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「ロードス島戦記 -伝説の継承者-」のクローズドβテストレポート
ファンタジー小説をベースとした、雰囲気たっぷりのソーシャルカードバトルRPG
(2012/12/5 14:13)
ゲームオンは、ブラウザゲーム用戦略的カードバトルRPG「ロードス島戦記 -伝説の継承者-」のクローズドβテストを11月22日より28日まで行なった。
本作はファンタジー小説「ロードス島戦記」が原作のカードバトルRPG。プレーヤーは、ロードス島を旅する冒険者となり、パーンやディードリットなど原作のキャラクターとも力を合わせ、様々な冒険を繰り広げていく。本稿ではクローズドβテストで見えてきたゲームの基本要素と、感触を述べていきたい。
日本にファンタジーブームをもたらした「ロードス島戦記」の世界で冒険
「ロードス島戦記」は元々は「コンプティーク」という雑誌に1985年に連載されていた、テーブルトークRPGのリプレイ企画から始まった。その後は水野良氏の小説シリーズとして発表され、様々なメディアミックスの展開を見せた。エルフやドワーフと共に、“剣と魔法”の世界を旅するファンタジーRPGの世界を、「ロードス島戦記」で初めて触れた、という人も多かったのではないだろうか。
一方本作を生み出したクリエーター集団グループSNEによって、「ロードス島戦記」と世界を同じくするテーブルトークRPG「ソードワールドRPG」なども生み出され、ゲームブックやテーブルトークRPG、さらにはコンピューターRPGまで広がっていくファンタジーブームの1つの大きな流れとなっていった。「ロードス島戦記 -伝説の継承者-」はそんなかつて「ロードス島戦記」に夢中になったファンの期待を受けている作品だ。
本作はブラウザゲームとなり、クライアントのダウンロードなしでプレイ可能な作品で、プレイした感触では“ソーシャルRPG”といった印象を持った。プレーヤーは自分の分身であるキャラクターを作り、他プレーヤーや時には原作キャラクターを仲間にし、「クエスト」を受けて3Dダンジョンに挑んでいく。
3Dダンジョンと言っても、危険な迷宮だけでなく、街を舞台とした「シティアドベンチャー」の要素もある。判定にダイスを使った「ボーナスゲーム」を搭載していることもあり、「テーブルトークRPGの雰囲気をソーシャルゲームで活かしたいんだな」という開発者の想いが伝わってきた。
キャラクターはまず出身国から選ぶ。そして「人間」、「エルフ」、「ハーフエルフ」、「ドワーフ」から種族を選び、キャラクターを作る。種族の違いは選択できる職業の違いのようだ。職業は最初は「ノービス」から始まるが、レベルを上げていくことで戦闘が得意な「ファイター」、宝箱が開けられたり罠が解除でき、トリッキーな技で戦闘能力を補う「スカウト」、魔法で戦う「ルーンマスター」、治療など回復魔法や支援魔法を得意とする「プリースト」へ転職できる。
ゲームのロビーとなる場所は「酒場」となり、ここでクエストを受け、仲間をパーティに入れたり、アイテムを購入するショップへとアクセスできる。プレーヤーには「AP」という値が設定されていて、クエストを受けると消費される。クエストでの戦闘やクリア報酬で経験値や資金を得てキャラクターを育てていく、というのが基本的なゲームの展開だ。
クエストには、「シナリオ」、「フリー」、「派遣クエスト」がある。シナリオは本作の最も魅力的な要素で、小説「ロードス島戦記」のストーリーが追体験できる。戦士のパーンがプリーストのエトと共にザクソン村でゴブリン退治を請け負う冒険の始まりから、仲間として加わり、そして彼等の壮大な冒険を一緒に体験していくことができるのだ。
「ロードス島戦記 -伝説の継承者-」は基本的なコンセプトは魅力的だが、クローズドβテストの時点で問題点も感じた。ひとつは、長めにできているチュートリアルにある。これはオンラインゲーム初心者のユーザーにもとことんわかりやすくという思いがあるからだろうが、今回に関してはゲームの基本的な流れがわからないまま、パーティやスキルの説明が入ってきたり、実際のプレイのリズムに合っていなかった。こちらは見直しが入ると言うことなので、期待したい。
インターフェイスも、持ち物画面などゲームで必要な項目がどこにあるか直感的にわかりにくい。ソーシャルゲームとして今後必要となるであろうボタンと、普段頻繁に使うボタンの大きさや配置はもう少し工夫が必要だ。特に持ち物ボタンはもっと目立たせることが必要だろう。クローズドβテストは改善点を洗い出す段階である。プレイしやすい形に改良が為されることを期待したい。
魅力を感じるカードバトルや成長要素。今後の磨き上げに期待
本作の中心となるクエストでは、プレーヤーは最大で6人のパーティを組み敵と戦う。パーティの仲間は他のプレーヤーや、シナリオクエストではパーンやスレイン、エトなどを仲間に加えることもできる。冒険では様々な職業のキャラクターが必要となる。罠の解除ではスカウトが、キャラクターの治療にはプリーストが、そして敵と戦うにはファイターとルーンマスターが心強い。自分の職業とバランスを考えて仲間を募り、パーティを組んでいく。
戦闘はカードバトル形式だ。パーティの内3人が戦闘に参加でき、行動できるのは1人だけとなる。戦闘では、「剣」、「スタッフ」、「盾」、「SP」の10枚のカードが配られ、キャラクターそれぞれが持っているスキルをこのカードを消費して発動させる。例えば敵を転ばせるファイターのスキル「体当たり」は剣とSPのカードを消費する。カードは1ターンに1枚補充されるため、複数使っているとすぐなくなってしまう。
またファイターは杖のカードを使うスキルがない。キャラクターを“ローテーション”させルーンマスターで杖カードを使うスキルを使ったり、ピンチの時はプリーストのヒーリングを使うと言った戦略性が求められる。長いダンジョンのクエストでは戦闘が続くので、メンバーを入れ替えながら進む。どの職業を何人起用して6人パーティを組むかも重要になる。
この他戦闘では「アイテムカード」や「EXカード」も使える。「EXカード」はバトル部分の大きなセールスポイントで、「パーティ全体の攻撃力を一定時間上げる」、「一定ターン数体力が回復する」など、戦闘時に使うと様々な効果をもたらす。
中には「パーン」や「ディードリット」などロードス島戦記の原作キャラクターカードもあり、コレクションも楽しい。EXカードは1度使用すると再使用までクールタイムがかかる。最初の頃はカードも少ないため、切り札として使用する感じだ。アイテムカードは1度使用するとなくなってしまうが、店で安価に買える「回復薬」など役立つカードがあるので、複数持って冒険に出たいところだ。
クエストをクリアすると報酬が手に入るほか、ボーナスミニゲームもあり、10面ダイスを振って当たった目の報酬を得ることができる。報酬はアイテムカードやEXカードで、APを消費することでレートをアップでき、「ハズレ」の確率も増える分、さらに良い物を狙うことが可能だ。また冒険中の宝箱でも様々なものが入手できる。
持っているカードで同じものがある場合は「合成」させることでさらに強力なものにパワーアップさせることができる。剣や鎧といった装備カードも強化させることが可能だ。合成には“確率”があり、失敗するとカードが消滅してしまう。EXカードやアイテムカードなども合成できるため、経験値を得てレベルアップしながら、様々なカードを強化し、より強い仲間を募ってクエストをこなす、という形になる。
しかし、現時点ではゲームの中心となるカードバトルが単調で時間がかかるものになっている。雑魚戦はオートバトルで素早く、ボス戦のみカードバトルにして戦略を持って強敵に挑むといったプレイをすることでバランスはある程度取れるが、戦闘はバランスと時間配分にもう少し工夫が欲しいところだ。
また絵柄は、パーンやディードリットがアニメ調なのに対し、スレインやギムがリアル調のタッチとなっている。タッチの違いも味になってくると思うが、個人的にはもう少し「凛々しい美しさ」を強調したディードリットを見てみたいとも感じた。
本作は、全体的に改良して欲しいところも見受けられた作品だ。正当派ファンタジーの雰囲気、装備を整え仲間を募り、クエストに挑戦していくというオーソドックスなゲームスタイル、そして「ロードス島戦記」の世界観と、本作のコンセプトはとても魅力的だ。しかし、現在はゲームとしての作りが甘いのではと筆者は感じた。
一方、コンテンツとしては、ユーザーの消費速度に対して、どこまで遊びごたえを出せるか、というところが課題になるだろう。ダンジョンやストーリーを凝ることで本格的なRPGになりそうだが、ブラウザゲームとしてカジュアルな方向も求められる。現時点でこの作品はカジュアルに行くのか、重厚な方向に行くのか見えないところがある。対戦やギルドでボスに立ち向かう「ギルドバトル」といった要素も提示されているが、こちらの比重がどうなっていくかも注目したい。
本作のクローズドテストには熱いファンが何人も参加していて、自分のキャラクターのコメント欄に、「ロードス島戦記」へ思い入れのあるコメントを書いている人や、チャットでファン同士の会話を楽しんでいたりしていた。本作には、強く期待しているプレーヤーがいる。その期待を真正面から受け止め、ぜひ遊びやすく改良し、魅力的なゲームへと成長して欲しい。
筆者は、特に本作のクエストが好きだ。本作のクエストからダンジョン探索への流れ、他の冒険者を誘い、傷つきながらもクリアを目指す少しきつめに感じるバランスは、テーブルトークRPGの感触を思い出させてくれる。単純なダンジョン攻略だけではなく、街を舞台としたシティアドベンチャーがあったり、館の中の探索もある。さらに実際の“メモ”が必要なお使いクエストまであるのだ。コンピューターRPGが大きな変化を遂げた今に、先祖返りのようなどこか古風なクエストを実装し、勝負しようという心意気は、応援したい。今回は少し厳しめに書いてしまったが、筆者は本作に大きく期待している。
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