EAJ、シリーズ最新作「FIFA10 ワールドクラスサッカー」をお披露目
多数の改良や新規要素で、より「サッカーらしい」プレイ体験を

7月28日開催

会場:スタジアムプレイス青山


作品タイトルのロゴ

 エレクトロニック・アーツ株式会社は、7月28日、「FIFA10 ワールドクラスサッカー」のプレス向け発表会を東京青山のスタジアムプレイス青山において開催した。「FIFA10 ワールドクラスサッカー(以下『FIFA10』)」は、米Electronic Artsが展開するEA Sportsブランドのフラッグシップ「FIFA」シリーズの最新作で、今年10月の発売を予定している。 発売プラットフォームはPS3、PS2、PSP、Xbox 360、Wiiで、価格はPS3/Xbox 360版が7,665円、PS2/Wii版が6,090円、PSP版が5,250円となっている。

 本シリーズは「FIFA」の名を冠することが示すとおり、国際サッカー連盟(FIFA)の公認を受けた唯一のサッカーゲームシリーズだ。欧州の有名リーグをはじめ、世界から十数のサッカーリーグが全て実名で登場し、主要リーグは2部のチームまで再現。その上で、昨年登場した「FIFA09」では10対10でプレイ可能なオンライン対戦を実現するなど、ゲーム性の向上も目覚しいシリーズとなっている。

 本発表会では、EAカナダで本作の開発を担当する、FIFA開発チームのエグゼクティブ・プロデューサー牧田和也氏が来日し、「FIFA10」の特徴が詳しく語られた。牧田氏は、「FIFA10」に新たに加えられた改善点や改良点により、全てのユーザーに「よりサッカーらしい」体験を提供できると自信を持って抱負を述べてくれた。



■ ユーザーフィードバックに基づき、多数の基本的改良を施した「FIFA10」

冒頭挨拶を行なったエレクトロニック・アーツのPRマネージャー熊谷一幸氏
EAカナダでエグゼクティブプロデューサーを勤める牧田和也氏。本作の特徴について詳しく紹介した
「FIFA10」は、前作「FIFA09」で得られた多数のフィードバックに基づき、徹底的な改良が施されているという

 発表会では、まずはじめにエレクトロニック・アーツでPRマネージャーを務める熊谷一幸氏が登壇し、冒頭の挨拶を行なった。熊谷氏は、「FIFA08」、「FIFA09」と、ゲームプレイ要素の改良や、10対10オンラインプレイなど新機軸を打ち出してきたシリーズの歴史を紹介。その上で「最高のサッカーゲームのひとつになったと確信しておりますが、まだまだ充分に認知されていません」とし、国内市場に向けてさらにPRしていきたいとの抱負を述べた。

 続いて登壇したのはEAカナダで「FIFA」シリーズのエグゼクティブプロデューサーを勤める牧田和也氏。牧田氏は1999年よりシリーズの開発に携わっており、本作「FIFA10」でそのキャリアは10年目となる。そんな牧田氏をはじめとして、EAカナダでは沢山の国から集まったスタッフが本シリーズの開発を続けているそうだ。

 牧田氏はEAカナダの国際色豊かな開発風景を簡単に紹介した上で、「FIFA10」における重要な進化について語った。開発チームにおけるミッションは、ユーザーの満足度を前作「FIFA09」以上に向上させること。牧田氏は「前作のゲームプレイは全体的には満足ながら、若干のフラストレーションもあった」とし、「FIFA10」の開発にあたってはユーザーフィードバックに基づく改善に重点を置いたという経緯を紹介した。

 「FIFA10」における改善の中で基本となるポイントは、地味ながらとても重要だ。牧田氏はこれを以下の5項目にわけて解説した。

    ・緊急時のAI判断
    ・パス
    ・ポジショニング
    ・シュート
    ・ディフェンス

 「緊急時のAI判断」は、オフェンス、ディフェンスの両方に強く影響する改善項目だ。具体的には、ポジショニング、スペースのカバーなど多数の項目で改善が施されている部分だが、全体として「より人間らしい動き」、「試合運びのリアルな緩急」が目指すところなっている。例えば、ここで紹介された動画では、前線にボールが集まっている間、遠くにいるディフェンダーがゆっくり歩くというシーンが見られた。前作では常に緊張状態で動き回っていたので、サッカーの風景としてより自然になっているのが嬉しい。

 パスについては、スルーパスやロブパスに大きな変化が見られる。スルーパスは出し手、受け手の両方の動きが改良され、ユーザーの意図通りのボールが出やすくなったようだ。ロブパスは、前作では高く蹴り上げてしまい、パスが通るまで時間がかかっていたが、今作では受け手の足元を狙い、より低く速いパスが出せるようになる。これによりロングパスでのサイドチェンジといった組み立てが、実際のサッカーの試合に近いテンポになりそうだ。

 ポジショニングについては、ディフェンス時に空いたスペースを適切にカバーリングする動きや、オフェンス時に斜めに走りスペースをうまく突く、ディフェンダーをひきつけてスペースを作る動きなど、多数の項目が上げられている。これによりディフェンスの能力が向上すると同時に、攻撃のバリエーションが増え、より多彩な状況をプレイすることができる。

 シュートについては、今作ではボールの回転による弾道の変化をより適切にシミュレートしつつ、細かな調整を加えたという。その結果、弾道はより自然なものとなり、シュートのバリエーションも増えたようだ。牧田氏によれば特に前作で「ポストに当たりすぎる」という意見が多かったそうで、今作ではその声にしっかりと答える内容になったようだ。

 最後のディフェンスについては、前作で不満の多かったスライディングの動きや、危険なボールをクリアする動きに大幅な改善が加えられている。例えば、多数のモーションが追加されたことにより、前作ではヘディングでクリアしようとして失敗していたような難しいボールを、オーバーヘッドキックで大きくはじき出すような動きが可能となっている。また、ボールのコース上にいるディフェンダーの全員がボールに反応するようになったことで、不自然な形でルーズボールになってしまう可能性がほぼなくなっている、というのも重要な改善ポイントと言える。


プレイステーション 3およびXbox 360版におけるグラフィックスは、前作よりも明るく、見やすくなった印象を受ける。それに増してゲームの中身に加えられた改良が、ゲームのできにインパクトを持ちそうだ


■ ついに実現したアナログドリブル! それに伴うフィジカルコンタクトの進化にも注目

スキルフルなドリブルといえばこの人。今作で実装された「360度ドリブル」の威力はいかに?
スライドドリブルは、ゴール前の攻防でリアルな駆け引きを演出してくれそうだ

 上記で紹介した改善項目は、ほぼすべてが「FIFA09」のプレーヤーからのフィードバックを受けて手を入れたものだ。「FIFA09」を100時間以上プレイしてきた筆者としても、不満に思っていた部分がことごとく改良されたという印象で、非常に好感触。そこでさらに牧田氏は、本作で導入される「イノベーティブな部分」について話を進めてくれた。

 その根幹を成すのが、本作で初めて実現する「360度ドリブル」だ。前作までは、上下左右斜めの8方向にしかドリブルの動きを展開できなかったが、「FIFA10」ではアナログスティックを倒した任意の方向へ、まさにアナログ的にドリブルを展開することができる。

 これは、モニターの中でより自然なサッカーを展開する上で非常に重要な変化だ。複数のディフェンダーの隙間を狙ってボールを蹴りだし、その間に割って入りながら突破するようなドリブルが可能になるほか、シュート前少しだけ角度をつけて利き足にボールを持ち替えるといった、ライブ感豊かな動きが可能になるからだ。

 ドリブルについては、まだ大きな改良点がある。それが、新たに追加されたスライドドリブルの動きだ。前作ではスロードリブルの発動に使われていたL1ボタン(Xbox 360版ではLB)で、今作では体の方向を変えずにボールを動かすというドリブルが可能になる。

 これはディフェンダーを前にしてシュート・パス、あるいはドリブルのコースを探す、作るという際に威力を発揮する。特にペナルティエリア内で、ゴールから背を向けることなくディフェンダーを左右に揺さぶるといった、実際の試合でもよく見られる動きが自然に可能になるのが嬉しい。プレーの緩急をつける上で重要な操作となりそうだ。

 また、牧田氏によれば「360度ドリブルの実装によって可能になった」という、フィジカルプレーの進化は、オフェンス、ディフェンス双方のプレイ内容に一味違った臨場感をもたらしそうだ。ドリブルの自由度が高まった影響で、選手とボールの動きの独立性が高まり、ディフェンダーの前に肩を入れ、体をガシガシぶつけ合いながら強引にボールを運ぶといったシチュエーションが再現されるわけだ。

 最後に牧田氏は、「マネージャーモード」の改良についても言及した。これは、ひとつのチームを監督として長期にわたって率いるシングルプレイ用のモードだ。前作「FIFA09」を開発した際はピッチ内のゲームプレイ要素の開発で手一杯だったこともあり充分な改良ができなかったとのことだが、今回は力をいれ50以上の改善を施したという。

 「マネージャーモード」における改善のうち重要ポイントのひとつは、AIチーム同士の移籍交渉が、名声、経験、チームフィロソフィーなど、より現実的な材料に即して判断されるようになったことだ。余談ではあるが、この要素をテストしている最中、ゲーム中の選手カカが、ACミランからレアル・マドリーに移籍するという状況がゲーム内で起こったという。その際の移籍金が、最近実際に行なわれた移籍の金額にそっくりだったもので、牧田氏は思わず笑ってしまったそうだ。

50以上の改良が加えられたという「マネージャーモード」。一見して画面構成も変わっており、前作とは違った印象を受ける。改善のポイントとしては、「リアルな移籍」、「試合のリアリティ」、「現実的な選手の成長」といった項目が挙げられていた


■ 「完成度65%」のデモバージョンをプレイ
 AIの性能が向上したため、得点するためにはしっかりとしたゲームの組み立てが必要

会場にはプレイステーション 3版、Xbox 360版、Wii版それぞれの試遊機が設定されていた
対戦プレイを確かめるプレス関係者。筆者も実際にプレイし、その感触を確かめた

 最後に、会場に設置されていた試遊台でのプレー内容をもとに、「FIFA10」の感触をお伝えしておきたい。試遊用に展示されていたバージョンは「完成度65%」にあたるとのことで、発売に向けた細かな調整がこれから行なわれる段階であるとのこと。このため実際にリリースされるものとは異なる部分もあるが、上記までに紹介した機能は網羅されているので、完成品を予想する材料にはなるだろう。

 というわけで、AIチームとのワンマッチをプレイしてみた。全体的に受ける印象としては、操作感覚が前作に増して「やわらかく」なったことだ。これは本作で実現した360度のドリブルや、自然な形のフィジカルコンタクトによる影響が大きい。

 特にドリブルに関しては、アナログスティックを倒した方向にほぼ忠実にボールが出て行くため、パスの出し先を考えてボールを置いていったり、ディフェンダーの足が届かない位置を狙って進んでいくといった、緻密な操作が自然に楽しめる。

 また、実際にプレイして強く感じたのは、AIチームのディフェンス能力が前作に比べて非常に向上している、ということだ。AIやモーションに対する多数の改善がこれをもたらしているのだろう。前作の感覚で簡単にボールを前線に運んでいくと即座にスペースを埋められ、簡単にはじき返されてしまう。スピード任せの強引なドリブル突破も難しくなっている。

 そこで大いに活用したいのが、今作で非常に使いやすくなったロブパスによるロングフィードやサイドチェンジだ。今作のロブパスは、出し手が余裕のある状態であれば、受け手の足元めがけて早く低いボールが供給されるため、プレミアリーグばりの素早い展開が可能だ。これを活用し、マークをひきつけた後にサイドを変え、手薄なスペースを突破、そしてクロスボールをあげてダイレクトであわせる、といったプレーが効果的になっている。

 このように、本作で得点を挙げるためには「よりサッカーらしい組み立て」を展開する必要がある、というふうに感じた。ショートパスだけによる崩しはもはやそれほど有効な手ではなく、うまくロングボールを織り交ぜつつ、緩急のあるサッカーを展開しなければ、本作の賢いディフェンダーは崩せない。俄然、ゲーム的な攻略対象としても、より手ごたえのある内容になっている。

 多数の改良によって確実な成長を果たしつつある「FIFA10」。ただ、今回の発表会では、多くのオンラインプレーヤーが気にしているであろう、オンライン対戦要素についての新情報は明かされなかった。これについては今後、別の機会に発表があるということなので、続報を楽しみに待ちたいところだ。


本作のイメージキャラクターとして、ベンゼマ、ロナウジーニョ、ルーニーの3選手が選ばれている。10月に予定されている発売時にはレアル・マドリーのユニフォームを着たベンゼマの姿をゲーム内で見ることができるだろう

こちらはWii版のスクリーンショット。昨年と同様に、Wii版のリリースが予定されている。前作ではコミカルなキャラクターによる8対8のミニゲームを楽しめる内容になっていたWii版だが、今作では全ての年齢層で楽しめる事を目指したとのことで、少々作風が変わったようだ。Wii版のウリとしては多彩なアクション、パーティプレイ、個人戦績の記録といったソーシャル要素の拡充が紹介された



(2009年 7月 28日)

[Reported by 佐藤カフジ]