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★ PS3ゲームファーストインプレッション★
圧倒的なクオリティで迫る“心に問いかける旅”の物語
「風ノ旅ビト」
ジャンル:
アドベンチャー
発売元:
ソニー・コンピュータエンタテインメント
開発元:
thatgamecompany
プラットフォーム:
PS3(ダウンロード専売)
価格:
1,200円
発売日:
3月15日
プレイ人数:
1人〜2人
レーティング:
CERO:A (全年齢対象)

 「flOw」、「Flowery」を制作したデベロッパー「thatgamecompany」が贈る最新作「風ノ旅ビト」の配信が、いよいよ開始された。過去2作同様にPlayStation Network専用のダウンロードタイトルとして配信された本作は、これまでのタイトル同様、プレーヤーに問いかけるかのような独特なテーマを、言葉を使わずに描いたものとなっており、国内外を問わずゲームファンからの注目度は高い。

 ソニー・コンピュータエンタテインメントにて事前にプレイさせて頂いたので、そのプレイを元にどのような作品になっているのかをまとめていこう。なお、プレイの際には日本版のローカライズプロデューサーを務めた岩瀬尚子氏にご同席頂いた。岩瀬氏には本作について紹介頂いたほか、質問にもいくつかお答え頂いたので、それらも交えてお伝えしていこう。



■ 好奇心のままに広大な砂漠を探索し、プレーヤーの心に多くを投げかけてくる“旅”の物語

広大な世界を自由に探索していくアドベンチャー作品

 「風ノ旅ビト」は、「好奇心」や「興味」といった「心のコンパス」を頼りに広大な世界を旅していく作品。世界には一切の言葉や説明はなく、見渡す限り広がる空と砂漠の光景を、風が吹き抜けていくばかり。そんな世界を旅する中で様々な光景を目にし、出会い、発見することで、プレーヤーの心にたくさんの言葉や感情を生んでいく。そんなスピリチュアルでアーティスティックな作品だ。

 プレイを開始すると、オリエンタルな衣服に身を包んだ主人公が砂丘に囲まれた場所に降り立っていた。主人公は赤い布で頭から全身をすっぽりと包み込んだ姿で、人型ではあるが素性はもちろん性別すらわからない。名前もないため、このレポートでは便宜上“自分”と呼んでおこうと思う。

 自分が旅をしている理由も明らかではないが、これらもまたプレイしながら発見したものを元に、プレーヤーが想像していくものになっている。ストーリー性は「flOw」、「Flowery」と比較すると高めになっているということだが、単に物語を説明するようなものではなく、プレーヤーがビジュアルやプレイから感じ取っていくもの。プレーヤーがそれぞれに、いろんな想像ができる余地をあえて作ってある。


操作する主人公は、オリエンタルな模様の入った赤い衣服に身を包んでいる。人型をしているが男性なのか女性なのか、名前も素性もわからない

言葉や説明のない本作。目に入った何か気になるものを目指し、好奇心のままに進んでいく
いかにも何か目標になっていそうに思える遠くの山。頂上付近は何か光り輝いている

 スタートした場所をまずは見渡してみる。視点操作はコントローラーを傾けるSIXAXIS操作でも、右アナログスティックでも可能だ。よく見ると、周囲を囲む砂丘の上にひとつぽつんと何かがあるのが見えた。そこに向かって砂丘を登っていく。登っていくモーションはいかにも急勾配を苦労して登っているのが伝わってくる動きで、とても凝っている。

 砂丘を登ったその先に見えた光景は、どこまでも続いているような砂漠の起伏と、砂に埋もれた遺跡だった。遠くには山頂が輝いている山のようなものが見える。冒頭シーンでもあるこの光景は、本作の壮大さを感じさせてくれる。本作はダウンロード専用タイトルだが、とてもそうとは思えないほどフィールドは広く、そしてビジュアルインパクトは高い。

 画面には表示類は一切なく、本作の独特なテイストを損なうことのないシンプルな作り。そこに見えるグラフィックスは、独特なタッチで描かれているCGアート作品のような世界だ。特に砂の表現が凝っていて、歩けば足下が沈み込み崩れ、風に流れて砂塵が舞う。その果てしない砂漠を太陽の光源が照らしていて、影になる部分とのコントラストができあがっている。

 チャプターによってフィールドや太陽の光(時間帯)がどんどん変わっていくのだが、砂の世界を様々な色合いの光が照らすことで、まったく異なる見え方をする。それはシンプルな砂漠から、夕日に照らされた海のように見える時も、深海の底のように見える時もある。どこを見ても思わず見入ってしまうような光景ばかりで、プレイ中に筆者は何度か「この構図の画面を壁紙にしたい」と話したほど。探索しようという好奇心が自然と湧く不思議な世界だ。


広大な砂漠、砂の質感や描写など、独特なタッチで描かれたアート作品のような世界が広がっている。そこを歩んでいく自分の動きも足下が砂に沈んだり、砂丘を登る時には大変そうにしたりと、細かな描写がなされる

フィールドを見渡せば自然と興味を引かれるものが目に入る。この画面なら、上空にある橋の残骸のようなものに乗ってみたくなる
ところどころにある小さな赤い布が舞っているところ。浮遊の力を得られる
浮遊する力で高く舞い上がり、普通では行けない場所にも行けるようになる

 何度も繰り返すが、本作の特徴はなんと言っても、一切の言葉による説明がないということだ。あえて説明をしないことで、人それぞれの受け取り方が生まれていくのではないだろうか。説明や指示はなくとも、プレーヤーが自ら周囲を探索し興味を持ったものに触れていけば、自然とゲームが進んでいくようなデザインになっている。

 例えば、導入シーン後にはどこに行ってもいいが、砂に埋もれた遺跡がちらほらと見えているし、何枚もの赤い布のようなものがひらひらと舞い上がっている場所も見えた。そういうものが見えれば、「あれは何だろう?」と興味が湧き、近くで見てみたくなるというもの。先々のチャプターでも、大きな建造物があったり、何か変わったものが見えたりと、ルートのようなもののない広いフィールドの中でも自然と進むべき先が掴めるようになっている。

 何枚もの赤い布のようなものがひらひらと舞い上がっている場所へ行ってみると、自分の首に巻かれた布の模様が輝き始めた。何か力を得たようだ。×ボタンを押してみると、空へ舞い上がって飛べるようになった。赤い布のようなものが舞い上がっている場所から、飛び上がれるようだ。空高く飛んでからゆっくりと空中を浮遊移動できる。これで普通には行けなかった場所にも行けるようになる。

 空高く舞い上がり浮遊する感覚は「Flowery」にも共通するような、「気持ちよさ」がある。力を与えてくれる赤い布がまるで花びらのように周囲を舞う。しばらく浮遊したあと地面に降り、下り坂の砂丘を滑り降りていく。どれも気持ちよさに満ちた動きだ。

 なお、浮遊していられると模様の光が徐々に減っていき、光が全て無くなると落ちていくという仕組みになっていて、浮遊できる時間は首に巻かれている布の後ろに伸びている長さの分(光る模様の数の分)ということになっていた。模様の数はフィールドに隠されている光るシンボルを得ると増えていくようで、その隠されたシンボルを探すのも楽しみ方のひとつ。


首に巻いている布の模様が光っているが、この光が失われるまで浮遊していられる。布は光るシンボルを見つけることで長くなっていく

左側の遠くに大きな布が見えているが、あれに○ボタンでアクションをとると何かが起こる
チャプターのゴール地点には、祈りを捧げるような、瞑想するところのような場所がある
生きているかのように空を自由に飛び回る布も。イルカのような鳴き声を発しながら自分とともに進んでくれる

 探索していくと、大きな長い布があった。浮遊する力を与えてくれた赤い布がもっと大きくなったような物だ。ここで○ボタンを押してみると、自分がシグナルのような音を発した。何かギミックを動かしたりする時に共鳴させるようなアクションだ。シグナルに共鳴して、大きな布に光の模様が浮かび上がり、それまで進めなかった場所を繋げる道になってくれた。そうして進んだ先には祈りを捧げる場所があった。それがチャプターのゴールとなっている。

 次のチャプターへと入る前に、砂に埋もれた遺跡を描いているのか壁画のようなものが浮かび上がっていく画面が現われた。これもまた何を示しているのかは定かでないのだが、遺跡に何があったのか、旅をしているのはなぜなのかを、プレーヤーそれぞれが想像するきっかけとなりそうだ。

 また壁画の後には、自分と似た姿をした背の高い誰かと出会っているシーンも描写された。ここでも言葉はなく2人の様子から察していくことになるが、お互いが何かを語りかけているような、そんなシーンと思えた。

 続くチャプターでは、シグナルに共鳴して反応する、生命を持った空飛ぶ布のようなものが現われた。キュイキュイとまるでイルカのような鳴き声も出す。それは自分の周りを飛び回り、「こっちにおいでよ」と言わんばかりに導くように飛んでいった。遺跡を探索していくと、その布は次々に増えていき、イルカの群れが空を泳いでいるような光景を作りあげていた。

 別のシーンでは、夕日に照らされて輝く砂の下り坂を、ハイスピードに滑り降りていく場面があった。谷間を抜けていくような地形がコースのようになっていて、そこを滑っていく様子はスノーボードやレースゲームのような感触だ。ルートはいくつかあるようで、行くのが難しいルートを進めば隠された光るシンボルが手に入った。

 この滑り降りるシーンは爽快感抜群で、終盤には海岸線沿いの道路をドライブしているところを写しているような、真横から見たカメラアングルになることもあった。夕日で黄金に輝いている砂漠がまるで夕暮れの海のようにも見える。

 そんなシーンを過ぎると、今度は一転して暗く、孤独を感じさせる光景になった。遺跡の中なのか光もわずかで、まるで深海の底のように見える。砂埃が舞ってキラキラと光り、浮遊の力を与えてくれる布がまるで海草のように上に向かって伸びていた。

 その先には、それまでの穏やかなテイストとは打って変わり、“ある困難”が待ち受けていたのだが……。この続きはぜひプレイをしてご覧頂きたい。


シーンが変わると、一転して暗く静かな場所に。ここではまるで砂の世界が深海の底にように感じられる

 もうひとつ本作には大きな魅力がある。それはサウンドだ。サウンドはオーケストラ演奏が収録されていて、世界観にばっちりとマッチしていると感じられた。楽曲は、時に静かに、時に賑やかにと、シーンやプレイに合わせて自然と変化していくところがポイントで、言葉はなくとも音から伝わってくるものがある。

 レコーディングからチューニングまで相当なこだわりがなされているのか、音のクオリティが驚くほどに高い。細かい音までくっきりと伸びやかに聞こえてきて、その音を聞きながら探索していくのはすごく心地良い。グラフィックスだけでなく、サウンド面においても、その威力に圧倒される。




■ 言葉を使わずにスピリチュアルなテーマを描く、圧倒的にハイクオリティなタイトル

風が吹き抜ける砂の世界を旅していく本作。日本版のタイトル名はそのイメージから「風ノ旅ビト」と名付けられた
言葉を使わずに奥深いテーマを描いている本作。受け取り方はプレーヤー次第。プレーヤーは旅の果てにどんな思いを得るのだろうか

 本作のタイトルは「風ノ旅ビト」だが、これは日本版のタイトルで、原題は「Journey」となっている。この日本版タイトルが付けられた経緯や込められた意図について岩瀬氏に伺ってみたところ、当初は「Journey」という原題のままにしたかったが、諸般の事情でそのまま使うことはできなかったため、開発側とも協議しながら、「Journey」という言葉を「旅人」に置き換え、そこに本作のフィールドで様々な変化を見せ印象に残る“風”というキーワードを加えた「風ノ旅ビト」としたそうだ。

 開発は「Flowery」がリリースされた直後の約3年前から始まっていた。かなり長い期間を要しているが、これには理由がある。「thatgamecompany」は常に15人程度の少人数で開発を行なうチーム。作品で描くテーマやテイストの理解度を高く保つために、あえて少人数に限定して開発しているという。それだけに時間はかかっているが、本作の特徴である独特な魅力が高いレベルで作り上げられているというわけだ。

 最後に今作をプレイした感想をまとめよう。広大なフィールドの中でどこに行っても自由というスタイルだが、その中で発見があり、出会いがあり、進む道が見えて、次へと繋がっていく。自らの興味や好奇心で歩み、それが新たな結果を見せてくれる。それはまさしく“旅”というコンセプトそのもの。旅というコンセプトがうまくゲームという形で表現されている。

 本作が描くテーマはまさにタイトルどおり、“旅”という言葉そのものだろう。旅と一言に言ってもいろんな意味や捉え方がある。生きていく時間、つまり人生を歩んでいくことを旅と表現することもある。本作が描くテーマはまさにそうした多様な意味を込めた“旅”ではないだろうか。作品中にはこれらは説明されないし意味も限定していない。プレーヤーの皆さんがプレイしてどう感じたか。その感じたもの全てがあなたにとっての正解であり、本作の答えとなるだろう。

 グラフィックス、サウンド、そして言葉を使わずにプレーヤーにたくさんの事を感じさせる独特なメッセージ性の高さ。いずれも驚くほどにクオリティが高くて、他のゲームにはないテイストを作り上げている。そのオリジナルなテーマの描き方は、「thatgamecompany」の前2作よりもさらに洗練され、ストーリー性やゲーム性も高まって、より奥深く壮大なものを描いている。

 本作をプレイしてあなたは何を感じるだろうか。静かな夜にじっくりと遊び、光景に癒やされ、音楽に身を委ね、プレイの中で自分の心の内に生まれた何かを見いだすかもしれない。こういう表現で紹介したくなるほどに感受性を刺激してくれる、アート作品のようなタイトルだ。


【スクリーンショット】
【コンセプトアート】



(2012年 3月 15日)

[Reported by 山村智美 ]