Xbox 360ゲームレビュー

世界が絶賛したSFRPG大作がついに日本上陸
人類と銀河の命運を掛け、宇宙を駆け巡れ!

「Mass Effect」

  • ジャンル:アクションRPG
  • 発売元:マイクロソフト
  • 開発元:Bioware
  • 価格:7,140円(税込)
  • プラットフォーム:Xbox 360
  • 発売日:5月21日(発売中)
  • プレイ人数:1人プレイ専用
  • レーティング:CERO D (17歳以上対象)

広大な銀河が冒険の舞台。緻密に構成されたハードコアSFの世界を堪能しよう

 マイクロソフトは、ハードコアSFの世界を舞台とするアクションRPG「Mass Effect」を5月21日に発売した。本作は2007年11月に欧米版が発売されたタイトルで、開発元は米Bioware。Biowareは「Baldur's Gate」、「Never Winter Nights」といった上質なファンタジーRPGをPC向けに作り続けてきた実力派のスタジオとして知られており、本作「Mass Effect」もまた、非常にシリアスな世界を舞台とする濃密な作品に仕上がっている。

 欧米での発売以降、「Mass Effect」は欧米で非常に高い評価を受け、名実共にXbox 360プラットフォームを象徴するRPGタイトルとなった。Xbox 360エクスクルーシブタイトルだったため、2006~2007年の「Oblivion」、2007年の「Bioshock」、2008年の「Fallout 3」といったメジャーRPGタイトルの影に隠れ、やや存在感が薄い感じは否めないが、それでもXbox 360ユーザーならばプレイしておくべきタイトルであることには変わりない。今回マイクロソフトから発売される国内版は海外版の発売から実に1年半が経過しての登場となる。一時は発売そのものすら危ぶまれた時期もあり、本作の登場を待ち望んでいたファンにとっては「ついにこの日が来た」という感じだろう。

 本作は純粋なローカライズ版となっており、オリジナルの海外版とまったく同じコンテンツを備え、カットシーンや会話で流れる大量の音声は英語のまま、日本語字幕が付加された。また、日本語版だけの特典として、メイキングムービーや資料集を収録したボーナスディスクを同梱。ボーナスディスクには欧米では400マイクロソフトポイント(MSP)で提供されいている有料ダウンロードコンテンツ(DLC)「星の落ちる日」も収録されているので、なかなかお買い得なパッケージとなっている。それではさっそくゲームの内容をご紹介したい。



■ アクションベースの戦闘に、アドベンチャースタイルの銀河探索と冒険
 ハリウッドスタイルの重厚な演出で堪能するハードコアSF世界

5万年前に絶滅したという「プロセアン」の遺物が、現在の銀河社会の行動なテクノロジーをもたらしている。事件の発端になったのはそのひとつ「ビーコン」だ
主人公、シェパード少佐。人類の連合軍に所属する、若く有能な軍人だ
戦闘はFPSスタイルだ。敵も味方も攻撃力が高めであるため、障害物を使って敵の攻撃を防ぐことが重要になっている
スキルポイントの配分で成長内容を決める。自分のプレイスタイルに合わせよう

 本作の舞台は22世紀末の銀河系。「マス エフェクト」と呼ばれる超古代文明プロセアンのテクノロジーを火星で発見した人類は、「ファーストコンタクト戦争」を経て銀河社会に接触した。新参者である人類は、銀河全体の政治機構「評議会」を構成するアサリ、サラリアン、トゥーリアンの3種族に比べていまだ劣勢な地位にあるものの、持ち前の組織力と行動力を武器に、めきめきと頭角を現わし始めている。

 そんな中、評議会のスペシャルエージェント職である「スペクター」を務めるトゥーリアンのサレンが、惑星エデン・プライムでプロセアンの遺物を調査する中、不穏な動きを見せ始める。その顛末を目撃した人類連合軍のシェパード少佐は、サレンの行動が評議会への裏切りにあたると確信。そしてサレンの動きは、人類だけでなく、銀河全体の生命を脅かす危機に発展していく……。

 という設定で始まる「Mass Effect」は、ゲームジャンルとしてはRPGとなっているものの、実際のプレイ感覚は非常にユニークで、まさに「やってみないとわからない」という内容の作品だ。一般的なRPGの感覚とはまったく異なるフィーリングとなっているので、まずは基本的なゲームシステムから、本作の全貌を明らかにしたい。

 まず、戦闘部分は完全にFPSライクなアクションゲームとなっている。フィールドの探索とモンスターとの戦いは「Gears of War」風のショルダー視点で展開し、主武装はライフル、ショットガン、ハンドガンといった銃火器だ。操作系もFPS的にまとめられており、FPSの経験者なら迷うことなく戦闘に没入できる。ただ、RPG的なパラメーター要素もきちんと織り込まれており、レベルとスキルの概念、そして多種多様な武装やアイテムによって、戦いのバリエーションが大きく広がっている。

 そして、単純なFPS的な戦闘に比べ、質的な違いをもたらしているのが多種多様な「アビリティ」の存在だ。アビリティはキャラクターのスキルに関連付けられた概念で、一時的に攻撃力や防御力を向上させたり、敵の行動を妨害するといった、様々な特殊能力が含まれる。アビリティは難度の高い戦闘では必須の存在で、RBを押すことで現われるリング上のインターフェイスで即座に発動させることができる。アビリティの選択中はゲームの時間が停止するため、じっくりと作戦を練りながら戦いを展開することもできる。

 もちろん、普通のRPGのように、沢山のアイテムを入手し、その中からより強い装備を見つけ出す楽しみもある。武器の強さはダメージの大きさ、オーバーヒートへの耐性、命中率で表わされ、アップグレードパーツを取り付けることでさらに強化したり、特殊効果を付け加えることもできる。ちなみにこの世界の銃器は、「マス アクセラレータ」と呼ばれる未来技術で極小の弾体を発射する仕組みなので、発射可能な弾数は事実上無限だ。とはいえ連続して打ち続けるとオーバーヒートを起こし、一時的に武器が使用不能となるため、それなりの戦闘の組み立てが必要となっている。

 広大な惑星の探索では、歩兵戦闘車「M35 MAKO」に乗り、地上を駆け巡ることになる。MAKOは単なる移動手段ではなく、オープンフィールドの戦闘で無類の強さを発揮する兵器でもあり、本作の様々な局面で、MAKOの155ミリキャノン砲に頼る場面が出てくる。ある程度の自動照準が働く徒歩戦闘用の銃器と違い、MAKOのキャノン砲はかなり正確に照準しなければならないため、アクションゲームが苦手なプレーヤーは苦戦を強いられそうだ。困ったときは降りて戦うか、スピードを生かし、ヒットアンドアウェイの動きを徹底して戦略的に戦おう。


本作の戦闘はFPS的なスタイルを軸に、RPG的なパラメーターやスキルの要素がうまく融合している。アクション性は非常に高いので、操作に慣れるまでは苦戦を強いられるだろう


広大な銀河系には沢山の恒星系がある。もちろん、人類の故郷である太陽系も存在する
地上に降りて探索できる惑星では興味深い発見が得られることも。くまなく探索してみよう
探索中にサブクエストにぶつかることもある。クリアすることでユニークな報酬が手に入ることもある

 RPGである本作にとって、銃撃戦はゲームのわずかなパートにすぎない。むしろメインと呼べるのは、銀河を自由に駆け巡ることのできる探索の要素だ。プレーヤーはゲームの序盤を過ぎた頃から、最新鋭の宇宙船「ノルマンディー」の指揮権を掌握し、銀河系に散在する様々な星系を自由に訪れることができるようになる。メインストーリーにからむ探索もあれば、それとは関係なく自由気ままに探検することも可能で、本作ではこれが最も楽しい要素となっている。

 銀河系を駆け巡るための動機は様々だ。ストーリーを追うため「ミッション(メインクエスト)」に従うことはもちろん、宇宙ステーションや惑星で出会う人々から与えられる「アサインメント(サブクエスト)」を解決するために、普通なら見逃すような星へ赴くこともある。さらに、絶滅した超古代文明「プロセアン」の遺物を集めたり、人類の連合軍のために鉱物資源を調査するといったコレクション要素も多数用意されている。

 SFファンとしては、無数の惑星のひとつひとつに付けられた詳細な解説文を読むのも大きな楽しみになる。見慣れた太陽系(ソル)も、いまや銀河文明を構成する無数の恒星系のひとつに過ぎず、宇宙全体にはユニークな特徴を備える惑星が無数にあるのだ。資源採集の対象となっている巨大なガス惑星、レアメタルを算出する冷たい準惑星、入植に適した緑あふれる地球型惑星……。酸素を含む1気圧の大気と豊富な水を有しながら、有毒な微生物が大気中に密生しているため入植不可能な惑星もあったりと、宇宙に広がるあらゆる可能性を見つけるだけでも非常に楽しいものだ。

 もちろん全ての惑星が地上探索可能なわけではないが、全体の1割ほどの惑星は、着陸して直接探査を行なうことが可能になっている。クエストがらみで訪れてもよいし、クエストは受けずにひたすら宇宙を探検し続けるのもいい。降下可能な惑星には大抵いくつかの貴重な発見物があり、なかには大きなダンジョンを備えるものもある。数奇な運命をたどった惑星の歴史に触れることもあるだろうし、不思議な生物を発見することもあるかもしれない。宇宙探検にはSFロマンが満ち溢れているのだ。

 そして、クエストがらみの出来事に関しては、例外なく人物との会話やカットシーンが用意されており、フィルムエフェクトがかけられた印象的な映像とともに、見ごたえのあるハリウッドスタイルの演出が徹底されている。そうして表現される、人類とはまったく異なる進化を遂げた異星人たちとの交流や、殖民星の特殊な環境に適応した人々の姿は、本作ならではのリアリティあふれるSF設定により、非常に興味深いものになっている。ゲーム全体を流れる雰囲気はすばらしく、知的好奇心を刺激されずにはいられない。

 戦闘、探索など、本作が持つゲーム要素は、ハードコアなSF設定とうまく融合し、ユニークなプレイ感覚を与えてくれる。ただ、それを背景として展開するメインストーリーは、初回のプレイでは新しい用語や概念の応酬が続き、にわかには入り込めない敷居の高さを持つのも事実である。そこで、多少なりとも本作をスムーズにプレイするためには、ゲーム中いつでもアクセスできる百科事典「コーデックス」も楽しむようにしたい。

 「コーデックス」には、銀河社会の種族、歴史、経済、軍事、テクノロジー、そして人類の立場など、ゲームに登場する様々なことがらが詳しくまとめられている。ここにはプレーヤーが遭遇した新たなものごとが追加される仕組みになっているので、よくわからない単語が登場したら、ひとまずチェックするようにしよう。また、コーデックスの内容を充実させることがいくつかの「実績」に関係している。それでなくても、ハードコアSFのファンなら、「コーデックス」を読むだけで丸1日は楽しめるだろう。

探索と戦闘を軸に展開する本作のプレイ内容は、宇宙が舞台ということもあって、他にはないフィーリングだ。広大な宇宙に何がしかのロマンを感じるプレーヤーであれば、ストーリーそっちのけで探索するだけでも大いに楽しめるだろう
ゲーム内百科事典「コーデックス」には、本作に登場する様々なものごとについて詳しい解説が収められている。細部まで作りこまれた設定には一定の説得力があり、コアなSFファンも納得の面白さ。特に異星人の社会や歴史、テクノロジーに関する項目は知的好奇心を刺激してくれる



■ 人類と銀河の命運を掛けて展開する、壮大でハードコアなストーリー
 1周目で全貌を理解したら、2周目はもっと楽しくプレイできる

スペクター・サレン。プレーヤーはその足取りを追うことになる
「評議会」は、まだ人類に対して懐疑的である

 本作は基本となる世界設定がしっかりしているおかげで、その上に構築されたメインストーリーは説得力に溢れ、大変素晴らしい出来映えに仕上がっている。バランスよく配置されたハリウッドスタイルの演出も効果抜群で、プレイを続けていけばいくほど、作品世界にぐいぐいと引き込まれていく。ここでは物語のキーとなる要素についてご紹介していこう。

 まず、物語の軸となるのは、主人公であるシェパード少佐と、トゥーリアン種族のスペクター・サレンだ。「スペクター」というのは、複数の種族からなる銀河社会を調停するための最高機関「評議会」直属の工作員であり、銀河の秩序を守るためにあらゆる組織を超越する特権を与えられた、ただひとりの存在である。

 事件は、ゲームの冒頭、惑星「エデン・プライム」で超古代文明プロセアンの遺物「ビーコン」が発見されたことに端を発する。惑星に派遣された調査隊は謎の軍勢から襲撃を受け全滅。その支援のために派遣された主人公シェパード少佐は、その地で不穏な動きを見せるスペクター・サレンを発見する。これを人類に対する敵対行為だと考えたシェパード少佐はサレンを追跡し、「評議会」に報告。はじめは格の低い人類の妄言として一蹴されてしまうが、調査を続けるうちに、サレンの「評議会」に対する裏切りが明らかになる。

 これをついに認めた「評議会」は、姿を消したサレンの足取りを追うため、シェパード少佐を「スペクター」に任命する。人類初のスペクターとなったシェパード少佐は、連合軍の最新鋭艦「ノルマンディー号」を駆り、銀河をまたにかけた追跡劇を展開することになる。しかし、スペクターとしての特権を有しながらも、あくまでも連合軍の一員である。ただ人類のために行動するか、それとも銀河全体の調和を優先するか。プレーヤーには難しい選択が要求される。

シェパード少佐はサレンの裏切りについての証拠を集め、評議会を説得。サレンに代わるスペクターとなり、銀河を駆け巡る任務に赴く


シェパード少佐の配下となったノルマンディー号。最新鋭のフリゲート級ステルス艦だ
惑星ノヴェリアに降り立ち、現地の人物と交流する。選択肢によって会話やミッションの内容が変化

 シェパード少佐がスペクターに任命されるまでのストーリーは、プレイ的には本作のシステムと世界を学ぶためのチュートリアル的な位置づけだ。ゲーム開始後の2時間ほどにあたるのだが、選択の余地なく1本道のシナリオに沿ってプレイが進行していくため、本作で最も面白くないパートである。特に初回のプレイでは、種族や地名や各種の固有名詞が洪水のように現われるため、まったくついていけない。これが本作の最大の弱点だ。しかし、冒頭のパートを終え、世界の構図をおおむね把握し、銀河を自由に探索できるメインパートに突入するや、本作は一気に面白くなる。

 スペクター就任後、最初のメインミッションは、サレンの右腕として動いているアサリ族のメイトリアーク・ベネジアを追い、極寒の惑星ノヴェリアを調査することだ。新米とはいえスペクターとなった主人公は既に有名人で、大抵の場所なら顔パスで立ち入ることができる。しかし、私企業の実験施設となれば話は別。厳重に立ち入りを禁止された区域にアクセスするため、企業内の様々な人物と接触したり、ちょっとした小競り合いも経験することになる。

 こういった部分で共通しているのは、プレーヤーの選択により、細部の展開がガラリと変わってくることだ。NPCとの会話には必ずといってよいほどプレーヤーの受け答えが複数提示され、柔和に振舞うか、攻撃的にふるまうかなどを選択できる。そのほとんどは台詞回しを変え、主人公の「演じ方」を好きにできるという類のものが多いのだが、中にはクエストの解決策に直結する選択も出てくる。例えば知略を駆使してスマートに解決するか、それにしくじって力づくで解決するか、といったものが典型的である。

 特殊な選択肢にはプレーヤーの性格あるいは特定の会話スキルを要求するものもあって、何か特別な展開を期待するなら、会話関係のスキル「チャーム」あるいは「アグレッション」をある程度高めておくことも必要だ。「チャーム」を高めれば協調や友好を引き出すための選択が可能になるし、「アグレッション」を高めれば脅迫的な手段で物事を解決することが可能になる。それはまさに、プレーヤーが好む主人公像を具現化するための手段だ。

「MAKO」で雪山を疾走。ロケットで応戦してくる敵に注意しよう
研究施設でベネジアに遭遇。明らかになる意外な真実とは?
ミッションをこなす毎に、評議会の人類への見方は変質していく。これにはプレーヤーの選択も色濃く影響

 惑星ノヴェリアにおける序盤の問題をどうにか解決すれば、いよいよアクションパートに突入する。サレンの手下である機械生命体「ゲス」の集団と交戦しつつ、険しい山脈の間を歩兵戦闘車「MAKO」を飼って走り抜ける。追跡対象であるベネジアを追い、山岳内部の研究施設に入れば、激しい戦闘だけでなく、ちょっとしたパズル的な謎解きもある。次第に明らかになるサレンの目的と、銀河全体を脅かす危機。ストーリーのテンポは非常によく、このあたりから非常に強い没入感を味わえることだろう。

 ノヴェリアでいくつもの問題を解決し、ようやくサレンの右腕であるベネジアを追い詰めたシェパード少佐。激しい戦闘の後に判明したのは、予想を遥かに超えた、意外な事実だった。シェパード少佐は一連の戦いを終え、ノルマンディー号に戻り「評議会」へ報告する。ようやく人類に対して一目置くようになった「評議会」の反応は、本作に通低する「上昇感覚」を刺激する、主要な要素だ。いまだサレン追跡の旅は始まったばかりだが、メインクエストを一休みして冒険を探しに出かけるもよし、惑星探査の旅に出るもよし。全てはプレーヤーの手にゆだねられている。

 上記のようなメインクエストは、惑星ノヴェリアの場合、順調に進めれば3時間で完了するほどのボリュームで、全体としてはこれと同規模のパートがいくつか組み合わさって全体のストーリーが構成されている。スムーズに進展した場合、メインクエスト全体のクリアタイムは10時間ほどで、ボリューム的には決して大きいとは言えない。しかし、シナリオの劇的な展開と、見せ方のうまさが相まって、本作のストーリーは非常に印象深く、プレーヤーを感動させ得る内容だ。ことメインシナリオの良さ、という観点で言えば、過去5年くらいのゲームでトップレベルに位置する作品であることは間違いない。

 特に評価したいのは、本作が「1周目よりも2周目のほうがおもしろい」という個性を備えていることだ。1周目のプレイは、頻出する新たな固有名詞や用語に翻弄され、ゲーム世界を充分に堪能することができない。しかし、全貌を把握してから臨むことのできる2週目以降のプレイでは、初回ではわからなかった設定や複線の存在に気づき、より深くストーリーを堪能できるのだ。

 2周目のプレイではそれだけ精神的な余裕を持って進めることができるため、銀河に数多くちりばめられたサブクエストやコレクション要素をじっくり探索することもできる。キャラクターメイキングで、初回のプレイとは違ったアプローチのプレーヤークラスを選択してみるのもいいだろう。銃器の打撃力だけで戦う「ソルジャー」と、この世界の魔法に相当する「バイオテック」で戦うキャラクターとでは、まったくゲームの見え方が違ってくる。だから、本作の全体としてのプレイボリュームは非常に大きいと言えるのだ。


サレンを追って展開する戦いは、銀河に点在するいくつもの恒星系にまたがる。先に行くほど敵も強くなり、戦闘が厳しくなっていくので、時々サブクエストに寄り道して、キャラクターレベルを上げておくのもいいだろう
シェパード少佐には常時2名の仲間が付き添って行動する。戦闘だけでなく、ストーリー上の演出にも変化があるので、2度目以降のプレイでは別のメンバーを選んでゲーム内容に変化をつけることが可能だ
ハリウッドスタイルのシネマチックシーンが随所に挿入されるが、決してうるさくなることはなく、バランス良くゲームを盛り上げてくれる。中盤以降に現われる怒涛の展開は、プレーヤーをぐいぐい引き込むほどの迫力だ


■ ある程度のとっつきにくさや荒削り感は否めないが、プレイ後の満足度は非常に高い
 Xbox 360を代表するRPGとして、1度はプレイしておきたい傑作

初回のプレイでは用語の洪水に面食らってしまう。本作はとにかくとっつきにくいのが難点だ
割と簡単に死んでしまうシーンもあるので、こまめに手動でセーブしておきたい
アイテム関係のインターフェイスは少々使いにくい。所持数制限があるので、必要なものだけ拾うようにしよう

 最後に、本作の総合的な評価をしておきたい。ストーリーが面白く、リプレイ性も高いとくれば、傑作と呼ぶのがふさわしい。そういった特性を備える本作は、HD世代ゲーム機のRPG作品として、7,140円というパッケージ代を出すに値する作品だ。ただ、全てのユーザーにオススメできるかといえば、そうではないかもしれない。SFをテーマとするシネマティックRPGとしての骨格は完璧な水準にあるものの、ゲームシステムの各所に、かなり荒削りな部分が見られるからだ。

 ひとつは、作中だけの固有名詞、特殊用語が頻出し、プレーヤーの側に相当なセンスと努力を要求する部分。こればかりはハードコアSFの宿命といえるのかもしれないが、本作はそれを補うための工夫がゲーム内百科事典「コーデックス」の存在くらいしかなく、演出やストーリーテリングの部分では1歩の妥協もしていない。そのため、プレーヤーの側に「がっぷり四つ」で本作に取り組む覚悟がなければ、序盤、中盤あたりでプレイする意欲をなくしてしまうかもしれない。

 また、昨今の親切なゲームに慣れたプレーヤーを辟易させそうなのが、プレーヤーキャラクターの死亡時の扱いである。この手のRPGでは、プレーヤーが死亡すると直近のオートセーブ地点からやりなおしとなるものが多い。本作もそうなのだが、本作が厳しいのは、オートセーブが行なわれる間隔があまりにも長すぎることだ。

 長いときには1時間以上もオートセーブ地点がないパートも存在する。そのうえ、車両で崖から転落するとか、地雷を踏むとか、ロケットランチャーの直撃を受けるといった方法で、一瞬で死亡していまうパターンが存在するので、丸々1時間分のやりなおしを何度も繰り返させられるようなことがある。根気強いゲーマーでなければ興ざめしそうだ。これについては、戦闘が途切れたタイミングを見計らって随時手動でセーブするしか回避方法がないのだが、本来ならばゲーム側にもっと親切なリスタートシステムを用意しておくべきだろう。

 もうひとつの弱点は、アイテム管理周りのユーザーインターフェイスが充分に洗練されているとはいえず、ゲーム内で取り扱う情報量が爆発的に増大する中盤以降、いらないアイテムの処理や、必要なアイテムの管理にかなりの手間が必要となってしまう部分だ。マイクロソフトが昨年発売したアクションRPG「Too Human」では、価値の低いアイテムを自動的に処分してくれる機能があり、プレーヤーは興味深いアイテムだけを管理すればよかった。本作ではそういった機能はいっさいなく、しかも、画面構成的に一覧性が劣るため、終盤になるとまともにアイテムを管理する意欲が失せてしまうほどだ。

 といった具合にいろいろと弱点もある本作だが、メインストーリー全体をクリアした後に得られる達成感は素晴らしいものだ。他の作品では得られない爽やかな“読後感”があり、筆者は大いに満足できた。既に次回作「Mass Effect 2」がアナウンスされており、ここで指摘した弱点には当然改善が加えられるだろうし、世界観を理解したうえで得られるシナリオの面白さは、既に保障されたも同然だろう。気が早い話だが、筆者は続編を早くプレイしたくてウズウズしているところだ。

 そんな次回作への期待感を与えてくれる「Mass Effect」は、ある程度海外ゲームのノリに順応したRPGプレーヤー、FPSプレーヤー、そしてもちろんSFファンならば、1度はプレイしておくべき傑作だ。面白いゲームをがっつりプレイしたいと願う、ハードコアなゲーマーほど深い楽しみを得られることだろう。その意味で、本作はXbox 360を象徴するRPGなのである。

本編クリア後は、ボーナスディスクのメイキングムービーや、ディスクに収録されている追加ミッション「星の落ちる日」をプレイしてみよう。居住可能な惑星に接近する小惑星から、印象深い風景を見ることができる

【スクリーンショット】

© 2009 Microsoft Corporation. All Rights Reserved.


(2009年 5月 21日)

[Reported by 佐藤カフジ ]