オンラインゲームレビュー

スクエニ風戦国絵巻
合戦シーンは日々進化中!

「戦国IXA(イクサ)」



ブラウザとヤフーIDがあれば、どこからでも遊べる

 最近ソーシャルや携帯アプリなどカジュアルゲームに力を入れているスクウェア・エニックスがヤフージャパンと共同でサービスを提供しているのが、初の戦国体感ブラウザゲーム「戦国IXA(イクサ)」だ。開発は大ヒットしたブラウザゲーム「ブラウザ三国志」を開発したONE-UPとスクエニが共同で行なっている。画面を一見すると確かに似た雰囲気は感じるかもしれないが、実はゲーム性はかなり違っている。

 CBTの際にファーストインプレッションをお届けしたが、その後すでに何度かのアップデートが行なわれるなど着々と進化を続けている。筆者はCBTと今回正式サービス版を遊んでみたわけだが、CBT時代に感じていた不足部分がかなり解消され、コンテンツも増えてかなり遊びやすさが増したと思えた。

 ブラウザゲームは、クライアントダウンロード型のオンラインゲームにくらべると、画面的には地味に見える。しかし身軽さを活かしてユーザーの不満点を即座に変更したり、細かいアップデートを加えることができる。おそらく今後も「戦国IXA」は大きく変化していくだろう。そのため、このレビューはあくまでも今の時点での感想をお伝えすることしかできない。このレビューを読んで興味を持った方は、ぜひゲームに参加して自分の目で進化を確かめて欲しい。


【スクリーンショット】
ゲームをスタートすると、ムービーが流れる




■ しっとり和風のグラフィックスで、戦国情緒たっぷり

選べる勢力は12大名家。1度スタートしたらそのサイクルの中では勢力を変更することはできない

 本作は織田信長や武田信玄など、戦国時代の有名大名の配下となり、全国12の大名勢力が天下一を争う戦国シミュレーションゲーム。インストール不要のブラウザゲームで、Yahoo! JAPANのIDを持っていれば誰でも参加可能だ。

 ゲームの基本的な流れは、自分の所領で資源地を開発し、兵士を訓練したり武将のレベルを上げて合戦に臨むというものだ。1回のプレイ期間は約4カ月ほどで、その間は準備期間を含めた3日間の合戦が繰り返される。最終結果が出た後は、育てた武将カード以外はすべてリセットされて再び全員が1からのスタートとなる。

 サーバーは現在12サーバーまでオープンしている。いつでも新規が始めやすいように少しずつオープン時期をずらしてあるので、始めようと思った時期にスタートしたサーバーを選んでおけば横ならびの状態から始められる。スタートすると、所領を置く方角を4つから選ぶ。自分で決められるのは方角だけで、城がどこに置かれるかはランダムだ。

 インターフェイスは全体にしっとりした和風のデザインで、水彩画風のタッチで描かれた所領画面は美しくて機能的だ。さすがはグラフィックに定評のあるスクエニだけに、グラフィカルな部分へのこだわりにはかなり力が入っている。ブラウザゲームに共通の要素にも、例えば鉄を産出する場所が「たたら場」だったりと、戦国時代らしい味付けがしてある。施設のアイコンは小さいながらも非常に細かく作り込まれているので、暇な時にでもじっくり眺めて見て欲しい。

 スタートした直後の所領には、資源地と本丸しかない。ここに資源を生産する施設や兵士を訓練する施設などを建設していく。建設できるマスの数と位置は全プレーヤー共通だ。

 資源地は「綿花畑」、「森林」、「鉄鋼山」、「畑」の4種類があり、それぞれの資源に対応した生産施設を隣接したマスに作ることで資源を生産できる。建設には実時間がかかる。最初は数分だが、レベルが上がるにつれて増えていく。課金アイテムの「金」を使えば、この時間を短縮することも可能だ。施設のレベルが低いうちは、何かをしようとしてもすぐに資源が足りなくなる。ここで何を優先して行なうかが、後々の差に響いてくる。


【スクリーンショット】
水彩画風の落ち着いたタッチで描かれた拠点の開発画面。空いたマスに施設を作り、レベルを上げていくことで資源や人口が増えていく
施設の建設画面。施設には建設に条件が必要なものもある兵舎を建設すると、兵士を訓練できるようになる




■ 初心者のうちは、クエストをこなしてゲームの仕組みを勉強

チュートリアルとクエストを手伝ってくれる小姓。クエストはキャンセルして再受諾することもできるので、できるものからこつこつと

 このタイプのゲームが初めてだと、スタートしても何をどうしていいのかまったくわからない。そんな初心者のためにチュートリアルとクエストが用意されている。チュートリアルの方は、本当に基本的な操作方法を学ぶためのもので数十分で終了する。

 その後に現われるクエストもチュートリアルの一環だが、こちらは選択式になっており、難易度が設定されている。難易度の低いものから順にこなしていけば、施設の建設から同盟への参加、武将のレベル上げ、合戦の準備という一連の流れを追えるようになっている。クローズドβテスト(CBT)ではチュートリアルが内政中心で、合戦に対するケアが不足しているという意見があり、そこを改善して現在の形になった。

 ブラウザゲームの内政は、仕組みを知っているプレーヤーと知らないプレーヤーでは進捗に大きな開きが出る。しかし、たくさんのデータが絡む内政にはこれという正解はなく、各自の工夫が生きる部分でもある。合戦を2、3回経験すると何が必要か次第に見えてくる。慣れるまでは富国強兵を目指して施設の建造とレベルを上げにはげみつつ、クエストを目標にゲームを進めて行けばいい。


【スクリーンショット】
クエストは10個の中から選べる。☆の数が少ないほど簡単で、内政、合戦、コミュニケーションとゲームに必要な要素が詰まっている




■ 「武将カード」を集め育てて、最強部隊を作ろう!

「戦国くじ」は画面横のアイコンからいつでも引ける。お目当ての武将が出るまで何度でもチャレンジ!

 1サイクルが終わった後、次のサーバーへ持ち越せる唯一の要素「武将カード」は本作のメインコンテンツ的な位置づけだ。イラストは12人の大名を「FAINALFANTASY Agito XIII」のアートディレクター直良有祐氏が描いているほか、多数の作家陣が参加している。イラストは、戦国風ではあるが時代考証はあまり考慮されておらず、スクエニ的な解釈で描かれたファンタジックな武将が多い。そこは正当派好きには好みが分かれる部分かもしれない。

 カードは「戦国くじ」というくじで入手する。グレードは3つあり、1番下の「戦国くじ 白」はゲーム内通貨で購入できる。残りの2つ「銀」と「金」は課金アイテムだ。カードのグレードは「序」から「天」まであり、「極」と「天」は「戦国くじ 白」からは出ない。


【スクリーンショット】
憧れの「天」カード。武将の能力も「S」や「A」と高いものが揃っている
くじを引くと、武将の来歴が分かる。歴史を題材としたゲームならではの面白さだ


「秘境探索」は4コース。所要時間は3時間と6時間のコースがある

 手に入れた武将は兵士を持たせて部隊を組ませる。部隊は部隊長1人と小隊長3人で構成される。武将にはそれぞれ得意な兵種があり、1人の武将に持たせることができる兵種は1種類だけなので、この組み合わせが部隊の強さに影響することになるのだろうが、初心者のうちは持てるカードの数も少ないので、あれこれ考えるよりもとりあえず組ませて、どんどん経験を積ませるほうがよさそうだ。

 武将カード購入に必要な銅銭は、合戦に参加すればどんどん貯まっていくので、そこまでは手持ちのものをやりくりしながらゲームを進めて行くしかない。

 武将を育てるには合戦に参加させるのが一番だが、平時には近くの空白地に出陣させたり「秘境」というコンテンツに参加させて経験値を貯めることができる。「秘境」は武将に山や樹海を冒険させるコンテンツ。3時間コースと6時間コースがあり、戻ってくると報告書で結果を確認できる。

 報告書のログを見ると「道に迷ってしまい、体力がもたずに探索を断念。腹が減っては戦はできぬ。 」とか「『拙者、この探索から戻ったら、婚礼の儀を行なおうと思っております。』兵士の1人が呟いた途端、豪雨が発生。川沿いを探索していた部隊は濁流に飲み込まれてしまった。」などと笑えるものも多いので、報告書はぜひ見逃さないで欲しい。

 武将カードが増えてくると「取引」でほかのプレーヤーと交換したり、「合成」で武将の能力を上げることもできる。武将が強くなり、頼りになるほどに育つとゲームもぐんと楽しくなる。


【スクリーンショット】
自国から離れすぎると武将が弱くなるので、最初のうちは近場の難易度が低い空白地を繰り返し攻めて攻めて攻めまくる武将がレベルアップすると「攻撃力」、「防御力」、「兵法」のいずれかにポイントを振り分けて育てていく
ステータスは高くなくても、お気に入りの戦国武将を集めた自分だけの部隊を成長させるのは楽しい!



■ ゲームのメインコンテンツながら、問題もはらむ「合戦」

北条家と最上家の合戦。今回は北条家が侵攻側だ

 戦国の華である合戦は、プレーヤーの投票で進軍先が決まる。戦いたい大名家に宣戦布告を行ない、相手の大名家が投票によってそれを受けると宣戦布告した方が攻撃側、受けたほうが防御側となって合戦が起こる。

 合戦は、準備期間1日、合戦2日、宣戦布告できない非合戦期間3日で1回のローテンションとなる。多くのブラウザゲームでは、初心者でも敵のいるフィールドに放り出されるが、「戦国IXA」では所領は大名家の中にあるので周囲は全員味方という状態でスタートする。それぞれの大名家が独立した領地を持っていて、合戦以外ではお互いに行き来することはできない。

 合戦が始まると、防御側の領地の外側に、攻撃側が陣地を作るための土地が生成される。攻撃側はここに出城をつくって陣を張ってそこに自軍の部隊を派遣する。防御側も自分の城の周りに陣を張って迎え撃つ準備をする。この際、偶然自分の所領や出城が国境線の近くにあると開始早々死闘が繰り広げられることになるのだが、出城を造らなかったり、最前線から遠い位置に所領があると積極的にアクションを起こさなくてもなにも困らないという状況が発生する。

 最前線のプレーヤーと遠隔地のプレーヤーが手に手を取って戦うために欠かせないのが「同盟」だ。同盟はMMOでいうギルドのようなもので、合戦を戦うためにはぜひ所属しておきたい。画面の上には募集チャットがあるし、「同盟」タブの中には募集用の一覧もあるのでそこから自分に好みが合いそうな同盟を見つけ出して書状を送ればいい。

 同盟に入れば、例えば自国が最前線にあれば同盟から援軍を送ってもらったり、逆に遠隔地にあれば援軍を送ったりと強力して戦うことができるようになる。最前線の城を1人で防衛するのは難しい。合戦は丸2日間開催されるので、家に帰ってログインしてみると既に所領は陥落済みだったということもあった。そうならないためにも、準備期間のうちに同盟の仲間と話し合い、情報を交換して作戦を練っておいたほうがいいだろう。

 筆者が現在参加しているサーバーは、筆者をはじめ、あまりブラウザゲームに慣れていない人が多いのか、それほど活発な情報交換や援軍は行なわれていない。CBTの時に参加した同盟は、他のゲームで合戦経験があるプレーヤーが多かったので、合戦時には同盟掲示板に方面に分かれた戦況スレッドが立ち、援軍情報や作戦に対してベテランがシステマティックに采配をふるっていた。

 プレーヤー同士の協力や対戦が本作最大の見所なので、組織的な動きができるようになれば合戦の面白さは増していくだろう。ただ残念なこともある。本作は仕様上2つの勢力間の合戦しか起こらないので、他勢力が存在している場合に起こるであろう駆け引きがない。敵が味方になったり、味方が離反したりといったドラマティックな出来事が起きにくいので、他のゲームでその部分を楽しんでいた人には物足りなく感じるかもしれない。

 誰しも勝てない相手と戦いたくないので、攻撃側防衛側の双方が了承しなければ始まらないという合戦のマッチングシステムにも問題を孕んでいる。開発者のブログによると、今後下位国が手を組んで宣戦布告できる「下位連合」などプレーヤーの選択肢を増やすアップデートが行なわれるようだ。


【スクリーンショット】
侵攻側で参加した時のマップ。筆者の出城は最前線にあり、建つなり攻撃を受けて敢えなく陥落防衛側で参加した時のマップ。筆者の所領はまたしても最前線にあり、敢えなく……



■ 初心者向けに練られた仕様。今後の課題は合戦の盛り上がり

オープニングムービーのワンシーン。白熱した合戦シーンを作り出すことができるかどうかがカギだ

 開始当初から順調にサーバー数を増やしているが、サービス開始から1カ月以上が経って、多くの問題も顕在化してきている。公式ホームページにあるリンクから飛べる開発者のブログでは、アップデート情報についての討論が活発に行なわれている。

 合戦へ参加するモチベーションの問題は、CBT当時から常に議論されており、発生期間が変わったり、ルールが変更されたりと常に調整が行なわれている。ユーザーも大多数は協力的で、みんなでゲームを面白くしていこうという意志が原動力になっているよう感じられた。

 ブラウザゲームとしては、かなり独自のシステムを持っているタイトルだけに、今後どんな形になっていくのか、それがユーザーに受け入れられるのかはどちらも非常に興味深い。このタイプのブラウザゲームとしては、非常にユーザービリティが高く初心者に優しいタイトルなので、興味はあるけれどよく分からないという人にはおすすめだ。

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(2010年10月12日)

[Reported by 石井聡 ]