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日本プロeスポーツ連盟、韓国プロゲーマーの「プロアスリートビザ」取得を発表

今後もプロスポーツ実現のために、ライセンス制度、公認大会などを計画

3月30日発表

 日本プロeスポーツ連盟(JPeF)は3月30日、同連盟の設立発表会を開催し、プロeスポーツチーム「DetonatioN Gaming」に所属する韓国人選手2名に対して、東京入国管理局から「興行ビザ・基準三号」、いわゆる「プロアスリートビザ」が発行されたことを発表した。

発表を行なうDetonatioN Gaming代表の梅崎伸幸氏

 プロアスリートビザは、これまで海外のプロスポーツ選手にのみ与えられてきたビザで、同連盟では、「日本においてプロゲーマーが他のプロスポーツ選手と同等であると認められた歴史的な出来事であり、競技レベルの向上とeスポーツの“プロスポーツ化”に向けて大変意義のある実績となった」としている。

 会見で、2選手のビザ取得に到るまでの経緯を説明した所属チームDetonatioN Gaming代表の梅崎伸幸氏は、Jリーグに設立初期におけるジーコ選手やアルシンド選手の活躍を例に挙げながら、その大きな意義を強調。

 そもそもの取得経緯は、選手らが参戦している「League of Legends」のプロリーグ「League of Legends Japan League(LJL)」において、Riot Games主催となった2016年リーグから、海外選手の就労ビザの取得が義務づけられたため。

 梅崎氏は、当初、韓国選手に対してワーキングホリデーや学生ビザ、就労ビザなどの選択肢などを探りながらも、最終的に王道であるアスリートビザの取得に挑み、ついに達成したことが報告された。

 今回選手に提供されたプロアスリートビザの残存期間は6カ月で、この期間は連続して日本に滞在し、試合に臨むことができる。ビザは3月に発行され、9月まで有効で、半年ごとに更新を行なう。今後、日本で実績を積むことで、ビザの残存期間が12カ月に延長されることもあるとしている。

【プロアスリートビザ取得までの流れ】

 今回、プロアスリートビザを取得したのは、いずれも韓国で、最高峰のリーグ「LCK」でプロゲーマーとして活躍していたEternal選手とCatch選手の2名。2人は、それぞれ日本で初めてeスポーツ選手としてプロアスリートビザが獲得できてとても光栄に思い、今後は誇りを持って日本や海外で活躍していくことを約束した。

 梅崎氏によれば、現在、他のプロゲーマーチームに所属する選手たちも、プロアスリートビザの申請を始めており、今後、日本で活躍する海外のプロゲーマーは確実に増えるのではないかという。それによって大会の水準も確実にレベルアップし、より盛り上がる戦いが実現される。今回の発表は、まさにプロゲーマーとってエポックメイキングな出来事と言える。

【プロアスリートビザ取得した選手】
DFMでサポートを担当するDFM Eternal選手
DFMでジャングルを担当するDFM Catch選手

【オンラインゲーム議員連盟、日本オンラインゲーム協会が協力】
公明党所属衆議院議員漆原良夫氏
民進党所属衆議院議員松原仁氏
日本オンラインゲーム協会共同代表の植田修平氏
今回のプロアスリートビザ発行には、議員連盟が果たした役割が大きいようだ

日本プロeスポーツ連盟監事として連盟の概要説明を行なったロジクールの古澤明仁氏
日本プロeスポーツ連盟のロゴ。情熱、挑戦、プライド、日本を示す赤と、それを際立たせる黒、中央にeスポーツのeをあしらっている
日本プロeスポーツ連盟の役員
eスポーツをプロスポーツに

 今回発表の主体となった日本プロeスポーツ連盟は、既存の日本eスポーツ協会(JeSPA)とは別の組織で、1年前に立ち上げた勉強会「eスポーツの未来を考える会」をベースに、3月30日付けで発足したまったく別の新しい組織となる。

 共同代表にe-Sports SQUAREを展開するSANKO代表取締役社長の鈴木文雄氏、DetonatioN Gamingを率いるSun-Gence代表取締役社長の梅崎伸幸氏、これまで数々の大会やリーグを手がけてきたマイルストーン JCG代表の松本順一氏、監事としてロジクールの古澤明仁氏など、eスポーツの分野のキーパーソンが名を連ね、オンラインゲーム議員連盟や日本オンラインゲーム協会の支援を受ける形で設立されている。

 監事を務める古澤氏からは、「eスポーツをプロスポーツに」という連盟理念が紹介され、「プロeスポーツの感動体験を共有し、プロアスリートと共に成長し、プロeスポーツ文化の創造に常に必要とされる存在になりたい」とビジョンが語られた。

 その後古澤氏から連盟の活動方針が20分にわたって語られたが、既存のeスポーツ組織との最大の違いは、「プロ」にフォーカスしているところ。eスポーツを日本に根付かせるためには「プロ」を育てる必要があり、そのための支援をしていくことに力点が置かれているところが、従来の組織とは大きく異なる部分となる。

 プロを根付かせていくためにはファンが必要で、ファンを根付かせるためには“習慣化”が必要というわけで、古澤氏からは習慣化に向けて、参戦、観戦、共有の3つの観点で活動していくことが語られた。具体的には、今回のビザ問題や、懸賞法の縛りで高い賞金の大会が実施できない問題など、eスポーツを取り巻く諸課題の解決や、eスポーツライセンスの制度化、公認大会の普及促進などの計画が語られた。

 ただ、現時点ではタイムスケジュールは明らかにされず、連盟の対外的なキックオフとなる公式大会の実施時期、実施種目についても未定ということで、数カ年のスパンでひとつずつ解決に向けて努力していく形になりそうだ。これまでほとんど実効を伴わないeスポーツ組織が生まれては消えていった経緯を踏まえれば、プロアスリートビザの取得は具体的な大きな一歩といえる。もちろんこれだけで終わっては意味がないが、プロeスポーツ連盟の設立により、今後日本のプロeスポーツシーンがどのように発展・成長していくのか楽しみだ。

【日本プロeスポーツ連盟のビジョンと活動方針】
世界のeスポーツ人口は年々拡大し続けている
「LoL」の世界大会の規模は、MastersやNBA Finals、World Seriesを上回る
日本プロeスポーツ連盟の理念とビジョン
eスポーツを日常の習慣に
eスポーツを取り巻く課題
日本プロeスポーツ連盟の活動方針
ライセンスの種類
賛同企業(一部)

【関係者による記念撮影】

(中村聖司)