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【特別企画】「ぶっちゃけドローンって何なの?」第1回

ラジコン型、自律型、低価格品から高級品まで様々なドローンを紹介

 最近「ドローン」という言葉が注目を集めている。元々は軍事目的で投入される無人機を差す言葉で、その作動音が雄のハチ(Drone)の羽音を思わせるところから名付けられた。しかし、昨今ではホビーメーカーや量販店が、複数のプロペラを持つホビー用のマルチコプターを「ドローン」と呼び始めた。

 そして首相官邸への侵入や、ユーチューバーによる善光寺での墜落騒ぎなどで急激に「ドローン」という言葉がテレビや新聞で騒がれはじめ、国会で規制案が出されるほどになっている。一方でこういった事態はホビーとしてのドローンの注目を集める結果となり、特にラジコンを扱う販売店ではドローン関連商品が人気となっている。

 この状況を受けて、弊誌では特別企画として、3回にわけてドローンをテーマにした記事を3回にわけて掲載したいと思う。1回目は、先月取材した「静岡ホビーショー」で出展されていた商品を中心に、ホビーとしてのドローンのトレンドを紹介するとともに、魅力に迫っていこうと思う。2回目は規制の現状や、メーカーの取り組み、そして3回目に実際にドローンを使ってみた感触をお伝えしていきたい。

トイラジコンから自動制御の空撮マシンまで、多種多様なドローン

静岡ホビーショーに出展された数々のドローン。価格もかなり手頃で、空撮なども可能だ

 昨今の“ドローン騒動”は、規制などの議論を呼ぶ一方で、ユーザーの注目は高まっており、品切れが出るなど商品の売れ行きも好調だという。静岡ホビーショーでもたくさんの新製品が出展されていた。6月18日(一般公開日6月21日)より開幕する東京おもちゃショー2015でもドローンは各社の注目商品となるのは間違いない。

 ホビーショーではラジコンメーカーの京商を始め、海外の製品を輸入販売しているハイテック、トイラジコンを中心に扱う童友社など様々なメーカーがドローンを出展していた。ドローンは1万円程度の比較的安価なものから、上は50万円近くもするものまで、かなり幅の広い製品が揃っていた。

 安価なものについては、ドローンという言葉が示す“無人機”として、自動で飛行を制御する機能を持った商品は少なく、多くが離陸から飛行まで完全に操縦者任せの「マルチコプターのラジコンおもちゃ」という商品が多かった。これらは価格が低いものが多く手軽ながら、操縦するにはそれなりの技術が必要だ。

 ホビーラジコン業界では、ジャイロの発達により、ある時期から超小型のヘリコプターのラジコンが一気に浸透したが、それでも安定してホバリングさせるには練習が必要だ。その中で複数のプロペラで飛ぶ“マルチコプター”は、トイラジコンのヘリよりは安定して飛ばすことができるため、初心者にも好評だという。しかしあくまで飛行を制御する機能のない、完全に操縦者の技量に左右される。「誰でもカンタンに飛ばせる」というものではなく、ある程度自在に飛ばせるようになるまでの過程も楽しむタイプの商品が多かった。

 その中で“自動制御”に優れているのがフランスのParrotが販売する「Bebop Drone」だ。本体のみで7万円という価格は決して安価ではないが、ボタン1つで浮かび上がり、そのまま高度を自動で保ち続ける。そして操縦機となるスマートフォンやタブレットPCを傾けるだけで直感的に操作が可能なのだ。「Bebop Drone」はラジコンではなく、まさに“ドローン(無人機)”と呼ぶのにふさわしい自律性と安定性を持っている。

 「Bebop Drone」は操作を過って電波が届かないところまで飛ばしてしまったり、何らかの電波が混線してしまったりしたときにコントロールが効かなくなる、いわゆる「ノーコン」の状態になった場合は自動的に操縦者の元に戻る機能を持っている。「Bebop Drone」をはじめとした高級なドローンは自動で操縦者の元に返ってきたり、風を感知して現在位置を保つ機能を備えているとのことだ。

【童友社のラジコンドローン、「プラズマサンダー」】

この6月に発売予定の童友社「ドローン6」。プロペラが6つあり、それを回すモーターの重量により、安定した飛行が可能だという。価格7,800円(税別)
ハイテックマルチプレックスが輸入販売を行なう、WEEKENDERの「Q4i ACTIVE」。パーツの組み替えにより、ホイールによる走行も楽しめる。6月発売予定、価格14,200円(税別)
「Bebop Drone」は、京商が代理店となって販売している。左の「スカイコントローラー」同梱のセットは、141,370円(税別)とかなり高価だが、それだけの性能を持っている
「スカイコントローラー」にはHDMI端子があり、これにヘッドマウントディスプレイを接続すれば、没入型のリアルタイム飛行映像を楽しめる

ドローンの大きな魅力の“空撮”。操作不要の追尾型ドローンまで登場!

童友社の「ホークアイ」は本体下部にカメラを装備。約15分の長時間飛行が可能。7月発売予定、価格18,000円(税別)
Lily Roboticsの「Lily」。自動追尾式の飛行カメラという位置づけで、距離30m、高さ15mまでの飛行が可能。最高速度は約40km/h。公式サイトで予約を受付けていて、6月15日までは半額の499ドル(+日本までの送料30ドル)で購入可能だ

 そして、今回取材したドローンで目立ったのが、「空撮機能」だ。動画・静止画撮影用のカメラが内蔵されている製品が多く出展されていた。トイラジコンとしての趣が強い童友社のドローンも、これまでは別売りのカメラで空撮に対応していたが、7月発売予定の「ホークアイ」は、200万画素の動画・静止画撮影可能となっている。京商エッグの「クアトロックス」シリーズの新作も全てカメラが搭載されている。

 ユーザーも空撮機能を積極的に活用しており、YouTubeには様々な空撮動画が投稿されている。特に昨今は、安定して見やすい空撮動画が一気に増えている。これらもドローンの普及がもたらした結果だろう。ただしホークアイやクアトロックスは自動制御がないラジコンなので、空中で安定して撮影するためには常に送信機を操作し、機体を制御し続けねばならない。

 しかし、現状では安価なトイラジコンに小さなカメラをつけただけという商品が多かった。空撮は話題になってはいるものの、メーカー側はあくまでラジコンの延長としての商品を展開しており撮影機能は“おまけ”という印象の商品が多かった。一方、前述の「Bebop Drone」は自動制御だけでなく、優れたスタビライザー機能で機体の振動をカメラにできるだけ伝えない工夫もされている。ホビーショーで出展されていた商品は、昨今ユーザーが求めている空撮機能に特化した商品はあまりない印象だ。

 撮影にフォーカスした商品として知名度が高いのは、中国DJIの「Phantom 3」という高級機種だ。カメラをつり下げるという形で、高い自由度と安定した撮影を可能にしている。価格175,000円(税別)の上級モデル「Phantom 3 Professional」では4Kでの撮影が可能になっている。飛んでいる地形を読み取り制御する機能があり、安定した撮影が行なえると言うことだ。

 また、筆者が個人的に注目している商品としては、アメリカのLily Roboticsによる「Lily」がある。これはラジコンではなく、撮影者を自動で追いかける“ロボット”なのだ。操作の必要がなく、トラッキングデバイスを持っている人を一定の距離と高さを保って自動追尾するという、空撮に特化した「カメラ」として開発が進められており、現在予約を受け付けている。“撮影”に特化した、日本のトイラジコンメーカーとは全く違うアプローチである。

 今回の記事で、現在「ドローン」と呼ばれているものの幅広さを感じることができたと思う。トイラジコンメーカーは自社のラジコンに小さなカメラをつけた商品が多く、撮影に注力した商品は海外メーカーが多いというところも面白いところだ。東京おもちゃショーではどのような商品が登場するか、また、日本も含めどのようなメーカーがどんなアプローチで「ドローン」を販売していくか、今後も注目していきたい。

【Introducing the Lily Camera】
「Lily」のPV。非常にユニークなアプローチのドローンだ

セキドが輸入販売を行うDJIの「INSPIRE 1」。4Kカメラを搭載。スキッドがカメラの視界を遮らないよう飛行後に本体が変形する。発売中、価格448,200円(税別:2パイロット用)
同じくDJIの「Phantom 3」。4Kカメラ搭載の「Phantom 3 Professional」価格は175,000円(税別)、フルHDで撮影できる「Phantom 3 Professional」価格は139,800円(税別)がある
京商エッグの「クアトロックスULTRA」。運動性向上と飛行速度アップを実現した機体。1080×720、30fpsの動画撮影が可能なカメラを搭載している。7月発売予定、価格16,800円(税別)
本体全面にフルHDの動画撮影カメラを搭載したNine Eaglesの「Galaxy Visitor 7」。ハイテクマルチプレックス扱いの製品で、近日発売予定、価格未定

(稲元徹也)