Game Developers Conference 2012レポート

【GDC 2012】若手の開発者が集う「GDC Play」が開催
スイスのゲーム開発者らが登場のカンファレンスも紹介


3月6日(現地時間)

会場:San Francisco Moscone Center


 


 「GDC 2012」の期間2日目にあたる3月6日には、独立系デベロッパーの開発中タイトルを実際に体験できる「GDC Play」が開催された。

 「GDC Play」は、若手の開発者たちが一堂に会し、チームの作品を展示し来場者にプレゼンテーションをするという主旨のもの。「GDC」では若手の開発者を支援する動きが以前から活発だが、その集大成となるイベントとなる本稿ではその様子と、3つの作品をピックアップして紹介する。

 また同日には、サンフランシスコ市内にあるswissnex San Francisco主催で、スイスのゲーム開発者を集めたプレス向けのカンファレンスが開催された。日本ではなかなか知る機会のない世界のゲーム開発の動向として、この2つを合わせてご紹介しておきたい。




■ 「GDC Play」から3つの作品をピックアップして紹介

「GDC Play」会場は1ホールを使っての展示がなされていた。さすが「GDC」だけあって、来場者も積極的に開発者に話しかけ、情報交換や名刺交換をする姿が多く見られた

 「GDC Play」は、「GDC2012」が開かれているMoscone Centerの1ホールをまるごと使っての展示となった。「GDC Play」の開催は6日から8日までとなっており、3日間にわたって開発者と直接コミュニケーションを取りながら若手開発者によるゲーム作品を体験できる。

 展示されていたゲームには、タブレットを使った作品から、PC、Wii、中にはファミリーコンピューターを使ったものや、ゲームと電動の椅子を連動させてアトラクション空間を作り出しているものまであった。そのジャンルもFPS、タワーディフェンス、パズル、2Dアクションと多岐にわたっており、バラエティに富んだ作品が体験できた。ここでは、その1部の作品を紹介する。


「GDC Play」の会場では、「3Dゲームの歴史」と題した展示もあった。ここでは、懐かしい筐体の懐かしいソフトが実際に動かされて展示されており、プレイしながら3Dゲームの発展を振り返れた

【ベルギーSampleSumo/「Cows `n' order」】

 ベルギーのSampleSumoからは、「Cows `n' order」という作品が展示されていた。「Cows `n' order」は、「斧を使う」、「力持ち」などそれぞれに特性を持った4人カウボーイを操って進む2Dスクロールのアクションゲーム。フィールドの状況に合わせたカウボーイを先頭に呼び出すことで、ゲームは進行する。例えば、サボテンが行く手を阻んでいたら「斧を持ったカウボーイ」を呼べばサボテンを切り落として先へ進めるといった具合だ。

 このゲームが変わっているのは、このカウボーイの操作は全て「音」を使って行なわれる点にある。会場では、太鼓、メガネケース、木、そしてグラスが用意されており、これらを叩いて出る4つの音色はそれぞれのカウボーイに関連付けられていた。先ほど例に挙げた「斧を持ったカウボーイ」を呼びたい時は、彼に関連付けられたメガネケースの音をコンコンと叩いて出せばいいことになる。もともと音楽技術開発の企業であるSampleSumoがデモとして開発した、実験的な作品だ。


登録した4つの音色を使って進めるサウンドアクション。SampleSumoはもともとサウンド技術開発の企業。この作品は、その技術を使ったデモゲームとして開発されたもの。WindowsとMac用に作られたものだが、将来的にはiOS版も作りたいとスタッフは話していた

【米Pantera Entertainment/「Roller Coaster Rampage」】

 米Pantera Entertainmentが展示していたのは、「Roller Coaster Rampage」。「Roller Coaster Rampage」は、遊園地のローラーコースターをテーマとした作品で、ドロップするローラーコースターをぐりぐり動かしながら、リアルタイムかつ自由に線路を作り出すという3Dゲーム。その場のインスピレーションでオリジナルのローラーコースターを組み上げた後は、それを実際に体感できるという要素も持ち合わせている。

 このゲームは眼鏡をかけての立体視表示に対応しているほか、後半のコースター体験時には車体の動きに合わせて椅子を動かせる。Pantera Entertainmentはブースを構えての出展だったため、プロジェクターの大きな画面で立体視ができ、後半の体験モードではさらに動く椅子も組み合わさって、本物さながらのアトラクションが体験できた。ローラーコースターが苦手、という方にはあまりお勧めできないが、もしローラーコースター好きなら、自分が体験したいコースターができるまで作っては体験し、作っては体験しを繰り返してしまうだろう作品だ。


Pantera Entertainmentの方いわく、ローラーコースターのリアルタイムシミュレーター。醍醐味は後半の体験モードだが、体験できるのは自分が作り出したオリジナルという所がミソ。立体視と椅子の同期にまで対応しているので、ローラーコースター好きは飽くなき探究心を発揮できそうな仕上がりだ

【チェコKeen Software House/「Miner Wars 2081」】

 チェコKeen Software Houseが展示していたのは、「Miner Wars 2081」。「Miner Wars 2081」はスペースシップに乗り込んで宇宙を探索する1人プレイ用の3Dシューティングゲーム。広い宇宙の中与えられるミッションをこなすのがメインのストーリーとなるが、自分のセクターを自由に設計できたり、宇宙に浮かぶ巨大な隕石を掘り進んで自分だけの洞窟も作り出せる。

 グラフィクスはメジャー作品にも負けないほどの美しさで描かれており、無機質で美しい宇宙空間を自由に探索できる。隕石を掘る過程には、爆弾を投下して穴を開ける、伸縮式のドリルを伸ばして穴を開ける、そしてドリルを回しながら体当たりをする、などのアクションで掘り進んでいく。これらの「掘る」アクションが充実している所にも特徴がある。ミッションをこなすのもいいし、宇宙を漂いながらお気に入りの住処を作り続けるのも楽しそうだ。

 「Miner Wars 2081」のプラットフォームはWindowsで、現在はプレリリース価格のものが公式サイトから19.99ドルで購入できる(「Xbox LIVE アーケード」から購入できるXbox 360版も発売予定)。なおMMOとなる「Miner Wars MMO」も発売予定で、こちらも同サイトから事前購入が19.99ドルでできる。


「Minecraft」の精神を宇宙空間に当てはめた、宇宙探索心をくすぐる3Dシューティング。他のメジャータイトルにも負けないほどの美しいグラフィックスも特徴的。シューティングとはいえ、「掘る」作業のバリエーションが色々と考えられている



■ 「Kraftscape」をはじめとしたスイスゲームの「今」を紹介

ゲームの体験もできたswissnex San Franciscoのカンファレンス

 「GDC Play」の展示が始まった3月6日と時を同じくして、サンフランシスコ市内にあるswissnex San Franciscoでは、スイスのゲーム開発者らを集めたプレス向けのカンファレンスが開催された。swissnex San Franciscoは、スイスと北米を科学や教育、芸術などによって結びつけようという試みを行なっている施設。この施設は過去にも様々なイベントを催しているが、今回は「GDC2012」の開催に合わせてゲーム開発に焦点を当てたイベントとなった。

 会場にはゲームデザイナーのMario von Rickenbach氏とMichael Burgdorfer氏の開発した「Krautscape」が体験できたほか、会場に集まった代表者によるゲームのプレゼンテーションも行なわれた。ここでは、日本とはまた違った雰囲気を持つこれらスイス発のゲームを、実際に体験ができた「Krautscape」を中心に紹介する。

【Krautscape】


Michael Burgdorfer氏
Mario von Rickenbach氏

 「Krautscape」は、3D空間に設置された鮮やかなコースを走るレースゲーム。ゲームはオンラインで対戦が可能で、コースはゲームが始まる度に新たに生成されるという特徴を持つ。

 このレースゲームの肝は、車を鳥の姿に変形させて滑空できることにある。この変形を上手く利用すれば、コースとコースの間を一気にショートカットできる。通常のレースゲームではタブーだった「コースを外れること」が決してタブーではなく、むしろ自ら飛び出すことが「Krautscape」では奨励されている。空中を飛べるとは言っても滑空だけなので自由には飛べないが、空間には上昇気流のあるオブジェも設置されているので、これを利用すればある程度は自在にコースを行き来できる。

 登場するコースに決まったパターンはないので、その場の状況によって操作を対応させる必要があるが、滑空の使いどころや使い方に技術がいる分、車体を思い通りに操れた時の爽快感は大きい。操作はアクセル、ブレーキ、変形などと単純ながら、アクションの幅の広さに可能性を感じさせる作品だった。なおリリースは夏で、各種オンラインプラットフォームでの配信を予定している。



空を飛んでコースを外れることを推奨する一風変わったレースゲーム。操作はシンプルだがアクションの技術が試される奥深い内容となっている
会場ではRickenbach氏が制作したゲーム「Mirage」も展示されていた。謎の物体から別れた枝葉の先には、口や足、手などを生やせる。ただそれをふよふよと画面内を漂わせるという、ゴールのないアーティスティックなゲーム

【Shadow Government】

 「Shadow Government」は、政府をテーマにしたソーシャルシミュレーションゲーム。使用されるデータは実際の政府のデータベースを基にしており、プレーヤーはよりリアルな政治判断を迫られることになるという。

 Philippe Trawnika氏、Nicholas Fortugno氏、Margaret Wallace氏が共同で設立したShadow Government LTDより2012年春に配信予定となっている。なおShadow Government LTDのオフィスは、ニューヨークとチューリッヒの2つの都市に設立されている。


Philippe Trawnika氏Nicholas Fortugno氏Margaret Wallace氏
本物の政府のデータベースを使うことで、よりリアルな政治シミュレーションが楽しめるという「Shadow Government」。2012年春にリリース予定

【Moonga】


EverdreamSoftCEOのShaban Shaame氏

 「Moonga」は、iOSを使って遊ぶトレーディングカードゲーム。開発者でありEverdreamSoftCEOのShaban Shaame氏によれば「マジック:ザ・ギャザリング」の影響を受けているそうで、それはカードのイラストからも感じられる。

 本作のダウンロードは無料で、1ドルを支払えばランダムに4枚のカードがもらえるというビジネスモデルを採用。本作は全世界で15万ダウンロードを記録しており、日本でも2010年夏にApp StoreのRPGカテゴリで1位を獲得した実績も持っている。また2月1日には新バージョンの「Moonga」がリリースされている。


iOS向けのトレーディングカードゲーム。Shaame氏は2011年の東京ゲームショウにも参加したそうで、そこでは実際に作ったカードのバーコードを読み込ませると、ゲーム内にそれが反映されるという試みを行なった

【Gbanga】


GbangaCEOのMatthias Sale氏

 「Gbanga」は、サービス開始から5年が経過しているiOSのGPS機能を使った位置情報登録ゲーム。実際に移動して位置登録をすることで、ゲームとリアルの場所が連動しながら、ゲーム内に街を作り上げたり、クエストを達成できる。

 これまでにもバージョンアップを繰り返してきたが、2012年にさらなる新しいバージョンアップをする予定。


全世界で楽しめるスイス発の位置情報登録ゲーム。年数を重ねるごとにバージョンアップをしており、2012年にも新たなバージョンが出る予定


(2012年 3月 8日)

[Reported by 安田俊亮]