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PS3「rain」 開発チーム ミニインタビュー「コンセプトは“迷子”」
インタビューと共に「chapter:1」のプレイ動画も公開!
(2013/3/26 05:00)
皆さんは「rain」をご存知だろうか。「rain」は、2012年8月にgamescomで開催された「SCEE Press Event」にて発表され、注目を集めたプレイステーション 3用アクションアドベンチャー。雨の中、姿を失ってしまった少年たちの物語が描かれており、基本的にプレーヤーにすら少年たちの姿を見ることはできないが、雨に打たれたり、泥で汚れたりすることで姿を見ることができる。このシステムを基軸とし、「見える/見えない」を上手く利用しながら謎を解き進めていくという、これまでにはないゲームとなっている。オンライン配信専用タイトルで、2013年発売予定、価格は未定。オンライン機能はない。開発はソニー・コンピュータエンタテインメント ワールド・ワイドスタジオ JAPANスタジ、PlayStation C.A.M.P!、アクワイアが担当している。
今回、この「rain」について、ソニー・コンピュータエンタテインメント ワールド・ワイドスタジオ JAPANスタジオ 鈴田 健プロデューサー、PlayStation C.A.M.P! 池田 佑基ディレクターに話を伺う機会を得ることができた。
インタビューの前に、コンセプトの説明、「chapter:1 夜と子供たち」のデモプレイを披露してくれた。本作のコンセプトは“迷子”。少年は夜に迷い込み、迷子になる。ただ迷子になるだけでなく、姿も失ってしまう。少年の日常とは真逆の世界。1人ぼっちで泣きたくなる不安、恐怖に襲われる。知らない場所、見たことのない風景への好奇心も生まれる。相反する感情が交じり合う、子供のころだけにある不思議な状態、それが迷子。不安と好奇心、2つの感情が気持ち良く調和するアクションアドベンチャーなのだという。
インタビューを読んでもらう前に、「chapter:1 夜と子供たち」のプレイ動画をご覧いただきたい。
「rain」ミニインタビュー
――「rain」とは、どのようなゲームなのか、簡単にご紹介願えますか?
鈴田 健氏:コンセプトに“迷子”とあるように、幼い子供が不思議な世界に迷いこみ、“何故こんな所に来てしまったのだろうか”、“あの女の子は誰なのだろうか?”と不思議を抱きつつ、好奇心を持って前に進んでいくアクションアドベンチャーです。謎はゲームを進めていくことで紐解かれていきます。
――どのような発想から生まれたタイトルなのでしょうか?
池田 佑基氏:発想は、“見える、見えない”からです。最初にどうユーザーを驚かせようかというところから始まっていて、プレーヤーからも敵からも主人公が見えないアクションゲームだと驚いてもらえるのではないかと考えました。アイディアがどうしたらうまく伝わるのか、見えないだけではゲームにならないので、雨を降らせて、当たった飛沫で姿が見え、雨が降らない部分であれば見えなくなるようにしようと決めました。それを使って、先に進んでいったら面白いだろうと考えたんです。世界観はそのアイディアを補強するように作っていきました。せっかく見えないのだから、他に誰もいないほうがいいのではないか、雨が降っていて夜がいいのではないかと。このように足し算式にゲームを作り、ベースができた上で、ストーリーを組み上げていきました。
――主人公が見えないのをゲームにしていくのには大変な苦労があったのではないでしょうか。
池田氏:今、まさに大変な状態ですね(笑)。アイディアとして面白いステージを作ってみたものの……(うまくいかない)みたいなことがありますし、面白いはずなのに、遊んでいて難しい方が先に来てしまうことも多々あるので、そこをうまい具合に調整して、面白い部分を伝えられるようにブラッシュアップしています。
――現在、開発度はどの程度なのでしょうか?
鈴田氏:ステージの全体の繋がりは一通りできています。見える見えないは繊細な所なので、ユーザーさんのストレスにならないように丁寧にカメラを直したり、仕掛けをわかりやすくしたりと調整している段階です。
――ジャンルはアクションアドベンチャーですが、操作方法やアクションの難易度はどのようになっているのでしょうか?
池田氏:左スティックで移動、□ボタン押しながらだとダッシュ、×ボタンでジャンプ、○ボタンで調べる・掴む。3ボタンだけなので、それほど複雑なアクションを求めません。タイミングというよりも、どう行動するのかが重要になります。ここで姿を現すか、隠れるか、プレーヤーの選択により進んでいく形です。
――姿が見えないと、敵に見つからないのでしょうか?
池田氏:見えなくてもオブジェクトを倒したり、水溜りを歩いて音を立ててしまうと敵は襲ってきます。見えない場所では敵も見えなくなるので、足跡を確認して安全を確保しないといけません。それをあまりやりすぎると難しくなるので抑えてはあります。
――アクションアドベンチャーには大抵あると思われる攻撃ボタンが用意されていませんが、主人公の少年は自ら武器を持って攻撃することはないということですか?
鈴田氏:そうです。
――触られたらゲームオーバーなんですか?
池田氏:はい。そうです。ただ、多くのリスタートポイントを用意しています。アドベンチャーゲームでは長くやり直すのは嫌なので、細かく刻んであります。
――犬のようなモンスターが出てきましたが、他にも色々出てくるのでしょうか?
池田氏:色々なバリエーションがあります。主人公たちを含め、基本的にこのゲームは固有名詞が出てきません。あえて名前をつけていません。
――デモプレイ中、音で敵を引き付けるといったことがありましたが、他にはどのようなギミックがあるのでしょうか?
池田氏:音に関するものだけでなく、透明状態で物を持ち上げるとどう見えるか、とか。
鈴田氏:体に付着するとかもありますね。詳しくはまだ言えませんが、透明人間をベースにこういうのがあったら面白いだろうという所から考えています。
――ステージ中にテロップが表示されていましたが、2ステージ以降も表示されるのでしょうか?
池田氏:はい。テキストを出すことは最初から決まっていました。本作に合った表現になっていますし、読む人は読むし、読みたくない人は詠まないだろうと。
鈴田氏:主人公の感情ではなく、状況説明が出てきます。
――状況に合わせて、モーションも変化していくんですね。
池田氏:色々な仕草が出るようにしています。それを条件でとったり、場所に設定してあったり、細かく設定しています。普通に階段を下りるのも、少し違ったモーションを入れるだけで印象が違ってきます。モーションを作る人も、設定する人も大変なんですけどね(笑)。
――仕草など、細かなモーション設定は最初から入れようと決めていたのでしょうか?
池田氏:仕草を入れようと決めたのは中盤です。もうちょっと感情が欲しくなったんです。ずっと走っているだけになってしまいがちなので、雨を感じられるように増やしました。
鈴田氏:没入感を高めるため、ここにいるというのをユーザーに感じてもらえるように入れてあります。普通のゲームだと喋ることなどで感情を伝えることができるのですが、本作の主人公はしゃべりません。少年がどう思っているのか、どのような状況にあるのかわかりやすいようにモーションの部分はリッチにすることにしたんです。
――Twitterなどで、グラフィック、雰囲気に対して、非常に高い評価を得ていますが、どのように作り上げていったのでしょうか?
池田氏:アートディレクターが建物、街が好きで、街を感じられるディティールを足していって作っています。
鈴田氏:迷い込むのに相応しい場所があると思うんです。ふらっと寄ってみたくなる路地、どこまで続いているかわからない階段、行ったことがあるような、ないような場所。そういう雰囲気を出すのが上手い人なんです。
――ロケハンをしたり、参考にした場所はありますか?
池田氏:具体的にはないですね。ユーザーから見て、色々な場所に見えるように作っています。
――トレーラーやデモプレイで見せていただいたステージは夜でしたが、全てのステージが夜なのですか?
池田氏:ゲーム中はずっと夜です。オープニング中のシーケンスで昼間が入ったりはします。
――夜で、雨が降っていると、ホラーゲームのような印象を与えてしまいそうですが、本作にはそういう感じがないですね。
池田氏:夜のグラフィックスは暗くなってしまいますが、あまり暗くはならないように気をつけています。幻想的な雰囲気を出しつつ、ホラー感が出ないようにしています。
――ユーザー毎に使用するディスプレイは異なりますが、輝度調整などは可能なのでしょうか?
池田氏:起動時に調整できるようにしています。テレビによって本当に違うので悩み所ですね。
池田氏:どんなテレビに映してもある程度綺麗に見えるよう調整してあって、後はユーザーさんが好みで変更できるようにしてあります。
――トレーラーでドビュッシーの「月の光」が使われていますが、ゲーム中ではどのような曲が使われているのでしょうか? デモプレイでは、BGMがない部分などもありましたが。
鈴田氏:サウンド全般はオリジナルのものですが、テーマ曲として「月の光」を使わせてもらっています。音のあるなしに関しては、BGMがある部分はユーザーの感情をよりかきたてるように、ない所は孤独な気持ちを与えるように考えてあります。感情の曲線をデザインし、それに沿って作っているので、感情をより盛り上げるように、より盛り下げるように配置しています。
――雨なのに、テーマ曲が「月の光」ですが、重要な意味があるんでしょうか?
鈴田氏:具体的にはまだ言えませんが、もちろんあります。
――SEについてもお話いただけますか。
鈴田氏:足音だけでも、普通の床、鉄、木など、色々ありまして、透明状態で相対的に自分の位置がわかるように音やオブジェクトを用意しています。
――クリアまでのプレイタイムはどのくらいになるのでしょうか?
鈴田:長すぎず、短すぎず……(笑)。
池田:思ってるよりもボリュームはあると思いますよ。
鈴田:雰囲気を重要視したゲームのプレイ時間の相場ってあると思うのですが、それよりも全然多いです。満足していただけるかと思います。
――ストーリー分岐などもあるのでしょうか。
池田:ルートは色々あります。狭い場所、広い場所もありますし。攻略に関係のない寄り道などもできます。単純な1本道ではないです。
――発売時期が2013年とあります。もう3カ月ほど過ぎてますが、いつ頃になりそうでしょうか?
池田氏:現状2013年としか言えませんが、来月(4月)ということはないですよ(笑)。
――最後に本作を楽しみにいているファンへ一言お願いします。
池田氏:謎が多い状態でやきもきされているとは思うのですが、最初に見てもらったトレーラーや公式サイトのグラフィックを見て感じてもらったことが素直にゲームになっていると思うので、期待し続けて、発売を楽しみにしてもらいたいです。
鈴田氏:まだ出せない情報が多いですが、制作現場の雰囲気などはFacebookでお届しようと思っています。熱意を感じえてもらえると思うので、遊びにきてもらえればと思います。
――ありがとうございました。
インタビューお楽しみいただけただろうか。今後も最新情報は公式ホームページやFacebookページにて公開されていくとのこと。弊誌でも本作の情報をお伝えしていくので、ご期待いただければと思う。
(C)Sony Computer Entertainment.