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海賊版最後の秘境を発見!? ジャカルタゲームショップレポート
ナショナルブランドなら2,000円から買えるスマートフォン。懸念は偽装新品
(2015/6/11 00:00)
ナショナルブランドなら2,000円から買えるスマートフォン。懸念は偽装新品
というわけで、次にスマートフォンの動向を探るためにスマートフォンを扱うショッピングモール「ITC Roxy Mas」にも訪れてみた。どうしても直前に訪れたバンドンと比較したくなるが、ジャカルタはやはり人口の面でも所得の面でもバンドンを上回っているためか、スマホショップもかなり活況を呈している。とりわけ、バンドンではあまり見ることができなかったインドネシア独自ブランドのスマートフォンが目立っていたのが印象的だった。
最初に目に入る1階エリアは、ADVAN、EVERCOSS、POLYTRONといったナショナルブランドが目につく。といっても国内で企画・製造されているわけではなく、深センで製造されているノーブランドの安価なAndroid端末を大量に仕入れ、独自ブランドを付けて販売しているものがほとんどで、ほかにはOPPO、シャオミー、VIVOといった中国メーカー、SAMSUNGやソニーも散見される。有力なライバルがひしめく中で新興のナショナルブランドの勢いがある理由は、なんといっても価格だ。安さで売りまくっている中国ブランドよりさらに安く、2,000円程度からスマートフォンが買える。
こうなってしまうと、iPhoneやXperia、GALAXYといったハイスペック、ハイコストのスマートフォンはもはや戦いようがない。海外勢で比較的健闘していたのはSAMSUNGで、数世代前の旧モデルをメインに据えて1~2万円台で販売していたが、数千円に比べると数倍高く、かなり厳しい戦いを強いられている印象だった。なお、バンドン編でもお伝えしたように、全モデルSIMフリーで、SIMカードを別途購入する。携帯電話番号に値段がついているため、覚えやすい番号だと高くなる。
ナショナルブランドが成功を収める一方で「ちょっと恐いな」と思ったのは偽物スマートフォン、いわゆる偽装新品の存在だ。ノーブランドのAndroid製品が深センから大量に入っているということは、深センで大量に製造されているiPhoneをはじめとした有力ブランドの偽物も大量に入っているはずだ。ケースやマニュアル、付属品などは精巧なコピー品が存在するし、業者用のシュリンク機材も中国から入っているため、本物に見せかけることは難しくない。ただ、インドネシアの場合、正規品は価格が高すぎてそもそも手が出ないということもあり、あまりダメージはないのかもしれない。
インドネシアは、デジタルコンテンツの保護という点では、まったくの野放し、完全なる無法地帯となっている。日本貿易振興機構(JETRO)の2014年3月のレポートでも、海賊版の被害は年々拡大し、ASEANは中国に次ぐ被害発生地域であることが報告されている。源流はほぼすべて中国とされるが、すでにインドネシア国内で海賊版のエコシステムが完成されているため、水際で食い止めることは不可能で、インドネシアにおける法執行水準の上昇に期待することも望み薄である以上、コピーされてもダメージにならないどころかメリットになるようなFree to Play等の仕組みを採用した新たなビジネスの導入が必要不可欠と言える。
その一方で、インドネシアは、これだけ大きい都市でありながら、ゲームマーケットの覇者たる存在がいない。コンソール、PC、モバイル、アーケード、それぞれが海賊版やビジネスモデル、ネットワークインフラなどの点において問題を抱え、どんぐりの背比べ状態になっている。ポジション的に1番有利なのはこれからも凄まじい勢いで伸び続けるモバイルだが、こちらもビジネスモデルが噛み合っていない。今後、今回取材したTokyo Game Networkのような新しいビジネスモデルによるゲームサービスがこれから続々登場すると見られ、3年後、5年後にどこが覇者になるのか引き続き注目していきたい。