【CEDEC 2012】「CEDEC AWARDS 2012」授賞式開催
ゲームデザイン部門最優秀作は「パズル&ドラゴンズ」が受賞
メインホールでは日本BGMフィルハーモニー管弦楽団がバンダイナムコゲームスの名作「ドルアーガの塔」より「ネームエントリー」、「スペシャルメドレー」、「オールクリア」などを演奏して式典を盛り上げた |
ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2012」の2日目には、恒例の「CEDEC AWARDS 2012」授賞式が行なわれた。「プログラミング・開発研究部門」、「ビジュアルアーツ部門」、「ゲームデザイン部門」、「サウンド部門」、「ネットワーク部門」の最優秀賞に「特別賞」、「著述賞」を加えた7部門の代表者がステージで記念の盾を受け取った。
「CEDEC AWARDS」は今年で5回目。ゲームタイトルそのものではなく、そこに用いられている技術を対象として、技術面から開発者の仕事を称えるための賞だ。「CEDEC 2011」において聴講者アンケートが上位だったセッション講演者で構成される「CEDEC AWARDSノミネーション委員会」が組織され、CEDEC運営委員会とともに競技してノミネーションリストを決定した。受賞者は「CEDEC 2012」の受講者による投票と、CEDEC運営委員会の投票で選ばれる。
今年のノミネート作品にはスマートフォンアプリやオンラインのサービスなどが目立っており、国産、海外産を合わせても家庭用タイトルの陰が薄いのが特徴。複数ノミネートされたコンシューマタイトルは「GRAVITY DAZE」とダウンロードコンテンツの「風の旅ビト」の2本だけ。最優秀賞受賞作も、日本のゲームシーンが大きく変化しているというのを実感せずにはいられないラインナップとなった。
「特別賞」を受賞した、エンターブレインの浜村弘一氏 |
「著述賞」を受賞した、オー・エル・エム・デジタル研究開発部門の曽良洋介氏、Marc Salvati氏、四倉達夫氏 |
最初に「特別賞」と「著述賞」の表彰式が行なわれた。特別賞を受賞したのは、株式会社エンターブレインの代表取締役社長、浜村弘一氏。「週刊ファミ通」の編集長時代から現在まで、メディアの立場から様々な形で業界に意見・提案を発信して産業形成に貢献したことが評価された。
浜村氏は、「僕がメディアを通じて発信してきたことが開発の現場に刺激を与えたり若手の育成に役立ったからと聞いてすごく嬉しく思った。僕がメディアを通じて訴えていきたいことは2つだけです。1つは、ゲームはとても面白くて他のエンターテイメントに全然負けない、人生を豊かにするものだということ。もう1つはゲームを作るという仕事はすばらしいもので、産業としての未来は明るいということ。これは僕だけではなく、ゲームのメディアがずっと言い続けてきたことであり、これからもずっと言い続けないといけないものだと思います。だから僕個人が受賞されたというよりも、ゲームメディアが評価されたということで、ゲームメディアの代表としてお礼を言いたいと思います」と語った。
「著述賞」には株式会社オー・エル・エム・デジタル研究開発部門の曽良洋介氏、Marc Salvati氏、四倉達夫氏が選ばれた。著書の「テクニカルアーティストスタートキット 映像制作に役立つCG理論と物理・数学の基礎」は、CG技術の基礎と関連する数学物理を豊富な図解で初歩から丁寧に解説している。もともとは社内教育用のテキストだったもので、CG製作を目指すアマチュアから基礎を復習したい開発者まで幅広く愛読されている。「本を書くきっかけになったのは2009年の社内講座です。技術を通じて絵の表現技法を高めていくことを目標にやってきました。この3人にR&Dのメンバーも含めてディスカッションして、まずは基礎になるものを目指しました。難しいものも簡単なものもありますが、アーティストの方にこのプラスアルファの技術を使って、より良い映像を作っていただけたらと思っています。」と四倉氏は受賞のコメントを語った。
「プログラミング・開発研究部門」最優秀賞を受賞した日本マイクロソフトの井上氏 |
・「プログラミング・開発研究部門」最優秀賞
「Kinect for Windows/Xbox 360 Kinect」開発チーム(マイクロソフト)
受賞理由:
ナチュラルインターフェイスの先駆けとも言える技術は、数々の新しいゲームデザインを生み出す原動力になっている。人体の姿勢をリアルタイムに認識する先鋭的なソフトウェア技術をはじめ、音声認識も含めて総合的に優れた製品を実用化した開発力は高く評価できる。学術会議等での技術詳細の公開や、Kinect for Windowsにおいて誰もが手軽に利用できるSDKを提供するなどを通じて、広い分野の開発者や研究者にも大きなインパクトを与えている。そして何より、新しいインターフェイスを世に広めた功績を高く評価。
受賞コメント:
「KinectはXbox 360とWindows向けに展開している新しいユーザーエクスペリエンスを提供するナチュラルインターフェイスの端末です。このような賞をいただけるのは一重にパートナー企業様のご支援や開発者さんからの厚いご支持があったからだと思います。Kinectはまだまだ産声を上げたばかりだと思っています。ナチュラルインターフェイスの可能性はここにいる開発者方々の頭の中にまだまだたくさん眠っていると思います。Microsoftとしては、エンターテイメントを中心としたXbox 360、そしてエンターテイメントを含む広いプラットフォームとして提供していくWindowsで皆様のアイデアがより多くの暮らしの豊かさにつながるよう支援を続けていきたいと思います」(日本マイクロソフト 井上氏)。
「ビジュアルアーツ部門」最優秀賞を受賞した「Journey(風の旅ビト)」はビデオメッセージで受賞のコメントを流した |
「ビジュアルアーツ部門」最優秀賞
「Journey(風の旅ビト)」開発チーム(thatgamecompany)
受賞理由:
説明過多なゲームが多い中、UIという情報さえ削り取ることにより、ユーザーに想像させる余地を持たせている。独特な世界観とユーザーをコントロールする絶妙なレベルデザインから起こる没入感でゲームの新しい可能性を示している。
受賞コメント:
「日本のゲームに関わる開発の方に選んでいただき、とても光栄に思っていますし、すごく興奮しています。僕たちは日本のゲームをしながら育ったので、『風の旅ビト』を制作する時にも多大なインスピレーションをもらいました。本日はこのような賞をいただき、ありがとうございます」(Thatgamecompany ジェノバ・チェン氏)。
「ゲームデザイン部門」最優秀賞を受賞した「パズル&ドラゴンズ」の山本大介氏 |
「ゲームデザイン部門」最優秀賞
「パズル&ドラゴンズ」開発チーム(ガンホー・オンライン・エンターテイメント)
受賞理由:
ユーザーに馴染みのある複数のゲームシステムをバランスよく統合し、プレーヤースキルの向上に合わせたレベルデザインと、手順をも評価する演出によって継続意欲を喚起。さらにゲームの進行に対する期待感を、マネタイズにスムーズに結びつけた、総合的な完成度の高さを評価。
受賞コメント:
「パズドラは最高のチームとユーザの皆さんと嫁と、いいメンバーに恵まれてここまで来られたと思っています。この喜びを噛みしめたいと思うのですが、僕は開発人生が長いので、調子にのらないよう明日以降はすぱっと忘れて、また人生をかけてゲームを作っていきたいと思います」(山本大介氏)。
「サウンド部門」最優秀賞を受賞した「THE IDOLM@STER」楽曲制作チーム |
「サウンド部門」最優秀賞
「THE IDOLM@STER」シリーズ楽曲制作チーム(バンダイナムコスタジオ)
受賞理由:
バンダイナムコスタジオ・サウンドチームによる軽快なJ-POPソングは、ゲームサウンドの枠を超えてTV、アニメのオープニングやエンディングを飾り、横浜アリーナ 2Days ライブの実現や、キャラクターシングルCDがオリコンWeeklyチャートTOP10に5作同時ランクインを果たすなどの快挙。
受賞コメント:
「アイドルマスターが稼働してから7年経っていて、開発を含めると10年が経っていて、その間に多くの作家に個性的な楽曲を作ってもらいました。個性的とは言ってもアイドルを魅力的に見せるという所は外さないようにして、それを続けてきた結果ゲームからアニメまで進出することができました。多くの方の努力でここまで来たコンテンツだと思っています。これからも個性的な楽曲を作り続けてみんなの斜め上をいくような面白いものを開拓していけたらと思います」(中川浩二氏)。
「これからもゲームを中心にいろいろなメディアに音楽を発信していけたらと思っています」(内田哲也氏)。
「これからもゲームサウンドでいろいろと楽しいことができるといいと思っています」(石原章弘氏)。
「ネットワーク部門」最優秀賞を受賞したユビキタスエンターテインメントの清水亮氏、伏見遼平氏、高橋諒氏 |
「ネットワーク部門」最優秀賞
「enchant.js」開発チーム(ユビキタスエンターテインメント)
受賞理由:
オープンで手軽に扱えるJavaScriptベースのゲームエンジンとして登場し、多くの若いゲーム開発者を育成する土壌を形成した点を評価。
受賞のコメント:
「この賞はもっとがんばれという皆さんの後押しだと思ってもっとがんばっていきたいです。ゲームを遊ぶ楽しみだけではなく作る楽しみを広げるためにがんばっていきます」(伏見遼平氏)。
「enchant.jsはまだリリースされてから1年ちょっとという若いエンジンなのですが、こんなにも早く光栄な賞をいただけてとても嬉しいです。オープンソースですが、今は主に弊社のプログラマーがコードを書いていてまだまだ外部の方の意見やフィードバックが少ない状態なので、そういったものをいただきながらさらに発展させていけたらと思っています。ありがとうございます」(高橋諒氏)。
(2012年 8月 21日)