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【特別企画】RCベルグ「ゼビウス3機セット」レビュー

ソルバルウ、タルケン改……楽しいチョイスで「ゼビウス」世界を再現

ゼビウス3機セット

10月10日発売予定

価格:14,040円(税込)

※8月20日より予約受付中

 ガレージキットメーカー・RCベルグが10月に発売するレジン製組み立てキット「ゼビウス3機セット」は、「ゼビウス」ファンにはたまらない作品である。1/144スケールで、「ソルバルウ」、「タルケン改」、「ギゼ・ビトル」が立体化されているのである。

 「ソルバルウは『ゼビウス』の自機として知ってるけど、後の2つはなに?」という人も多いかもしれない。この3機は1990年に発売されたPCエンジン版「ゼビウス ファードラウト伝説」で自機として使える機体なのだ。「ゼビウス ファードラウト伝説」は「ゼビウス」の過去から未来を描く作品で、世界観がさらに広がっている。今回チョイスされたメカは、「ゼビウス」に密接に繋がっており、ファンがニヤリとせざるを得ないアイテムとなっている。

 今回、RCベルグからサンプルをいただいたので、組み上げてレビューしていきたい。多少難易度は高いものの、模型初心者にも組みやすく、塗装なしにかっこよく仕上げられる楽しいキットである。なお、本商品は受注生産であり、8月20日より商品紹介のページで予約を受け付けている。興味を持った人はぜひこの機会を逃さないようにしよう。

【ゼビウス3機セット】
メーカーの完成見本。塗装を施すことでこのようにかっこうよく仕上げられる。

あこがれのソルバルウ! 独特のデザインを、細かいパーツでしっかり立体化

組み上げたソルバルウ。無塗装でもここまで色分けされている
パーツ一覧。非常にパーツは細かい。精密ピンセットの使用がオススメだ
エンジン部分の組み立て。組む順番も考えなくてはいけない
ソルバルウならではの青と白のカラーリング

 「ソルバルウ」というのは、筆者のようなオールドゲームファンにはグッとくる名称ではないだろうか。1983年に登場したアーケードゲーム「ゼビウス」の自機の名前である。「スペースインベーダー」が生まれてから5年、「ゼビウス」は、急速に進化するコンピューターゲームの中で、強烈な“世界観”を提示し、当時の子供達を夢中にさせた。

 それまではゲームの多くが宇宙を舞台にしていたのに対し、「ゼビウス」はうっそうと茂ったジャングルからスタートし、とうとうと流れる川、赤茶けた大地にある謎めいた建造物など、画面がスクロールしていく中でめまぐるしく風景を変えていった。中でも印象深いのは「ナスカの地上絵」と、巨大ボス「アンドアジェネシス」だった。「ゼビウス」は、地上と空中を打ち分けるショットや、隠れキャラなどシステム面での革新性も高く、その後のゲームに大きな影響を与えた。

 さらに、筆者のような“ゲーム好き”は、当時のゲーム雑誌「マイコンBASICマガジン」などに掲載されるゼビウスのバックストーリーにも夢中になった。「ゼビウス」の世界は、西暦2000年の地球であり、宇宙より現われた人類よりはるかに進んだ科学力をもつ「ゼビウス軍」の襲撃を受け壊滅状態に陥る。実はゼビウス軍は12,000年前に地球に存在した文明が生み出したバイオコンピューターである「ガンプ」に率いられているのだった。ゼビウス軍から脱走し、数千年ぶりに地球に帰還した「ムー」は地球に救いの手をさしのべる。彼の助力によりゼビウス軍に対抗できる戦闘機「ソルバルウ」が開発され、人類は反撃を開始するのだ。

 そして、ゲームセンターのポスターやファミコン版のパッケージに描かれたソルバルウのイラストを見て、大きな衝撃を覚える。そこにはゲーム内のドット絵のシルエットを残しながら、実にリアルでかっこいい「SF戦闘機」が描かれていたのだ! ゲームに「深い世界観」があることに衝撃を受け、リアルなソルバルウが、超兵器と戦う姿を夢想した。そしてソルバルウのリアルなフィギュアやプラモデルが欲しいと強く願ったのだ。

 今でもそう思う人が多いからこそ、ソルバルウは何度も立体化されているのだろう。また、このソルバルウのかっこよさが、その後の「グラディウス」のビックバイパーや「R-TYPE」のR9などの魅力的な機体と、そしてそれらのグッズを生み出したのだと思う。

 「ゼビウス3機セット」は分類上では“ガレージキット”である。組み立てには瞬間接着剤が必要で、パーツ部分にはバリがあり、細刃のニッパーで丁寧に切り取り、やすりできれいに処理をして組み立てる。パーツが歪んでいる場合は補正するなど本来は高い模型制作技術が求められる。しかし、本商品は細かい色分けをパーツ分割で行なっており、かつモールドも非常に細かいので、筆者のようなあまり組み立てが得意でない人も、“そこそこに”組み立てられるのだ。

 今回のソルバルウの組み立てたときの大きさは約73mm。完成させると、小さくコンパクトにまとまっている印象を受ける。しかしこの組み立てはかなり苦労した。とにかく非常にパーツが細かく、小さいのだ。今回用意できなかったが、このキットに挑戦するときは、精密ピンセットをオススメしたい。

 ソルバルウは、キャノピーにクリアパーツ、機体は白と青、エンジン部などにガンメタリック、そしてアクセントに赤と、すべてパーツの“成形色”で色分けされており、組み立てるだけで設定に近いイメージで組み立てられる。色はガンメタリック部分がきちんと金属風の光沢を放っていたり、質感も異なり、かなり高い技術が注ぎ込まれているのがわかる。

 ソルバルウは3体の中でも特にパーツ分割が細かい。説明書は組み立てを1つの図で紹介しているので、組み立ての順番を間違えると後で苦労する。ソルバルウの場合は、主翼部分の組み立ての前にエンジンを組み立てるのがコツだ。また、今回は部品の“合い”の関係でちょっとノズル部分が歪んでしまった。技術があればこれを矯正できるとは思うが、筆者には難しい。

 多少歪んだところはあるとしても、組み上げたソルバルウを手にすると、かなり満足感がこみ上げてくる。細かい部品がぎゅっと詰まり、機体に収納されているのがいい。そして、箱を思わせる全体的な四角い形状、縦に並んだノズル、先端に垂直に立った翼が生えている主翼、無骨なブラスター……やはり、ソルバルウはいい。異質さを感じさせる独特なデザインの魅力は30年以上たっても色あせない。その精密なモデルを、手にできた喜び、自分で組み立てた楽しさは、やはり格別だ。

 台座が「ナスカの地上絵」のところもニヤリとさせられるところだ。「地上絵にはスペシャルフラッグが出たなあ」なんて、懐かしい思い出も蘇ってしまう。今回のキットは、ソルバルウだけでも大満足だが、さらに「タルケン改」、「ギゼ・ビトル」という2体のメカ、そしてボーナスパーツの「シオナイト」まで付属しているのだ。かなりの満足感をもたらす内容である。次ページでは残りのメカを紹介したい。

【ソルバルウ】
赤いワンポイントが楽しい。とても細かいパーツだ
主翼、フラップなどものすごい情報量だ
完成。ブラスターやノズルが多少歪んでるが、細かい部品がぎゅっと詰まったモデルを完成させたのはうれしいし、なにより「ソルバルウの立体モデルをこの手にできた」という喜びは大きい

鹵獲機「タルケン改」。“ザコ戦闘機”がかっこいい姿に!

円盤形の「タルケン改」
タルケン改の台座は、大型の地上砲台「ガルデロータ」

 「タルケン改」は、PCエンジン版「ゼビウス ファードラウト伝説」で、ラウンド2の自機となる機体で、ゼビウス軍の「タルケン」を鹵獲し、生身の人間が乗れるように改造したものだ。

 元となるタルケンは円盤状の機体に戦闘機型のコクピットを備えており、「ゼビウス」において、プレーヤー機(ソルバルウ)に近づき、弾を一発撃った後、中央のブロックを一回転させ、機首を反対側に向け去って行くという機動を見せる。ダイナミックなアクションが面白い機体だ。

 レジンキャストモデルでも、中央ブロックと、大型の主翼は分かれた造形になっており、好みで角度をつけられる。残念ながら完成時には接着してしまうが、こだわりのモデラーなら回転軸を仕込むような改造もできるだろう。

 今回、タルケン改の立体化に当たり、オリジナルデザインを手掛けたバンダイナムコエンターテインメントの遠山茂樹氏に、“タルケンの裏側”をデザインしてもらっているという。着陸脚のように見える謎の3つの装置がついているのが楽しい。巨大なアンテナや細かいモールドなどデザインを細かくチェックするのが楽しい。

【タルケン改】
キャノピーで隠されてしまうが、コクピットもしっかり造形されている
組み立て中に、中央ブロックをひっくり返してみる
大きなアンテナが特徴的なタルケン改。銀色に塗って「ゼビウス」の敵戦闘機「タルケン」にするのも楽しいかもしれない

ソルバルウの原型機かもしれない「ギゼ・ビトル」、洗練されたデザインに注目

洗練されたデザインの「ギゼ・ビトル」。わがままを言えば、ちょっと面白味に欠ける感じ
地上攻撃用のブラスターは2連装になっている。この部品も非常に細かい
ボーナスパーツのシオナイトは、2種類のディスプレイが可能だ

 「ギゼ・ビトル」は、PCエンジン版「ゼビウス ファードラウト伝説」で「ゼビウス」より16,000年前の地球が舞台で自機として活躍する。ゼビウス軍が地球を離れる前の世界の戦いが描かれる。

 ギゼ・ビトルはソルバルウにくらべ、SFメカとしてデザインは洗練されてカッコイイが、ある意味“面白み”にかける。しかし、「ソルバルウの原型であり、地球の技術でギゼ・ビトルを再現しようとして、ソルバルウになってしまった」といった設定を想像するとグッと面白くなると思う。

 ギゼ・ビトルはソルバルウにくらべ小型でまとまっており、翼端に予備のブースターもない。ブラスターも小型で洗練されたものが2門付いている。地球人の技術では翼端のバーニアや、エアブレーキを使わなくてはギゼ・ビトルのような機動は再現できなかったのかもしれない。2つの機体を比較することで想像が膨らんでくるのが楽しい。

 “地上絵”と同様にタルケン改とギゼ・ビトルの台座も凝っている。タルケン改は大型の地上砲台「ガルデロータ」、ギゼ・ビトルの台座はゼビウス軍の中枢である「ガンプ」をイメージしたものとなっている。この台座があることで、「ゼビウスらしさ」が一層深まっている。

 さらにボーナスパーツとして「シオナイト」が付属している。ゲーム内ではソルバルウの周りを浮遊して去って行く謎のメカだが、設定ではこの機体こそ地球に帰還したムーが乗っており、彼がもたらした技術でゼビウス軍に対抗できるソルバルウが生み出せたのである。レジンキットでは黒い部分は透明度のあるパーツでできており、底面に網目状の処理が施されているため、光をすかすと不思議な雰囲気を発するものになっている。「ゼビウス」ファンには笑みが浮かんでしまうアイテムだ。

 レジン製組み立てキット「ゼビウス3機セット」は初心者には少し難しいキットだ。薄刃のニッパー、デザインナイフ、やすり、瞬間接着剤に、精密ピンセットとある程度道具をそろえなくてはならない。しかし、組み立てるだけで劇中に近い雰囲気にできるし、工作技術が高くなくても組み立てられる上、高い満足感をもたらす。ガレージキットにこれまで縁がなかった人も、「ゼビウス」が好きならば、気合いを持って挑んでもらいたい。

 なにより、ゲームの自機のリアルモデルを立体化し続けてくれるRCベルグには感謝したい。ソルバルウや、ビックバイパーなど、あこがれの機体の立体化モデルが欲しいという人は、筆者を含め少なからず存在する。その夢を叶えてくれるメーカーとして応援したい。

【ギゼ・ビトル】
ギゼ・ビトルもエンジン部分は細かいが、比較するとソルバルウより難易度はずっと低い
エンジン部分を装甲版で挟んだデザインなど共通点を探すのも楽しい。ちょっと1990年代っぽいデザインも感じられてチェックするほど面白い

[お詫び]
2015年8月21日の当初記事掲載時にシステムの不具合で2ページ目が表示されなかったため、記事を1ページでまとめ再掲載しました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

(勝田哲也)