「NightCry」レビュー

NightCry

“巨大ハサミの恐怖”再び!追い詰められる恐怖は、まさに「クロックタワー」の遺伝子

ジャンル:
  • クリックポイントホラーゲーム
発売元:
  • アクティブゲーミングメディア
開発元:
  • NUDE MAKER
プラットフォーム:
  • WIN
価格:
2,480円(税込)
発売日:
2016年3月28日

 PLAYISMとSteamにて、Windows用クリックポイントホラーゲーム「NightCry」の販売が開始された。

 「NightCry」は、かつてゲームファンに「シザーマン」という巨大ハサミの怪人の恐怖を植え付けたホラーゲーム「クロックタワー」の系譜を継ぐ作品。「クロックタワー」で監督・ゲームデザインを務めた河野一二三氏が本作のディレクターを、開発は河野氏が立ち上げたインディーゲーム開発スタジオ「ヌードメーカー」が行なっている。

 クラウドファウンディング「KickStarter」によって、PC版の制作が実現したタイトルであり、「クロックタワー」の系譜を継ぐとなると、いろいろと興味を引くところだろう。そんな「NightCry」が一体どんなゲームになったのか、レビューをお伝えしていく。

 物語の舞台となるのは、カリブ沖を航海中の豪華客船オシアネス号。船内では華やかなパーティーが催されていたのだが……、客船は一点して、惨劇の舞台となってしまう。

 巨大なハサミを手に執拗に追いかけてくる異形の怪物「シザーウォーカー」の手を逃れつつ、次々に目にすることになる凄惨な光景におののきつつも、物語を解明するための手がかりを辿りながら脱出を目指していく。

豪華客船に突如として現われた巨大ハサミの怪物「シザーウォーカー」!目を覆うような場面が次々に広がっていく

 “クリックポイントホラーゲーム”というジャンル名のとおり、本作では基本的な操作はマウスクリックのみ。主人公を移動させたい場所、調べさせたい場所をマウスクリックで指定していく。指定した場所へキャラクターが靴音を鳴らしながら歩いていく様子は、まさに「クロックタワー」の遺伝子だ。

 また、画面は常に決まった固定アングルで映されていて、視点操作はなし。画面端まで移動すると別のアングルへと切り替わる、やはりオールドスタイルな方式をあえて採用している。

 脱出のために様々な場所を調べ、脱出に使えるものを探していかなければならないのだが……探索の結果、「惨たらしい死のあと」を目撃することにも。さらに、シザーウォーカーは神出鬼没だ。

 「先へ進むために手当たり次第調べなければいけない……でも、見ない方がいいものも見つけてしまうかもしれない……でも調べないわけにはいかない」そんな気持ちを抱えつつ、なんとなく嫌な予感がするところを調べてみたら……「予感的中!シザーウォーカー出現!! 」なんてことも。思いがけないところから出てくる感じもまた、懐かしい。

 本作は3つのチャプターで構成されており、それぞれのチャプターに主人公がいるのだが(計3人)、迫りくるシザーウォーカーや危機と戦う手段は持っていない。シザーウォーカーと遭遇してしまったら、逃げて隠れるか、なにか一時的にでもひるませられるものを探すしかない。

 追われているときのパニック感がまた、懐かしくもある独特な魅力。マウスを「カチカチカチカチ!」と連打して走らせ(Dキーでもダッシュできるが)、「どこか隠れる場所はないか!?」と焦りに焦る。だが、主人公は走り続けると疲れて動きが遅くなっていくし、さらには転んだりもしてしまう。そうなるともう焦りは最高潮だ。

 「シザーウォーカー」に追い回されるパニック感や、凄惨な現場を目撃しつつも探索していくホラーアドベンチャー感、調べた箇所に対する主人公たちの独特な味のあるリアクションなど、「そうそう、この感じ!!」というテイストをしっかりと楽しめる。

何気なく覗いたアイスボックスの中からハサミ!!
シザーウォーカーに接近されたときはマウスクリック連打でなんとか乗り切る
ホラーの定番、クローゼットに隠れてのドキドキタイム。隠れた場所によっては、移動するアイコンをマウスカーソルで追いかけ、冷静さを保たなければならない

 脱出の助けとなるアイテムのなかでも重要なのがスマートフォンだ。暗い道をスマートフォンのライトで照らし、ときおり室内に置かれている充電器で充電する(充電がデータセーブになっている)。ときには電話をかけたり、探索して見つけたものをSNSに投稿して、誰かに伝えるということも。現代的なツールも取り込んでいて、新しい感覚を楽しめるアドベンチャーでもある。

探索の必需品は、今風にスマートフォン。ライトを頼りに暗がりを進んだり、SNSへ投稿することで物語が変わっていくことも

 本作の醍醐味は“自分の取った行動によってチャートが分岐し、分岐ポイントからリプレイが可能”なところ。繰り返しプレイして、様々なルート分岐を、そして様々な恐怖を楽しんでいく。繰り返しのプレイではあるので、ちょっと根気が必要なスタイルではあるので、じっくりと楽しめる人に向いたデザインだ。

行動によってフローチャートが分岐していき、分岐点のヒントを確認しつつリプレイができる。これで新たな展開を探っていくのが本作の醍醐味だ

 「クロックタワー」の系譜を継ぐホラーゲームとして、迫りくる巨大ハサミの脅威、逃げているときの焦り、隠れたあとの「見つからないで済むだろうか……?」というドキドキ感など、“まさにこれ!”という魅力を味わえる。

 ただし、今回レビューを書くにあたって当初にプレイしていたリリース時点のバージョンだと、ストレスを感じさせるような仕様やバグが見受けられた。その評判をみて様子見しているという人もおられるかもしれない。

 これについては、3月31日、そして4月8日にもアップデートが行なわれ、改善に精力的に取り組まれている。以下は、アップデートによって改善された点とバグ修正の項目だ。

【改善点】
・冒頭操作説明のチュートリアル追加
・オートセーブポイントの追加
・カメラワーク調整
・探索モード時カメラ切り替え後すぐはクリック反応しないように修正 (Uターンをだいぶ軽減)
・タイトルからゲーム終了を可能に。
・Escキーでタイトルに戻れるように。

【バグ修正】
・SNS関連のバグ修正
・ウィルアンダーソン連絡先バグ修正
・Chapter 3 無限回避ポイントの修正
・トイレ閉じ込めのバグ修正
・一部テキストの修正
・Chapter1のワゴン消失バグの修正
・Chapter1のシザーウォーカーが倉庫から出てこないバグを修正
・Chapter2以降充電器で充電してもバッテリー残量が変わらないのを修正
・Chapter2の最初、スマホライトがONになっているバグを修正
・QTE中のイベント発生バグを修正
・一部テキストの修正
・その他軽微な修正

 こうしたバージョンアップでの改善で、“繰り返しプレイをして分岐を楽しむ”という醍醐味を楽しみやすくなった。リリース時には厳しい印象も受けたのだが、スピーディーな対応は嬉しい。

 分岐を変えて新たな展開にたどり着いたとき、悩ましい謎の答えを発見できたときの嬉しさがしっかりとあり、常に「この話は一体どうなってしまうのだろう……」という、好奇心に似た気持ちが寄り添う。現状では少し根気が必要なゲームとなっているが、帰ってきた巨大ハサミの恐怖とともに、アドベンチャーの魅力を楽しめるタイトルだ。

Amazonで購入

(山村智美)