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【CEDEC 2014】スマホでのリアルタイムオンラインゲームの可能性は?!
「モバイル回線でリアルタイム通信対戦がどこまで出来るか調べてみた」セッションレポート
(2014/9/3 17:17)
昨今のモバイルゲームは「モンスターストライク」や「白猫プロジェクト」のように協力通信プレイを前面に押し出すなど、これまでスマートフォン単体で完結していたゲームから他のプレーヤーと一緒にプレイするゲーム、という方向にシフトしている。
そうすると浮かび上がってくるのが「『スマートフォン』を使ったオンラインゲームって何人まで同時にプレイできるの?」という疑問だ。
自宅の安定した回線を使ってプレイするオンラインゲームならともかく、貧弱なモバイル回線を使用し、更に電車などで移動する可能性もあるスマートフォンのオンラインゲーム。
例に挙げた2タイトルでは最大4人協力プレイだが、8人ではできないのか、16人ではどうなのかと、「モバイル回線を使ったスマートフォンゲームの協力、対戦プレイの限界は何人までなのか」というのが気になるのは筆者だけではないだろう。
それを検証し、発表したのが今回紹介するセッション「モバイル回線でリアルタイム通信対戦がどこまで出来るか調べてみた」だ。
このセッションではモノビットの本城嘉太郎氏が、オリジナルのプログラムを作成し、NTTドコモ、SoftBank、auの3キャリアで検証した結果が発表された。その模様をレポートしていこう。
LTE回線はさすがの安定度、3Gになると少し厳しいか
本城嘉太郎氏はまず今回の検証条件について説明した。検証に使用するのは、NTTドコモ、SoftBank、auの3キャリアでLTEと3G回線。使用するのはモノビットオリジナルの検証用アプリで、MO風のアプリの挙動を再現している。一定時間毎に接続人数分のキー入力をサーバーに送信し、サーバーに情報が届くと画面に表示されるキャラクターがクルクルと回転するというものだ。途中で通信が途絶えてしまうとキャラクターの回転が止まったり、急に高速回転するのでビジュアル的に通信状況を確認できるというアプリになっている。
検証されたのはTCPというプロトコルと、UDPというプロトコルの2種類。ざっくりと説明するとTCPはほぼ確実にエラー無くデータをやり取りできるがその分時間がかかるプロトコル、UDPは反対でデータ内容の確実性には欠けるがデータのやりとりは速いというプロトコルだ。
一般的なオンラインゲームではその両方を組み合わせて使うことが多く、本城氏は「モンスター フロンティアG」を例に挙げ、「あくまでも推測ですが、モンスターへダメージを与えた情報はTCPで、他のキャラクターの位置などの情報はUDPを使用しているのではないか」と話していた。
つまり他のキャラクターの位置は多少ズレたりワープしても問題ないのでUDPを使うが、ダメージを与えたり受けた情報は確実にデータを届ける必要があるのでTCPを使うというわけだ。
というわけで検証結果に移ろう。まずは各社のLTEの状況から見ていくと、NTTドコモ、SoftBank、auの3キャリアとも、TCPでもUDPでも安定した通信ができていることがわかった。
TCPと比較するとUDPの方が速度が高速で、UDP特有のパケットロスなどは発生しなかったという。ただ応答速度(プレーヤーがキー入力してから結果がサーバーに戻ってくるまでの時間)が70ms程度と少し時間がかかるのでアクションゲームにそのまま採用するには遅延が気になる。
ちなみに240人が同時にプレイ、なおかつ240分の1秒ごとにキーの入力情報を送受信するという無茶な設定でも、カクつくこと無く安定した通信が可能という結果が出たそうだ。もっともこの設定で通信すると、通信量がかなり多くなり、すぐにLTEの月間通信容量の限界の7GBに到達してしまうので、応答速度よりそちらが問題になると話していた。
続いて3G回線の検証結果が紹介された。こちらはLTE回線に比べるとかなり応答速度が落ちるという結果になったという。特にTCPでは反応速度が大きく落ちてしまうので、この仕様でアクションゲームを作成する場合はUDP一択、という結論になった。
地下や電車の中、混雑した駅などを移動しながらの場合はどうなる?
続いて地下や地上、時には電車で移動しながらだとどうなるか、という実験結果が紹介された。
こちらの実験は3キャリアともLTEに固定して行なわれ、ルートはモノビット本社から東京メトロ丸ノ内線新宿御苑前駅に入り、新宿駅へ移動、そこからJR山手線経由で渋谷駅に行き、更に副都心線経由で新宿三丁目駅、という地下や混雑した駅、移動する地下鉄車内など、モバイル回線には厳しい環境が続く組み合わせだ。
そしてこの実験の結論をザックリと説明すると、地上から地下に降りる際などや電車で移動する際はキャリアによっては一瞬カクつくものの、基本的に安定して通信できるという。
電車で移動中も、混雑した駅内でもほぼ問題無しだったという。また実験中IPアドレスは変わらなかったそうで、断線などの心配はほとんど無用という結果が出たそうだ。
まとめとして、「モバイル回線でも常時接続型のオンラインゲームを作成することは可能」、「このままの仕様だと応答速度に難があるので、実装方法には工夫が必要」という結論になったという。
確かに1スマホオンラインゲームプレーヤーとしても「地下や電車の中で移動しながらでも、意外と安定してプレイできているな」とは感じていたが、その結果がデータとして証明された形だ。これから先もっとオンラインに重きをおいたスマホオンラインゲームが多く配信されるかも、と期待させる検証結果だった。