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2025年までにVRはどう進化する? VRDCで語られたVRの未来予測
(2016/3/20 08:49)
GDC 2016の中で開催されたVR専門カンファレンスVRDCでは、いままさに生誕期にあるVRコンテンツ開発について様々なトピックが語られた。その多くは過去のVRコンテンツ開発を振り返り、そこから得られた開発ノウハウを語るものだったが、より大胆に、VRの将来を予測するセッションもあった。
このセッション「40 Predictions for VR/AR through 2025」(2025年までのVR/ARについての予測)を行なったのは、中堅のインディーゲームデベロッパー・パブリッシャーのSchell Games代表を務めるJesse Schell氏。Schell Gamesでは「I Expect You to Die」や「Water Bear VR」など、すでに複数のVRゲームをOculus Rift/HTC Vive向けに発表しており、高い評価を受けている。
VRゲーム開発の最前線に立つJesse Schell氏が予想する2025年までのVR/ARの変遷は、実現確実なものから、実現が疑わしい物まで様々なものがあったが、多くの予測が非常に興味深いものであったことも確かだ。
VR/AR市場は毎年倍々で成長。将来的にはスタンドアロン型が支配的に?
Schell氏がまず予測するのは、2025年までのVR市場のトレンドの変遷だ。
その中でSchell氏は、PlayStation VR、Oculus Rift、HTC ViveといったコンシューマーVRシステムの“ビッグ3”が、2017年末までに合わせて800万台も出荷されると見ている。まずPS4ユーザーの1割が購入して400万台、Oculus開発キットのユーザー(DK1・DK2を合わせて30万台)の10倍がRiftを購入して300万台。残りをHTC Viveが占めるという予測だ。根拠は大雑把だが、おおむね現実的な予測に見える。
そして、より安価なモバイルVRヘッドセットはその4倍の普及数で推移すると予測。両者の市場は年ごとに倍々で成長していき、2023年までに据え置きタイプのVRシステムは5億台、モバイルVRは20億台へ。ほぼ全てのPCユーザーおよびスマートフォンユーザーへVRシステムが行き渡る。
面白いのは、2022年までに、VRシステムのマジョリティが「GameFace」のようなスタンドアロン型VRシステムに移行すると予測していることだ。HMD自身にCPU/GPUが内蔵されていて、単独でVRコンテンツを再生できるタイプのシステムである(無線を通じ、PC・スマホを母機として使うこともできる)。
これはスマートフォンのように手で持って使う情報デバイスを置き換えるかもしれない。十分に小型化され、スタイリッシュなデザインが可能になれば、ハンズフリーで扱える汎用情報端末としての使い勝手が上回るようになるからだ。
そうしてVR/AR市場が急激に成長していく傍ら、完全に出遅れた感のあるマイクロソフトもVRゲーミング市場に乗り出してくるのではないか、とSchell氏は予測している。「E3 2018でXbox One用のVR HMDが発表されるか見てみよう」とSchell氏。果たして、この予測は実現するだろうか?
またSchell氏は、ゲーム用VRシステムの普及台数が1,000万台を超える2018年になると、VR専用にデザインされた人気のゲームジャンルが新たに成立すると予測。それが具体的にどのようなものになるかはまだ誰も知らないが、確かに、市場が大きくなることによって初めてメジャーになるジャンルというのはあり得る話だ。例えば、オンラインプレイがマジョリティ化した結果人気ジャンルとなったMOBA(「League of Legends」、「Dota2」)や、SteamやPS4でのダウロード配信やEスポーツ文化の普及が起爆剤となり、突如人気となった「Rocket League」のように。
VRへのハマり過ぎが社会問題に? ゲーマとクリエイターにとっての不都合な予測
VR市場は急速に成長する。この業界でそれを疑うものはもうほとんどいない。ではその風景は全てがバラ色か?というと、そうでもないというSchell氏。VR市場にまつわる様々な不都合な現象も同時に引き起こされるだろう、と予測しているのだ。
これについての第一の予測はほぼ確実に実現するだろう。2017年の終わりまでに、少なくともひとつのVRシューティングゲームが各メディアのやり玉に挙げられ、叩かれまくるとの予測だ。
やれユーザーの暴力性を助長するだとか、銃を撃つほかにやることはないのかなど、現実社会の問題をVRゲームのせいにするというわけだ。人気者は理不尽に叩かれる。ゲーム業界的にはこれまで「DOOM」や「GTA」シリーズでさんざん理不尽な攻撃に晒されてきた経緯があるだけに、すでに免疫がある。VRゲーム業界も難なくこれを乗り越えてくれるだろう。
一方で、いちユーザーとして警戒しておきたいのがVRゲームへのハマり過ぎによる問題だ。オンラインゲーム黎明期にも巷に「MMOのやりすぎで死亡」、「対戦ゲームにはまりすぎて家庭崩壊」といった話題がちらほら出てきたが、Schell氏はVRゲームでも同じような事が起き、それを各メディアがセンセーショナルに報道、社会問題化すると予測。また、VRゲームが引き起こす様々な「恐ろしい現象」をテーマにした映画が2018年の末までに最低3つは封切りになるとも予測している。
まあ実際、筆者のようなヘビーゲーマーほど危ない(ゲームのやりすぎで生活が崩壊しそうになった回数は数えきれない……)。死ぬことはないだろうが、VRゲームはすごく没入感があって面白いので、現実を忘れすぎることのないよう、気をつけよう。
なお、Schell氏は2020年の終わりまでに少なくとも1つのVR-MMOゲームが100万人以上の登録者を獲得すると予想している。「ソード・アート・オンライン」のような世界も遠くないとなれば、いよいよヤバそうだ……。
ソーシャルVRの主流化、トラッキング対応デバイスの標準化……その他いろいろ
Schell氏の予測はVRを活用したロケーションベースのサービスについてや、ソーシャルVR、AR、ゲーミングデバイスについてなど多岐にわたって続いた。
その中で「2020年までに最低20のVRジェットコースターが出現する」という予測があったが、「調べてみたらすでに22箇所に導入されていた」とSchell氏は苦笑い。予想の実現時期を2020年から2016年(実現済み)に修正している。事態は業界の予測よりも遥かに早く進んでいる。
またSchell氏は、今後VR HMDの核心技術となることが目されているアイトラッキングについて、2018年までに製品化が成されると予測。アイトラッキング技術に基づく描画の最適化技術Foveated Renderingについては、2020年までに実用化、2025年までに本格活用できるものに成長すると予測したが、これも実際には相当早まるのではないだろうか。すでに複数の製品が開発中で、完成を間近に控えている。
さらに、VRシステムのワイヤレス化については、2025年までに完全移行が完了するとの予測。これについてもすでにビデオストリームの圧縮送信を行なう技術や、数Gbpsの高速WiFi等がすでに実現段階にあるので、それよりも速く消費者のもとに届く可能性がある。
もうひとつ、ゲーマー向けの予測として面白いのは「2020年までに、トラッキング対応のゲームデバイスが一般化する」というもの。いろんなデバイスがHTC ViveのコントローラーやOculus Touch、Dualshock 4やPS MoveのようにVR内で目視できるようになるという意味だ。
例えばガンコントローラーや、レースゲーム用のステアリングコントローラー、あるいはフライトシム用のフライトスティックやスロットルデバイス。こういったものが「VR対応」になっていけば、VRゲームの臨場感、没入感がさらに上がっていくことが期待できる。
さらにその5年後。Schell氏はVR内の「手触り」を、ロボットが提供してくれるようになると予測しているが、果たしてどうなるだろうか。VRやロボティクスの分野は進歩のスピードが驚くほど速く、今から10年後にはどこまで進化していくか、ぼんやりとした想像すら難しい。
まずは来年、再来年と、どのような進化をしていくか。人類史に過去例がないほどの激動の期間になることは間違いない。その渦中に生きていることに感謝しながら、VRとゲームの未来を追いかけて行きたいものだ。