ニュース

スクエニ、吉田氏に中国でのPS4版「FFXIV」サービスを聞く

PS4周りはSCEが、運営は盛大遊戯が、開発はスクエニが担当

7月29日 収録

 ChinaJoy 2015の開催に合わせてソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のプレスカンファレンスが上海市内のホテルで行なわれ、その中でスクウェア・エニックスのMMORPG「ファイナルファンタジー XIV」のPS4版が、2016年から中国本土でも発売されることが発表された。運営は現在PC版の運営を行なっている中国Shanda Games(盛大遊戯)、SCEがPS4のランチャーなどPS4での運用に必要なテクノロジー周りをサポートする。今回プレゼンに登場した、「FFXIV」のプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏を囲んでの合同インタビューで、中国でのPS4版のサービスについて聞くことができた。

中国版は現在パッチ2.5が進行中。PS4版はオールインパックでの発売が濃厚

「FFXIV」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏
プレスカンファレンスでの、SCEJA中国戦略事業部部長の添田武人氏、Shanda Games(盛大遊戯)COOの朱継盛氏とのみつどもえの握手
中国のPS4版サービスは、「蒼天のイシュガルド」のどこかのパッチのタイミングになるようだ

――以前にお話を伺ったとき、中国でのPS4版発売にはまだ距離があるとおっしゃっていましたが、吉田さんの中で何が変わったのですか?

吉田氏: 2016年としか言ってないのでまだ距離はあるかなと思っています。2016年って僕には結構先という感じなのです。これから色々な試行錯誤がShanda Gamesさんの中でもSCEさんの中でもあるのです。あれだけ規模の大きなMMORPGを、改めて開発運営することになるので。そこがきちんとクリアできるのが最初だと思っています。まだ2016年のどこに着地するかはわからないです。

――3社の役割の切り分けを教えてください。

吉田氏: 基本的にはサーバー、コミュニティの運営はPC版と同じShanda Gamesさんにお願いして、PS4版のランチャーだったりアカウント周りの開発をしなければいけないのですが、Shanda GamesさんにPS4の知見がないと開発が難しいのでそこに関してはSCEさんがテクノロジー周りは直接バックアップをするというのが前提になっています。パッチやゲームの内容については当然我々が開発していきます。グローバル版では我々が直接やっていますが、これ以上工数を増やせないところがあるので、それを今回SCEさんにお願いをしたうえで3社で取り組んでいくという形になります。

――サーバーはPC版と同じになるのですか?

吉田氏: これはグローバル版のポリシーなので、PC版もPS4版も同じところに接続できるようにというのが我々から出させていただいているマスト要件です。

――発表されたトレーラーが「蒼天のイシュガルド」でしたが、これは「蒼天のイシュガルド」を出すということですか?

吉田氏: 同じワールドでプレイできるということが前提です。いまPC版がもう2.5まで来ているので、次は当然3.0になります。一緒に遊ぶには当然バージョンが揃ってなければならないので、リリースする頃には3.Xシリーズのどれかになっているという感覚です。

――中国のPS4版はオールインワンのパッケージでの発売になるのですか?

吉田氏: おそらく中国の場合はエクスパンションをパッケージで売るという概念が存在していないので、おそらくオールインワンになるのではないかと思いますが、これからご提案いただくので。

――ビジネスモデルはどうなるのですか?

吉田氏: Shanda GamesさんとSCEさんが協議して決めたものを我々が知らせていただくという感じです。

――PC版と同じかもしれないし、まったく違うかもしれない?

吉田氏: そうです。それはこれからです。

――1つのサーバーでビジネスモデルが違うのは、普通ありえないのでは?

吉田氏: MMORPGではそれほど考えられないというものではないですね。オプションの1つという考え方をするので。同じものを使って別のサービスがあるということも往々にしてあります。ただ、料金形態が違いすぎるのはなしにしてくれという話はしています。今の中国のゲーマーさんに対するビジネススキームはものすごいスピードで変わっているので、その時にあった最適のビジネスモデルをご提案していただけると思っています。後は、ほかのPS4タイトルと違いすぎると、せっかく育ってきている中国のPS4プレーヤーの価値観が急にずれてしまったりしないようにと、SCEさん側でも考えるのではないかと思うので、そこを踏まえて提案をしていただくという形になります。

――「FF」という強力なIPではスピード感を持って中国向けの運営をすることが難しいのではないかという危惧があるのですが、そこはいかがですか。

吉田氏: Shanda Gamesさんは毎週我々に、中国のサーバーでこんなことが起きていますとか、中国のコミュニティならではのフィードバックがあるので、次のパッチではグローバル版ではAという仕様ですが、中国ではA´にならないかという要望をいただいて、我々が協議をして実装して中国に出すという形をとっています。そこに制約は設けていないですし、かなりフレキシブルにやれているのではないかと思います。

――SCEさんがそこに絡んで三社でやるとなると、大変なイメージがありますが。

吉田氏: SCEさんはゲームの中身に口を出すことはないと思います。今中国のビジネスに関しては「FFXIV」だけではなく、SCEJAさんのモチベーションやテンションから日本の大企業のような遅さを全く感じないので、それは全然心配はしていないです。

中国プレーヤーのフィードバックを受けた独自のバランス調整も

――バランスは基本的にグローバル版と同じですか?

吉田氏: はい。ただ、だいぶ中国のプレーヤーの方のスタイルがグローバル版と違うのが見えてきたので、少しずつコンテンツの消化スピードであったり、コンテンツのロックの仕組みというのはShanda Gamesさんと話をしながら徐々に変えていったり、毎パッチごとに実は微妙に変えていったりしています。

――どのあたりが違うのですか?

吉田氏: もう過ぎた部分ですが、中国版では、極蛮神は1つ前の極蛮神を倒さなくても次に行けたりします。

――中国のプレーヤーさんには極蛮神は難しかったということですか?

吉田氏: そうではなく、その時期最新のものをやりたいという声が多いだけです。

――中国からのフィードバックにはどういったものがあるのですか?

吉田氏: もっとパーティを組んで、もっとほかのプレーヤーのパワーレベリングを手伝いたいという人が非常に多いです。

――友達を誘って一緒に遊びたいということですか?

吉田氏: 前のゲームからギルドメンバーを連れてきて、そのまま一気にレベルを上げてあげてみたいなところは中国のオンラインゲームコミュニティならではかなという気はします。すごく家族っぽいところが強いなと思いました。

――今回2月の旧正月に中国だけのオリジナルなイベントがありましたね。ああいう形で中国だけの展開を何か考えていますか?

吉田氏: 中国版の話ではありませんが、これから韓国版がスタートしますが、韓国にも韓国の風土に合わせたスペシャルイベントは用意してあったりするので、そこはShanda Gamesさんとお話をしたうえで中国のプレーヤーに向けて、中国ならではのお祝いはあるので、そこはそういうリージョン対応という考え方にしています。

中国ユーザーにコンソールのハイクオリティなゲーム体験を届けたい

――「FFXIV」の中国でのプロモーションにはどんな施策を考えていますか?

吉田氏: 中国でのPC版のローンチに向かっては、毎週僕が中国に来てプレーヤーの方と交流をして、PRというツアーをやっていましたし、グローバル版で作ったPR動画に関してはすべてShanda Gamesさんにお渡しして中国字幕を付けて展開していただいたり、ビデオコメントを求められたらお渡ししたり、あとは間もなく中国の「FFXIV」がいよいよ1周年なので、そこに僕も行ってプレーヤーの皆さんと一緒に何かができればという話をしています。

――イベントには毎回どのくらいの人が来るのですか?

吉田氏: 抽選での招待制なので、どうしても会場に来られる方は数百人ということになりますが、応募は数千、数万いただくので、そこはグローバルと変わらないです。Shanda Gamesさんが運営しているから僕らは何もしないという考え方でもなくて、一緒に「FFXIV」をという考え方なので、日本でグローバル版の「FFXIV」を運営している時に「F.A.T.E.」というイベントで日本全国を回っていたり、海外の場合はゲームのイベントがあれば必ずそこにいって直接その国のプレーヤーの方とコミュニケーションをとったりといったそのベースのきっかけを、中国の場合はShanda Gamesさんにお願いしているという形で、そこに違いはないです。

――中国のゲーム市場ではPCが優勢だと思いますが、PS4版を後からリリースすることになって、そこでPS4版を広めていくための方策は考えていますか?

吉田氏: 中国では今の最大の市場はネイティブアプリやソーシャルだと思っています。今の最大勢力はPCではなくなってしまったというのが現状だと思います。「FFXIV」のPC版をリリースさせていただいてまもなく1周年になるのですが、そこでの正直な感想は、中国のPCゲーム市場が、加速度的という言葉を超える勢いで携帯電話を中心としたゲーム市場に移ってしまったなということです。

 PC房のPCのスペックがあまり高くないがゆえに、極端にハイクオリティなゲームがあまりなくて、かつ、政府のレギュレーション上、海外のゲームがなかなか輸入しづらいという中で、スマホのゲームのクオリティはPCゲームよりも高いと思っている方が結構多いのではないかなというのが、今回中国でビジネスをさせていただいて思った感想です。

 日本ではコンソールゲームが最上級で、携帯のゲームは格下だと思っている人が多いですが、中国では逆なのではないかと。そこに今回初めてコンソールが入ってくることで、必ず政府のチェックが必要とはいえ、ハイクオリティなゲームがPCを買うよりも安く揃うことで、まさにこれからハイクオリティなゲームの時代が始まるのではないかと。ハイクオリティなMMORPGである「FFXIV」がその波に乗っていけたらなと考えています。中国ではまだハイクオリティなゲームがあまり浸透していないと思っているので、その新しさやすごさに触れた新しいコアゲーマーが生まれることをすごく期待しています。

――簡体字中国語版にどのような期待をしているのかを教えてください。PC版がすでに出ているわけですが、それとは異なる科学変化が起こりうると思いますか?

吉田氏: 僕は起きて欲しいと思っています。ゲームってある程度ストレスがあって、そのストレスを乗り越えるから快感だったり、面白さがあるのではないかと思っているのです。ものすごい数のゲームが毎日F2Pでリリースされている状況の中で、中国の人たちはちょっと受け身になりすぎていて、ゲームらしいゲーム体験がなかなか出てこなくなっている市場なのかもと思っています。

 そこにPS4を通じて、ものすごいゲーム体験ができるゲームが入ってくることで、それを楽しめる人たちがもっと増えるのではないかと期待しています。そこがコンソール版の意義なのかなと思っています。でなければ、PCが振るわない市場になってしまっているのと同じことになってしまうので。SCEさんもそこのゲームエクスペリエンスというものを推していかれるのではないかと思っています。

―― ありがとうございました。

(石井聡)