GDC 2011レポート
米EA、プライベートショウ「EA Partners Showcase」を開催
強力な大物タイトルを続々披露、モバイル/ソーシャル向けのパブリッシャープログラムも発表
米Electronic ArtsはGDC2日目の3月1日、Moscone Center周辺のイベント会場において第4四半期以降に発売される新作タイトルのプレス発表会を開催した。本稿では同社が“EA Partner”と呼んでいるサードパーティー製のタイトルを集めた発表会「EA Partners Showcase」の模様をお伝えしたい。
なお、GDC会場でも話題を集めているEA DICEの「Battlefield 3」のローンチイベント「『Battlefield 3』 Unveil Event」や、Chillingo、EA Mobile、Playfish、Pogoといったモバイル/カジュアル/ソーシャルゲーム系の発表については別稿にてお届けするのでお楽しみに。
「EA Partners Showcase」では、昨年の東京ゲームショウ2010の前夜に実施された「EA Showcase Tokyo」でアナウンスされたグラスホッパー・マニファクチュアの「Shadows of The Damned」やSpicy Horseの「Alice Madness Returns」、38 Studiosの大作ファンタジーアクションRPG「Kingdoms of Amalur: Reckoning」、そしていよいよ北米で3月22日、日本で3月24日に発売されるCrytekの次世代アクションシューティング「Crysis 2」などEAの強力なラインナップが実機で披露された。ただ、今回もまたタイトルごとに細かくエンバーゴが設定されており、残念ながら本稿ですべてのタイトルを紹介することはできない。「Crysis」を除く新作タイトルの最新情報は追って解禁をお待ちいただきたい。
本稿では、発表会の冒頭で告知された、Electronic Artsがモバイルゲームおよびソーシャルゲーム向けにスタートさせるパートナープログラムに関する発表を中心に取り上げる。
【EA Partners Showcase】 | ||
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Moscone Centerから歩いて5分ほどの場所で開催された。会場の奥に見えるのは12台で実施されたPS3版「Crysis 2」のマルチプレイゾーン |
■ ChillingoとPlayfishを軸に展開させるEAがモバイル/ソーシャル向けパブリッシングプログラムをスタート
ジョー&クリスと紹介されたChillingoの2人。短いトレーラーの後、新しいパートナーと出会えることを楽しみにしていると挨拶した |
登壇したPlayfish副社長のCJ Prober氏は、挨拶の冒頭で「『Pet Society』の『Crysis 2』のミニゲームが見せられなくて申し訳ない」とジョークを飛ばし笑いを誘った |
「EA Partners Showcase」の発表は大別して2つある。ひとつは上記のサードパーティー製の強力なタイトルラインナップの発表、そしてもうひとつがEAが近年力を注いでいるモバイル/ソーシャル向けの施策の発表である。
軸となるのが2009年と2010年にそれぞれEAの子会社に名を連ねた英Chillingoと英Playfishである。EAは2009年にソーシャルゲーム大手のPlayfish、2010年に「Angry Bird」のメガヒットで一躍名を挙げたモバイルゲームパブリッシャーのChillingoをそれぞれ買収し、それらの分野の強化する意思を鮮明にしている。
Chillingoは2002年に設立された、当時で言うカジュアルゲーム、現在で言うモバイルゲームを得意としたゲームパブリッシャー。物理流通を介さないデジタル流通のみで多数のゲームを展開し、iPhone向け、iPad向けにヒット作が多い。代表作は先述の「Angry Bird」に加えて、「Cut the Rope」、「Helsing's Fire」、「iBomber Defense」、「iDracula」など。
Playfishはソーシャルゲームの分野で米Zyngaに次ぐナンバー2のシェアを誇るソーシャルゲームパブリッシャー。代表作はFacebookアプリの「Pet Society」、「Restaurant City」など。2009年にEAに買収されてからはEAの子会社としてEAのIPを使ったソーシャルゲームも手がけ始めている。近作は「FIFA Superstars」、「Madden NFL Superstars」、「MONOPOLY Millionaires」など。
さて、今回の発表では、主に独立系のゲームデベロッパーに対して、ChillingoもしくはPlayfishとパブリッシャー契約を交わすことで、EAグループ独自のパートナープログラムが受けられることが明らかにされた。具体的な条件については触れられなかったが、現在のEA partnerと同等のサポートが受けられるとしており、独立系デベロッパーの大きな懸念事項である資金面で大きなバックアップが受けられそうだ。
ターゲットプラットフォームは、AppleのApp Store、GoogleのAndroid、そしてFacebookで、EAグループで独自のプラットフォームを構築するようなことはなく、そのままのスキームでそれぞれのシェアの拡大を目指す。ChillingoとPlayfishはこれまでもパブリッシャーとして同様の取り組みを水面下で行なっていたはずだが、親会社のEA自体が表明することで、パブリッシャーを探している優秀な独立系デベロッパーをいち早く囲い込みたい考えだ。
この試みがどのような形となるかは予断を許さないが、モバイルゲームやソーシャルゲームが一定のシェアを獲得する新しい時代においても、EAは世界のリーディングカンパニーの座を明け渡すつもりはないことは明らかだ。今回サードパーティーからも次々と強力なタイトルが発表された。2011年のEAにも要注目だ。
□Game Developers Conference(GDC)のホームページ(英語)
http://www.gdconf.com/
(2011年 3月 2日)