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日本ファルコム・近藤社長がPS4「イース」について語った!

「Falcom jdk BAND」のライブから「英雄伝説 閃の軌跡II」の開発秘話まで

9月27日 開催

会場:新宿ロフトプラスワン

 日本ファルコムは9月27日、「Falcom jdk BAND」のライブや同社の近藤季洋社長のトークショウ等を行なうライブイベント「Falcom jdk BAND Live & Talk Show Vol.5 ~近藤社長に聞く!『閃の軌跡II』と『イース』PS4参戦~」を新宿ロフトプラスワンで開催した。今回も発売即完売という人気ぶりとなった。出演は、近藤季洋氏を始め、Falcom jdk BANDの面々。

「Falcom jdk BAND」は、しっとりとしたアコースティックバージョンで構成

 まず冒頭行なわれたのは、Falcom jdk BANDによるライブ。今回のFalcom jdk BANDの構成は、おなじみドラムの岡島俊治さん、バイオリンの水谷美月さん、ギターの宮崎大介さん、ベースの榎本敦さん、そしてボーカルの小寺可南子さんによるアコースティック編成。セットリストとしてはアルバム「軌跡jdkアクースティックス(音響空間)」のリリース直後とあって、アルバムからの楽曲が中心となった。

 MCで岡島さんは開口一番「朦朧としています」と口をついて出るほど9月はイベント三昧で、小寺さんも「もうヘロヘロです」と話しながらも「皆さんに元気をもらっているので、元気いっぱいです」といつもの迫力あるボーカルを聴かせてくれた。

 そんな中でもビールは忘れない。今回は「はつじょうき~」のかけ声と共に乾杯。アコースティック編成ということで、秋の始まりにふさわしくしっとりと聴かせる展開。生ギターの繊細なリズムと水谷さんのバイオリン、そして曲によっては小寺さんがピアニカを添える展開で、哀愁を誘うライブとなった。

【セットリスト】
・The Fate of The Fairies(英雄伝説 空の軌跡)
・Maybe it was fated(英雄伝説 空の軌跡)
・閃光の行方(英雄伝説 閃の軌跡II)
・クロスベルの午後(英雄伝説 零の軌跡)
・セルリアンブルーの恋(英雄伝説 零の軌跡 Evolution)
・パンドラ(イースVI~ザ・ソングス・オブ・ゼメス)

 MCでは、9月の忙しさは台湾ライブ、東京ゲームショウ2014でのライブ、そして今回のライブとライブが立て続けに行なわれたことにあるが、それだけでは無いということが発覚。「軌跡jdkアクースティックス(音響空間)」の制作が一息ついたのも束の間、現在もまだ発表できない様々な制作に追われているのだという。おそらく年末に向けて続々とアルバムなどの発表が行なわれると思われる。情報の発表を楽しみに待ちたいところ。

 そんな中「閃光の行方」では、今日だけのスペシャルバージョンとしてアコースティックバージョン(少し短いオープニングバージョン)を披露するなど、聴き所の多い内容となった。

アコースティック編成ということで、アレンジもしっとりとした雰囲気のものが用意された

近藤社長と岡島さんによる「閃の軌跡II」制作秘話

毎回恒例、「Falcom jdk BAND」の岡島俊治さんが聞き手となり、近藤社長と濃いトークショーが繰り広げられた

 第2部以降は、近藤季洋社長と「Falcom jdk BAND」の岡島さんとのトークを中心とした進行。「閃の軌跡II」はもちろんのこと9月1日の「SCEJA Press Conference 2014」で2015年と発表された「イース」最新作についても語られた。

 トークショウ前半は発売直後の「英雄伝説 閃の軌跡II」に関する話題が語られた。ただ、聞く側もプレイして間もないということで、ネタバレを押さえ、その裏側に迫る内容となった。

 「閃の軌跡」のラストが終わりきらなかったことから、岡島さんは「『閃の軌跡II』を作ることを前提にしていたんですよね?」とツッコむと、「初めは1本の予定でしたが、帝国編は『空の軌跡』から伏線を張りまくっていたので、(要素を)並べた時点で開発スタッフと『無理だな……』という話になった」ということで、今回のような展開となったのだという。ただ近藤社長は「ただいたずらに謎を増やして引っ張ろうとしているわけでは無いのです。壮大なストーリーを作ろうとすると、どうしても長くなってしまうんです」と説明。そんな近藤社長もシリーズ開発初期は「10年も続くと思わなかった」とか。

 「閃の軌跡II」について言えば、謎は回収されるだけで無く、当然深まる部分もある。「『閃の軌跡』で『軌跡』シリーズが終わりではない(近藤社長談)」ということで、前述の通り壮大なストーリーの中において張り巡らされている伏線の1つとして、ここで完結せず今後のストーリーに繋がっていくものもある。

 実は「空の軌跡 the 3rd」でもまだ回収されていない伏線があり、何気なく出てくるNPCが「実は!」といった展開で、今後出てくる可能性があるようだ。近藤社長は「まだファンの人も気付いていないみたいで、開発スタッフはニヤニヤしている。あとで『あっ!』と思うだろう」といたずらっぽく笑っていた。一方で、すでに次回作の開発に取りかかっており、シリーズ全体の中の位置づけとして「『軌跡』シリーズを、あと何年で何本作るのかといった話は出てきている」と語った。

 「閃の軌跡II」は10カ月で開発を完了しているが、シリーズで見ると10年で8本ということでかなりのペースで制作されている。スタッフのスキルがかなり高まっていることにより、開発スタート時はいけるのかどうか不安になると近藤社長は言いながらも、きちんと制作を進めていくようだ。

 また、近藤社長は「『閃の軌跡II』ではボスが強くなっているように感じるかもしれない。シリーズを作っていると、どうしても主人公が強くなってしまう。そうなると敵を強くしなければならないが、単純にパラメータを上げるだけだと戦闘が単純になり、堅いだけの敵になってしまう」とシリーズ物の悩みを打ち明けながら、攻略の一端として、今回新しく加わった能力で乗り切れることを明らかにした。アーツやクラフトを積極的に使うことで、ゲームの進行が楽になるという。

 岡島さんも音楽の制作秘話を披露。「閃光の行方」については実は1作目の時にすでに作っていたのだとか。それが2作目に上手くはまり、使用されることに。また録音時に日本ファルコム側からコーラスを厚くしてくれという要望が出されたという。岡島さんは「男性ボーカリストを入れてもいいですか?」と日本ファルコム側に聞くと「お任せするけど、岡島さんが歌ってもいいよ」と言われたため、自分で歌うことに。ちなみにボーカルのディレクションは小寺さんが行なったのだとか。

 前半は「閃の軌跡II」に関する話題に終始し、ここで終了となった。

イベントにビールは欠かせない……
公開された台本。ざっくりしすぎ(笑)

PS4版の「イース」開発がスタート。冒険を描くためリアルな展開に?

門外不出の開発資料を見ながら、トークショーは進んだ
公開された資料の1つ。3Dモデリングすることで細かな感情表現を表わすことが可能に。「英雄伝説」のような多数のキャラクターが登場する群像劇ではPS4のパワーをもってしても難しいと言うが、「イース」では導入を検討しているという

 昨年末に新作のイメージグラフィックスが公開され、年明けの「Falcom jdk BAND Live & Talk Show」では「イース」の最新作の制作が近藤社長の口から明かされ、一気に盛り上がった。そして先日、2015年の発売が発表され、それも最新プラットフォームのプレイステーション 4とPlayStation Vitaで発売されるとあっては、ファンのボルテージも上がる一方だろう。

 今回のトークショウではこういった状況を受け、さらに一歩突っ込んだ話となった。まずプラットフォームについては、前作をPS Vitaで発売したこともあり「『イース』のためにPS Vitaを購入した人もいると思うので、PS Vitaは押さえておく」と決定事項としてスタート。その上で、PS4については、「『フェルガナの誓い』が2カ月くらいでPS4で動作した(近藤社長)」ということで、ゲームが作りやすいハードということと、スペックが魅力的といった理由などから、タイミングが合ったということでPS4となったようだ。

 パーティ制と戦闘などのシステムを引き継ぎつつも、現在試行錯誤を繰り返しながら制作が進行中だ。近藤社長は「前作の様々な反省点がある」と言い、パーティでのアクションを完成させていきたいとしている。ユーザーからはジャンプアクションを盛り込んで欲しいという要望があると言い、実は前作でも検討されていたが結果的に盛り込むことがかなわなかった。アドルをジャンプさせるとほかのキャラクターはどういった動きをするのかなど、検討課題が多いのだという。今回はそういった問題点をクリアにして、完成度を上げていく予定だと近藤社長は語った。

 そして1つのキーワードとして、「リアルな方向性」を挙げた。「イース」シリーズではアドルが海岸に漂着したところから物語がはじまることが多いが、近藤社長は「漂着をちゃんとやる。(状況によっては)他の人も漂着しているかもしれない。それらの人と一緒に物語が進行するかもしれない」と語り、「舞台をちょっとリアルにしたい」という意向があるのだという。これは、1作目に登場した舞台を、シリーズ7作目までですべて描ききったことから、今作は1つの転機の作品として、新たなものを描きたいと考えているためのようだ。

 このほかにも、アドルが崖を這い上がっているところがムービーに収められていた部分にも触れ、「冒険している感じが出ている。登った果てに海岸線が見えるといった感動を大切にしたい。3Dになってからやりきれていない」と話すと、岡島さんも「日本ファルコムの作品の大切なところの1つに、景色のいいところで音楽を聴きながらボーッとするのがいい」と共感を示した。

 そして、「イース」シリーズと言えばボス戦だが、近藤社長を含め開発スタッフ陣もボス戦にかける意気込みは並々ならぬものがあるようで、「ボス戦は伝統的にカッコよく、1回のボス戦にアクションステージ1つくらいの重みがある」と語った。様々なアクション要素をボス戦で使用しながら戦うとなると、バランス調整も含めそれくらいの重み付けで開発しなければならないという。また、面白い話しとしては、ボス戦の開発プログラマーは「オールスター(近藤社長談)」が手掛けるが、プログラマーの性格がボス戦に現われるのだという。例えば派手で爽快だったり、細かいアクションが要求されたり、違ってくるのだとか。

 現在の進捗をパーセントで表わすことはできないという近藤社長だが、いくつかのキーワードを提示し開発者間で共有することで、方向付けを決めた上でアイディアを出しあって開発を進めているところだという。このほかに出されたキーワードの1つは人間関係で、登場人物は絞り込んで多くは登場しないが、喧嘩ばかりするような性格的に反発し合うなかに、ドラマが展開する方向を考えているという。

 近藤社長からは、「『イース I・II』を、いまの技術でもう1度やりたい」といった話題も飛び出すなど、興味深いトークショウだった。次回は11月29日の夜に開催されることが明らかに! 毎回売り切れてしまうこのイベント。参加したい人は、チケットの発売を気をつけておくといいだろう。

イメージアート。キーワードとして「海岸線」が提示された。イメージとしてはギリシャなどの風景があるという。このほかにもキーワードとして“霧”が挙げられた

キャラクター資料。キャラクターの対立の中からアドルがどう行動するのかが描かれるようだ

物語のターニングポイントとなるところで登場するモンスター。かっこいいモンスターだ。大きさはわからないが、あからさまに大きそう

(船津稔)