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「YAIBA: NINJA GAIDEN Z」稲船氏と早矢仕氏に突撃インタビュー!
「YAIBA」は、アクションしている途中でもストーリーが意識の片隅にある
(2013/10/15 15:00)
「YAIBA」は、アクションしている途中でもストーリーが意識の片隅にある
――東京ゲームショウ 2013のプレイアブルはE3と同じものでしたが、ローカライズされていなかったのは開発が佳境など単純に時間が足りなかったんでしょうか?
早矢仕氏:正直にいうと、日本語に対応させる時間がないほど開発が佳境なんです。ただ(E3ビルドでも)ゲームのセンス、向こうで作っているものをそのまま感じてもらえるかなと思いまして。突貫工事で日本語を入れても、ゲームの良さがスポイルされてしまう。丁度いま、そこに気を遣ってローカライズしている最中なんです。まずはしっかりと形になっているものをお見せしようと、E3ビルドを出展しました。
――ローカライズはどのような形になるんでしょうか。字幕だけ日本語とか?
早矢仕氏:字幕はもちろん、日本語ボイスも入ります。
――ボイスの配役は?
早矢仕氏:いまちょうどオーディションしている最中です。
――東京ゲームショウ 2013で体験されたユーザーさんから、なにかフィードバックはありましたか?
早矢仕氏:いくつかブログに書いてくださったかたもいらっしゃったんですけど、触ってもらう前は、従来の「NINJA GAIDEN」シリーズとどう違うんだとか、そういった質問をされる方が多かったですね。あとは「いい意味でしっかりアクションゲームとしての手触りがある、いい方向に突き抜けていて、そこが最高だ!」という方もおられました。触ってみると「あっ、稲船さんのゲームだ」って。そこで感じてくれる人が多いなって。
稲船氏:東京ゲームショウ 2013会場で、知り合いのゲーム学校の人が走ってきて「『YAIBA』が最高だ!」と。「ビジネスデイで一通り新作を触ったが、『YAIBA』が1番だ!」と言ってくれた人がいます。色々なタイトルに同じことを言ってるのかもしれないけど(一同笑)。
E3のときもあったけどね。(出展タイトルが総じて)似たようなというか、ジャンルが均一化されてくるでしょ? そこでグラフィックスがどれだけスゴイかという話にすぐなるけど「YAIBA」は違うベクトルで進んでいるところがあって、アーケードゲームっぽい、クラシカルな部分がある。忍者、ゾンビ、コミック……色々な要素があって、刺さる人にはメチャクチャ刺さってる部分がある。今回は、そういう心強いフィードバックが得られたかなと思います。
早矢仕氏:我々の情報発信が足りていないのかもしれませんが“触ったときの衝撃”を感じてもらっています。「このゲームが目指しているところは、こういうものなのね」と、触って初めて理解していただけたのかな、というのは感じますね。
――E3以降ほとんど情報が出ていませんでしたから、それが奏功して大きな驚きにつながったのかもしれませんね。気軽にE3にいける一般の方も、そうそういないでしょうから……。
稲船氏:E3会場でプレイアブルに触れた人は、基本的に業界関係者だけだからね。
早矢仕氏:ゲームの細かい内容については、これから色々と情報が出せると思います。
稲船氏:E3のとき、某有名ゲームディベロッパーが「YAIBA」をずーっと触ってたんです。知り合いなので、後ろから肩を叩いたら凄く驚いて「えっ、えっ、稲船さんなぜここにいるの!?」っていうから「これ俺が作った」っていったら「嘘!!」って(一同笑)。凄く面白いと思ってやってたらしく、「E3出展タイトルのなかで1番じゃん!」って彼は言ってた。やっていてあまりに面白いから社員を連れてきて、みんなでもう1回やっていたら、俺がきた。俺が作っているのを知らずにやってくれているから(面白いと思ってくれたから)本物かなって。そういう人もいるよね。ユーザーにも上手く刺すことができれば、相当いけるんじゃないかなとは思ってるんだけど……。
――どこまできけるか微妙ですが……公式ホームページで明かされている範疇では、戦いに敗れたことでヤイバはリュウ・ハヤブサを恨んでいる。世界観は東欧で、掲載されているインタビューではウクライナである、と。そのあたり、ストーリーや世界観をもう少し詳しく教えていただけますか?
稲船氏:かなり出しましたねぇ、今! それ以上出すとゲームの中身に触れちゃう。どんでん返しを言う感じになっちゃう(一同笑)。
――えーっ、そんな! たとえばヤイバを改造した男はどんな感じの人だとか、そういう情報は?
稲船氏:そこがストーリーにからんでくる。親切で改造してないもんね(笑)。
――そこをなんとか! サービスで何かひとつ!
早矢仕氏:今あるのが、ゲームの世界観をそのままお伝えするものを色々と準備しているんですよ。それをうちの開発スタッフが説明しちゃうと、ケレン味がないじゃないですか。世界観にひたってもらえるものを、今これから色々とやっていこうかなと思っています。そこで「YAIBA」の世界観を感じてもらいたいですね。
――そこは稲船さんが得意とするところでしょうか。
稲船氏:そうですね。でも僕ね、インタビューで1番嫌いなのが「ストーリーを語ってください」なんですよ。だって(それは)広報の人から聞いてもいいし。もったいないじゃん、早矢仕さんに「ストーリーって、どんなんですか」っていうの!
――我々は読者が知りたいことを聞くのが仕事ですから!
稲船氏:語れないのをわかってるのに聞くし!(笑)。
――そういう意味では次の質問もしづらいなぁ……ストイックなキャラクターのリュウ・ハヤブサが「YAIBA」の世界でどう描かれるかとか、そのあたりをうかがえればと思ったんですけど。
早矢仕氏:3社で作っていくなかで、1番最初の取り決めじゃないですけど……うちが入ることで大事にしようと思ったのが、まず「NINJA GAIDEN」の世界があることをお客様に納得していただける細かい世界設定。あと、アクションゲームの手触りの部分は厳しいディレクションで入ろうと。今もそういうスタンスでやらせていただいています。決して旗を振って指示するのではなく、一緒に組んでいるからこそ、僕らでは作れないものをどんどん広げてもらっている感じ。リュウ・ハヤブサが出てくるところに関しては、厳しくチェックさせていただいて、「NINJA GAIDEN」ファンに納得してもらえるものになっているかなと思います。
稲船氏:絶対に「NINJA GAIDEN」クオリティでなきゃいけないと思っているんです。「NINJA GAIDEN」である必要はないと思うけど、「NINJA GAIDEN」クオリティを必要としている。早矢仕さんたちが納得できるものにしなきゃいけない。ある程度「NINJA GAIDEN」そのものではないことを理解してもらったうえで、この世界観のなかで「NINJA GAIDEN」クオリティを打ち出していく。そこはちゃんと単刀直入に言ってもらえてるよね。目指すところは、Sparkもcomceptも、Team NINJAに太鼓判を押してもらえるものにでなきゃいけない。
早矢仕氏:「NINJA GAIDEN」のモーションを全部再現しなきゃいけないとも思っていない。アクションゲームだから、触っていて気持ちよくて、また次も遊びたくなる、そういう根本的な部分ってあると思うんですけど。そこは実現できつつある。「NINJA GAIDEN」とは違う心地よさみたいなものは、しっかり確立できているかなと思います。
――手触りの件は、E3ビルドはエフェクトでキャラが隠れて見づらいなど若干不安を感じていた部分が多々ありました。ですが、インタビューに先立ちプレイさせていただいた最新ビルドで不安が一気に吹き飛びました。とてもプレイしやすく、それでいてやりごたえ抜群のものになっていると感じました。
稲船氏:そこも1番揉めているところかな? 何度もやりとりして……彼らの考え方もあるし、ここ(稲船氏と早矢仕氏のあいだ)で分かれることもあるし。でも「何が気持ちいいの」は追求しながら、ね。ただ単にゲーム画面が見えやすい、理解しやすいアクションっていうのも面白くないし、見づらいのも面白くない。
今回、最新ビルドを見て思ったのはストーリー(の刷り込み)。アクションゲームって、アクションをしているときは必死にプレイしているからストーリーは(プレーヤーの意識から)とんでる。どう上手く斬ってやろうとか、コンボをつなげてやろうとか凄く考えちゃう。で、バーン!と斬り終わってデモが流れてストーリーに没入して「あっ、こういうストーリーで格好いいな!」と次にいくのが昔の流れ。
「YAIBA」は、アクションしている途中でもストーリーが(意識の)片隅にずっとあるゲームでなきゃいけないなと思ってます。ストーリーを語っているゲームではないんだけど、片隅にずっとおかれている感じは、自分のなかで「心地いいな」って。ストーリーは凄く好きなんだけど、アクションゲームが1番好きっていう相反する部分があって。「ストーリーが好きならRPG作れよ!」っていわれるんだけど「RPG嫌いなんだよ! でもストーリーは好きなんだよ!」って(一同笑)。そこがこれまでうまくかみ合わなかったんだけど、「YAIBA」はうまくかみ合い始めたな! っていう感じ。
別にデモをやってるわけじゃなく、そこでプレイしながら(意識の片隅に)ストーリーがずっと同居してる。その感じが、より明確にでてきたかなって。凄くいい感じになってる。
――本作は次の戦闘シーンに移動する際、足場や取っ手などのスイッチを見つけて先に進んでいきます。そうしたテンポ感も影響しているのでしょうか。
稲船氏:色々な要素があると思うんだけど……一方通行といえば一方通行でしょ? 自由にあちこちいけるわけではなく、カメラも決まった角度でずーっと移動して演出されていくでしょ? あれ、自由にあっちこっちいって敵を斬れるゲームだと、ストーリーが“語れない”よね。スキルばかり見ちゃうとか。そういう部分も、ストーリーを(意識の片隅に)おいておける要素になっているのかなと思う。
あと、敵(ゾンビ)がそういう個性になってる。「どういう奴がゾンビになったのかな?」とか勝手に想像してしまったりとか。
――服装が印象的ですよね。軍服っぽいのがいたり、色々。
稲船氏:そうそう! 世界観を忘れないっていう感じ。意識はしていたんだけど、どう上手く組めるかな? と思っていたのをSparkがうまく組んでいた。実はこれも、アクションゲームの進化じゃないかなと思ってるんだよね。これでさらに、テクニックとかを重要視する方向にもっていくのもひとつだし、ゆるいんだけどストーリー重視のアクションに仕上げてもいいし、本流の「NINJA GAIDEN」をこの形で作っていくこともできるし、今の中間くらいにも置いておけるし、もっとゆるく作ることもできる。面白いよね。新しい、進化したアクションゲームになりそうな気がする。コミック風の見た目も、ストーリーへの意識に寄与するよね。
早矢仕氏:最初のオープニングでヤイバが斬られてメカになるんですけど、その“最初のキッカケ”があるからストーリーが気になるんだと思うんですよ。たとえば「DEAD RISIGN 2」で娘はこの先にどうなっちゃうんだろう、というキッカケづくり。それを解決するために物事を進めていく。それがいい感じで(意識の片隅に)残りながら進むゲームにできているのかな?
ヤイバは、なんでメカがついているかとか詳しく説明されないわけですよ。自分の身体なのに(笑)。そういうストーリーの引っ張りかたなのかな。デモシーンが一杯あって引っ張っていくという形ではない。
稲船氏:そうそう! いろんな変な敵が出てきたら忘れてるんだけど、娘の存在があるから、ストーリーはあるんだっていうのが頭に残ってるよね。これ(YAIBA)もそうだよ! (リュウに)斬られたっていう大前提があるもんね。
早矢仕氏:「あっ、一緒だな」って。稲船さんのゲームだな! と思ったんですよ。1番最初の動機みたいなものが。
――最初に大きなものを投げかけて、最後に結びついて満たされる。でも全部謎がクリアされるわけではない、みたいな。
稲船氏:そうそう。でも、アクションゲームでストーリーをガーッと語っても、絶対に頭に入らないんだよね。たとえば「マリオ」だったら「ピーチ姫を助けなさい」しょ。「魔界村」でもそうじゃん、お姫様を助けなさいって。「ロックマン」を作ったときは、Dr.ワイリーという世界制服をたくらむ奴を倒しなさい。これまでのゲーム作りでも単純だけど、ひとつだけ気にする部分をおいてやってきた、というのがある。
アクションゲームのなかで“気にする部分”を置くんだけど、どんどんリアリティが増してるなかで「お姫様を助けなさい」は全然リアリティがなくて(笑)。何かのリアリティを今風に置かなきゃいけないんだよね。リアリティが重過ぎてもいけない。ずっと娘を助けてばかりでもいけないわけ。忍者モノなのに娘を助けなさいとかだと、「なんか凄ぇ優しいな」みたいな(笑)。
――ヤイバのロケットパンチやセクシーなギャグなど、これまでの「NINJA GAIDEN」とは大きく異なるテイストが大胆にフィーチャーされています。このあたりは稲船さんのインプットによるものでしょうか?
稲船氏:(早矢仕さんに)わりとSpark側が主導だよね? 「こうしてくれ!」というよりは、Spark側が「ここまでやっていいのか?」みたいな。俺がやりたかったのは……せっかくコーエーテクモさんと俺がやるなら、あまりコーエーテクモさんらしくない感じにしたい(一同笑)。 「それはやらないよね」というのをやったほうがいいかなっていうのは凄くありましたね。
主人公も「正義の味方!」というよりは「汚い言葉を使うよね」って奴にしたかった。汚い言葉を使って「こいつ、なんだよ!?」っていう。この世界観では“怒られそうなキャラクター”でもいいんじゃないかって。
――そういう意味では、早矢仕さん的に「これ大丈夫か?」と心配になったことは?
早矢仕氏:いや、むしろそれがないとこのプロジェクトの意味がないですからね。先ほどお伝えしたように(リュウ・ハヤブサなどは)しっかり見させてもらうけれど、それ以外は我々だけでは作れないものを! ということ。最近、ゲームを遊んでいて笑えるゲームってあんまりない。特に日本で作られるゲームには少ない気がしているんです。
――生真面目なゲームが多い印象?
早矢仕氏:多いですよね。海外もそうかもしれないですけど。僕らはこんなに真面目に馬鹿なゲームを作っています、でもちゃんとアクションゲームの手ごたえがあります、というところですね。最初に狙っていた部分が、やっと形になってきたなぁという感じです。
――従来の「NINJA GAIDEN」は、その生真面目さの典型みたいな気もしますが。
早矢仕氏:サブタイトルに「NINJA GAIDEN」がついていて、世界観は共有していますけど、新しい刺激的な体験ができる。これからもそこを伝えていきたいなと思います。