モバイルゲームレビュー

特殊技能を持つ仲間たちとの開拓生活
希望の大地「ニューフロンティア」を開拓せよ

「イッツ ニューフロンティア」

  • ジャンル:開拓シミュレーション
  • 配信元・開発元:スクウェア・エニックス
  • 利用料金:1ダウンロード500ポイント(525円相当)
  • プラットフォーム:iモード
  • 対応機種:FOMA 903i/703i以降
  • 配信日:8月24日(配信中)
  • アクセス方法:メニューリスト → ゲーム → ゲームパック → スクエニモバイル



 何かが収まるべきところに収まり、何もない自由に使えるスペースが広がる「片付ける」という行為に、快感や癒しを感じる人は多い。試験の前や仕事の締め切りに追われているときに限って部屋を片付けたくなるのも、部屋を片付けるとデトックスや開運に繋がるといわれるのも、片づけることでスッキリするから。

 「シムシティ」をはじめとする箱庭ゲームは、一般に「街を発展させる」、「人口を増やす」など、何もなかった場所を何かで埋めていく物が多い。しかし「イッツ ニューフロンティア」の発想は逆。物で埋まった土地を開拓して、何もない平野にしていく。今まで遊んだシミュレーションゲームとは逆の道筋をたどる、ちょっと不思議な味わいの作品だ。「片付け」ゲームだと言えば、特徴がわかりやすいだろうか。

 諸君、荒れた大地をひたすら開拓して、心の底からスッキリしようではないか。




■ 舞台は未開の地「ニューフロンティア」。過酷で楽しい開拓生活が始まる

 仲間と共に大地を開拓する本作。かわいらしいキャラクターたちがチマチマと動き回り、荒れ果てた土地を住みやすそうな土地へと変えていく。シミュレーションではありながら“戦い”や“争い”とは全く無縁で楽しめる平和で明るい世界観も本作の魅力の1つ。未開の大地「ニューフロンティア」で、主人公クラウスを中心に、最大5人の仲間たちが力を合わせて、誰も足を踏み入れたことのない荒れた土地で生活しながら開拓を進める。

 ゲームの制作においては、キャラクター原案と世界観監修を「サガ」シリーズの生みの親として知られる河津秋敏氏が務めているほか、キャラクターデザインをイラストレーターの戸部淑氏が手掛けている。


【スクリーンショット】
未開の地「ニューフロンティア」の開拓が目標。5つの地域が舞台になる
戸部淑氏の可愛らしいキャラクターが活躍。白魔導士、踊り子、モンク、吟遊詩人などおなじみのジョブが登場する



■ 期間内目標の収穫を得ればクリア。物資の“やりくり”が悩ましい

 ゲームの目的は土地の開拓。具体的には、定められた期間に一定の収穫を得ることができればステージクリアとなり、期間中に目標の収穫を得られない場合や、生活に必要な資源が尽きてしまった場合にはゲームオーバーとなる。

 ゲームは全5ステージの「ストーリーモード」からスタートする。「ストーリーモード」はチュートリアルを兼ねており、少しずつ機能やスキルなどの基本ルールを覚えながらゲームが進められる。最初はクラウス、ペネロア、リオールの3人で開拓が始まるが、ステージ2でバーロック、ステージ3ではチェルーシャが仲間になり、5人の仲間が勢ぞろいする。ステージ4~5はクリア条件がシビアなため、全員が力を合わせるのはもちろん、これまでに覚えた知識やゲームの機能を使い切らねばクリアは難しい。頭と運をフル活用してゲームに挑もう。

 目的は「大地の開拓」で、その後に住む人を増やすといった“街づくり”は行なわない。ひたすらに荒地を整備し、木や石を削り取って回収し、自生する食物を畑にする作業を行なう。木や石が点在する人の住みにくい大地を、人々が生活しやすい広大な平野へと変えていく。


【スクリーンショット】
定められた期間中に目標の資源を収穫する。生活に必要な水と食料のやりくりも重要だ
キャラクターたちがゲームの遊び方やコツを教えてくれる
ゲーム開始時(左)と終了時(右)。荒地や岩山、森林を整備して、右上に見える畑も耕してきれいになった


 プレーヤーはターン毎にキャラクターの仕事を決め、画面上の畑や水場、森林、岩山を開拓して、野菜、水、木、石を収穫する。仕事を設定し終えて「開拓」コマンドを実行すると、それぞれが指示された作業を行なう。基本的には指示通りの行動をこなすのみだが、固有スキルが発動したり、仕事が上手くいかなかったりと、ある程度の運も結果を左右する。全てのキャラクターが行動し終わると、宿舎に戻って収穫量や残りの食料・水をチェックする画面に遷移し、1月(1ターン)が終了。

 各ステージの目的は、定められた期間の中で目標とする量の木と岩を収穫し、同時にキャラクターたちの生活に必要な野菜と水を確保し続けること。各キャラクターには得意な開拓分野や、開拓を有利にする特技があるため、仕事を上手に割り振ることがゲームの軸だ。

 キャラクターは行動するのに野菜と水を消費する。野菜の消費は一定だが、水は開拓場所までの移動距離に応じて消費量が異なる。ゲームの中では水不足が常につきまとうので、宿舎から開拓地までの距離はいつも計算しておきたい。水不足が深刻なら「休憩」という選択肢もある。休憩を選択すると、何も開拓しないままターンを無駄に消費してしまうが、宿舎から出ないため水の消費が少なくなる。開拓を急ぎたい気持ちを抑えて、1回休みを選択する勇気も必要だ。


【スクリーンショット】
開拓を行なうには、キャラクターを選んで開拓したい場所を指定するだけでOK。畑なら野菜を収穫してくれる
森を指定すると、木を伐採する。1回ごとに少しずつ森が伐採され、何度か行なうと平地になる
水場では生活必需品の水を得られる。取れる量は水場の大きさに比例する
宿舎に戻り、今月の収穫量や残りの資源を確認して、次月へ進む
足りない資源や、目標値に到達した資源、開拓度などがゲーム画面に表示される



■ 開拓を共に進める仲間は5人。固有スキルの活用が開拓のカギ

 共に開拓を進める5人のキャラクターは、それぞれが得意とする分野が異なる。得意な仕事を任せると収穫量が増え、苦手な仕事は収穫量が減る。作業を割り振る際には、得手不得手をよく考えることが大切だ。また各キャラクターは開拓に役立つ固有スキルも持っている。スキルの発動はランダムだが、行動順が早くなればなるほど発動の可能性が高くなる。スキルを発動させたいキャラクターは行動順を早く、逆に発動してほしくないキャラクターは最後に行動させるようにしよう。

 主人公格のクラウスは、おっとりと心優しい少年。野菜の収穫が得意で、スキル「聖なる光」が発動すれば、野菜と水の収穫が2倍になる。気の強い少女ペネロアは木の伐採を得意とし、スキル「森のダンス」が発動すれば伐採量が2倍になる。

 気ままな青年リオールは、水の取得が得意で石の取得は苦手。特殊スキルは「風来坊」で、まったく違うものを勝手に収穫してしまう。ほかの4人のスキルと違い、上手に使わないとありがた迷惑になってしまうだけでなく、生活必需物資の枯渇を招く恐ろしい能力でもある。発動のタイミングに注意して効果的にスキルを利用しよう。

 バーロックは力仕事が得意で、石をたくさん取得してくれる。スキル「力自慢」は石の取得量を2倍にする効果がある。不思議な少女チェルーシャは、水と食料の消費が少ないのが魅力。遠い場所での作業は彼女に任せるといいかもしれない。スキル「太古の力」が発動すれば、全ての収穫が1.5倍になる。

 感情移入しやすいキャラクターも本作の重要なファクターだ。ターンの合間に宿舎で交わされる会話シーンを眺めていると、登場人物の人となりが見えてくる。リオールはピンチになっても楽観的できまぐれ、バーロックには体育会系の雰囲気を感じるなど、少しずつキャラクターが肉付けされていく。ツンデレ全開のペネロアが、つい好意を持っている相手に冷たい態度をとるのもほほえましい。

 キャラクターが生き生きと活動しているから、苦しい局面の多い開拓生活も共に楽しめるし、成果を一緒に喜べる。最初はゲームのコマでしかなかった彼らに愛情を注ぐほどに、開拓生活は彩りを増す。「開拓の手助けをしている」と考えれば、携帯電話を握る手にも力が入ろうというものだ。


【スクリーンショット】
各キャラクターが固有スキルを発揮してくれると、開拓がぐっと楽になる。目標達成のために、固有スキルを使いこなそう



■ 施設を建造して効率アップ。天候の把握も運命を左右する

 ゲームのクリアには、施設の活用も大切だ。施設を建造すると、特定の収穫物の収穫量を大幅にアップしてくれるので、できるだけゲーム序盤で建造したい。設備作りにはせっかく集めた木や石を消費してしまうが、一時的なマイナスを補って余りある恩恵を与えてくれる。

 ゲーム中に出てくる施設は4つ。「井戸」が野菜、「水車」が水、「伐採所」が木、「採掘所」が石にそれぞれ対応している。各施設は一定の範囲内にある資源に影響を及ぼす。伐採所なら、周囲にできるだけたくさんの森林のある場所を選ぶ、水車は大きな水場に作るなど、建造位置にも工夫が必要だ。施設の効果はステージ終了まで続くので、収穫を強化したい分野の施設を優先するのがポイントとなる。


【スクリーンショット】
建築メニューで場所を指定し、資源を使って施設を作る。「水車」は水の収穫を多くしてくれるなど、特定の資源の収穫量を強化する
施設は、建造場所を選んだ際「○」が表示される部分の収穫時にのみ影響を及ぼす。広範囲に影響を発揮するように施設を作ろう施設を作るには材料のほか、施設を建てるスペースも必要。荒地を整備し、森林や岩山を切り開いて、平地を作るべし


 大陸での生活には天候も重要な要素になる。「快適な天気(得意な仕事が+3)」、「不順な天候(得意な仕事が-3)」、「伐採日和(木の収穫+5)」など、1日の始まりに表示される天候にあわせて行動を変えるのも戦略のひとつ。初期のステージは晴天が多いが、後半に進むにつれて空が荒れるため、よりシビアな作戦の立案と遂行が要求される。


【スクリーンショット】
開拓に影響を及ぼす天候の種類も多い。表示をよく見て対策を立てるべし
生活資源の枯渇や、期限までに目標達成できない場合はゲームオーバーに。理由を確認して次回に活かそう



■ クリア後のお楽しみはやりこみ要素の「開拓モード」

 「ストーリーモード」をクリアすると、やりこみ要素も備えた「開拓モード」が選択できるようになる。「開拓モード」では、マップとキャラクターを自由に選んでゲームを始められる。キャラクターは任意の3~5人を選べるため、数に物を言わせての開拓、参加キャラクターを絞ってカツカツ状態での開拓など、さまざまな遊び方が考えられる。

 各マップをクリアすると、家が建ち、店が開き、人々が平和に暮らす開拓後の町が見られる。開拓の度合いによって町の発展も異なるので、効率よく開拓して立派な街づくりを目指そう。さらに各マップには、土地のシンボルとなるキーオブジェクトが眠っており、条件をクリアすると主人公たちの宿舎のあった場所にモニュメントが建造されるという。

 「ストーリーモード」をクリアした人にとって、同じマップを開拓する「開拓モード」をクリアするのはそう難しくない。しかし、ただクリアするだけではシンボルは建造されず、より厳しい条件を達成する必要がある。


【スクリーンショット】
好きなキャラクターを指定して遊べる「開拓モード」。クリアすれば街の様子が見られるようになる
開拓した後の街は発展し、人々が平和に暮らしている。開拓の度合いによって街の発展も変わる


 「開拓モード」ではハイスコアを目指すという遊び方もある。運の要素もあるが、きっちりと計画を立てて挑めば、少しずつスコアが上がっていくのが実感できるだろう。ただ、同じ面を再プレイするたびにデータが上書きされてしまうので、せっかくのハイスコアデータを保存しておくことができないので注意しよう。

 と、偉そうに書いている筆者だが、何度挑戦しても「開拓モード」でシンボルを見ることは叶わない。知識や経験を蓄積し、少しずついい開拓結果を残せてはいるものの、まだまだ上級者というレベルからは程遠いようだ。シンボルを見て初めて、真の開拓者になれるのかもしれない。


【スクリーンショット】
かわいらしいキャラクターの会話や生活を見ているのも楽しい



■ 何かが片付くスッキリ感が魅力。思い通りの開拓で小さな幸せを満喫

 ゲームに対しての小さな要望はたくさんあるのだが、いざ考えると「もっと大きなマップで遊びたい」、「マップの種類が多いといいのに」、「のんびり遊べるモードがあれば」など、もっと長く、ゆっくり遊べる要望ばかりが思い浮かび、「続編、出てほしいな」と強く感じている。キャラクターのかわいらしさや、ストイックにプレイしなくともクリアできるような程よい難易度など、気軽に遊べる内容や操作なども当然理由のひとつだが、なによりも「あのスッキリ感をもっと味わいたい」という、欲望が続編を希望する最大の理由だ。

 障害物の多かった土地が、自分の計画通りに開墾され、どんどん平野に変わっていく様子を眺めているのは、非常に気持ちがいい。イライラして落ち着かないとき、心を整理したいとき、訳もなく落ち込むときなどに「イッツ ニューフロンティア」で遊ぶのはどうだろう。不思議と心が癒されて幸せに満たされるような気がする。ただし、上手くゲームが進まずにゲームオーバーになると余計にストレスが溜まってしまう可能性もあるので、注意が必要だ。

 「割り箸がキレイに割れた」とか、「電車の乗換えがスムーズで待ち時間がほとんどなかった」とか、思わず「やった!」とか「よしっ!」と声が出てしまう気持ちのいいスッキリ感を味わえる瞬間。偶然が重なった結果であっても、緻密な計画の賜物であっても、生活の中で感じる“小さな幸せ”は、心を明るくしてくれる。仲間たちと協力し、未開の地を開拓する本作には、こっそりとガッツポーズしたくなるような小さな幸せがたくさん詰まっている。のんびりした作品世界で遊びつつ、スッキリ感という小さな幸せを思う存分堪能してほしい。


私が開拓してできた“私の街”を眺めるひと時は、充実感や満足感に包まれる瞬間だ

【プロモーションムービー】


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(2009年 10月 14日)

[Reported by 南奈実]