モバイルゲームレビュー

モバイルでしか味わえないミニ四駆ワールド!
奥の深い本格派レーシングシミュレーション

「ミニ四駆GPX / ミニ四駆GPX REVOLUTION」

  • ジャンル:レーシングシミュレーション
  • 開発元・配信元:ケイブ
  • 利用料金:月額315円(ミニ四駆GPX)、月額210円(ミニ四駆GPX REVOLUTION)
  • プラットフォーム:iモード
  • 対応機種:FOMA 900i/700i以降
  • 配信日:3月24日(配信中)
  • アクセス方法:iMenu → メニューリスト → ゲーム → シミュレーション → ミニ四駆



 今、「ミニ四駆」が静かなブームになっているのをご存じだろうか。1980年代後半と、1990年代半ばの大ブームでミニ四駆の洗礼を受けた小中学生も、もう20代から30代の大人。歳を重ね、ミニ四駆の奥の深さに再び魅せられた彼らを軸に第3次ブームの兆しを見せているというのだ。

 「ミニ四駆GPX」(以下、GPX)と「ミニ四駆GPX REVOLUTION」(以下、REVO)は、「ミニ四駆」をモチーフにしたモバイルで楽しめるレーシングシミュレーション。ミニ四駆を改造して全国のレーサーたちが作り上げたマシンと競い合い、ランキング1位を目指すのが目的だ。「REVO」では「GPX」をベースに、「レースアクション」、「5台同時レース」などの新規要素が楽しめる。本作は当時を懐かしむだけではなく、いつまでも少年の心を忘れない大人の「カスタム心」を満たしてくれるゲームに仕上がっている。

 そもそもミニ四駆とは何なのか。知らない読者は少ないかと思われるが、おさらいも兼ねてミニ四駆について簡単に説明しておこう。ミニ四駆は、日本が世界に誇るプラモデルメーカー「タミヤ」が発売している組立式の自動車模型。単3電池を電源に小型モーターで四輪を駆動させ、小型ながら高速な走りを楽しめるレーシングホビーだ。豊富にそろった別売のグレードアップパーツを組み込み、好きなように自分でカスタムできることから人気を呼んだ。小学生向け雑誌「月刊コロコロコミック」に連載された漫画作品にも牽引されて、さらに人気が過熱し、全国選手権大会なども開催される大ブームになった。2009年現在も新製品がリリースされ、公式大会が開かれている。


【スクリーンショット】
全国のレーサーたちとミニ四駆の熱いバトルが楽しめる、モバイルならではのミニ四駆が展開される



■ 轟博士や仲間たちの支援を受け、レーサーとして歩み始める

 ミニ四駆グランプリ参戦を希望するプレーヤーが訪れたのは、ミニ四駆の権威、轟博士の研究所。轟博士からマシンを1台プレゼントされたプレーヤーは、全国のライバルたちとの激しいバトルに飛び込んでいく……という物語。轟博士や博士の弟子たちはプレーヤーを優しく見守り、トップレーサーになるためにアドバイスしてくれる。最初はチュートリアルとして轟博士と勝負するが、ストーリーがゲームの進行に影響を与えることはないので、背景設定として理解すれば十分だ。

 「REVO」は、轟博士のライバルである音無教授が開発したAIチップをミニ四駆に装着して、新たなグランプリに挑むというもの。AIチップを使用することで、スピードアップなどの命令をマシンに出せるようになり、プレーヤーがレースに直接介入できる。マシンや資金(ゴールド)、クラスは「GPX」と「REVO」でデータを共有しており、2つのグランプリで違う楽しさを味わえる。


【スクリーンショット】
轟博士からプレゼントされるマシンは“マグナムセイバー”、“アバンテMK II”、“エンペラー”から選択。人気漫画「ダッシュ!四駆郎」、「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」でおなじみのマシンだ。ただし選択できる3台は時期によって変更されることもある
轟博士だけでなく、博士の弟子である勝彦、紅葉らもプレーヤーを気にかけ、アドバイスしてくれる



■ 「レーサーポイント」をためて、ランキング入賞を目指せ!

 バトルで獲得した「レーサーポイント」でパーツを購入し、マシンを強化。さらにライバルたちに勝利し、ネットを通じてのランキングで1位を目指すのが、「GPX」と「REVO」で共通した流れとなる。ランキングで上位に入るためには、1日に対戦回数の制限がある「ランキングバトル」と、回数無制限の「フリーバトル」で勝利することが必要だ。ランキングバトルに勝利するとゴールドとレーサーポイントを獲得でき、フリーバトルはライバルを倒した数がランキングに影響する。

 レーサーにはレーサーのランクを表わす12のクラスがあり、1週間で獲得したレーサーポイントに応じて毎週月曜日にクラスアップ・ダウンが発生する。クラスアップすれば、ランキングバトルで獲得できる賞金や、毎週レーサーに支給されるゴールドの金額が上昇する。クラスダウンした時はマシンの能力が下がるペナルティを受ける。ランキングとともに最上位の「アルティメットクラス」に上りつめるのが全てのレーサーの目標だ。


【スクリーンショット】
「REVO」では上位に入賞するほど、獲得できるレーサーポイントと賞金が多くなるランキングには「週間レーサーポイント」、「総獲得賞金」、「フリーバトル」などの種類があり、100位までの結果が公開される「GPX」と「REVO」ではランキングが別になり、レーサーポイントもそれぞれ集計される。ただしクラスは共通で、どちらか高い方のレーサーポイントを基準にクラスアップ・ダウンの判定が行なわれる



■ オンリーワン&ナンバーワンの最強マシンを作り出せ!

 本作の最も重要な部分であるマシンのカスタマイズは、ランキングバトルなどで稼いだゴールドを元に、カスタマイズ用パーツをショップで購入する。ミニ四駆の知識がない人でも遊べるように、各パーツの解説やプレーヤーからの評価なども記されている。マシンを速くするためには、高性能のパーツを購入することが1番の近道だ。子供の頃には小遣いが足りずに諦めたパーツを思う存分買えるというのは、例えゲームの中といえども気分がいい。性能よりも欲望を優先してパーツを購入するのも、また本作の楽しみ方のひとつではないだろうか。

 パーツは購入しただけでは意味がない。マシンにセッティングして初めて効果が出る。最高速重視のスピードコース、コーナリング性能が必要なテクニカルコース、パワーの必要な登り坂のあるコースなど、さまざまなコースで勝利するには、パーツの選択と組み合わせが重要だ。「どんなコースでも最強!」というパーツの組み合わせは存在しないので、コースごとに最適のセッティングを生み出す必要がある。豊富なパーツの、ちょっとしたセッティングの違いがはっきりと結果に表われるのはリアルで、なおかつゲームバランスを保つように練り込まれている。セッティングの妙味が本作の醍醐味と言えるだろう。

 「GPX」では所持しているパーツを改造して性能を引き上げる「パーツ強化」を行なえる。強化したパーツをマシンに組み込むことで、より速いマシンを作り上げられるのだ。ただし強化は失敗することがあり、パーツの性能が下がるとともにそれ以上の強化ができなくなる。パーツ強化はマシンを速くするポイントだが、パーツは強化するほど失敗の確率も上がる。失敗を恐れずパーツを強化するのか、あえて強化には頼らずセッティングを煮詰めるのか、リスクをマネジメントする能力がレーサーには不可欠なのだ。


【スクリーンショット】
ショップで販売されているパーツには実在するものも多くあり、懐かしく感じる人もいるだろう時には思わぬパーツが予想外の効果を引き出すこともある。必ずしも高いパーツばかりを集めたマシンが速いわけではない
パーツを強化する時はどのような方向に性能を引き上げるのか、3種類から選択できるゴールドに余裕があるなら失敗したパーツをあきらめて、購入し直したパーツを最初から強化する方法もある。場合によっては、失敗したパーツの方が強化前のパーツより性能の高いことも



■ 「ミッション」攻略で強力なパーツをゲット

 「GPX」独自の要素として、「ミッション」が存在する。ミッションは強力なパーツを入手するための課題で、指定されたコースで示された目標を達成するとミッションクリアとなる。

 ミッションには「ポイントミッション」、「メダルミッション」の2種がある。「ポイントミッション」は、ゴールドを支払ってミッションを受領し、ミッション達成で「ミニ四ポイント」を獲得できる。「メダルミッション」ではミニ四ポイントを支払って受領し、達成すると新たなパーツがショップに並ぶようになる。「メダルミッション」で登場するパーツは強力なものが多く、ランキングを目指すプレーヤーにとっては「メダルミッション」のクリアが最優先課題になる。

 「メダルミッション」にはミニ四ポイントが必要で、ミニ四ポイントを得るためのミッションにはゴールドが必要。さらにゴールドを得る手段にはランキングバトルがあるが、1日の回数制限がある、という構造になっている。ミッションを受領・達成するためには、長期的な計画性が鍵となる。どのミッションをどの順番で受けるのか、プランを練って計画通りに実行できたときの充実感はたまらなく、つい夢中になってしまう。ランキングバトルが待ち遠しく、「早く明日にならないかな」と思うほどだ。

 ミニ四ポイントは、「オーバーバトル」という対戦回数の制限を越えてランキングバトルを行なうときに使用される。「できるだけスムーズにパーツを集めて改造に熱中したい」というプレーヤーの救済措置として、ミニ四ポイントは有料販売もされているので、手っ取り早く「メダルミッション」だけに挑戦したいプレーヤーは、これを利用するのも手だ。


【スクリーンショット】
ミッションの目標には「3日間以内に40レーサーポイントを獲得」、「ランキングバトルで指定されたタイムを切る」などがあるランキングバトルに合わせて各種ミッションを一緒に行なうと、毎日の新たな目標ができる1日のランキングバトル回数制限は「GPX」で8回、「REVO」で5回。オーバーバトルは所持しているミニ四ポイントと相談しながら、使いどころを考えよう



■ ミニ四駆を漫画のごとく、意のままに操る「レースアクション」

 「REVO」で追加されたAIチップはミニ四駆に装着するパーツで、マシンの能力がアップする。チップはショップで購入でき、特性の違う何種類かのチップが用意されている。またランキングバトルを行なうことで経験値を獲得し、既定値まで到達するとチップのレベルがアップする。レベルアップにより、マシンの能力がさらに向上し、チップに応じた新たなレースアクションを習得する。レースアクションとはプレーヤーがレース中に行なえる命令のようなもの。後ほどあらためて解説する。

 できることなら多くの種類のチップを育成し、さまざまなアクションをマスターしたいが、ランキングバトルでしか経験値は入手できない。ビジョンを明確にして育成するチップを絞るか、オーバーバトルを利用して強引に成長させるか、ここでもプレーヤーのリソースマネージメントが試される。


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習得したレースアクションも装備しないと意味がない。装備は無制限に行なえるわけではなく、ちょっとしたパズル形式になっており、アクションの取捨選択を迫られる習得したアクションに応じてショップで販売されるチップの種類が追加されるアクションを覚えることを重視したものや、成長が遅い代わりにマシン能力を大きく高めてくれるものなど、チップには特色がある



■ 「GPX」と「REVO」、それぞれの特色が出る白熱のレースシーン

 「GPX」のレースは1対1の形式。プレーヤーがレースでできることは、スタートのタイミングに合わせて決定キーを押すのみ。2回のフライングで失格となる。マシンが発車してしまえば、あとはレースを見るだけになる。

 「REVO」では5台でレースが行なわれる。プレーヤーはスタート時以外に、前述のレースアクションでレースに介入できる。レースアクションはスピードを一時的に上げる、コーナーをうまく回る、バランスを回復させるなどの効果があり、プレーヤーがタイミングを見計らって発動させることでレースを有利に進められる。アクションを習得するとともに、レースでの使いこなしも「REVO」では求められる。

 「GPX」ではプレーヤーはレース中、見ているだけになるが、実際のミニ四駆に忠実だとも言える。「REVO」はアクションに合わせて、アニメのように「いっけぇー! マグナム!」といったセリフが表示され、自分の声にマシンが応えてくれるのはやはり気分がいい。現実的な「GPX」か、漫画的な「REVO」か、どちらに魅力を感じるかは好みの分かれるところだ。


【スクリーンショット】
「GPX」、「REVO」ともにレースを行なうコースは、配信されている中から自由に選べる。ミッションにチャレンジしているときは、指定されているコースに変更しよう
コースを変更した場合は、レース前に必ずエントリー走行をしなければならない。エントリー走行の結果がサーバーに登録され、全国のプレーヤーと対戦する自分の分身となる「GPX」のレース画面。「3、2、1、GO!」のタイミングに合わせてマシンをスタートしたら、あとはレースを見守るのみ
「REVO」のレース画面。レースアクションは走行中に増加する「アクションゲージ」が規定量までたまれば発動させられる。規定量はアクションの種類やレベルによって変化するレースアクションの発動をオートマチックにして、AIチップに任せることも可能。AIチップのレベルが上がり、メモリーの能力が成長すると、より適切なタイミングでレースアクションを発動してくれるようになるアクションを発動する時のセリフも自由に設定できる



■ 濃厚な味付けのシミュレーションを親しみやすい題材でマイルドに

 「GPX」と「REVO」ではそれぞれ、期間限定のイベント・大会が頻繁に行なわれている。大会に参加して1位を獲得するのは、すべてのミニ四レーサーの目標だ。優勝者にはショップで購入できないパーツが贈呈されることもある。イベントも不定期に開催されており、7月のイベントではこのときしか手に入らない「初音ミク スペシャルマシン」をゲットできるとあって非常に盛況だった。また本作は、ライバルたちとコミュニケーションを取ったり、チームを作成、あるいは所属したりできる機能を備えており、大会にはチームで競い合うものもある。

 完成度の高いシミュレーションゲームは、互いが複雑に絡み合った課題をプレーヤーのひらめきと地道な事務処理能力で、少しずつかつ着実に解決できるように設計されているが、本作はそれらをきちんと満たしている。本作は非常にレベルの高いマネジメント能力を求められる作品だ。パーツを購入する資金管理、マシンのセッティングとパーツの強化、ミッションチャレンジなどを並列に管理する能力が試される。

 本来ならばこれほど複雑なシミュレーションは敷居が高くなる。だが本作は題材「ミニ四駆」のおかげで、親しみやすく、説明がなくともある程度の仕組みが想像できる。インターネットを介しての対戦やコミュニケーション、常に持ち歩く携帯電話だからこそ定期的なプレイが苦にならない、気軽に短時間で遊べるなど、モバイルゲームの利点を十分に活かし、「携帯電話でしか遊べないミニ四駆」の世界を作り上げた。

 発売から20年以上経ち、世代を超えて愛されてきたミニ四駆。「親子でミニ四駆を満喫中」というあなたも、「子供のころ夢中になった」というあなたも、「ミニ四レーサー」デビューしてみては? 筆者にしてみれば、ミニ四駆の軽量化のために出る切削片で部屋を汚さなくて済むというだけでも、本作の存在は非常にありがたい。


【スクリーンショット】
フレンド登録機能があり、コミュニケーションを図ることも可能。情報を交換しあうのもランキング上位を狙うための手段だゲーム内のインフォメーションには、イベントの告知や最新情報が送られてくるので、こまめにチェックしたいチームで戦うことでプレーヤーのモチベーションがさらに高まる

【プロモーションムービー】


(C)TAMIYA (C)2009 CAVE CO., LTD.
(C)大林かおる/小学館
(C)徳田ザウルス/小学館
(C)こしたてつひろ/小学館・ShoPro

(2009年 10月 1日)

[Reported by 山科明之進]