「LEGO スター・ウォーズ/フォースの覚醒」レビュー

LEGO スター・ウォーズ/フォースの覚醒

謎解きに銃撃戦、ビークルでの戦い!
映画以上に“世界”を“キャラ”を楽しめる

ジャンル:
  • アクションアドベンチャー
発売元:
  • ワーナー エンターテイメント ジャパン
開発元:
  • TT Games
プラットフォーム:
  • PS4
  • PS3
  • Wii U
  • PlayStation Vita
  • 3DS
価格:
5,700円(税別)
(0)
4,700円(税別)
(3)
発売日:
2016年10月13日

 「LEGO スター・ウォーズ/フォースの覚醒」がついに発売となった。本作はその名の通り、シリーズ第7作「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」をモチーフにしたアクションアドベンチャーだ。

 キャラクターも宇宙船も全て「レゴ(プラスチック製組み立てブロック)」で再現され、独特のユーモアを加えつつも、映画の要素をほぼ忠実に再現。さらにゲームとして楽しく遊べるようにフィールドの探索要素や、ビークルのコンバット要素を加えている。低年齢のユーザーも楽しめる作品ではあるが、映画ファンもうならせるこだわりが随所に込められている。

 そして「レゴゲームならではのお約束」も面白いところだ。たくさんのキャラクター、壊しまくれるステージ、キャラクターの特殊能力を活かした探索要素といった部分はシリーズを追うごとに洗練され、楽しさを増している。このレビューでは「LEGO スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の様々な魅力をピックアップしていきたい。

映画のエッセンスを大きく拡張、より深く“世界”を楽しめる!

 「LEGO スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は、「スター・ウォーズ」ファンの心を大きく震わせる作品となっている。詳しくは語れないのだが、チュートリアルがいいのだ。ファンがグッとくるシーンも用意されていて、うれしくなってしまう。プレイした人のお楽しみだ。

レイ。BB-8との出会いが、彼女の大冒険の始まりだった
幼い頃に連れ去られストームトルーパーとして生きてきたフィン。彼はレイの友達となって彼女を支える
レゴで再現された「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の世界
映画のトレーラーでおなじみのミレニアムファルコンの飛翔シーン

 そしてチュートリアルの後は、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」をなぞっていくこととなる。物語は惑星ジャクーでのレジスタンスパイロット・ポーを捕らえるためのファースト・オーダーの襲撃から始まる。腕利きのポーは行方不明となっているルークの居場所を示した地図を入手したのだ。しかし、その地図を狙ってファースト・オーダーのストームトルーパーとダークサイドの戦士カイロ・レンがやってくる……。

 本作は古典的なアクションアドベンチャーだ。先に進むための仕掛けヒントをステージを動き回って探し、正解を見つけていくタイプだ。各キャラクターは特殊能力を持っている。レイは持っているクォータースタッフで仕掛けを動かしたり、レゴの壁を上れる。フィンは毒ガス地帯を歩けるマスクを持ち、オブジェクトをロープで引っ張れる。BB-8はハッキングで様々な機械を動かせる。プレーヤーはマップを探索し、仕掛けを作動させてキャラクターを先に進めていく。

 敵は攻撃してくるが倒されてもゲームオーバーはない。「アクションが難しくてゲームが進められない」ということは全くなく、シンプルに謎解きに集中できる。これまでのシリーズに比べヒントもわかりやすくなっており、「レゴ ゲームは本作が初めて」という人にも安心だ。

 さらに本作はレゴ ゲームとしても新しい要素を盛り込もうとしている。随所で障害物に隠れ敵と撃ち合うTPS要素を盛り込んでいるし、ミレニアムファルコンやXウイング、さらにはTIEファイターに乗り込んでのフライトシューティング要素もある。これらの“本格的なゲームの雰囲気”を取り入れて、臨場感を増している。

 映画での予告でおなじみのジャクーの青空で宙返りするミレニアムファルコンや、障害物から頭を出すとストームトルーパーにしっかりフォーカスが合う演出など、映画を見た記憶を刺激されるシリアスで本格的な演出もきちんと盛り込まれているのがイイ。

 「LEGO スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は映画のシーンがきちんと「レゴ ゲーム」のフィールドとして再現されているところが楽しい。ジャクーの乾いた景色や、ポーとフィンが脱出するスター・デストロイヤー内部と、船のすぐそばを飛んでいく描写、ジャクーの遺跡での冒険や、ストームトルーパーとの戦い、そしてジャクー上空でのTIEファイターとミレニアムファルコンの戦いと、映画ではめまぐるしく変わっていく。

 ゲームでももちろんこれらを再現している上に、さらにそれらのフィールドを歩き回り、飛び回れる。映画の記憶をなぞりながら、ゲームでの表現をたっぷり味わうことができる。コツコツ挿入されるギャグもまた楽しいところだ。

 音楽はもちろん、英語音声/日本語音声も主要キャストは映画版と同じものとなっている。このため本作の雰囲気は非常にリッチだ。そして筆者はやはり洋画系声優の独特の雰囲気が楽しめる吹き替え音声が好きだ。C-3POのツッコミどころ満載の天然ぶりはゲームでパワーアップしているし、本人はきわめてシリアスなのに逆にそれがおかしいカイロ・レンはそのシリアスな声が面白すぎる。

 ハン・ソロを演じる磯部勉さんは長年ハリソン・フォードを吹き替え続けている人だからできる味を感じさせる。彼らの演技がたっぷり味わえるカットシーンも楽しくてたまらない。もちろん英語音声ではハリソン・フォードや、キャリー・フィッシャー、デイジー・リドリー、ジョン・ボイエガ……映画のキャストによる台詞を聞くことができるのだ。

【映画の世界がレゴ ゲームに!】
ハン・ソロとレイア。エンドアの戦いから30年後の彼らの姿が見られる
ジャクー、スターデストロイヤー、ハン・ソロとの出会い、そしてタコダナ……次々と変わる物語の舞台を、うまくゲームで表現している

ブロックを組み立てて謎を解き明かせ! 誰でも、誰とでも楽しめるゲーム性

 レゴ ゲームシリーズはちょっとレガシーな匂いがするアクションアドベンチャーだ。先に進むための探索がメインとなる。フィールドは壊せるオブジェクトがたくさんで、壊すとポイントも入手できるので、バンバン壊していくことになる。オブジェクトはバラバラのブロックとなって飛び散り消えていくのだが、この時部品が消えないものがある。これが先に進むためのヒントとなる。

ブロックが散らばったままの所は、何かが組み立てられる印だ
他のキャラクターと合流するには仕掛けが必要な場面も。2人プレイならより密接に協力できそうだ
隠れて撃つ。TPSシーンはかなり本格的な雰囲気だ

 そこでアクションボタンを押すことでキャラクターはレゴで様々なオブジェクトを作ることができる。BB-8が乗れるコンソールパネルや、上に乗って飛び上がれるジャンプ台、扉を動かすための歯車……その時々で様々なものが組み上がる。何でもかんでもブロックで解決できてしまうのが実にレゴらしくて楽しい。

 そして「LEGO スター・ウォーズ/フォースの覚醒」では“マルチビルド”という新しいシステムが導入された。これまではブロックで作れるのは1つのオブジェクトだったが、今回は1つのリソースでいくつかの選択肢が提示されるようになった。このマルチビルドの面白いところは、1度組み立てたものを再び壊し、違うものを組み立てられるところ。Aを組み立てて仕掛けを動かし、壊してからBを組み立てるといった手順を踏んでクリアしていく仕掛けも多い。

 これにキャラクターの個性が組み合わさるのだ。本作では常に数体のプレーヤーキャラクターが登場しており、切り替えて仕掛けを突破していく。ジャンプ台を組み上げて壁がよじ登れるレイを上に上げてからキャラクターを切り替え、ジャンプ台を壊してBB-8が乗れるコンソールを組み上げ、BB-8が仕掛けを動かした後レイが前に進む、といった仕掛けもある。まずキャラクターを動かし、ブロックを組んでみて、仕掛けを把握してからそれらを組み合わせていく、この正解を探っていく楽しさがレゴ ゲームの醍醐味であり、マルチビルドはその楽しさを膨らましてくれる。

 なにより、「スター・ウォーズ」だからいいのだ。チューバッカは爆薬を使って特別なオブジェクトを破壊できるし、ハン・ソロは特別な場所でセンサーを作動させてオブジェクトを発見できる。指揮官であるレイアは他のユニットに命令できるし、C-3POは色々な星系の言語を使いこなす。それぞれのキャラクターが特殊能力を駆使して仕掛けを突破していく。このゲーム性が楽しい。

 映画では出番が少なかったレイアやC-3POもゲームでは大活躍するし、時には大暴れさせてオブジェクトを壊しまくるのもギャップがあって楽しい。「スター・ウォーズ」のキャラクターでレゴのジオラマの中を自由に遊んでいるような感覚になれる。

 個人的にはやはりフライトシューティングが楽しかった。「スター・ウォーズ」といえばビークルだ。奪ったTIEファイターでスターデストロイヤー周辺での戦い、ジャクーでのミレニアムファルコンでの空中戦、惑星タコダナでのXウイングでの戦闘など、パイロットとして機体を操りレーザーを連射して戦いまくれる。アイテム扱いのプロトン魚雷を駆使してオブジェクトを壊しまくるのもいい。「スター・ウォーズ」だからこそ楽しめる要素だ。

 そしてレゴ ゲームは1人だけでなく2人で楽しめるように作ってあるのがいい。2人プレイは据え置き機版でオフラインのみ可能だが、コントローラを2つ用意すれば、協力プレイが可能なのだ。親子だったり兄弟で楽しめる。まだ謎解きがよくわからない小さな子でもキャラクターを暴れ回らせてものを壊しまくるのもありだろう。2人でプレイすることで1人でキャラクターを交代させるよりも早く突破できるかもしれない。

 本作には、ジャンプのタイミングが大事なトラップや、決められた手順と攻撃パターンを見切らねば倒せないボスといったものはない。キャラクターがライフを失ってもゲームオーバーにはならないのだ。あえてゲーム性を「先に進むための仕掛けをクリアしていく」というところに設定しているところに、幅広いプレーヤーに楽しんで欲しいという開発者の主張が感じられる。普段はゲームをしない人とも肩を並べてゲームが遊べる配慮がなされているのである。

【「LEGO スター・ウォーズ/フォースの覚醒」マルチビルド】

【様々なアイディアを盛り込む】
クレーンと、BB-8用のコンソール。1つのリソースで2つのものが作れる
こちらは先に進むための仕掛けと、隠しアイテムを取るための装置が作れる
フィンは有毒ガス地帯を抜けられるマスクを持っている
チューバッカはオブジェクトを破壊できる爆弾を所有
ソロは分析機で情報分析が可能
レイアは仲間の兵士に指示できる

より自由にゲームを楽しめ! 映画のストーリーを補完するエピソードも

 そして「LEGO スター・ウォーズ/フォースの覚醒」ならではの原作を越えた楽しみも用意されている。1つが「フリープレイ」だ。本作のステージでは最初のプレイではアクセスできないオブジェクトが存在する。また、様々な隠しアイテムがある。これらを手に入れたキャラクターを自由に使えるフリープレイで入手していくのだ。

惑星マップ。ここからフリープレイに挑戦も
フリープレイでは自由にアンロックしたキャラクターを使える
「ポーの救出作戦」。ファンには見覚えのあるシーンが……
ダース・ベイダーも使える!

 キャラクターには様々な特殊能力がある。銀色のオブジェクトを壊せるもの、金色のオブジェクトを壊せるもの、情報をサーチできるもの、コンソールを操作できるもの……ゲームを進めてアンロックできるキャラクターもいれば、ステージで集めたポイントを使って入手できるキャラクターもいる。ファースト・オーダーの兵士や、タコダナの酒場で酔っ払っている宇宙人もアンロックすることでプレーヤーキャラクターとして使える。

 これまでのレゴ ゲームでは一旦ゲームをクリアしないと特殊能力を持ったキャラクターが揃わず探索も進められなかったが、「レゴ スター・ウォーズ/フォースの覚醒」では序盤からそこそこ能力の揃ったキャラクターが入手でき、ストーリーを進めるだけでなく探索も楽しめるようになる。フリープレイだと多彩なキャラクターを使いこなす楽しさが増え、クリアしたステージを新鮮な感触で楽しめる。

 そして隠しアイテムである「ゴールドブロック」を入手するとさらなるステージが開放される。これらのステージは「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」では描かれなかったキャラクターの背景を補完するエピソードだ。最初にアンロックされる「ポーの救出作戦」は、「エピソード6」に登場した「アクバー提督」をポーが助け出す話なのだ。

 ここではポーはアクバー提督やC-3PO、BB-8と共に広大なスターデストロイヤーを走り回るのだが、ダストシュートから逃げ込んだ先がファンには見覚えのある場所なのだ。膝まである水にたくさんのゴミ、両側に壁、そして水底にうごめく触手……「エピソード4」でのデス・スターのゴミ捨て場そっくりなのである。このエピソードは他にもファンをニヤリとさせる要素がてんこ盛りである。「ポーの救出作戦」をプレイすると、他のエピソードをプレイしたくなること請け合いだ。

 「LEGO スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のみならず、「スター・ウォーズ」ファンに強くお勧めしたいゲームだ。「レゴ ゲーム」は低年齢層向けに見えるかもしれないが、ライトなゲーム性だけでなく、筋金入りの「スター・ウォーズ」ファンをうならせるディープさ、そして“本格派の雰囲気”を持っている。本作をプレイすると映画をチェックしたくなるし、そこからさらにゲームをやり込みたくなる。

 映画「スター・ウォーズ」シリーズは年末にスピンオフの「ローグ・ワン」の公開も予定されており、さらなる盛り上がりが期待される。「LEGO スター・ウォーズ/フォースの覚醒」はこれからの「スター・ウォーズ」を楽しむためにも魅力的なアイテムだ。

【スター・ウォーズ世界を満喫】
「ポーの救出作戦」ではアクバー提督やC-3POが活躍するのも楽しいところ
TPSシーンではカメラアングルが変わり臨場感が増すので、雰囲気が映画に近くなる
筆者が大好きなフライとシューティングシーン。多彩なビークルで、多彩なシチュエーションが楽しめる
映画でおなじみのシーンがどう再現されているかにも注目