PS Vitaゲームレビュー

俺の屍を越えてゆけ2

優しさと強いストーリー性を備え、プレイの幅を広げた“2014年版の俺屍”

ジャンル:
  • RPG
発売元:
開発元:
  • ソニー・コンピュータエンタテインメント
プラットフォーム:
  • PS Vita
価格:
8,424円
(PS Vita)
(PS Vita / PS Vita / PS Vita / PS Vita / PS Vita / PS Vita / PS Vita / PS Vita)
発売日:
2014年7月17日

 「俺の屍を越えてゆけ」。1999年にプレイステーションで発売された本作は、世代交代という独自のシステムや、自由度の高いゲームプレイ、和風の世界観など独特の作風から多くのファンをもち、リメイクや続編を待望されつつも10年以上沈黙を守っていた名作RPGだ。2011年にはPSPリメイク版が発売されると共に続編開発が示唆され、そしていよいよ2014年7月17日、続編「俺の屍を越えてゆけ2」が発売された。

 筆者も発売以降、50~60時間はプレイしているが全ての迷宮や敵を制覇しきれてはおらず、ひとまず本編はクリアしたがまだまだ遊べる懐の深さを感じている。本稿ではこの「俺の屍を越えてゆけ2」について、プレーヤーをサポートしたり遊びの幅を広げる新要素や、ストーリーの鍵を握るキャラクター“夜鳥子”(ぬえこ)を中心にレポートしていく。

改めて、「俺の屍を越えてゆけ」とは

2年と生きられない一族を育て、新しい世代へと命を繋げていく。死期が近い人の顔へ呪いによる死相が浮かぶのは「2」の新要素だ

 まずはシリーズ未プレイの方、あるいは「プレイしたのは10年以上前で忘れちゃったよ」という方のために、「俺の屍を越えてゆけ」というシリーズの概要を2つの観点からご紹介したい。「知ってるよ」という方はこの項は読み飛ばしていただいて構わない。

 「俺の屍を越えてゆけ」は、わずか2年ほどしか生きられない“短命の呪い”と、人との間に子を成すことができない“種絶の呪い”をかけられた一族が、神々と交わることで子を成し、代を重ねながら復讐と解呪という悲願を達成するため戦っていくRPG。ゲーム好きなら実際にプレイしたことはなくても、この設定は知っているという人も多いのではないだろうか。

 筆者は本作をプレイする前、ぼんやりと「死ぬときに力を受け継ぐ子が生まれるのかな」くらいに考えていたのだが、実際は“一族育成シミュレーション”と言えるほどの、しっかりとしたキャラクター管理・育成要素を備えた作品だ。多くのパラメーターで特徴づけられた神々と“交神の儀”を繰り返すことで、生まれる子は前の世代より少しだけ強くなり、これを繰り返して一族を強化していく。交神の儀を行ったり、迷宮に出撃すると1カ月時間が経過するため、どんどん攻略していくというよりは、計画を立ててじっくり取り組むのが醍醐味の作品だ。

多くの神々から相手を選んで“交神の儀”を繰り返し、次代を担う子を成していく
一族が成長し、一定の条件を満たすと奥義を創作

 さらに、戦いの中で身に付けた“奥義”を実子に継承していったり、自分用に特注した装備品を次世代に継承していくことで装備品に加護がつく(PSPリメイク版での追加要素)など、代を重ねながら“自分だけの一族”を作り上げていく。悲願達成という大目標はあるが、そのための道筋は、いくつかある迷宮のどれを攻略していくかも含めてプレーヤーに任されているという、いわゆるフリーシナリオRPGの体裁をとる作品だ。

奥義は絶大な威力を誇る攻撃技や、敵の攻撃を完全無効化する技などさまざまな種類がある
実子を訓練することで奥義は継承可能
特注装備は同じ職業の一族に“形見分け”で継承することで眠っていた力が目覚めていく
特注装備を使っていると戦闘中に、先代所有者の加護が発動することも
さまざまな迷宮へ挑み、敵を倒して一族を強化していく

 本作を語る上でもうひとつの要は、RPGとしてのプレイ感覚はハック&スラッシュの要素が非常に強いことだ。交神の儀をするためにも、一族を成長させるためにも、とにかく各地の迷宮へ潜ってザコ敵や“鬼神”(おにがみ)と呼ばれるボスとの戦いを繰り返し、経験値にあたる“戦勝点”と、交神の儀に必要な“奉納点”を稼ぐ必要がある。奉納点は戦勝点と同じ分だけが蓄積される仕組みだ。

 また、レアな装備品や術を覚えるための巻物も、ザコ戦を繰り返してドロップを狙うのが基本。こうした、ともすると作業になりがちなゲームプレイを、さまざまな要素で飽きの来ないものにしているのが本作のユニークなところだ。代表的なのが戦闘開始時に毎回表示されるスロットで、道具やお金の表示がクルクル回り、止まった物がその戦闘に勝つと確実に手に入る。

 スロット自体はあくまで演出であり目押しの要素はないのだが、良い道具が手に入るとわかれば戦闘にも身が入るというもの。また、本作では敵の大将を倒せば他のザコが残っていても戦闘勝利となる仕組み。当然、ザコの分の戦勝点は手に入らないのだが、逆にザコから倒していると大将が道具を持ち逃げしてしまうことも。こういった稼ぎの駆け引きが楽しい戦闘となっている。

戦闘前のスロットにより入手可能な道具がわかる。同じ物が揃うと戦勝点が2倍になる要素も
迷宮の探索は時間制限があり、残り時間は画面右下の火時計で表示。火が赤いときは“熱狂の赤い火”で、レアな戦利品が出やすくなる。要するにフィーバータイムだ

 戦闘では“進言”システムも特徴。迷宮へ出撃するパーティメンバーは最大4人だが、隊長に指定した1人以外は戦闘時、それぞれの判断で通常攻撃や術・道具による攻撃・支援といった戦術を3つ進言してくるので、そのうち1つを選ぶだけでサクサクと戦闘が進行する。もちろん進言を受け入れず自分で操作することも可能だ。

 そのほか戦闘には前列・後列の概念があり、横一列を薙ぎ払える“薙刀士”、前列と後列の敵を一気に貫ける“槍使い”など職業によって攻撃範囲に違いがある。連続攻撃ができる“拳法家”や、空振りは多いが当たると威力絶大な“壊し屋”など戦闘スタイルにも違いがあり、これらの組み合わせで自分なりの出撃隊を作り上げていくのも一族育成の楽しみのひとつだ。

進言を選ぶだけで、結構うまく戦闘を進められる。進言内容は一族のパラメーターに関係し、攻撃的、慎重派など性格付けがなされている
複数人で同じ術を重ねがけする“術の併せ”というシステムもある。発動が遅くなる代わりに威力絶大
槍使いは前列と後列の敵を一気に貫ける
拳法家は連続攻撃が可能

 こうした基本的な要素は「2」になっても驚くほど変わらず、前作がさまざまな要素を盛り込みつつも、各要素がバランスよく噛み合った完成度の高い作品であることを感じさせる。その上でグラフィックスはリッチなフル3Dとなったほか、“2010年代のRPG”らしさを感じる新しい遊び方が加わった。ここからはそれらについて紹介してきたい。

(中村友次郎)