ガンホー、「ラグナロクオンライン 大規模バランスアップデート」インタビュー

3次職のスキルをより自由度が高く調整、ほぼ全てのマップをプレイしやすく


11月27日実装



 ガンホーはMMORPG「ラグナロクオンライン(「RO」)」において、11月27日に、「ラグナロクオンライン 大規模バランスアップデート ~育てる楽しさ、無限大!!~」を実施する。このアップデートでは以前からアナウンスされていた3次職のスキルの調整が行なわれる。今回の調整により、自由度の高い、特性を活かしたキャラクタービルドが可能になるという。

 さらに現在実装されているほとんどのマップで調整が行なわれ、職業やレベル帯に合わせたプレイスタイルを提案することで、よりスムーズなレベルアップが楽しめるようになる。高レベル向けの経験値稼ぎもしやすくなり、現在のプレーヤー事情にあったものに変わる。

 加えて100人が1度に参加できるコンテンツ「蜃気楼の塔」の情報や、スキル・ステータス情報なども明らかになった。ちなみに、「RO」では10周年を記念した様々な施策を企画しているが、いくつかは12月1日に予定しているト「ラグナロクオンライン10thアニバーサリー・フェスタ(仮)」で発表される。今回は、11月27日実装のアップデートにフォーカスした内容をお伝えする。

 スキルに関しては先日の「Ragnarok Online World Championship」により、日本国内のバランスのみならず、海外との違いも気になった。今回は、ガンホーオンライン本部第1パブリッシング部第1企画課主任の中村聡伸氏と、オンライン本部第1パブリッシング部第1企画課主任の山本兼寛氏に話を聞いた。





■ 1つの職業に様々なプレイスタイルを。こだわりが光るキャラクタービルド

ガンホーオンライン本部第1パブリッシング部第1企画課主任の中村聡伸氏
オンライン本部第1パブリッシング部第1企画課主任の山本兼寛氏

 今回行なわれる「ラグナロクオンライン 大規模バランスアップデート ~育てる楽しさ、無限大!!~」は、テストサーバー「SakrayJ」で調整が行なわれていた3次職用スキルがメインとなる。さらに合わせて「ラグナロクオンライン(RO)」での全てのマップでバランス調整が行なわれるという。

 特にスキルのテスト・調整は予定していた時期からはるかに遅れたものになった。スキルの調整と実装は昨年を予定していたが、実際は、テストを昨年一旦実施してから中断、今年の9月から10月にかけようやく再実施された。テストは3週間行なわれ、今回、11月27日にようやく実装となった。どうしてここまで遅れてしまったのかというところに関しては、「基幹であるダメージ計算が機能しなかった」、「テストサーバーでの接続トラブルの特定」といった点が大きかったという。

 予定より1年近く遅れた形で実装されるスキル調整は、3次職用スキルがメインとなるがそれ以外のスキルにも調整が入る。例えばチャンピオンの「阿修羅覇凰拳」はSPの回復がまったくできない時間が導入された。これはSP回復のアイテムや、スキルが増えたため、駆け引きとしてバランスを調整したという。他にもルーンナイトの「スパイラルピアース」の調整などが行なわれる。

 今回の3次職のスキル調整のテーマは「自由度の提示」だ。調整前は、「3次職のスキルはこれが有用で、これは使えない」というのがある程度はっきりしており、3次職のプレーヤーはある程度方向性が決められているバランスだった。今回の調整では、各職業に複数タイプの戦い方ができるようにしていったという。

 例えばホワイトスミスの3次職「メカニック」は「魔道ギア」というロボットに乗りこみ、強力な武器を使える。これまでは攻撃型の職業だったが、今回防御型のスキルが強化された。攻城戦では妨害用としても有効な、「ステルスフィールド」というスキルはクールタイムが減少し連続で使えるようになった。「インフラレッドスキャン」という隠れた敵を探し出すスキルも連続で使えるようになり、こちらでも攻城戦で活躍できる。攻城戦の防衛キャラクターとして強力になったという。

 さらに、魔道ギアではなく、使用武器である斧にこだわったプレイスタイルも可能になった。「パワースイング」が連続で使用できるようになり、「アックスブーメラン」といったスキルもある。「マジックデコイ」というスキルは、自動攻撃する砲台を作れるスキルでこの攻撃力も大きく増した。

 また、チャンピオンの3次職「修羅」は強化スキルの「点穴」シリーズが、自己強化に特化した仕様に変更された。他人に使用できなくなるが、詠唱時間とクールタイムがなくなり、瞬時に切り替えて戦える。とくに攻撃をしたり、ダメージを受けた時にコンボで消費する“気弾”を発生させる「点穴-球-」の発生確率が大幅に上がり、気弾を再チャージしなくても連射できるようになった。さらに、気弾は「吸気」で吸収してSPを回復できるため、使用時に反撃を受けやすい近接攻撃スキル「天羅地網」をメインに戦うタイプの場合、気弾が貯まりやすく、SPもすぐに補充できる。

 同じ“スキル取り”をしてもステータスで威力が異なる場合もある。ルーンナイトの「ドラゴンブレス」はHPが大きいほど強くなるが、そこにこだわると詠唱スピードが実用レベルに達しなかったりする。キャラクターを自分の目指す戦い方にどう練り上げていくか、今回の調整でより奥深いキャラクタービルドが可能になる。

 「壁役にこだわるならこのスキルで、こういうステータス」、「攻城戦でこういう構成にすれば“輝ける”かも?」といったように、自分が求めるプレイスタイルにこだわり抜くことが可能となる。「俺はやっぱり修羅がいい」、「この戦いができるからこそルーンナイトだ」といったように、改めて自分のキャラクターの特性を再確認できる、ロールプレイにこだわれるのが今回の調整だという。

 ガンホーでは、こだわりのキャラクタービルドを多くのユーザーにしてもらうため、各職業での選択肢を公式ページでも紹介し、そこから自分なりのプレイスタイルが追求できるようにしていくという。様々なプレイスタイルを紹介し、ユーザーに選ぶ楽しみを提示していきたいとのことだ。

【メカニック】
敵も仲間も隠す「ステルスフィールド」と、隠れた敵を探し出す「インフラレッドスキャン」という
属性のついた弾を発射できるようになった「アームズキャノン」と、範囲が拡大された「フレイムスローワー」
連続で使用できるようになった「パワースイング」と、「アックスブーメラン」

【修羅】
反撃を受けやすい近接攻撃スキル「天羅地網」をメインに、攻撃を受けながらも大技が連発できる、ハイリスク、ハイリターンな戦い方が可能に。




■ 各国で大きく異なるプレイスタイル。日本のユーザーの求める自由度の高さを実現

RWC2012は、日本チームが優勝を果たした

 この取材の前、「Ragnarok World Championship(RWC)」のパブリックビューイベントの取材で驚かされたことがある。ルーンナイトの「ドラゴンブレス」や、ソーサラーの「精霊」など、RWCでの主力となっていたスキルが、日本ではかなり弱い設定になっていたり未実装だというのだ。3次職実装時、日本の「RO」は独自のバランスを打ち出すと大きくアピールしていた。結果として、“世界標準”から大きくかけ離れたものになってしまったのだろうか。

 中村氏は「RWCは常に独特のバランス調整になっており、世界標準のルールというわけではない」と答えた。RWCは独自のバランスとなっているし、日本でのRagnarok Online Japan Championship(RJC)でも使用アイテムの制限などで普段「RO」プレーヤーが戦っている“攻城戦”とは全く異なる。これらの競技は7対7という極めて限定された戦いを、どう楽しむかに特化したルール作りをしている。そしてRWCでは世界各国が共通のルール上で戦うため、日本はもちろん、世界各国のバランスとも異なるものになっているという。

 世界標準と言う意味のスキルバランスならば、今回の調整で大きく近付いたと中村氏は語る。しかし、いわゆる「各国が求める戦い方」とは大きく異なったものになっているという。実は、それぞれの国でバランスは大きく異なっているというのだ。例として山本氏はウォーロックが使う「コメット」を上げた。隕石を落とす強力な攻撃スキルだが、韓国では「コメットの書」というアイテムを使うことでコメットが無詠唱で連射できるようになっている。しかし日本ではコメットの書は実装は見送られた。

 これは韓国と日本の攻城戦でのプレイ環境の違いによるためだと山本氏は説明した。韓国では攻城戦の参加人数も少ないこともあり、かなりアグレッシブに動き回る。このため詠唱時間の長いコメットは当たりにくい。一方で日本はお互いがしっかり陣地を構築しての攻防になるため、コメットは非常に強力だ。このコメットが連射できたらバランスは大きく崩れてしまう。このためコメットの書は日本では実装しないとのことだ。

 国の違い、特に韓国と日本の違いは、日本の運営チームと、韓国の開発チームがお互いの国の攻城戦を見学して、様々な感想を得たという。韓国は“個人技”の国で、とにかく自分の職業が最も輝く戦い方をして、全体の勝ち負けにこだわらない。プリーストが回復力を見せつけるために敵すら回復させるほどだ。反対に、韓国開発者は日本の「全体で協力して勝ちに行く」という姿勢に衝撃を受けたという。

 韓国では個人の強さを求めるため、ダメージ力をあげるアイテムの要望が大きい。この他にも、国によっては、回復アイテムの値段が極端に安かったりするところもある。対戦を盛んにするための極端なバランス調整を行なっている国もある。日本以外の各国は基本プレイ無料・アイテム課金制で、カードのレンタル販売なども行なっている。プレーヤー数、戦い方、運営のアプローチ、何より“プレーヤーの求めるもの”が大きく異なるため、各国で大きくゲームバランスが異なるという。

 こうした状況を受けて、日本ならではのバランスを探るために行なわれたテストだったが、「SakrayJ」では、かなり極端なテストも行なわれ、ユーザーから時には「何を考えてるんだ!」と言われたこともあったという。

 前述のコメットの書も短期間実装され、プレーヤーからは「入れればウォーロックが強くなりすぎるのはわかりきっているのに、何故入れたのか!」といった声が上がった。その他のスキルも強くしすぎたり、弱くさせすぎたりと、あえてわざと設定を変えた。「プレーヤーさんはテストを“微調整”と考えていたところもあったのかもしれませんが、あえて極端にし、皆さんの反応をいただかないと調整を進めていけない部分がありました。“このバランスではダメです”という意見がきちんと必要だったんです」と中村氏は語った。

 ちなみに、「精霊」と「ホムンクルスS」という2つのスキルは、今回実装を見送られることになった。こちらは新しいシステムでまだ調整が必要であり、実装にはまだ時間がかるとのことだ。





■ よりプレイしやすいマップへ、期待高まる蜃気楼の塔

調整が加えられたマップの一例。「グラストヘイム 地下水路01」。今までなかなかお目にかかれなかった「ウィンドゴースト」がメインのマップに変更された
「修道院 03」。かつては「ネクロマンサー」など死者が徘徊するマップだったが、元からいたMVPモンスター「ヴェルゼブブ」の影響か、外見ハエの形をした「ヘルフライ」などの棲み処に
「時計塔地上 4F」過去の配置変更で姿を消した「深淵の騎士」が復活。長年親しんできたプレイヤーには懐かしいモンスター配置かもしれない。

 マップの調整に関しては、既存の300以上あるマップほぼ全てに手が加えられる。マップは「レベルが高いプレーヤーに狩場を提供する」という目的に合わせ調整されるという。「RO」開始から10年、プレーヤー達のレベルアップのための経験値稼ぎの場所として、使われる場所と、使われない場所がはっきりしてしまっていた。

 今回、この使われなくなった場所を高レベル向けにするなど、モンスターの強さや数、バランスの調整を行なう。今後も高レベルに対応した地域は増えてくるものの、現時点で高レベルを目指すプレーヤー向けの調整を行なっていく。また同時に、低レベルの狩場にいた高レベルモンスターなどは削除するといった事も行なっている。

 「よりプレイしやすく、ユーザーの遊び方を想定してマップを調整しました」と山本氏は説明する。そして公式ページでは、マップのコンセプトを紹介したり、オススメの狩場の告知を行なって、よりスムーズなレベルアップの方法を提示していく。戦いたいモンスターを探したり、自分のキャラクターの職業を入力することで、オススメの戦い方などもわかるようになる。モンスターの中には戦い方が変わっているものもいて、3次職の特性を活かした駆け引きも楽しめるという。

 想定しているプレイスタイルは、2~3人の少人数での狩り向けが多い。もちろん、役割を決め、力を合わせて強力な敵を倒していくコンテンツも用意されている。しかし、大人数の場合はまずメンバーを集めるのにも時間がかかるし、そこから狩場までの時間がかかる場合もある。手軽に少人数、あるいはソロで1~2時間楽しめるというのが、今回意識したバランスだと山本氏は語った。

 現在の「RO」では高レベルキャラクターでも、レベルにあった狩場ならば、2~3時間ほど狩りをすれば1レベル上がるバランスとなっている。さらに効率を求めるコアプレーヤーはギルドや友人に声を掛け、ダンジョンなどさらなる高難易度地域に向かうのも良い。平日は少人数でのんびり、週末は仲間とがっつり、といったような、“遊び方”に合わせマップをデザインしたのが、今回のマップだという。「色んなところにいって、いつの間にかレベルが上がってる、というのが理想です」と中村氏は語った。

 また、アップデート前にもユーザーを色々な場所に行かせよう、冒険を楽しんでもらおう、という働きかけは行なっており、その1つが「討伐クエスト」というものだ。これはターゲットモンスターを選んで、それを規定数倒すと経験値ボーナスをもらえるというものだが、このイベントはアップデート後一旦は停止する。しかし、形を変えた形で色々な特典を用意して、再開する予定だ。さらに、週単位であるマップにモンスターが大発生する、といった、動きのあるイベントも実行していくという。今回のマップ調整と、これまでの運営経験により、より楽しんでもらえる新しいイベントを仕掛けていくとのことだ。

 さらに11月27日には「蜃気楼の塔」というコンテンツもオープンする。蜃気楼の塔はその場に集まった100人のプレーヤーで、どんどん上を目指していくというコンテンツで、今回の実装が2度目となる。ユーザーの人気のあるコンテンツで、倒されると塔の外に出されてしまう。どこまで生き残れるか、どこまで上れるかといった“挑戦”していくコンテンツだ。塔攻略用のキャラクターを作るコアプレーヤーもいるという。

 挑戦できるレベル帯はレベル1~60、61~89、90~120、121以上となっていて今回の目玉は3次職に対応していることだ。登場するモンスターはリニューアルされたものなので、これまでと戦い方が変わっていたり、厳しく感じられるバランスのフロアもある。実は、この塔は「モンスターの顔見せ」という意味合いも強く、この塔でモンスターで出会ってから、フィールドで探す、といった楽しみ方も可能だと山本氏は語った。

 今回の蜃気楼の塔はある大富豪が作った“レプリカ”という設定で、入場は各街から行ける「10thアニバーサリー」会場から向かうことができる。入場にはゲーム内通貨が必要となる。11月27日から3週間期間限定でオープンする予定だ。デスペナルティもないため、気軽に参加できる。報酬は新衣装やレアアイテムであり、レアアイテムはかなり高価な物になるという。

 この他、「経験値」数値の調整が行なわれる。必要経験値と、入手経験値がそれぞれ10分の1となる。これは10年の間で経験値の数値がインフレになってしまったので、今後を見越して切り上げを行なう。「実装直後に得られる経験値が少なくても、心配しないでください」と山本氏はコメントした。

 今回で、「RO」は大きな変化を迎える。多彩なプレイスタイルが提示され、プレーヤーの選択肢が大きく広がる。「どんなスキルを取っていこう」というユーザーの気持に答えるため、11月27日から「RO」の全てのキャラクターに、ステータス・スキルのリセットができるフラグを付与する。それからさらに12月18日にもういちどスキルリセットが可能になる。

 12月18日まで実際に試した上で情報交換し、そして最終的なキャラクタービルドを行って欲しい、というのが運営の考えだ。さらにこだわるユーザーに向け、課金アイテムも準備される。11月27日から12月11日まで何度でもリセットできるアイテムを2,000円で販売する予定だ。

 また、11月27日から6日間課金しなくてもログインできる「RAGホーダイ」を、21時から5時間開催する。この開催時間は蜃気楼の塔のイベント時間に合わせており、課金を止めているユーザーでも蜃気楼の塔に参加できるようになっている。さらにカムバックキャンペーンも行なう。ラグホーダイ期間中3日間ログインすれば、3日間のプレイチケットをもらえるという。

 中村氏は今回のバランス調整に関して、「老舗のお菓子屋などで“10年変わらぬ味”というキャッチフレーズがあったりしていますが、実際には時代で変化するお客の好みに合わせて工夫し、“変わらぬ味を演出している”ということです。『RO』の運営も同様で、ユーザーのプレイ時間や、プレイ人数などは変化している。それでいながら『やっぱりROってこうだよね』と思っていただける雰囲気が保っていける、そういった調整ができればいいなと思ってます」とコメントした。

 最後にユーザーへのメッセージとして山本氏は「気軽に周りの人に声をかけて、2~3人くらいで狩場に行ってみてください。色々な狩場が用意されていると思いますので、チャレンジしつつ楽しんでもらえればと思います」と述べた。

 中村氏は、「今回のアップデートで、自分や一緒に遊ぶ仲間の職業やスキルを見て、どのマップでどんな冒険ができるかを、ワクワクしながら考えられるようになったと思います。とにかくいろんなチャレンジをしてみて、気付いたら高レベル、そしてBaseLv150が達成できている。そんな生活が送れるようになったと思うので、ぜひ楽しんでください」と語った。


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(2012年 11月 22日)

[Reported by 勝田哲也]