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★ PS Vitaゲームファーストインプレッション★
「軌跡シリーズ」を舞台にした“刑事ドラマ”が展開
PS Vitaならではの要素をプラスしたRPG
「 英雄伝説 零の軌跡 Evolution」
ジャンル:
ストーリーRPG
発売元:
角川ゲームス
企画・制作:
日本ファルコム、キャラアニ
開発元:
ピラミッド
プラットフォーム:
PS Vita
価格:
6,090円
7,980円 [限定版]
発売日:
10月18日
プレイ人数:
1人
レーティング:
CERO:B(12歳以上対象)

 「英雄伝説 零の軌跡 Evolution」は、2010年9月30日に日本ファルコムからPSP用として発売された「英雄伝説 零の軌跡」をパワーアップし、PS Vita向けにリニューアルしたタイトルだ。追加要素や、157キャラクターにボイスが入るなど、PSP版をプレイしたユーザーにも注目の内容になっている。

 “導力(どうりょく)”という架空のエネルギーによる文明を築き上げた世界で、濃厚な“刑事ドラマ”が描かれるという、とてもユニークな作品となっており、様々なユーザーにオススメできるゲームとなっている。発売に先がけて、序盤の展開やキャラクターを紹介し、ゲームの感触をお伝えしたい。


■ 新任捜査官ロイド、奇妙な新部署で仲間と共にクロスベルの闇に立ち向かう

主人公ロイドは、熱血ぶりと冷静な推理力を持つ捜査官。3年前にある事件で兄を失っている
放任主義の上司セルゲイ。彼は何故特務捜査課を作ったのだろうか
クロスベル市は、様々な顔を見せる。街を掘り下げていくストーリーが楽しい

 「零の軌跡 Evolution」は、日本ファルコムのRPGシリーズ「英雄伝説」の1つであり、特に「英雄伝説 空の軌跡」シリーズと世界観も共有し、システムも継承している上、エステルやヨシュアといった「空の軌跡」のキャラクターが多数登場する。本作はもちろん独立して楽しめるが、「軌跡シリーズ」という作品の1つとしてファンには一層楽しい作品となっている。

 今作では、ゼムリア大陸西部のクロスベル自治州の都市“クロスベル市”で、主人公ロイドと3人の若者達を中心に物語が展開する。この世界は50年前の“導力革命”によって大きな変化を迎えている。七耀石と呼ばれる結晶体を、オーブメント(導力器)と呼ばれる機械に組み込むことで、エネルギーを発生させる。この技術により、電気の普及や、交通機関の発達といった生活の変化が急激に起こっている。

 特殊なオーブメントによる“魔法”の使用や、軍事的な利用などもあり、今作ではさらに主人公達が携帯電話のような通信機を使ったり、インターネットのようなシステム、そしてハッキングと言った要素もある。今作は、序盤が都市ということもあり、ファンタジーと言うよりも我々の世界と似て非なる特異な発展を遂げた世界として描かれていると感じた。

 クロスベル州は、エレボニア帝国とカルバード共和国にはさまれている。条約により戦争の危険はないものの、州内では「帝国派」、「共和国派」の政争が盛んである。しかしその地理により、流通が盛んであり、中心都市のクロスベル市は世界有数の貿易都市となっており、導力ネットの回線など新技術も積極的に導入されている。歓楽街があって観光客も多い、各地域に「導力バス」がでているなど人の流れも多く、にぎやかな都市である。一方でマフィアが暗躍し、旧市街は治安も悪く、“闇”の部分も持っている。

 主人公ロイドは警察官であり、新米捜査官として3年ぶりに故郷クロスベル市に帰ってきた。しかし彼の所属先は「特務支援課」という新設された課であった。そこで“遊撃士”のような市民の人気を集める仕事をしろという。遊撃士とは国家間のしがらみを越えた人々の平和を守る民間団体。彼等の活躍が華々しい一方で、クロスベルにおける警察は政治的に振り回される事も多く、汚職などもあり、市民の信用を得ていない。ロイド達特務支援課は、こういった世論を好転させるために、様々な市民のもめ事に介入していくことになるのだ。

 「空の軌跡」シリーズでは、これまで遊撃士の物語が中心となり、様々な国家との関わりが描かれていた。一方今作では“警察”が中心となるという、ひと味違う展開を見せる。警察と言っても、主人公ロイドと仲間3人は特務支援課という異端の存在であり、内部からもうさんくさい目で見られ、孤立している。また、序盤ではピンチを遊撃士に助けられるなど未熟さが強調されている。「零の軌跡 Evolution」はロイド達4人の若者が、さまざまな事件に取り込む中、どう成長していくかが物語の中心となる。

 導力という架空エネルギーや、モンスターとの戦闘というファンタジーRPG的な要素を持ちながら、本作はしっかりと「刑事ドラマ」になっているところが面白い。警察主流派からはずれ、様々な組織の思惑に振り回されながらも、地道に捜査を進め、証拠を集め推理し、謎を解き明かしていく。明らかになってくる巨悪の存在など、物語のスケールは大きくなっていく。このユニークなテイストはぜひ味わってもらいたいところだ。

 ロイドは捜査官の兄を3年前に失っており、その事件の真相は明かされていない。仲間3人にも、それぞれのドラマがある。品の良いお嬢様の「エリィ」はなぜ警察などという組織に入ったのかに興味が惹かれるし、18歳が捜査官の最低規定年齢だというのに、「ティオ」は14歳の少女で、新型の魔導器のテストのために警察に出向しているという。軟派な青年「ランディ」もここに来たのには理由がありそうだ。そしてこの特務支援課を作った「セルゲイ」の思惑など、キャラクター達のドラマにも注目である。

 画面はクォータービューでキャラクターはデフォルメされている。主要キャラクターはイラストが用意されていて、登場時には大写しになる。グラフィックスは非常に細かく描き込まれていて、細部をチェックするのも楽しい。今作はクロスベルという都市が舞台になっており、華やかな歓楽街、怪しげな裏通り、落ち着いた住宅街、大きな建物が建ち並ぶ行政区など様々な場所がある。もちろん舞台はクロスベル市だけでなく様々な地域へと移動もするが、今作は1つの都市を掘り下げていくドラマ作りがなされている。

 「零の軌跡 Evolution」はPSP版「零の軌跡」をパワーアップしたもので、追加要素としては、イベントでのボイスや、ミニゲーム、サブクエストなどがある。特にボイスに関しては主要キャラクターのセルゲイや、ロイドの姉のような存在の「セシル」といった主要キャラクターも今作では有名声優が声を当てており大きな楽しみとなっている。主要キャラクターだけでなく、あるイベントシーンで、“チンピラの恫喝”を声優がノリノリで演じていたり、声が入ることで一層面白くなっているシーンも多い。PSP版をプレイしたユーザーも楽しめる作品になっているのだ。


ロイドと共に特務支援課に所属する3人の仲間。クロスベル市生まれのお嬢様「エリィ・マクダエル」、新型の魔導器のテストをするために警察に来たという「ティオ・プラトー」、軟派な性格だが熱血ぶりも感じさせる「ランディ・オルランド」
3年振りに帰ってきたロイドは、いきなり特務支援課という何をするかもわからないような部署に配属される
行政区や、東方風の地区、怪しげな裏通りなどクロスベル市は様々な地域がある。事件を追いながら、ロイドはクロスベルの闇に直面していく


■ シリーズを受け継ぐゲームシステム。やり込み要素たっぷりな収集コンテンツも

戦闘は左の行動順で展開していく。アーツと攻撃、クラフトを使いこなせ
単体の敵に強力なロイドのSクラフト「タイガーチャージ」

 「零の軌跡 Evolution」のゲームシステムは「空の軌跡」シリーズを継承したものになっている。キャラクターはそれぞれ専用のオーブメントをもち、ここに七耀石を加工したクオーツをはめ込むことで、様々な「アーツ」と呼ばれる魔法が使えるようになる。クオーツは攻撃力や命中率のアップ、また「マップに宝箱を表示する」といった様々な特性を持っており、キャラクターを強化する。

 さらにキャラクターにはそれぞれ固有の「クラフト」という技を持っている。このクラフトは敵を攻撃したり、攻撃を受けたときに増加するCP(クラフトポイント)を消費して発動させる。クラフトは範囲攻撃ができたり、複数のキャラクターを回復できたりと強力なものが揃っている。さらにCPが100以上になると「Sクラフト」という非常に強力な必殺技が使える。戦闘は各キャラクターの行動順で行なうが、Sクラフトを使うとこの順番を無視して使うことができる。ただしSクラフトを使うとCPが0になってしまうため、使用には注意が必要だ。

 アーツとクラフトにより本作の戦闘はかなり派手なものとなっている。通常攻撃はCPを溜めるための手段で、クラフトで強力な攻撃を行なっていく、というのが基本的な戦い方だ。ただ、アーツはオーブメントの回路の組み合わせで様々なものが使えるが、強力な回復技や、範囲魔法を使えるようにクオーツを組みこんでいくには、試行錯誤の必要がある。本作がシリーズ初挑戦、という人には少し敷居が高いと感じた。有効な使い方などを最初に提示しても良かったと思う。マニュアルを見ながら、試してもらいたいところだ。

 この他、各地の料理のレシピを覚えて食材を集めて料理を作る「料理システム」や、様々な場所で釣りをする「釣りシステム」など、「軌跡シリーズ」でおなじみのゲームシステムが多数盛り込まれている。シリーズのファンも初めての人も楽しめること請け合いだ。さらに「零の軌跡 Evolution」にはオリジナルのミニゲームも登場する。PS Vitaのタッチスクリーンなどを活用したもので、こちらも注目だ。


クラフトはどれも派手だ。左からロイドの「アクセルラッシュ」、ティオの「アナライザー」、ランディの「パワースマッシュ」
さらに派手なSクラフト。ティオの「エーテルバスター」、ランディの「クリムゾンゲイル」、エリィは回復技の「オーラレイン」を使う
アーツは使いこなすにはマニュアルで必要なクオーツを考えておく必要がある。オーブメントのスロットを開放しないとクオーツがはめ込めないので、スロット解放を優先したいところだ
釣りや料理といったシリーズを継承するやりこみ要素もある


■ 世界・キャラクターを掘り下げていく、ボリュームたっぷりなストーリー

凄腕の遊撃士アリオス。初任務では彼に助けられる
不良グループの抗争。声優がノリノリでとても楽しい
戦闘時、一定確率で可能になる合体攻撃

 ゲームの前半部分の展開を紹介したい。「序章:特務支援課」で、ロイドはいきなり謎だらけの状況に放り込まれる。捜査官の資格を得て、故郷クロスベルに帰ってくるものの、配属されたのは「特務支援課」という聞いたこともない部署の上、同僚は捜査官の資格すら持たない謎を持った3人、中でもティオはまだ14歳だというのだ。任された任務はクロスベル地下にある“ジオフロント”での魔物討伐だ。

 さらにそこでは、最後の最後にアリオスという凄腕遊撃士に救われ、それを新聞の「クロスベルタイムズ」にすっぱ抜かれるという苦いデビューを果たす。市民に認められていない警察が遊撃士のまねごとをしたあげく、トップ遊撃士に救われ実力の差を見せつけられる。思わずへこんでしまいかねないスタートだが、ロイドはくじけない。この魔物退治を通じて、仲間達への信頼と、市民を守る必要、そして「警察だからこそできるはずがあるはずだ」という信念を得る。ロイドの熱血漢ぶりが、プレーヤーに強く印象づけられるシーンだ。

 この後メインストーリーは旧市街地での不良グループの抗争へ繋がっていくが、サブクエストでも「クロスベル市」という場所が掘り下げられていく。多くの観光客が訪れ急激に変わっていく街。旧市街はそこから取り残されたスラムになっている。繁華街は華やかだが、裏通りではマフィア達が拠点を築いている。東側はまるで“中華街”のような、東方の文化を持つ人々の区画もある。こういった場所を行き来し、住民達の話を聞いていくことで、クロスベル市がプレーヤーの中できちんとした存在感を持って行く。同時に、4人の主要キャラクターに対しての理解も深まっていく。

 不良グループの抗争は、ロイド達にクロスベル市の“闇”を考えさせるきっかけになる。この闇は政治家とも繋がっており、警察は政治家から影響を受けて彼等の横行を許している部分もあるという。遊撃士という国から独立した立場での物語では語られなかった、ストーリーが描かれていく。警察というしがらみの多い組織の中で、特務支援課という“異端”の存在であるロイド達が、どんな活躍をしていくのか、プレーヤーはグッとこの物語にのめり込んでいくだろう。クライマックスでまるで時代劇のような“お約束”のシーンもあり、大いに楽しめる。

 

 続いての「第1章:神狼たちの午後」では、クロスベル州各地に出没する「狼型魔獣」を追うことになる。本来は“警備隊”の仕事だが、調査が進まず支援要請が来たのだ。クロスベル市から各地方には、今ではバスが出ているが、ロイド達は何の巡り合わせか歩いて各地方に行くことになる。「軌跡シリーズ」の世界は、街の外には魔獣が闊歩している危険な世界だ。冒険の舞台がグッと広がり、クロスベル州という地域そのものをプレーヤーに見せる展開となる。

 「零の軌跡 Evolution」は“謎解き”が楽しいと感じた。警察をテーマにしているためか、推理アドベンチャーの要素が強く、様々な証拠を集め、そこからロイドが推理していくという展開になっている。プレーヤーも事件の展開を予想しながら進めていくことで一層楽しめるだろう。そして見えてくるのは事件の真相のみならず、組織や国家の矛盾点だったり、ちょっと“社会派”が入っているのが、いかにも「刑事もの」らしくて楽しい部分だ。「第1章 神狼たちの午後」からは、エステルとヨシュアという「空の軌跡」シリーズの主人公も登場する。「空の軌跡」ファンは一層楽しめるだろう。

 「零の軌跡 Evolution」はボリュームたっぷりな作品となっており、特にサブクエストや、料理、釣りといったやり込み要素もあり、腰を落ち着けてどっぷりとはまれる作品となっている。プレーヤーはたっぷりと本作の世界を楽しめるのだ。


「序章:特務支援課」はライバルとなる遊撃士に助けられるというさんざんなデビューだが、不良グループの抗争事件では、ロイドが優れた推理力を見せる
「第1章:神狼たちの午後」では舞台はクロスベル市周辺の地域へ。「空の軌跡」のエステルやヨシュアの他、ロイドの姉のような存在のセシルも登場する
サブクエストでは世界観が寄り掘り下げられる。「零の軌跡 Evolution」だけの任務も
「零の軌跡 Evolution」オリジナルのミニゲーム。タッチパネルなど、PS Vitaならではの機能を使う

(2012年 8月 17日)

[Reported by 勝田哲也 ]