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伊藤賢治氏出演ライブイベント「One Night ReBirth」開催
ロックバンドスタイルで数々の名曲を演奏!! 河津氏、小林さん、渋谷さんら当時のスタッフも集結!
(2013/2/25 13:56)
東京の日本橋三井ホールにて、作曲家の伊藤賢治氏が出演するライブイベント「One Night ReBirth」が開催された。伊藤氏といえばやはり「ロマンシング サ・ガ」や「聖剣伝説」など、特にバトルミュージックを中心にファンからは“イトケンサウンド”とも呼ばれ、数多くの名曲が愛されている。
ヘビーロックでイトケンバトルサウンド炸裂!! ファン大満足の充実したライブに
今回のライブは、2012年8月に発売されたアルバム「Re:Birth II/ロマンシング サ・ガ バトルアレンジ」の楽曲を中心としたものになっている。キーボードの伊藤氏を中心に、ツインギター&ツインキーボード、ベース、ドラムという本格ロックスタイルで演奏した。
1曲目からアルバム「Re:Birth II」より、「ロマサガ」シリーズ各種から選りすぐった「バトル1メドレー」を演奏してエンジン全開! 同じく「Re:Birth II」より続けざまに「四魔貴族バトルメドレー」を演奏。パワフルな音で来場したファンのテンションは早くも最高潮に達した。
続いて、「Re:Birth II」より「玄城バトル」、「術戦車バトル」とバトル曲を、そして一旦緩急をつけて、メロウなメロディーラインが印象的な「Believing My Justice」と演奏した。曲間のトークでは伊藤氏とギター&キーボードの上倉紀行氏の2人で、上倉氏が当時に「ロマサガ1」をプレイした時に主人公選びで苦労した話や、「サルーインって石化させるとあっさり倒せちゃうよね(笑)」など、「ロマサガ」シリーズの思い出話も語られ、会場に笑いを呼んだ。
続く6曲目には「Re:Birth 聖剣伝説アレンジアルバム」より「マナの嬰児」を。さらに、7曲目はなんと初披露となる新規アレンジで、「サガ フロンティア」より「Battle #5」を演奏。このアレンジは、メインメロディーをギターでがっつりと際立たせ、ドラムも目一杯に全力を出し切るようなヘビー&パワフル。それでいて、キーボードのメロディアスな旋律も加わっていて、まさにファン必聴のアレンジだ。
ライブも後半に入ったところで、スペシャルゲストに「サガ」シリーズ ディレクターの河津氏がサプライズで登場! 伊藤氏とのトークではシリーズ制作当時を振り返り、入社間もない新人だった頃に作曲した曲や、容量の都合でボツになったという「Sa・Ga2 秘宝伝説」大江戸のオタマのテーマ曲もその場で演奏するなど、たっぷりのサービスを込めつつ、秘話を語ってくれた。
伊藤氏の思い出だと、「サガ フロンティア」では各主人公ごとにボスがいて、それぞれのラストバトル曲を伊藤氏が作曲することになり、作曲後は1週間寝たきりになったほどだったとか。だが、その苦労を河津氏が「よくやったね」とねぎらってくれたことが今も思い出深いという。
河津氏には「なぜタイトルにロマンシングと付けたのか?」という質問が寄せられた。これは、当時の開発チーム内でアイデアを募り、その1つが「ロマンシング」だったようだ。あまり深くは考えていなかったそうだが、「ロマサガ」という語呂の良い略称も生まれ、結果的に非常によかったということだ。
ニコニコ生放送で配信を観ている人からの質問では「『サガ』シリーズの最新作は?」というのがやはり多数。これに関して河津氏は「あまり期待を持たせても申し訳ないので、今のところ無いです」と残念ながらはっきりと回答した。ただ、河津氏自身はクリエイターとしては生涯現役を心がけ、「機会が来ればやる時はやりますよ」と、前向きに語ってくれた。
演奏に戻ると、さらに新規アレンジ曲が。ロックテイストから1度離れ、バイオリンの土屋さんを加えて「ロマサガ3」より「ポドールイ」、「サガ フロンティア」より「ALONE」の新規アレンジを披露した。伊藤氏の楽曲と言えば、芯の強いメロディーラインを弦楽器の旋律で奏でる曲もすごく魅力的。両曲ともにピアノ&アコースティック、そしてバイオリンによるしっとりしたアレンジとなっていて、当日のサプライズとなった。
なお、この新規アレンジ曲については、まだ未定ながらも新アルバムに収録して発売を目指しているという話もあった。どういった方向性のアルバムかも含めてまだ何も決まっていないということだが、発売を期待して待ちたいところだ。
さて、ライブは穏やかな緩急を経て再びロックに。「Re:Birth」より「新約 聖剣伝説」の「戦闘2」、そして新規アレンジされた伊藤氏の屈指の名曲「七英雄バトル」へ。「Re:Birth II」ではアコースティックアレンジされていた「七英雄バトル」だが、今回のアレンジはハードロック! プレーヤーを最高に高ぶらせてくれるイントロから、バイオリンの旋律、ハイトーンなギターサウンドを交えつつ、厚みのあるサウンドで迫力満点の演奏を聴かせてくれた。
ここから一気に終盤へ。「ロマサガ2」、「ロマサガ3」のラストバトル、そして「ミンストレルソング」の「決戦! サルーイン」と、シリーズの最終決戦を立て続けに演奏! 「七英雄バトル」の新アレンジからのこの流れで、来場者からは大喝采! これでもかと言わんばかりに満足させてくれた。
もちろんこれで終わりではなく大きな拍手によるアンコールで、再び伊藤氏率いるメンバーが登場! 「ロマサガ3」の「バトル2」、新規アレンジで「ミンストレルソング」より「邪聖の旋律」を演奏した。
さらにここで、スペシャルゲストにボイスパフォーマーの岸川さんも満を持して登場! 岸川さんが加わったとあらば、あの曲やこの曲に期待がかかる。「聖剣伝説4」より「愚者の舞」、そして「ミンストレルソング」と言えばあの曲な「熱情の律動」を新規アレンジで披露した。
バンドスタイルによるハードロック、バイオリンによる弦の旋律、そして岸川さんの力強く独特なボイスパフォーマンスで、イトケンサウンドの集大成とも言えるスタイルへ! この新規アレンジ版「熱情の律動」では、原曲に忠実なサウンドながらロングバージョンで間奏にボイスとバイオリンが加わり、これが完成形と言ってもいいのではと思えるものに仕上がっていた。圧倒的なパフォーマンスを見せ、会場を完全燃焼させてくれた。
サプライズゲストあり、新規アレンジの初披露あり、制作当時の秘話もたっぷりと、訪れたファンの方は大満足だったのではないだろうか。新規アレンジ曲を収録した次回作アルバムの発売も楽しみに待ちたい。
ライブ終了後に豪華メンバーへインタビュー!
最後に、ライブ終了後に行なわれたインタビューの模様をお送りしよう。会場には、当時シリーズ作品の制作に参加された方も多数訪れており(時田貴司氏の姿もあった)、その中で今回は以下の5名の方にお話を伺うことができた。
――2年前にもライブを行なわれて、今回はそのアンコールと言いますか、お礼の意味も込めてのライブ開催ということでしたが、終えられてみていかがでしたか?
伊藤氏:これが限界というか(笑)。次回にはまた別のやり方でもやってみたいというか。またやらせてもらえればって思いますね。
――「サガ」シリーズも20年以上を越えているわけですが、たくさんの人がこうしてライブを楽しんでいます。河津さんはライブを終えていかがでしたか?
河津氏:そうですね、シリーズ作のファンでいてくれて、イトケンの楽曲が大好きだという人がたくさんいて。イトケンに支えられていますね(笑)。
――ステージ上では制作当時のエピソードもたくさんお話されていましたが、昔を思い出すようなところもありましたか?
河津氏:まぁ、まだまだ言えていないところもたくさんあるんですが、曲ごとの思い出とか、どういう考えで作っていたかとか。また機会があればお話したいですね。
――キャラクターグラフィックスでドット絵を担当されていた渋谷さんはいかがでしたか?
渋谷さん:イトケンのライブに初めて来たんですけど「『ロマサガ』ってこんなにロックだったのね」って思いましたね(笑)。最後はやっぱりサルーインなんだなとかも思ったり。聞いていると当時の事を思い出しましたね。やっぱり「ロマサガ1」が自分には思い入れが強いですね。
伊藤氏:初のスーパーファミコンでしたもんね。
渋谷さん:そうそう。私はキャプテンホークを手がけましたね。
――小林さんはいかがでしたか?
小林さん:うすうす思っていたんですけど、自分は狩猟民族なんだなって思いました(笑)。日本人って、農耕民族なのか狩猟民族なのかだと思うんですけど、ロックなタテノリが心地良いのは狩猟民族かな~って。高校時代にも洋楽のロックにもハマっていたので。今日のライブは素晴らしかったですね。
――お2人はグラフィックスやデザインを手がけられましたが、今日のライブで当時に苦労された事なんかも思い出しました?
渋谷さん:いや、当時にそういう事はあんまりなくて。
伊藤氏:サルーインやシェラハなんかも1発OKだったんですか?
小林さん:そうですね。絵を持って行くと河津さんが「こうきたか!」って言ってくれて、使われるみたいな。
伊藤氏:ジャミルなんかは描き直したって聞いた覚えがあるんですけど。
小林さん:あ、それはあります。最初にまずこんなタイプはどうかなと思って描いたら、シナリオを後から見たら女装するという場面があって、「あぁ、そうなのか」と描き直しましたね。女装ができるようなビジュアルじゃないとね、ちょっとまずいなと。
伊藤氏:ジャミルは最初もっと丸っこい外見でしたよね。
小林さん:もっと男性的な感じで最初は描いてましたね。
――現在「エンペラーズ サガ」を展開されている市川さんはいかがでしたか?
市川氏:GREEで「エンペラーズ サガ」を展開しているのですが……「エンペラーズ サガ」には音楽は入っていないんですよね。なので、曲を再生しながら楽しんでもらいたいです。ファンの方の思い入れというのをこのライブで凄く感じましたので、そこからずれないように制作を続けていきたいなと思います。
――ライブ中に新アルバムの制作も決定したというお話がありましたが、構想などはどんなものがありますか?
伊藤氏:実は新アルバムの提案をこのライブのリハーサル中に聞いたという状態で、「あるんだ!?」って僕がびっくりしたみたいな(笑)。それが3週間ぐらい前でしたかね。これから色々と企画がまとまってくると思います。夏ぐらいの発売を予定したいということですけど、秋になったり、冬になったりという可能性も……(笑)。今年中には出したいなというところで、お待ち頂ければと思います。
七英雄バトルは、今回のハードロックアレンジで好評と思えるのでそれで行きたいと思いますけど、他はまた新しい魅力も模索したいかなと思います。
――これまで様々なライブをやってこられたと思うのですが、こういう形式のライブをやってみたいという希望はありますか?
伊藤氏:ピアノと、フルオーケストラとまではいかずとも、ストリングス+αな感じでのクラシックコンサートをやってみたいですね。ストリングスが凄く好きなので、ストリングスチームでピアノを囲んで~みたいなコンサートをやりたいです。
――それでは最後に伊藤さんからファンの皆様へ向けて一言頂けますか?
伊藤氏:自分も今年で45歳になります。スクウェアに入社した時は1990年で21歳だったので、本当にあっという間でした。それから20数年経ってもこうしてライブにたくさん来て頂けて、20年近く前の「ロマサガ」の曲が好きだと今も言ってくれる人もいてくれて。とても嬉しく思います。今後もそういう期待に応えていきたいと思います。
――ありがとうございました。
公演データ&セットリスト
公演データ
「One Night ReBirth」
主催:gentle echo / Harmonics Music
協賛:スクウェア・エニックス
日時:2013年2月24日 16:30開演
会場:日本橋三井ホール
出演者
伊藤賢治(キーボード)
土屋玲子(バイオリン)
寺前甲(ギター)
上倉紀行(ギター&キーボード)
榎本敦(ベース)
山内優(ドラムス)
和田貴史(マニピュレーター)
スペシュルゲスト
岸川恭子(ボイスパフォーマー)
セットリスト
M01. バトル1メドレー (Romancing Sa・Ga 1.2.3 Romancing Sa・Ga -Minstrel Song-) 「Re:BirthII」
M02. 四魔貴族バトルメドレー (Romancing Sa・Ga 3) 「Re:BirthII」
M03. 玄城バトル (Romancing Sa・Ga 3) 「Re:BirthII」
M04. 術戦車バトル (Romancing Sa・Ga 3) 「Re:BirthII」
M05. Believing My Justice (Romancing Sa・Ga -Minstrel Song-) 「Re:BirthII」
M06. マナの嬰児 (聖剣伝説DS CHILDREN of MANA) 「Re:Birth」
M07. Battle #5 (SaGa Frontier) 新規アレンジ
M08. ポドールイ (Romancing Sa・Ga 3) 新規アレンジ
M09. ALONE (SaGa Frontier) 新規アレンジ
M10. 戦闘2-勇気と誇りを胸に- (新約 聖剣伝説) 「Re:Birth」
M11. 七英雄バトル (Romancing Sa・Ga 2) 「Re:BirthII」より新規アレンジ
M12. ラストバトル (Romancing Sa・Ga 2) 「Re:BirthII」
M13. ラストバトル (Romancing Sa・Ga 3) 「Re:BirthII」
M14. 決戦! サルーイン (Romancing Sa・Ga -Minstrel Song-) 「Re:BirthII」
EC1. バトル2 (Romancing Sa・Ga 3) 「Re:BirthII」
EC2. 邪聖の旋律 (Romancing Sa・Ga -Minstrel Song-) 新規アレンジ
EC3. 愚者の舞 (聖剣伝説4) 「Re:Birth」
EC4. 熱情の律動 (Romancing Sa・Ga -Minstrel Song-) 新規アレンジ
【お詫びと訂正 2013年2月25日】 記事初出時、「ポドールイ」の収録作品を「ロマンシング サ・ガ」と記載しておりました。正しくは「ロマンシング サ・ガ 3」です。お詫びして訂正いたします。
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