

「ダンテズ・インフェルノ~神曲 地獄篇~」

  • ジャンル:アクションゲーム
  • 開発元:Visceral Games
  • 発売元:エレクトロニック・アーツ
  • 価格:7,665円(PSP版:5,250円)
  • プラットフォーム:プレイステーション 3 / Xbox 360/PSP
  • 発売日:2月18日発売(PSP版:3月18日発売)
  • プレイ人数:1人
  • CEROレーティング:D(17歳以上対象)

 「ダンテズ・インフェルノ~神曲 地獄篇~」(以下、「ダンテズ・インフェルノ」)はイタリア古典文学の傑作といわれる長編叙事詩「神曲」の第1部「地獄篇」をモチーフとしたアクションゲームである。開発は、「DEAD SPACE」を手がけたVisceral Games。日本でもいよいよ明日2月18日に日本語吹き替え版として発売される。ちなみに3月18日にPSP版もリリースされる。本稿では、本作の醍醐味をもっとも濃厚に味わえるPS3/Xbox 360版を取り上げたい。

 本作は死神の鎌を手にした主人公ダンテが地獄を巡り、地獄の亡者と悪魔を倒しまくるという凶暴な爽快感を持ったアクションゲームである。「神曲」をモチーフに作られた芸術作品の影響を受けたステージは、グロテスクで、不気味で、それでいて美しい。「暗い魅力」に満ちていながら、強烈な爽快感と高いゲーム性を持った非常にユニークな作品となっているのだ。



■ 地獄へ堕ちた恋人を救うため、戦士が挑む血みどろの道。イタリア古典の名作を大胆にアレンジ

主人公ダンテ。胸に直接縫い込んだ赤い十字架、死神の鎌と異形の戦士である
ベアトリーチェ。なぜ彼女が地獄に堕ちなければならなかったのか。彼女を救うためにダンテは地獄の深淵へと向かう
グロテスクに、しかし美しく表現される地獄の世界

 「ダンテズ・インフェルノ」は13~14世紀のイタリアの詩人ダンテ・アリギエーリが書き記した長編叙事詩「神曲」の第1部「地獄篇」を原作にした作品である。原作である「神曲」はラテン語ではなくイタリアのトスカーナ地方の方言で書かれていることもあって、当時から多数の読者を獲得し、現在は古典イタリア文学の最高傑作とまで呼ばれている。

 「死後の世界はどうなっているか?」というのは人間誰もが抱く疑問である。特に“悪いことをしたら堕とされる”という地獄は、人間の創造力を掻き立てる。九州の別府温泉の「地獄めぐり」や各地の寺院にある仁王像など、日本にも地獄を空想した物は多い。ダンテの「神曲」はキリスト教圏の人々に死後の世界のイメージを提示し、現在も影響を与え続けている。

 多数の芸術家達が「神曲」をモチーフに作品を発表しており、例えばロダンが作った「考える人」の像は「神曲」に出てくる「地獄の門」をモチーフに作り出した作品の頂上に置かれている像である。日本でも漫画家の永井豪が「神曲」に影響を受け、コミック化まで行なっている。

 その名作中の名作である「神曲」の地獄篇を「ダンテズ・インフェルノ」では思い切ったアレンジでゲーム化に挑戦している。まず、詩人であり、政治家でもあったダンテを本作では「十字軍の戦士」にし、初恋の人である“ベアトリーチェ”を妻にした。本作のダンテは死神から奪った巨大な鎌を武器に、地獄の亡者や悪魔を片っ端からぶった切っていく「狂戦士」の物語となっているのだ。

 本作のダンテは司教の「この先、どのような罪を犯そうともすべて赦される」という言葉を胸に遠征におもむき、異教徒を相手に極悪非道の限りを尽くす。聖地奪還を目的として、敵である異教徒の戦士を虐殺し、市民を手にかけていく。一瞬の隙をつかれ、異教徒の刃を受けて死神が彼の前に現われるが、その神にすら打ち勝ち、死神が持っていた人間の背骨で作られたような「鎌」を手に入れる。キリストの“茨の冠”を思わせる飾りの付いた兜、裸の胸に直接赤い布でできた十字架を縫いつけた身体、そして骨の鎌をもつ本作のダンテの姿は「神曲」のダンテとは全く異なる異形の戦士として描かれている。

 十字軍の遠征から帰ったダンテは自分の家の中で信じられない光景を目にする。父は殺され、愛する妻ベアトリーチェも何者かに胸を差し貫かれて死んでいたのだ。ダンテの目の前でベアトリーチェの唇から煙が立ち上り、やがてそれはベアトリーチェの魂となる。魂となった彼女のそばには黒い男が立っており、ダンテの目の前でベアトリーチェを誘拐し、地の底へと向かう。同時に突然地面が崩れ、黒い大地と鮮血の河、炎に照らされた地獄の大地が口を開ける。ベアトリーチェの魂は地獄へ連れ去られたのだ。ダンテはベアトリーチェの魂を救い出すために、ためらうことなく地獄へ飛び込んでいく。

 「ダンテズ・インフェルノ」は地獄の亡者を八つ裂きにし、十字架を叩きつけてその聖なる炎で焼き尽くすという、極めて極端な描写が際だつアクションゲームである。ダンテを狙う亡者や悪魔は常に数を頼んでダンテを取り囲む。ダンテは鎌を風車のように振り回し、亡者達をはじき飛ばしながら進む。コーエーの「真・三國無双」シリーズのような多数を相手にする爽快感も持っている。加えて、敵の攻撃のパターンを読んでカウンターで返したり、技を育てて戦いのバリエーションを増やすなど、力押しだけではない、きちんとした戦い方を要求されるバランスがあり、アクションゲーマーの血を燃え立たせる作品となっている。

 何よりもプレーヤーの心をつかむのが本作の様々な「演出」だろう。その象徴とも言えるのがダンテの鎌だ。ダンテの持つ死神の鎌はダンテの意志で鞭のように伸びたり、刀や槍のように突き刺したり様々な武器に変形する。本作はこの鎌で敵の身体を真っ二つにしたり、串刺しにしたりとノリノリの残虐表現が入る。神話世界の怪物達を残酷な演出で倒すというとSCEAの「God of War」シリーズを彷彿とさせるが、本作の場合敵を倒す際にキリスト教の罪の概念で「罰す」、「赦す」という選択肢があり、プレーヤーの意志でどちらかの裁きを下せるという“一手間”が加えられている。

 そして「ダンテズ・インフェルノ」は地獄の亡者が嘆き苦しむ地獄をゲームのステージとして再現しているところが面白い。多数の人間の魂が裁かれるために滝のように地獄に流れ込んでいく描写や、壁閉じこめられ救いを求めてもがく様など、ダンテの「神曲」をモチーフに創作された様々な作品を独得のアレンジで取り入れている。加えて、過去の偉人や、神話の人物などが出てくるところは原作通りである。ステージの合間に原作の詩が入ったり、本作には「文学的な薫り」が、奇妙な味をもたらしている。従来とはひと味違うアクションゲームとして、注目して欲しい作品だ。


十字軍の戦士として異教徒を屠っていくダンテ。不意打ちを受け、死神に裁かれるが、逆に鎌を奪い自分の者にしてしまう
故郷ではベアトリーチェは何者かに殺されただけでなく、その魂はルシファーに地獄の底へ連れ去られてしまう。ダンテは太古の詩人ヴェルギウスに導かれ地獄を進んでいく
地獄では神話や歴史に登場する人物達と出会う。彼等を赦すか罰するかはプレーヤーの意志に委ねられている。赦す場合は、リズムアクションのようなミニゲームに挑戦することとなる



■ 亡者も悪魔もぶった切れ、聖なる炎で焼き尽くせ! より高みを目指したくなる多彩なアクション

モンスターの体力を減らすと現われる選択肢。経験値を獲得できる
スキルを選択し、ダンテを強化していく
ゲームを有利にする様々なアイテム。マップの隠された場所にあることが多い

 続いて、ダンテのアクションについて紹介したい。“死神の鎌”と“ベアトリーチェの巨大な十字架”がダンテの武器である。鎌には「弱攻撃」と「強攻撃」がある。弱攻撃は連続攻撃が可能で、強攻撃は単発だが強力な攻撃を繰り出せる。十字架は聖なる光を発し遠距離攻撃が可能だ。飛行している敵などには遠距離攻撃が有効である。

 これらの技のほかにも本作には無数の技が存在し、ダンテは新たな技を獲得することで、より強力な存在になる。技は「神聖レベル」、「暴虐レベル」というふたつの系統にわかれており、神聖レベルを上げると十字架から繰り出される聖なる光の攻撃が強化され、暴虐レベルを上げると死に神の鎌による攻撃が多彩になる。

 技を習得するためにはレベルを上げるだけではだめで、敵を倒したり、オブジェクトから入手できる「魂」が必要になる。技を習得するには大量の魂が必要になるので、プレーヤーは習得可能な技の中から自分のプレイスタイルに合わせて一部の技を選択して習得することになる。

 基本的な傾向として、神聖スキルは十字架を空中に構えて地上の敵を跳ね上げたり、十字架から放たれる光が強化されたりと、十字架を駆使した遠距離攻撃がパワーアップする。暴虐スキルは、鎌を槍のように変形させる突き攻撃や、振り回す範囲が広くなったりする技など、近接攻撃が強化される。どちらのレベルに重点を置くか、どの技をとるかでプレーヤーの戦い方は大きく変わっていくだろう。

 左スティックがキャラクターの移動、右スティックは回避になっており、右スティックを倒すとその方向にダンテが瞬時に移動する。防御ボタンは敵の攻撃に合わせてタイミング良く押すことでカウンターになる。スキルを取っていればカウンターで十字架攻撃を行ない周囲の敵を吹き飛ばしたりもできる。炎をまとった敵の剣など特殊な攻撃は防御できず、防御と回避、そしてカウンターをうまく使って敵の攻撃を裁くことでゲームは有利になる。

 強攻撃の溜め撃ちや神聖スキルを使うことで敵を跳ね上げることができ、空中で敵をつかみ地上に投げ落とすことができる。プレーヤーの工夫でダンテは自在に動き、無敵ともいえる強さを発揮できる。また強いだけでなく格好いい。上級者のプレイが絵になるゲームだ。

 また、ゲームを進めることでダンテは様々な「魔法」を覚えていく。ダッシュ攻撃と共に冷気を叩きつける「光の魔法」、竜巻を身にまとい周囲を攻撃する「愛欲の嵐」、身を守り体力を回復させる「聖なる鎧」といった魔法が登場する。魔力ゲージを消費するのでここぞというところで使いたい。

 この他、ステージには様々なアイテムが隠されており、獲得することでダンテを強化することができる。アイテムには、カウンター攻撃の持続時間を増やす「貯める者の富」、つかみ攻撃が強化される「パリスの矢」などどれもゲームを有利にしてくれるものばかりだ。アイテムは普通は行かないルートに隠されている場合もあるので、プレイ中はステージをくまなく探索したいところだ。

 これらの要素に加えて、特定の場所では巨大な魔物を操るシーンがある。ダンテの鎌を脳に突き刺すことで巨大な魔獣を意のままに操ることができるのだ。巨大な魔物は動きこそ鈍いが、足を踏み下ろし、拳を地面に叩きつけるだけで周囲の亡者、悪魔がまとめて倒されていく。さらに火を吐くこともでき、自分が怪獣になったかのような爽快感を味わえる。特に罪深き者が住んでいる「ディーテの市」のステージでは街を壊しながら進むことになる。殺伐とした地獄を強大な力で破壊し尽くしていく、というのは悪の限りを尽くしているような感じがして、“暗い愉悦”にひたることができる。

 ゲームには難易度設定があり、最も簡単なClassic、標準的なZealot、難しいHellish、一度クリアすると選べる最高難易度のInfernalの4段階がある。ゲーム中いつでも変えることができ、敵の耐久力などが変わる。今回はZealotで進めていたのだが、ギリギリの戦いが続くため、Classicに変えてみたところ、拍子抜けするほどに簡単になってしまった。やはりZealot以上の難易度で、時には何度もゲームオーバーになりながらも攻略法を見つけ出し進む、というのが開発者の意図する難易度なんだろうなと感じた。

 多数の敵に囲まれ、体力が削られていく中、いかに敵を効率よく倒すか? ギリギリのピンチを乗りきる楽しさが「ダンテズ・インフェルノ」本来の遊び方だと思う。加えて、本作はクリアした後も「復活モード」として、強化したステータス・アイテムを持ったままニューゲームをプレイすることができる。今回はClassicでクリアしたが、復活モードで難易度を上げて挑戦してみようと思う。


振り回し、突き刺し、切り裂くことのできる死神の鎌。時にはロープ代わりにして移動することも
遠距離攻撃が行なえる十字架。「赦す」場合は聖なる光で浄化するのだが、攻撃しているようにしか見えない
左は「罰す」を選んだアクション。中央は「光の魔法」、右はエネルギーをまとう「愛欲の嵐」。魔法はスキル画面で強化できる
巨獣に乗ることで無敵気分を満喫できる。右はミノス王を仕留める演出。ダンテは次々と地獄の登場人物達を倒していくのだ



■ より凄惨に、醜悪に……デザイナーの悪夢が生み出す地獄の風景

壁の口から吐き出される大量の魂。壁にも死者の魂が囚われている。原作の挿絵を思わせる場面だ
蛇の尾を持つミノス王。盲目であり、臭いで死者の罪を判定する
地獄の番犬ケルベロス。飛び出した内臓のようにも、蛇のようにも見える醜悪な姿だ

 ダンテの「神曲」はローマの詩人ヴェルギウスの導きと共に地獄を巡る物語である。そこには悪事をなし死後裁かれる人々の様々な姿が描かれる。キリスト教における正義とは何か、罪に対する罰とはどのようなものかを、指し示すキリスト教圏の人々において指針となる本の1つである。

 「ダンテズ・インフェルノ」の各ステージはこの「神曲」の地獄をさらに陰惨で醜悪に描写している。本作の地獄は怪物と悪魔どもが思うさま罪人をいたぶる地である。ダンテはその地獄に堕とされた亡者と、地獄の獄卒達を死神の鎌で突き刺し、引きちぎり、そして十字架の強い光で焼きながら進む。原作での導き手であるヴェルギウスは、本作では地獄の紹介をする案内役でしかない。悪魔ルシファーに連れ去られ、不気味な悪の女王に姿を変えたベアトリーチェを救うため、ダンテの血みどろの戦いは続いていくのだ。

 「神曲」の地獄篇では地獄は地球の奥へ通じる深い穴として描写されている。地獄は7階層からできており、ゲームもまたこの表記に従うステージ構成となっている。現世から魔界に引きずり込まれ、ロダンの作品を思わせる「地獄の門」を越えたダンテの前に現われるのは、死者の魂が滝のように流れ込む場所だ。死者達はここから生と死の世界を分ける「アーケロン川」をこえ、地獄に向かうことになる。

 アーケロン川の渡し守カロンをゲームでは「船と一体化した悪魔」として描写しており、ダンテは巨大な箱船のようなカロンの身体の上で戦いを繰り広げる。あげくに魔獣を操り、カロンのクビをねじ切ってしまうのが凄まじい。「神曲」のダンテは通過して行くのみだが、ゲームのダンテは地獄の登場人物達をことごとく倒していくのだ。

 アーケロン川のほとりは「辺獄」と呼ばれる地。善良であっても洗礼を受けていないため天国に行けない人々が集められている場所だ。「神曲」ではダンテはここで尊敬する古代の詩人達と出会い楽しい時を過ごすのだが、ゲームではそういう場面はなく、亡者達の戦いに加え、洗礼を受けずに死んだ不幸な赤子が怪物としてダンテに襲いかかってくるという過酷な戦いを強いられる。辺境の終わりには死者を裁き彼等の罪に合う地獄へと送る裁判官ミーノスが待っている。盲目の蛇のような尾を持つ怪物で、巨大な身体で襲いかかってくる。

 ちなみに、クリア後にはこの赤子のモンスターのメイキングムービーを見ることができる。ムービーによれば赤子のモンスターの動きは開発者の幼い息子をモーションキャプチャーしたという。このためか、赤子モンスターは変に動きがリアルで、戦うのはかなり嫌な感じとなっている。一方、メイキングムービーで出てくる男の子はかわいらしく、健気に父の仕事を手伝ってくれる、和むムービーとなっている。

 辺獄の次は肉欲におぼれた者が墜ちると言われる「愛欲者」の地獄だ。ここではキングコブラそのままの髪型をして、紫色の肌をしたクレオパトラが何度も行く手を阻む。世界の美女として知られるクレオパトラをおもいっきり醜悪なモンスターに変えているのがすごい。股間から肉槍を突き出して攻撃する女モンスターなどエロチックな敵が登場するのもこのステージの特徴だ。

 クレオパトラを倒し、炎の吹き出る壁を越えて進むと現われてくるのが「貪食者」の地獄。大食らい、食に意地汚い人々が堕とされる地獄で、ここに墜ちた死者は地獄の番犬ケルベロスに引き裂かれるという。ゲームではケルベロスは太った男の口から突き出す内臓のようにもみえる、ぬらぬらした皮膚を持つ3匹の蛇として描写されており、ものすごく気持ちが悪い。このステージは内臓を意識した構造になっていて、肉の壁を進んでいくような不気味な触感を持ったステージとなっている。

 次の「貪欲者」の地獄は浪費家とケチが堕とされる地獄。金ピカのステージが「富める者」に対する嫌悪感を感じさせる。このステージでは特に声の演出が楽しく、傲慢な金の亡者のつぶやきを随所で聞くことができる。「ダンテズ・インフェルノ」は日本語吹き替え版ならではの“声”の演出にも注目して欲しい。例えば亡者が囚われている壁を通るときは「食いたい」、「もっと金を」、「どうしてこんなことに」といった死者達の嘆きと悲鳴が聞こえるのだ。

 また各地にいる罪人達はその罪に対する悔悟をずっとつぶやき続けている。その台詞は短いながらも彼等の人生を端的に表現していて、彼等が生前どんな人間だったかわかるようになっている。その短い台詞だけである者には哀れみを、ある者には憎しみをプレーヤーに抱かせるようになっている。英語版のシナリオライターの功績が大きいとしても、翻訳したライター、そして演じる声優にも拍手を送りたい演出だ。

 「貪欲者」の地獄の先は「憤怒者」の地獄は怒りで我を忘れた人々が囚われる地獄だ。ここでは川を渡っている足場だと思っていた台座が実は巨大な怪物の頭だったという驚きの演出がある。ステージ後半はこの巨大な怪物を操って大破壊を行なうことができ、まるでプレーヤー自身が「憤怒者」そのものになったかというような力の感触に酔える。

 ゲームでは地獄のイメージと共にストーリーもまたかなりエグいものになっている。ゲームを進めていくとダンテの罪は何か、ベアトリーチェは何故地獄に堕とされたかが徐々に明らかになってくる。このときのシーンは独得のイラスト調になっている。語られるストーリーはかなり陰惨で「こりゃダンテは地獄に堕ちるべきだよなあ」と納得させられてしまう。しかしそれでもダンテはベアトリーチェを救うためだけに戦い続けるのだ。この戦いそのものがダンテの贖罪の旅でもある。地獄を進むダンテの情念が一種のエネルギーとなってプレーヤーを後押しする。この奇妙な感触はぜひ味わって欲しい。


地獄への渡し守カロンを本作では「生ける船」として表現。ダンテは巨獣を操り首をねじ切ってしまう
赤子のモンスターがかなり嫌な感じの辺獄。ラストにはミノス王が待ちかまえている
巨大なクレオパトラがずっとダンテに憎しみの視線を向け続ける「愛欲者」の地獄
巨大な生き物の内臓のような「貪欲者」の地獄。地面から現われるミミズのような怪物はダンテだけではなく周囲の亡者達も食べてしまう
金ぴかの「貪欲者」の地獄。自らの欲のために人を不幸にしていく者達の“声”が聞こえるステージだ
炎が吹き出す「憤怒者」の地獄。右の巨人は操ることで街そのものを破壊させることができる


■ クリア後にアンロックされるチャレンジモード「地獄の門」。今後はマルチプレイ要素も

悪に墜ちたベアトリーチェ。彼女を救い出す道はあるのか

 「ダンテズ・インフェルノ」のクリア後の要素としては「地獄の門」というコンテンツがアンロックされる。これは地獄の門を前に延々と亡者や悪魔と戦うモードだ。敵を罰することで制限時間が増えるため、より素早く効率よく倒すことを目指す「鍛錬」ができるモードである。「思う存分戦いたい」というプレーヤーの願望を叶えてくれるコンテンツだ。

 さらにComing Soonとして「聖ルチアの試練」というコンテンツの存在がメニュー画面にあり、宣伝ムービーも収録されている。ムービーによればダンテと共に戦う女天使の活躍を描くコンテンツのようで、協力プレイができるようである。オンラインで協力プレイができるのかどうかも含めて今後の情報に期待したいところだ。この他、ダウンロードコンテンツのメニューもあり、こちらの要素も注目していきたい。

 「ダンテズ・インフェルノ」は「DEAD SPACE」を作ったVisceral Gamesらしい独得のエグ味を持ったゲームだ。宇宙空間や、異次元ではなくストレートに「地獄」をテーマにするというのはユニークな切り口でもある。また、アクションゲームとしても歯ごたえがあり、醜悪な化け物をズタズタに倒したい、というプレーヤーにもお勧めできるゲームだ。

 多少難点としては地獄をテーマにしたためか、陰惨なステージのみが連続することだろうか。原作があるゆえの縛りとも思うが、陰惨なだけではないステージも見たかったところだ。「神曲」には罪を償う地である「煉獄篇」、そして聖なる者達が集う「天国篇」がある。ゲームがこの原作の道筋をたどるかどうか、今後の情報に期待したいところだ。そのときに本作の表現力が別なベクトルで発揮されるのかどうか期待したい。


ムービーは独得のタッチで描かれる。神の名の下に行なったダンテの、十字軍の悪行が暴かれる場面でもある
クリア後に挑戦可能となる「地獄の門」。思い切り戦えるコンテンツだ
Coming Soonとして予告ムービーが収録されている「聖ルチアの試練」。プレーヤーが挑戦するコンテンツをアップロードし、マルチプレイで対戦できるという

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(2010年 2月 17日)

[Reported by 勝田哲也 ]