★ Wiiゲームレビュー★
時と共に獣化してしまう少女を救うべく
13の塔へと挑むアクションRPG
「パンドラの塔 君のもとへ帰るまで」
ジャンル:
  • アクションRPG
発売元:
開発元:
  • ガンバリオン
プラットフォーム:
  • Wii
価格:
6,800円
発売日:
2011年5月26日
プレイ人数:
1人
レーティング:
CERO:C(15歳以上対象)

特徴は独特なストーリーと鎖を使ったアクション

 5月26日、任天堂株式会社から新作アクションRPG「パンドラの塔 君のもとへ帰るまで」が発売された。開発は、ニンテンドーDS「UMP ULTIMATE STARS」やWii「ワンピース アンリミテッドクルーズ」などで知られる株式会社ガンバリオンが担当している。

 対応コントローラーは、Wiiリモコン+ヌンチャク、クラシックコントローラPRO、クラシックコントローラ。Wiiリモコンでのポインティングが得意ならWiiリモコン+ヌンチャクを、そうでないならクラシックコントローラPROやクラシックコントローラを使うのがオススメだ。

 早速、本作の魅力を紹介していきたい。

 ※操作方法は全てクラシックコントローラPRO及びクラシックコントローラの場合のものです。



■ 時と共に獣化してしまう獣の呪いにかかったセレスと彼女を救うべく立ち上がる青年エンデの物語

十三訃塔へ

世界の遥か果てに存在する荒野“オケアノス”。
彼の地には、“爪痕”と呼ばれる大渓谷が存在していた。
その中央、底知れない傷の上に浮かぶ
――“十三訃塔”。
いくつもの塔が絡み合う複雑な意匠のそれは
巨大な城にも見え、
鎖で中空に固定された姿は
蜘蛛の巣を彷彿とさせた。
世界から隔離されるように
存在する塔の群れは、
爪痕がこれ以上広がらないように、
大地を繋ぎとめているかのようだった……。

 統合暦511年、王都ラダマンチェスでの収穫祭において、巫女セレスが突如狂乱。セレスは獣か怪物のような姿に変貌してしまう。原因は獣の呪い。獣の呪いにかかった人間は体のどこかに紋章のようなアザが現われ、時と共に獣と化し、ついには人間の姿に戻れなくなる。十三訃塔に鎮座する主(あるじ)、その肉を口にすることが呪いを解く鍵になると謎の老婆グライアイから教えられたエンデは、グライアイから託された不思議な力を宿すというオレイカルコスの鎖を手に、「主の肉」を求め、塔の奥へと向かう。

 呪いは時と共にセレスの体を蝕んでいき、肉を持ち帰るのが遅くなればなるほど、セレスは獣化していく。セレスが完全に獣化するとゲームオーバーになってしまうため、主の肉を持ち帰るのが間に合わない場合、エンデ(プレーヤー)は呪いの進行を一時的に戻すことができる「外僕の肉」を持ってセレスのいる監視塔に戻らねばならない。

 本作では獣化していくセレスの姿や肉を食べるシーンがリアルに描かれている。獣化していくセレスの姿は痛々しくもあり、おどろおどろしくもある。また、セレスの信仰しているエオス教では、命を尊ぶ教えから動物の肉を食べることを禁じており、これまでセレスは肉を口にしたことはない。このことが、肉を食べるシーンをより衝撃的なものにしている。

獣化が進んでいなければ普通の人間の姿だが、呪いが進行してしまうとこんな姿に。このスクリーンショットは軽度のものだが、さらに呪いが進行すると、より酷い姿になってしまう。呪いの進行が軽い内に元の姿に戻してあげよう

 エンデとセレスの関係、何故グライアイは獣の呪いの事を知り、2人に手を貸すのか? 不思議な力を宿すオレイカルコスの鎖とは? 大渓谷に鎖で空中に固定された十三訃塔が作られた経緯など、物語を進めていくことで謎が明らかになっていく。

エンデ 
CV:千葉進歩さん
アテナイ出身で口数の少ない青年。獣の呪いにかかったセレスを救うべく、主の肉を求め、オレイカルコスの鎖を手に十三訃塔へ向かう
セレス
CV:能登麻美子さん
エリュシオン王国出身でエオス教を信仰する慈悲深い女性。収穫祭では神に捧げる歌を謡う巫女に選ばれるも舞台上で突如獣の呪いにかかってしまう
グライアイ
CV:谷育子さん
行商を生業とするドヴェルグ族の民で、獣の呪いの解き方をエンデとセレスに説いた謎の老婆。背中の壷に入っているのは彼女の夫


■ 十三訃塔から獣の肉を持ち帰り、セレスの獣化を阻止。セレスとの親密度はエンディングにも影響

 ゲームは十三訃塔とセレスのいる監視塔を往復することで進行していく。十三訃塔にある各塔で主の肉を入手し、セレスの元へと戻るという流れだ。ただし前述の通り、獣の呪いは時と共に進行するため、主の肉が得られなくても、呪いが進行しきってしまう前に外僕の肉を持ち帰り、呪いの進行を戻さなければならない。なお、呪いの進行状況は画面左下の獣化ゲージでいつでも確認できる。

 主の肉を渡せば、呪いの進行状況は完全にリセットされるが、外僕の肉は、乾いた肉片<獣肉<滴る獣肉<脈動する獣肉と、ものによって回復できる上限が定められている。外僕の肉は特定の敵を倒さないと入手できないので、塔の探索中、最低でも1つは外僕の肉を確保しておきたい。

塔内での探索中、セレスの獣化は進んでいく。肉を持ち帰り、彼女に食べさせて呪いの進行を回復さなければならない。もし、彼女が完全に獣化してしまうとゲームオーバーとなる。瞬時に監視塔へ戻ることのできるアイテムも存在するが、気軽に使えるほどたくさん入手できるわけではないので、徒歩で戻る場合は移動時間も考慮に入れなければならない

 セレスには、肉を渡す以外にも、話をする、文書を解読してもらう、贈り物をするといったことが可能。セレスの喜ぶ贈り物をすれば、セレスとの親密度が上昇。贈り物によってはセレスの服装や監視塔の内装が変化したり、アイテムの最大所持数を増やしてもらえることも。なお、親密度はエンディングにも影響する。

セレスに贈り物をすることで親密度が上昇していく。一定以上親密度が上がることでもらえる装備品には強力なものがあるので、なるべく親密度を上げるようにしたい。贈り物はなんでも良いわけでなく、セレスが喜ばないものをあげると親密度は下がってしまう。喜ぶアイテムかどうかは、アイテムの説明文が参考になる


■ 特性の異なる4種類の武器でのアクション。武器を強化させる楽しみも

 エンデは装備している武器や鎖で敵と戦う。武器攻撃はaボタン。連続入力すれば、連続攻撃が可能。一定時間長押しすれば強攻撃が繰り出せる。後述の鎖を使ったアクション中でも長押しでのタメを受けつけてくれる場合があるので、長押しするクセをつけておきたい。強攻撃中、エンデの周囲に光の輪が発生し、輪が消える直前でaボタンを追加入力すれば強攻撃による追加攻撃が可能。入力タイミングを覚えて、確実に追加攻撃が出せるようになればダメージ効率が跳ね上がる。

戦闘を重ねて熟練度が上がれば、レベルアップして強くなる。レベルアップの際には体力が全回復するので、強敵との戦いでは、回復アイテムだけでなく、熟練度が得られるアイテムでレベルアップして全回復なんてのも有効

 武器は全4種類。初期武器以外の3種は塔の中で入手でき、内1つはゲームクリア後にのみ入手できる。最初に持っているのは六零式軍用剣という両手剣。振り速度、武器攻撃・防御力とトータルバランスの良い武器。五六式双小剣は二刀一対の小剣で、単発のダメージや武器防御は低めながら、攻撃速度と手数に優れている。特務式大鎌は攻撃力と攻撃範囲に秀でた攻撃特化武器。その分、武器防御力は低い。クリア後に入手できる起爆式攻城杭は攻撃範囲は狭いものの、その武器攻撃力・防御力は圧倒的。それぞれ特性は異なるが操作方法に違いはないので、好みのものを選択するのがいいだろう。

攻撃力・防御力・範囲・速度など、武器により特性が異なる。武器と鎖を使いこなせれば、安全に高いダメージを与えることができる。もちろん、防御面のアクションも重要。Lボタンでガード、Lボタン押しながらLスティックで回避が可能。特に回避は完全無敵で、非常に頼りになる。ただし、2回連続回避すると、少し隙が生まれ、すぐに次の回避などを行なえなくなる

 これら4種類の武器は、監視塔でグライアイを呼び出すことで強化(武器練成)できる。どの武器も10段階の練成が可能で、費用はかからないが、素材が必要になる。素材は主に塔内で入手するが、本作には時間の概念があり、素材によっては特定の時間・場所でしか入手できないものもある。練成すると攻撃力が上がり、練成度合いによって技LVが上昇。技LVが上がると強攻撃での攻撃回数が増加する。また、グライアイを呼び出すと、練成以外にもアイテムの購入・売却、合成・修復、会話が可能。販売されているアイテムは素材、回復アイテム、贈答品など様々。合成では装備品、消耗品、素材などが作り出せ、こちらも費用はかからない。修復は、ゲーム中ダメージを受けて壊れてしまった装備品やアイテムの修復を行なうもので、少額ながら費用がかかる。会話では塔の情報や近況などを聞くことができる。

 装備は装備エリア内に装備品を配置するという特徴的なシステムを採用している。装備品にはそれぞれ必要装備エリアが設定されており、パズルゲームのように制限されたエリア内に配置する。なお、装備エリアはレベルに応じて広がっていく。

監視塔でグライアイを呼び出せば、武器練成、アイテムの売買などが可能。集めた文書や余った肉も買い取ってくれる戦闘の難易度はキャラクターのレベルや武器の練成状況などにより大きく変化する。敵が強いと感じたら、レベルアップ、武器練成、装備見直しを行なうといいだろう装備エリアに装備品を配置することで装備完了となる。縦横に回転させられることを利用し、空きエリアがないように配置したい


■ オレイカルコスの鎖による多彩なアクションで塔を攻略

鎖で相手を拘束し、攻撃が基本となる。仕掛けの起動にも鎖が欠かせない

 敵との戦闘や塔の攻略に欠かせないのがオレイカルコスの鎖。ポインターをRスティックで対象に合わせ、Rボタンで鎖を撃ち出す。対象となるのは敵や仕掛けなどで、撃ち出せるポイントはポインターの表示が変化するのですぐにわかる。Rボタンを長押しすれば、ポインターの周辺を拡大し、さらに時間の流れを遅くすることができる。

 敵に鎖を撃ち出すと拘束することができるが、拘束中は鎖ゲージが減少し、ゲージがなくなると拘束が解かれてしまう。Xボタンで鎖を巻き取ったり、Lスティックで鎖を引っ張ることで鎖ゲージはたまっていく。拘束して相手の行動を封じ、武器攻撃(aボタン)、鎖を引きちぎる(bボタン)、投げる(Rボタン押しながらaボタン)、敵を振り回すスイング(Yボタン)などで攻撃するわけだ。他にも同じ対象に鎖を撃ち出すと鎖を巻いてより強く拘束したり、Rボタンを押しながらaボタンで最大連続5回の鎖射撃といったアクションも存在する。

 鎖を引きちぎるアクションは瀕死の敵に用いることでアイテム引き抜きになる。拘束した部位により、獲得できるアイテムは異なる。Rボタン長押しでの拡大鏡を利用すれば、部位が狙いやすい。

 ほとんどの敵は武器攻撃だけでもなんとかなるが、主との戦いでは鎖が要になる。特定のポイントを拘束し、Xボタンなどで鎖ゲージをため、引き抜くことでダメージを与えられる。もちろん、ダメージを与えられる弱点をさらけ出させるためには様々な手段を講じなければならない。

 ゲームの鍵ともなっている鎖でのアクションが気持ち良く、その多様性に驚かされた。単に攻撃するだけでなく、2体の敵を同時に拘束、鎖を絡ませて引っ張る、2点間をつないで固定、突起物に鎖を放って移動、投げる、と様々なアクションが可能。ポインティングするタイプのゲームでは、ポインターの移動速度など、ポインティングに難の出ることも多いが、Rボタン長押しでの拡大鏡と時間の流れを遅くする機能があるため、簡単に鎖でのアクションが楽しめる。

塔内では様々な仕掛けが待ち受けている。主の待つ部屋は鎖で施錠されており、塔内の鎖を全て解除すれば主の部屋へと行くことができる

■ 最後に

 本作は、ストーリー、アクション共にしっかりと作り込まれた良作といえる。Rボタン長押しでの拡大鏡と時間の流れが遅くなるシステムにより、鎖でのアクションがストレスなく楽しめるし、自動保存されるチェックポイントが多く存在するため、長時間やり直しということもない。時と共に獣化が進行するため、時間を無駄にできない緊張感があるが、その反面、じっくり塔を探索をしたいのに戻らなければならないことがもどかしくもある。これについては賛否両論あるだろう。

 仕掛けはよく考えればわかるようになっている。塔内はさほど広くないが、多層構造なので全てを記憶するのは難しい。だが、マップには踏破した場所、扉が記され、さらに開いていない扉は赤く表示される便利仕様なので、マップを活用すれば迷うことはないし、仕掛けも解きやすい。また、塔内で得られる文書も仕掛けや主の攻略に一役買ってくれる。

 少し残念だったのが難易度選択がないこと。アクションが得意でないプレーヤー向けに、仕掛けはともかく、獣化ゲージの進行速度が遅くなったり、敵の攻撃力・防御力・体力が低めに設定された低難易度や、より歯ごたえのあるプレイが楽しめる高難易度があってもよかったのではないだろうか。

 筆者のクリアタイムは約20時間。塔の仕掛けや主の攻略方法で悩む時間、素材集めをするかなど、プレーヤーによってクリアまでの時間は大きく異なるはず。クリア後にはアイテムやパラメーターを全て引き継いだ状態でチャプターを選択してのプレイが可能。クリア後にしか開くことのできない扉から新たな武器やアイテムを獲得、素材を集めて武器を練成、親密度を高めてよりよいエンディングを目指すなど、クリア後の楽しみも用意されている。

 Wiiで本格的なアクションRPGを求めている方にオススメしたいタイトルだ。


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(2011年 6月 8日)

[Reported by 木原卓 ]