★ PS3/PSPゲームレビュー★
「涼宮ハルヒの消失」直後から始まる
過去や未来から断絶された48時間の世界
「 涼宮ハルヒの追想」
ジャンル:
  • ワンデルングアドベンチャー
発売元:
開発元:

プラットフォーム:
  • PS3
  • PSP
価格:
11,529円
(PS3)
10,479円
(PSP)
発売日:
2011年5月12日
プレイ人数:
1人
レーティング:
CERO:B(12歳以上対象)

「涼宮ハルヒの消失」の直後から始まるオリジナルストーリーが展開する本作。PS3版では「涼宮ハルヒ」シリーズのゲームで初となるHD画質でプレイできる

 5月12日、株式会社バンダイナムコゲームスから圧倒的な人気を誇るライトノベル「涼宮ハルヒ」シリーズを題材にしたゲーム「涼宮ハルヒの追想」が、プレイステーション 3とPSPの2プラットフォームで発売された。開発は、同社から発売されている「涼宮ハルヒの約束」、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない ポータブル」、「とらドラ・ポータブル!」などで知られる有限会社ガイズウェアが担当している。

 ロード時間を短縮できるデータインストールに対応。利用するには2,700MB以上の空き容量が必要となる。インストールに必要な時間は新型PS3で約5分程度であった。また、NTSC、480p、720p、1080i、1080pと幅広い映像出力に対応している。

 初回受注限定生産版である「長門有希の落し物BOX」は、ゲームソフト、いとうのいぢ氏書き下ろし特製イラストBOX、声優インタビュー映像などを収録した特典映像集(PS3版は本体Discに、PSP版はUMD VIDEOに収録)、特別編集小冊子「長門有希の落し物凸」Games Archive、特製クリアポスター3種、特製バインダー、リバーシブルポスター3種、リバーシブルパッケージ仕様という豪華な構成になっている。

 PS3とPSPでの内容は基本的に同じ。ただし、単に2つのプラットフォームでリリースされているわけではなく、セーブデータの共有が可能で、外ではPSP、家ではPS3といった遊び方もできる。なお、今回のレビューにPS3版を使用している。

 早速、本作の魅力を紹介していきたい。



■ 「涼宮ハルヒの消失」の直後から始まるもう1つの物語

ハルヒをはじめ朝比奈さんや古泉や、そして長門までもが、
まったくもってごく普通の人間だった世界。

今となっては、あの改変された3日間に
若干の名残惜しさを感じたりもする。
やり残したことも、あったような気がしてならない。

しかし俺は自らの意志でこの世界、
すなわち、長門は宇宙人で、
朝比奈さんは未来人で、
古泉は超能力者で、
ハルヒはよくわからん能力をもっていて、
まるっきり空回りするバカ騒ぎな、この世界を選んだのだ。
もう後戻りはきかない。そう思っていたのだが――

劇場版「涼宮ハルヒの消失」直後の時間軸から
再び何らかの理由で北高祭当日に飛ばされてしまったキョン。

――もうひとつの北高祭を楽しむのか――
――元の世界に帰る手段を探すのか――

かくして、俺の短いようで長い……
そりゃもうこれでもかってくらいに長い、
48時間の冒険は幕を開けたのであった。

 物語は「涼宮ハルヒの消失」の直後から始まり、とある理由から北高祭当日に飛ばされてしまう。単に過去に戻されたのではなく、飛ばされたのは「涼宮ハルヒの消失」のようにSOS団が存在せず、過去や未来から断絶した、北高祭が開催される48時間だけの世界だ。キョンは、この世界を修復し、最適化しなければ元の世界に戻ることはできず、最適化には、SOS団にゆかりの深いアイテムの姿となって発現する「次元ブックマーカー」が必要と朝比奈さん(大)から告げられる。元の世界へと戻るべく、この世界の時空間を往き来しながら「次元ブックマーカー」を集める48時間の冒険が始まる。

 「涼宮ハルヒの消失」とつながりのあるオリジナルストーリーが楽しめる「涼宮ハルヒ」シリーズのファンにはたまらない本作。ほぼ全てのシーンにボイスが付いている点も嬉しい限り。シリーズのゲームにおいて、初めてHD画質で遊べるという点にも注目だ。

キョン 
CV:杉田智和さん
100%純正の、謎の力など何もない普遍的な男子高校生。涼宮ハルヒに話しかけたことがきっかけでSOS団に入ることになった…はずなのだが……
涼宮ハルヒ
CV:平野綾さん
光陽園学院に通う、好奇心旺盛な女の子。ロングの髪が印象的。いつも転校生の古泉を従えている。キョンのことは知らないが……
長門有希
CV:茅原実里さん
眼鏡をかけ、部室で本を読みふけっている唯一の北高・文芸部部員。もの静かで、とてもシャイ。キョンとはほとんど面識がないが……
朝比奈みくる
CV:後藤邑子さん
舌っ足らずなしゃべり方の癒し系で、男子に人気がある。キョンが通う北高のアイドル的存在。キョンのことは知らない
古泉一樹
CV:小野大輔さん
涼宮ハルヒと同じ光陽園学院に通う。「時期外れの転校生には秘密がある」という理由で、ハルヒに興味を持たれている。キョンのことは知らない
朝比奈さん(大)
CV:後藤邑子さん
元の世界の朝比奈みくるよりも、もう少し未来からやってきた。朝比奈さんの大人バージョン。小さいほうの朝比奈さんより多くの経験と実績を積んでいるナイスプロポーションの女神


■ ベースは親しみのあるアドベンチャーゲームと同様ながら、「涼宮ハルヒ」シリーズらしい設定が活かされたゲームシステム

 ゲームは基本的に会話や行動を選択することで進み、選んだ選択肢によって時空間が変化する。シナリオのルートが分岐し、別の展開になるということだ。よくあるアドベンチャーゲームであれば、その場その場で正解となる選択肢をただ選んでいけば、真のエンディングへとたどり着けるが、本作ではそうはいかない。例えば、とある時空間でアイテムを入手し、それよりも前の時間に戻って、入手したアイテムを使わなければならないといった場面が出てくるからだ。

キャラクターの表情を見ながらコミュニケーションする「S.O.S.II」では、会話や行動を複数回選択する。ここでの選択内容によってのみ行くことのできるルートもある。ブックマークしておき、何度もトライしてみれば、光明が見えるはずだ
アイテムを選択する場面も。アイテムを持っていないなら、様々なルートに行き、アイテムを獲得してから、アイテム選択に臨めばいい移動先を選択する場面では、北高祭のパンフレットから移動先を決定する。パンフレット上ではミニゲームで使えるスタンプも獲得できる朝比奈さん(大)から届くヒントメールからゲームを進めるために重要な情報を得られることも。メールが届いたら必ずチェックするようにしたい

 「次元ブックマーカー」があれば、任意のタイミングで現在いる時空間にブックマークし、その後はいつでもブックマークした時空間にジャンプすることができる。「次元ブックマーカー」の数には限りがあるので、序盤ほどブックマークできる箇所は少なくなる。選択肢のある場面などにブックマークするのを基本にするといいだろう。

「次元ブックマーカー」の設置、削除、ルートの確認ができるルートマップ。ブックマーク時には自由文でコメントを残すこともできる。また、行ったことのないルートやどこでアイテムが取れるかといったことまで確認可能

 時空間がどう分岐するか、どこにブックマークしたかなどの情報はルートマップで確認できる。行ったことのないルートすらも確認できるので、ゲーム進行に詰まることはない。先に進めないと思ったら、ルートマップを確認し、これまで行ったことのないルート、アイテムが獲得できるルートに行けるよう行動や会話を選択すればいい。

 うまく進めることができるとゲームは次のフェイズへと進む。北高祭の48時間という点では変わらないが、前フェイズでの行動が影響したフェイズになる。例えば、前フェイズでは面識がなかったが、会話や行動により仲良くなった相手が、次のフェイズでは最初から面識ある状態になっているといった具合だ。このようにフェイズを進め、「次元ブックマーカー」を獲得していく。

 フェイズが進まないルートでエンディングを迎えると、朝比奈さん(大)が登場し、設置した「次元ブックマーカー」へとジャンプし、やり直すことになる。なお、途中地点にしか「次元ブックマーカー」を設置していない場合でも、設置した「次元ブックマーカー」をすべて取り除いてからエンディングを迎えれば、初日の最初に戻してもらえる。


ゲーム中、様々なイベントが発生する。フェイズが進まない、アイテムが獲得できないルートだとしても、シナリオ自体がよくできているため、飽きることなくプレイできる。様々なエンディングを楽しもう


■ オマケとして、CGやBGMの観賞だけでなく、やり込めるミニゲームも収録!

 ゲーム中に体験したイベントCGが閲覧できる「北高祭の思い出」、再生されたBGMが観賞できる「楽曲の再生」、プレイしたシーンを再生できる「シーンの再生」、クリア済みのエンディングを確認できる「エンディングのリスト」というアドベンチャーゲームにはあってほしいオマケ要素に加え、SOS団が部室を狙う敵と戦うRTS「エンドレスファイト」、キャラクターのコスチュームチェンジを楽しめるブロック崩しゲーム「着せ替えブロック崩し」、長門有希と365日を一緒に過ごすトイクロック「有希の365んち」といった本編とは全く異なるミニゲーム、ツールも収録されている。

イベントCGが閲覧できる「北高祭の思い出」。全90種ものイベントCGが用意されている。全ルートプレイして、全て閲覧できるようにしたいものだBGMが観賞できる「楽曲の再生」。通常の再生だけでなく、1曲/全曲リピート、ランダム再生と豊富な再生モードが用意されているプレイ済みのシーンを再生できる「シーンの再生」。全部で約500ものシーンが用意されている。シーン中にアイテム選択が発生する場面もそのまま再現される
キャラクターのコスチュームチェンジが楽しめる「着せ替えブロック崩し」。キャラクターとステージを選択し、方向キーでパドルを操作してボールを打ち返すトイクロック「有希の365んち」では本編で集めたスタンプをイベントや部屋の備品と交換できる。アラーム、時報(時間の読み上げ)などクロックとしての機能も充実限定版にのみ収録される「特典映像」には、ENOZの“God knows...”などのCGムービーや声優さんのインタビューが収録されている

■ やるほどに面白さが増すRTS「エンドレスファイト」

PS3版ではPSPバーチャルフレームか全画面好きな方で遊ぶことができる。PSPバーチャルフレームの場合、上のスクリーンショットのように角度を変えて楽しむことも可能。「着せ替えブロック崩し」も同様だ

 ここでは、数あるオマケの中から「エンドレスファイト」をピックアップする。ミニゲームの一言で片づけてしまうにはもったいないほどしっかり作り込まれたRTSで、本編を忘れてプレイしてしまうほどの魅力を秘めている。

 「エンドレスファイト」は、部室を狙う様々な敵とSOS団が戦うRTS。「エンドレスファイト」公式のゲームモードで、勝ち抜くとご褒美がもらえるオフィシャル、オフィシャルで入手したご褒美の使用、DLCで参加メンバーが増やせるなんでもありのエキシビシジョンの2つのモードが用意されている。

 戦闘開始前にはキャラクターのレベルを上げたり、必殺カードをゲットすることができる。レベルアップにはレベルに応じたSOS POINTが必要で、レベルの上昇に応じて必要なポイントも増える。また、レベルアップの際には、現在のバランスを維持、攻撃重視、DEF重視と選択することができるため、どのメンバーであっても好きな性能へと変化させることが可能。必殺カードには、体力を全快する[かいふくのカード]、状態異常から回復させる[いやしのカード]、メンバーを完全回復させる[ふっかつのカード]など全10種類があり、入手するにはレベルアップと同様にSOS POINTが必要になる。レベルアップ、カードとどのようにポイントを使うか悩みどころだ。

 準備が終わったらゲームが始まる。画面右側から押し寄せる敵を全滅させれば1ステージクリア。敵が画面左端に到達してしまうとSOSゲージが減り、SOSゲージが0になってしまうとゲームオーバーとなる。敵はボスとザコ数体で構成されており、ボスを倒さないとザコは無限にわいてしまう。ただし、ザコを放っておくと、画面左端へと到達し、SOSゲージが削られてしまうので、対処するバランスが肝心だ。

 ハルヒ、ながと、みくる、こいずみの4人は“ボスをねらえ”、“部室をまもって”など、プレーヤーが指定した作戦に応じて自動で動く。この4人にはVITALとGUTSがあり、VITALが0になってしまうと戦闘不能となってしまい、一定時間経過もしくはカードを使うことで復活する。GUTSは100%になると必殺技が使用できる。必殺技には様々な性能があり、各メンバーの持つ4種の必殺技をどう使うかで戦局は大きく変化する。強力な必殺技は発動までの詠唱時間が長いので、詠唱が中断されてしまうボスの必殺技には気をつけたい。

 キョン(プレーヤー)は、ダメージは小さいもののノックバック効果のあるスーパーボールを投げて敵を邪魔することができ、必殺カードや必殺技の使用、作戦変更を行なう。

 見た目は昔ながらのテイストだが、作戦の変更、必殺技・必殺カードの使用、スーパーボールでのノックバックと、的確な状況判断と素早い操作が要求される本格RTSといった印象。やればやるほど、次はこうすればうまくいくのでは?とのめり込んでしまう。序盤のステージは低めの難易度に設定されているので、RTSというジャンルを知らなくても遊びやすく、「エンドレスファイト」からRTSに興味を持つ人も出てくるのではないだろうか。

戦闘を有利にするにはレベルアップが欠かせないが、必殺カードも獲得しておきたいところ。ポイントをどう使うかも重要になるスーパーボールを投げる、作戦の変更、必殺技、必殺カードの使用タイミングとプレーヤーが介入できる要素は多い。戦況を見極め、メンバーに的確な指示を出し、部室を守り抜こう


■ 最後に

 「涼宮ハルヒの消失」からつながるオリジナルストーリー、ほぼ全てのシーンがボイス付き、充実したオマケ要素、PS3ならHD画質でプレイ可能とシリーズファン納得の仕上がりといえるだろう。PS3とPSPのセーブデータ連動により、両方を購入しておけば家でも外でもプレイできる点も両方を買うほどのファンにはありがたい仕様なのではないだろうか。

 オートプレイ、既読スキップ、バックログなどアドベンチャーゲームに欲しい機能もしっかり搭載。時空間のジャンプがあるので、分岐点ごとにセーブしておき、同じルートだったらロードして再開といったことも必要なく、アドベンチャー初心者でも遊びやすい。ルート分岐やアイテムが取れるルートを確認できるルートマップにより、どこで分岐が発生するかが一目瞭然で、迷うことなくプレイできる点も嬉しい。

 オートプレイ&既読スキップでプレイしたところ、クリアタイムは約20時間。オマケで確認する限り、この時点では500ほどあるシーンの内400ほどしかオープンしていなかった。全シーンオープンまでを考えるとまだまだ遊べる。さらにオマケ要素に閲覧、観賞だけでなく、プレイできるミニゲームが収録されているため、ボリューム面でも十分といえるだろう。特にミニゲームのRTS「エンドレスファイト」はオススメ。遊びやすさと奥深さを同時に備えたゲームになっている。また、長門有希ファンであれば、トイクロック「有希の365んち」も嬉しいところだろう。純粋にデジタルクロックとしての機能がしっかり揃っていながら、本編で集めたスタンプで追加できる多数のイベントでは、SOS団の様々なやりとりまでもが堪能できる。

 5月12日にPS3/PSP「涼宮ハルヒの追想」、5月25日にライトノベル「涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版」発売と、5月はシリーズファンには嬉しい月になったのではないだろうか。


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(2011年 5月 27日)

[Reported by 木原卓 ]