Wii U「幻影異聞録♯FE」レビュー

幻影異聞録♯FE

「アトラス」と「ファイアーエムブレム」がコラボして進化を遂げた「幻影異聞録♯FE」

ジャンル:
RPG
発売元:
任天堂
開発元:
任天堂
アトラス
プラットフォーム:
Wii U
価格:
7,236円(税込)
9,698円(税込) [特別版]
40,824円(税込) [Wii U本体セット]
発売日:
12月26日

 「幻影異聞録♯FE」(以下、「♯FE」)は、任天堂とアトラスが開発したWii U専用の新作RPG。アトラスと「ファイアーエムブレム」がコラボしたことで話題になっている作品だ。現代や近未来が舞台のアトラス作品と、中世風ファンタジーの「ファイアーエムブレム」……。およそ接点のなさそうな組み合わせに、驚きとともに興味を惹かれた人も多いのではないだろうか?

「ファイアーエムブレム」のキャラクターが現代に出現!?

 本作の舞台は、現代の東京。渋谷や原宿に「イドラスフィア」と呼ばれる異世界が出現し、さまざまな怪異が発生してしまう。主人公たちはイドラスフィアで戦う力を得て、その怪異に立ち向かう……というのが、大まかなアウトラインだ。それと並行して、主人公やヒロインがアイドルとして成長していく要素もあるのだが、それは後述する。

 いったいどこでコラボしているのかというと、「イドラスフィアで戦う力」の部分。これは、普段は人間の姿をしている「ミラージュ」と呼ばれる存在が「カルネージ(武器)」に変身することで得る。主人公たち「ミラージュマスター」とそれぞれペアを組み、カルネージを使うことができるのはパートナーキャラだけという仕組みだ。そして、そのミラージュに「ファイアーエムブレム」のキャラクターがモチーフとして採用されているのである(変身後の武器名も「ファイアーエムブレム」に由来しているものがある)。

 カルネージするミラージュとして登場するのは、ロードのクロム、ペガサスナイトのシーダ、ソシアルナイトのカイン、ダークマージのサーリャ、アーチャーのヴィオール、アーマーナイトのドーガ、剣士のナバール。そして、少々特異な扱いとして、チキがウタロイド(音声合成技術)という形で出演している。

 というわけで、ミラージュとして現代に現われた「ファイアーエムブレム」キャラたちだが、実は彼らがそのまま渋谷を闊歩する事態にはならない。ミラージュはこちらの世界では目に見えず、イドラスフィアやある特殊空間でだけ姿を現わす設定だ。なぜ彼らがミラージュになったのかは、第1章終了時点では不明。彼らはみな記憶喪失であり、自分の名前以外は何もわからない状態になっている。

【スクリーンショット】

雰囲気はカジュアルだがゲーム内容はガチ!

 ゲームの雰囲気はとてもカラフルでポップ。「真・女神転生」よりは「ペルソナ3」や「ペルソナ4」に近い印象だ。戦闘の難易度は3段階から選ぶことができ、途中で変更することも可能なので、「アトラス」シリーズとのコラボと聞いて高難度のイメージを持った人は安心してほしい。ただし、ダンジョンの広さや仕掛けの内容は変わらないので、あまりなめてかかると後悔することになるかもしれない。といっても、あちこち調べまくったり、ダンジョンの攻略途中に何度も拠点へ戻ったり、戦闘中に考え込んだり、敵を避けずにいちいち戦ったりすると時間はかかるが、難易度をイージーにしてサクサク進めればもっと短縮できると思う。

【スクリーンショット】

 第1章終了時点で1番に訴えたいのは、まず戦闘が楽しいこと。敵シンボルに触れるとバトル専用の空間へ転移し、カルネージで攻撃するのだが、この時、敵の弱点にあたるスキルで攻撃すると「セッション」と呼ばれるコンボが自動的に発生して1度に数人で攻撃することが可能になる(ただし、セッション用のスキルを取得している場合に限る)。これはノーマル以上の戦闘では必須だし、イージーでも楽に勝つなら狙うべき要素。これが楽しくて、戦闘が苦にならないのだ。リアルタイム制ではないので攻撃手順をじっくり考えられるし、攻撃中はスピーディかつ迫力ある演出がなされていて爽快感もある。キャラクターのレベルアップやスキル習得が早いので、「育っている」という実感も大きい。そういうサクサク感については「ライト」で「カジュアル」と言えるかもしれない。

 ただし、ダンジョン構造についてはよい意味で“ヘビー”。スイッチを動かしたり壁を壊したりしながら通路をつなげ、ショートカット用のワープを開通させ、ダンジョンの奥へ奥へと進んでいく。第1章でも十分凝っているので、これが終盤になったらと思うと思わず武者震いが……。片手の法則でダラダラと進むダンジョンは、おそらく本作には登場しないはずだ。

 なお、本作は、メインストーリー攻略に特化した各章本編と、サブストーリー攻略や自由探索に特化した各章インターミッションに分かれているのだが、これは非常によいことに感じた。長編RPGにありがちな罠として、クエストなどが同時発生して内容が把握できなくなったり、間を空けてプレイすると忘れてしまったりすることがあるが、構成できちんと区切られているため要素が多い割に混乱しにくいのだ。

【スクリーンショット】

 もうひとつ興味深いのが、Wii Uの特性を活かした「TOPIC」システム。これは、Wii U GamePad画面をツールに見立ててリアルタイムでメッセージのやりとりをするというもので、「TV画面を見ている最中に不意に手元の端末が振動し、新着があることに気付いて目を落としてメッセージを読む」という動作になる。この一連の行為が、自分にメッセージが届いた感覚を呼び起こしてくれる仕掛けだ。2画面を使うだけならニンテンドー3DSでもできるが、この感じはWii Uならではだと思う。メッセージの内容は、ストーリー進行の鍵となる重要なものから、どうでもいいことまでさまざま。そんな部分まで、ある意味リアルを忠実に再現していて興味深かった。

 ただ、Wii U GamePad画面の使用法として、MAPをこちらに収めたことについては少々疑問が残った。個人用端末にMAPデータが入ること自体は理に適っているのだが、現実問題として、ダンジョンを探索している最中にTV画面とWii U GamePad画面の間で何度も視線を移動させるのは面倒……というか、個人的には疲れた。こればかりは、たとえ理に適っていなかったとしても、ボタン1つでTV画面のほうに表示してもよかったのではないかと思う。

【「TOPIC」システム】

芸能人としての実力が戦う強さになる!?

 主人公たちが数々の事件を解決することは、作中においては人知れず行なわれること。ミラージュマスターは「裏の顔」であり、表向きは全員が芸能人およびその候補ということになっている。なぜここで「芸能」が出てくるのかについては、少々説明が必要だろう。

 実は主人公たちが戦う敵もミラージュで(パートナーのミラージュも元々は敵だった)、敵ミラージュは人間だけが持つエネルギー「パフォーマ(表現力の結晶)」を奪うためにこちら側へやってきている。そして、それを倒す力もまたパフォーマに由来しており、強大なパフォーマを持つ人間は、ミラージュに対抗する力も大きい……すなわち強いと言える。それと同時に、優れたパフォーマを持つということは、芸能人として活躍できる可能性を示しているため、主人公たちは芸能人としてスカウトされレッスンすることになるのだ。これについては、劇中でかなり説得力のある説が展開されているので、芸能事務所社長のコメントに注目してほしい。

 なお、本作では、レッスンと称したリズムゲームや、芸能スキルをみがくための特別な何かをする必要はないようなので、芸能活動は世界観やストーリーのみに関わる要素となっている。だが、世界観の根底を支えているのが「芸能の才覚」ということに変わりはない。ライブなどの見せ場イベントでは気合いの入ったアニメーションと歌を披露してくれるので、戦うだけでなく芸能活動も楽しんでみよう!

【スクリーンショット】

年末年始はこれで決まり!

 アトラスに「ファイアーエムブレム」が加わって、芸能活動するRPG……それだけ聞くとまるっきりワケがわからないが、実際にプレイしてみると意外と違和感はない。それぞれの要素が不思議と調和しているので、「アトラス」シリーズやその派生作品に触れたことがある人ならすぐに受け入れられると思う。たぶん「ファイアーエムブレム」を知らなくても大丈夫だ。

 逆に「ファイアーエムブレム」は知っていても、「アトラス」シリーズ系はさっぱりわからないという人はちょっと戸惑うかもしれないが、そこはキャラ愛をバネに新しい一歩を踏み出してみては? ミラージュを操作することはできないものの、イベントなどでたくさん話す機会があるし、物語が進むにつれ「ファイアーエムブレム」に由来するネタが登場するかもしれない。「ファイアーエムブレム」を知っている人はキャラクターの意外な一面を見ることができるのでは。

 ちなみに販売形態としては通常版のほか、様々な特典の付いた特別版(幻影異聞録♯FE Fortissimo Edition)も発売されている。さらに、特別版、Wii U本体(プラスα)が同梱された「Wii U 幻影異聞録♯FE Fortissimo Editionセット」もある。複雑なので、リンク先をご確認頂きたい。

 かくいう我が家は、これまでWii Uの購入に踏み切れなかったクチなのだが、今や「幻影異聞録♯FE」とハードとの同梱版の値段を調べ始める始末。ブラックの本体、かっこいいよね! まあ、それくらい、レビューのためのプレイで楽しんでしまったということだ。所々でロード時間が長いのは気になるが、内容については太鼓判を押せる。年末年始にじっくりRPGをプレイしたい人におすすめだ。

(出口裕子)