KONAMI、今年の大作開発者へのインタビューセッションを開催

「PRO EVOLUTION SOCCER 2012」、「METALGEAR SOLID 3D SNAKE EATER」などプロデューサーが語る


6月7日~9日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center


 KONAMIはロサンゼルス市内のBelasco劇場にて、「Pro Evolution SOCCER 2012」「METALGEAR SOLID 3D-SNAKE EATER」「NEVER DEAD」「SILENT HILL」の4作品のクリエイターが登壇するインタビューセッションが開催されたので、その模様をレポートしよう。




■ 「PRO EVOLUTION SOCCER 2012」


榎本 真司氏(ウイニングイレブン・プロダクション、エグゼクティブプロデューサー)

【Q】:「PRO EVOLUTION SOCCER」(PES)シリーズと他のサッカーゲームとの違いについて。

榎本:自分達は15年以上に渡ってサッカーゲームを開発してきたが、その時の流れの中で、サッカー自身も変化し、サッカーゲームも変化した。中でも我々のPESシリーズは3つの点において、こだわりを持って開発を行なってきている。

 1つ目は、「攻めと守りの駆け引き」についてこだわっているという点だ。

 2つ目は、これまでのサッカーゲームは選手とボールが処理上はくっついていたのに対し、PESシリーズは初めてこれを切り離した処理系を採用した。PESシリーズはこのシステムにこだわりを持っている。

 3つ目は、こだわりというよりは究極の目標になるが、サッカーの本場と言われる欧州や南米の様々なサッカー大会やサッカー競技会で巻き起こる事象を全て再現することだ。それはプレイのみならず、スタジアム内で起きる様々なドラマや事件のようなことまでの再現にまで及ぶ。

【Q】「PES2012」における進化ポイントはどこにあるか?

榎本:進化ポイントはいくつもあるが代表的なものを挙げるとすれば、1つはAI周りについてだ。攻撃AI、守備AIの双方が進化している。結果として、ボールを持たない、オフ・ザ・ボール選手のコントロールを可能にしている。具体的にはフィールドを斜めに走ったりするようなダミーラン的なフェイント動作だ。

 ビジュアル面で言えば、世界の著名選手の感情表現がさらにリアルに、さらに豊かになっている。

【Q】著名なサッカーゲームにはEAのFIFAシリーズがある。この存在は「PES」シリーズにはどんな影響を与えているか?

榎本:「PES」シリーズは毎作、完成するたびに、その完成度に自分達は納得のいくものになったと満足するが、FIFAシリーズを見ることで、さらに次回作へのやる気が奮い立つ。FIFAシリーズとは、お互いを高め合えるよきライバル関係にあると思っている。

【Q】モバイル版のPESシリーズの「基本プレイ無料」化は考えているか?

榎本:世界でも、日本でもそうした要望が寄せられているため、検討中だ。時期について、今お知らせすることはできない。

【Q】「PES」シリーズは、今後、世界のサッカーリーグや、世界のサッカー大会のライセンスの取得を増やしていくのか?

榎本:主要大会の全てのライセンス取得というものは考えたことがない。サッカー大会やリーグ、チームのライセンス取得にはそのスポンサーとの契約上の絡み、あるいは特定の相手に排他的提供というプログラムもあるため、そもそも取りたくても必ずしも取れるわけではない。ただ、取りに行くことを試みたことはある。




■ 「METALGEAR SOLID 3D SNAKE EATER」


松花賢和氏(株式会社コナミデジタルエンタテインメント小島プロダクション、クリエイティブ・プロデューサー)

【Q】「METALGEAR SOLID 3D SNAKE EATER」(MGS3D)はすれ違い通信に対応するか?

松花:対応することは決定しています。ただし、どのようなフィーチャーになるかについては今お伝えできない。

【Q】メタルギアシリーズのHDコレクションの発売が決定し、「MGS2」、「3」、「PEACE WALKER」の各タイトルがプレイステーション 3やXbox 360に展開することが決定したが、ニンテンドー3DS用への展開は考えているか?

松花:他のメタルギアシリーズの3Dリメイクが3DSにあり得るかということならば「ありうる」といえる。是非とも、どのメタルギアシリーズが3DSに欲しい……といった意見は寄せて欲しい。メタルギアシリーズ以外……「グラディウス」や「Castlevania」をリクエストしてくれてもいい(笑)。

【Q】プレイステーション 2版との違いを教えてください

松花:3DSのカメラ機能を使って撮影した視野新をカムフラージュに利用できたり、バランスゲームのようなミニゲームモードを搭載したり……といった3DSならではの遊びの要素が盛り込まれている。

 グラフィックス的な面でいえば、PS2では苦しかった屋外の表現、ジャングルの表現が、3DSではだいぶ余裕を持って実現できた。また、法線マップやスペキュラ表現など、PS2ではできなかった表現も「MGS3D」には盛り込めたことで、CG表現のクオリティとしても高品位なものとなった。

 ちなみに、調整に調整を重ねたが、結果として容量的には、通常の3DS版カートリッジには収まらなくなり、ついに3DS向けタイトルとして初の4GBカートリッジの採択が決定された。これは1つのニュースとしてお伝えしたい。

【Q】3DSの立体視機能はメタルギアソリッドシリーズに対してどのようなイノベーションを与えたと考えるか

松花:メタルギアシリーズは2DプラットフォームのMSXパソコンからスタートしている。そこからポリゴンベースの3D CGになり、ついに3DSで立体視に対応した。メタルギアシリーズの目指してきた「かくれんぼ」要素、スニーキングアクションというゲーム性において、映像に奥行き感の存在は非常に相性が良いと感じている。

 今回、3DSへの第1弾作品として3DSが選択されたのは、もっともこの立体視表現が生きると感じたからだ。

 ジャングルに複雑に折り重なうようにして棲息する無数の植物達が、非常に高い臨場感をもって表現されることに感銘を受け、昨年のパイロット版の映像製作時点から、3DSにMGS3が最適であると確信していた。

【Q】過去と近年では、ゲーム開発のプロセスに変化はあったか

松花:これまで、小島プロでは、小島秀夫監督が原案を考え、テーマやコンセプトをチームに伝えていく形で開発が進んでいた。これは小島プロとしての作品の特色を出すための必要な制作スタイルではあったが、同時に多大な時間が掛かるという問題を孕んでいた。
 近年ではこれを改善するために、万能性の高いゲームエンジンを開発し、これをベースにして小島監督のアイディアを実現していくようなプロセスに変化してきている。




■ 「NEVER DEAD」


野尻真太氏(コナミデジタルエンタテイメント、プロデューサー)

【Q】徐々に明らかになってきている「NEVER DEAD」と言う作品について。今回開示できる情報は何があるのか?

野尻:この作品は、シリアスなストーリーを背景に抱えたまじめなゲームだと言うことを伝えておきたい(笑)。主題歌は、メガデスが担当することが決定して、チーム内の我々は興奮が冷めやまない状況だ。

【Q】「NEVER DEAD」ということは死なないという意味だが、どういうゲームデザインになっているのか?

野尻:主人公のブライスは細切れになっても死なない不死身の男だ。一方で随行するヒロインのアルカディアは、普通の人間なので敵に襲われれば死んでしまう。つまり、ゲームオーバーとなる。しかし、彼女も即死してしまうわけではないので、ブライスとなるプレーヤーは不死身のアドバンテージを活かしながら、彼女をサポートしつつゲームを進めていくことになる。

【Q】このタイトルはどのような経緯で発案されたのか?

野尻:死なない男が何世紀にわたって戦い続ける……という映画があるが、そうした「不死身」という普遍的なテーマは物語の語り口としては常に存在したものだ。この不死身という要素をゲームで取り扱うにあたり、体が分断される(分断されても死なない)という要素をゲームメカニクスに取り込むこととした。

 そして、取れたパーツを集めれば復活できるというシステムにまとまった。

【Q】ブライスとアルカディアの関係は?

野尻:ゲーム上はブライスにとってアルカディアは助ける対象であり、共に戦う友という位置づけだ。ストーリー上では、ブライスは500年間も不死身だったことで物の見方が常に皮肉に満ちあふれている。そして、アルカディアはそんなブライスのことをうざったいと思っている(笑)。

 シングルプレイでは、アルカディアはAIキャラクタとしてプレーヤーに随行するが、協力プレイでは人間がアルカディアを操作することもできる。ただし、いずれにおいてもアルカディアは不死身ではないので、死んでしまうという点でブライスには劣る。ただし、ブライスよりも火力が強い武器を持てる……などの優位点もあり、これがゲーム性に繋がっている。

【Q】開発は英Rebelionが担当したわけだが、発売は日本のコナミが担当する。この西の開発会社と東のパブリッシャという関係は開発に何か影響をもたらしたか?

野尻:基本的に、自分が、意志決定を明確に行なっていく開発スタイルをとった。開発側と議論を詰めていくというやり方はあえて取っていない。




■ 「Silent Hill:Downpours」


Devin Shatsky氏(Vatra Games,Producer)Brian Gomezy氏(Vatra Games,Design Director)

【Q】前作ともいえる「Silent Hill:Shattered Memories」からの反省点や継承点などはあるか?

Shatsky:その前に一言、「Silent Hill:Downpours」の主題歌をKORNが歌うことになったを報告したい。

 さて、「Shattered Memories」だが、あの作品は英Climax Studioが制作したもので、Wii向けの「Silent Hill」であると言うことのみならず、シリーズに革新をもたらした作品だった。あの作品で描かれた「戦うことができないジレンマと恐怖」というゲームテイストは評判が良かった一方で、旧来のファンからは「もっと戦闘を」「迫り来る敵と対峙したい」といった要望も寄せられた。今作はそうした意見を取り入れた作品だ。

【Q】今作は「水」がテーマだとのことだが、ゲームにどうか変わっているのか。

Gomezy:サブタイトルの「Downpour」は土砂降り(Heavy Rain)という意味だ。つまりテーマは「水」だ。

 「水」というのは古代から、そしてあらゆる地域で、共通のイメージが持たれている不思議で不変的なものだ。各地で様々な伝説があるのは知っての通り。大体において、水には善と悪、明と暗の二面性があることにみんなも気づいているはずだ。

 例えば、水の「光」側のイメージからいけば、例えば水は命を与えるし、浄化のイメージもある、神聖なものということができる。水の「影」の部分で言えば、水はその水面下に恐ろしいものを隠している雰囲気があるし、大量の水には破壊のイメージもある。

 今作の主人公のMurphy Pendletonと言う男は、“サイレントヒル”に放り出された囚人という設定なので、彼は犯罪人だから、善良な人間性以外に、邪悪な部分も持っているということをイメージさせる。

 この二面性こそが水と共通するものであり、今作のテーマということができる。

 今作は、主人公Murphyが水と遭遇するたびにドラマが展開する。

 彼は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を煩っており、水を触媒にして何かを見たり感じたりする特性がある。サイレントヒルで描かれる今回の物語は彼にとってのサイコセラピーといってもよいかも知れない。

【Q】今作はゲームとしてはどんなテイストになるのか?

Gomezy:もしも、ゲーム性をレーダーマップのような評価で表現するとしたら、2/3くらいが「ストーリードリブン」のところを指すことになると思う(笑)。とにかくストーリー、シナリオが素晴らしい作品になっている。ゲームの進行ペースとしてはサイレントヒルの初期作品に近いイメージと思ってもらいたい。

 主人公のMurphyも、忍者やスネークのようなスーパーヒーローではなく、どちらかと言えば我々に近いひ弱な雰囲気の男なので、没入感も得られるはずだ(笑)

【Q】世界的に有名な「サイレントヒル」シリーズを手がけることになった幸運についてどう思うか?

Gomezy:とても誇りに思う。我々はチェコのゲームスタジオだ。祖国を悪く言うつもりはないが(笑)、我々のチェコという国は暗い伝説に溢れている。例えば、吸血鬼、狼男、魔女、錬金術といった暗黒神話の数々の多くはチェコ地域を発祥としている。つまり、我々のスタッフはホラーを身近に感じて育ってきたバックグラウンドがある。そして、これはジャパニーズホラーではないし、もちろん欧米ホラーとも括れない、新しい独創的なホラーのテイストを産み出せるのでは無いかと思っている。

【Q】今でもベストな「サイレントヒル」は「2」と言われるがこのことに対するコメントは?

Shatsky:「サイレントヒル2」は「サイレントヒル」の続編ではないという意外性にまず驚かされたものだ。ストーリーも素晴らしかったし、キャラクターについてもピラミッド男など、シリーズを代表するキャラクタも登場したし、凄い作品だった。

 いずれにせよ、我々(チェコのVatra Games)はこのシリーズの制作に参加できたことを光栄に思う。過去のSHシリーズを超えることを考えるよりは、Downpoursが作品単体として高い評価が得られることを期待したい。

(2011年 6月 10日)

[Reported by トライゼット西川善司]