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SKonecの「MORTAL BLITZ VR」にVRゲーミングの明るい未来を見た

韓国にもVRゲーミングの波が本格到来! VR酔いしないVRゲームの作り方とは!?

11月20日~23日開催



会場:韓国釜山BEXCO

 今年のG-STARの大きなトレンドのひとつは、「Oculus RIFT」に代表されるVRヘッドセット向けのゲームコンテンツが多数出展されていたことだ。

 本家本元であるOculus VRの出展を皮切りに、大学や専門学校などアカデミック関連のブースでは、どこもかしこも「Oculus RIFT」を使ったエンターテインメントコンテンツのデモばかりだったし、一般ブースにおいても、VRヘッドセットを付けた状態で、ゲームに合わせて動くバイクや乗馬に乗ることでさらなる没入感を得られるアーケードマシンや、サムスンのGEAR VRスタイルのスマホ装着型のVRヘッドセットの韓国版などなど、まさに“VRゲーミング元年”というほどに多かった。

 韓国はもともと体感型のゲームが大好きなお国柄であり、VRゲーミングに対する関心は非常に高い。しかし、そのコンテンツの内容を見てみると、Oculus RIFTですらまだ発展途上にある中で、機材やノウハウがまだまだ限られる中、世界を驚かせるようなVRコンテンツが韓国で誕生していた……わけもなく、ひととおり試してみたものの、解像度が低かったり、フレームレートが低かったり、そもそも同期の取り方がいい加減だったりして、酷い“VR酔い”を催すものばかりだった。

 「まだVRゲーミングは時期尚早なのか……」と思っていたところ、アーケードメーカーSKonecが出展していた「MORTAL BLITZ VR」は、VRゲームとしてはそつなくまとまっており、VR酔いもまったく発生せず、かなり好印象だった。本稿では、韓国産VRゲームの代表格としてSKonecの「MORTAL BLITZ VR」を紹介したい。

【Oculus VR】
今回特に取り上げなかったが、VRデバイス不動の1位は、やはりOculus RIFTだ。磨き上げられた没入感は、他の追従を許さない。G-STARでも数時間待ちの行列になっていた

【会場で見かけたVRデバイスたち】
Oculus VR+ライド「Adrenalin Rush」
スマホ装着型の簡易VRデバイス「Go4D VR」
大学や専門学校によるVRゲーム

「MORTAL BLITZ VR」
取材に協力頂いたJeong-Hwaon Choi氏
GEAR VRでの試遊シーン
操作は右側面のボタンで行なう。ガンシューティングなのでここを連打する
「MORTAL BLITZ VR」のベースとなっている「TERA TOMA」
SKonecが開発したセガのガンシューティングゲーム「Operation G.H.O.S.T.」。こちらのVR化も現在進行中だという

 「MORTAL BLITZ VR」は、Oculus RIFTのテクノロジーを使ったサムスンのVRヘッドセット「GEAR VR」とセットで出展されていた。「MORTAL BLITZ VR」はGEAR VRで動作させるためAndroidアプリとなるが、開発そのものはOculus RIFTとGEAR VRの両方に対応する形で進められている。

 サムスンのGALAXY S5などの対応デバイスを装着して利用するスマホ装着型のVRヘッドセット「GEAR VR」は、「Oculus RIFT」より一足先となる2014年12月より北米で発売される。これに合わせてVRゲームばかりを集めた「Oculus App Store」がオープン予定で、SKonecではここに「MORTAL BLITZ VR」の一部を切り取ったライト版を無料で配信する予定としている。最終的には有料でのダウンロード販売を予定しており、価格は決まっていないものの、最低でも10ドルは取りたいと考えているようだ。

 今回、Oculus RIFT DK2の出展が相次ぐ中、ほぼ唯一といっていいGEAR VRでの出展にしたのは、Oculus RIFTによる出展は予想できていたため、あえて逆を張ったのだという。

 余談だが、この日は朝からOculus RIFTを含む様々なVRデバイスのデモを試し、二重三重のVR酔いが小刻みに襲ってくるというバッドコンディションで、試遊はしばらく置いて、取材だけ先にしようと考えていた。「MORTAL BLITZ VR」でも試遊を勧められたので事情を説明すると、「“アレ”は私も試しましたが酷かったですね」と笑われ、「ウチのは酔いませんよ。試してみて下さい」と再度勧められたので観念して試してみた。

 すると本当に酔わなかった! これならいくらでもプレイし続けられると感じられるほど酔いを感じなかった。酔わない理由は要するに作り方が洗練されているからだが、具体的にはフレームレートが60で固定されているところと、VR酔いを誘発させる遊び手の意識と実際の動きとのズレを感じさせるような要素を極力排除しているところだ。

 「MORTAL BLITZ VR」には、実は原作があり、アーケード向けガンシューティングゲーム「TERA TOMA」の移植になっている。ガンシューティングは、目の前の敵の全滅がフラグとなり、次のエリアに移動するというデザインになっているが、これが実はVRゲームとの相性が抜群に良い。頭をぶんぶん回しながら移動する必要がなく、基本は目の前に襲い来る敵とのシューティングに集中できるためだ。

 「MORTAL BLITZ VR」では、移動を全滅フラグではなく、地面に表示されたポータルをクリックする形に置き換えており、視界外にある場合は画面端に矢印が表示されるようになっている。これによりVR酔いを避けながら、あたかもそこにいるような没入体験を楽しむことができる。必然的に360度回転して遊ぶようなゲームデザインになっており、デモ機では360度回転するイスに座ってプレイしていたが、実はオススメなのは立ってプレイする方法だという。自分の足で回転することでより没入感が高められるためで、ケーブルがなくハード単体で完結しているGEAR VRならではの遊び方だと感じた。

 説明が遅くなったが、ゲームの操作は右側面のこめかみ部分にあるボタンのみで行なうようになっている。このボタンで射撃、アクション、移動指示などすべての操作を行なう。カーソルの操作はもちろん頭部で行なう。ちなみに実はゲームパッドを繋げて遊ぶことも可能だと言うことだが、今回の展示ではスタイリッシュさを重視し、あえてハード単体で遊べるところをアピールしたかったという。

 「MORTAL BLITZ VR」は、北米でのGEAR VRのローンチタイトルとしての公開を皮切りに韓国、日本などの展開を計画しているという。「MORTAL BLITZ VR」で唯一気になったのが画像の荒さだ。現在ターゲットプラットフォームとして使われているGALAXY S5では、フルHD(1,920×1,080ドット)の半分の片目960×1,080ドット表示が上限になるため、この点はハードの仕様上いかんともし難いところだが、実はこの点でも解決策を考えていて、ローンチでは製品版ではなく体験版の公開に留めるのは、製品版のターゲットプラットフォームをGALAXY S6に見定めているためだという。

 2015年の発売が予想されるGALAXY S6は、噂では4K(3,840×2,160ドット)解像度のディスプレイが搭載されるという。もしそれが本当であれば1,920×2,160ドットでVRゲームを作ることが可能になり、グラフィックス面の課題も克服できるのではないかという。

 もっともこの解像度でVRゲームを作ってしまうと、今度はフレームレートを維持するのが難しくなる。オーバーフルHDのディスプレイを搭載したスマートフォンでは、今度は60fpsを維持しながら、どうグラフィックスを充実させるかという問題に直面することになるが、ヘッドトラッキングを含めたOculus RIFTの強みとスマートフォンを差し替えることで簡単にマシンスペックや表示解像度を底上げできる「GEAR VR」の強みを活かしたVRゲームが、サムスンのお膝元の韓国で開発されているところがおもしろいと思った。今後、韓国ゲーム市場は、VRゲームにも注目が集まるところだ。

(中村聖司)