Taipei Game Show 2011レポート

日本の著名クリエイターが多数参戦したSCETブースレポート その2
「モンハンポータブル 3rd」の辻本氏と「MGS」の小島監督の登場で会場は大盛り上がり!


2月18日~22日開催

会場:台北世界貿易中心

入場料:150台湾ドル


 SCETブースでは期間中、様々な豪華ゲストが登場した。本稿では、2月18日に登壇したPSP「モンスターハンターポータブル 3rd」のプロデューサーを務めるカプコンの辻本良三氏と、PSP「メタルギア ソリッド ピースウォーカー」、及びPS3「キャッスルヴァニア ロード オブ シャドウ」を手かげたコナミの小島秀夫監督のイベントを取り上げたい。

 コラボレーションの秘話や、ゲーム制作の苦労話をきけるといったゲーム開発者との交流の機会は、日本のユーザーでもあまり持つことができない貴重なものだといえるだろう。今回のイベントでの開発者の言葉は、台湾ユーザーの心を強く動かしたようだ。取材をしている筆者にもユーザー達の興奮が伝わってきた。



■ 辻本氏と小島監督がコラボレーションの秘話を語る「モンスターハンターポータブル 3rd」

「モンスターハンターポータブル 3rd」のプロデューサーを務めるカプコンの辻本良三氏
「メタルギア ソリッド ピースウォーカー」を手掛けるコナミの小島秀夫監督

 SCETの19日で行なわれたイベントの最初のゲストは、「モンスターハンターポータブル 3rd」のプロデューサーを務めるカプコンの辻本良三氏だ。辻本氏は最初に「モンスターハンターポータブル 3rd」の特徴を紹介した。

 「モンスターハンターポータブル 3rd」は台湾でも日本語版が12月に発売されている。グラフィックスがより緻密になり、武器の増加や、モンスターには「亜種」といった種類も増えるなど、様々な点がパワーアップしている。特にプレーヤーが連れ歩けるオトモアイルーは育成がより楽しくなった。辻本氏はオトモアイルーに開発スタッフの名前を入れて連れ歩き、お気に入りのハンマーで戦っているという。

 辻本氏は同日に行なわれた「モンスターハンターポータブル 3rd」の対戦トーナメントの決勝も観戦した。このトーナメントには19日朝にエントリーした4人1組のチームによってモンスターの倒すスピードを競うものだった。辻本氏が観戦した決勝戦では「ベリオロス亜種」を倒すスピードを競った。

 優勝チームは罠を仕掛けて敵を誘導するのではなく、何人かが果敢に攻め込んでいる間にモンスターの足下に罠を設置、その後も連携を密にして、1分31秒36でクリアした。辻本氏は「早すぎてモンスターの解説ができなかった」と驚き混じりのコメントをした。

 トーナメント解説の次に辻本氏が行なったのは「モンスターハンターポータブル 3rd」と、「メタルギア ソリッド ピースウォーカー」のコラボレート要素についてだ。ここで「メタルギア ソリッド ピースウォーカー」を手掛けるコナミの小島秀夫監督が登場、コラボレートの実現までの秘話を公開した。

 この実現は、「メタルギア ソリッド ピースウォーカー」の部隊がコスタリカのジャングルであるという要素から、「ジャングルなら恐竜が出てもおかしくないだろう」ということで、3年前に小島監督の方から辻本氏に話を持っていき、お互いのコラボレーションが実現したという。

 このプロジェクトは極秘裏に進められ、開発スタッフすら知っている人は少数で、小島監督のチーム内でも「仕事をしないで『モンハン』で遊んでいる」と言われる人がいたり、カプコンに小島監督が行ったときは、カプコン社内がざわめいたとのことだ。開発秘話を語るトークイベントの後は、くじ引きで選ばれた来場者に、辻本氏と小島監督の手から直接グッズが手渡され、その後サイン会が開催された。


会場にはファンが詰めかけた。辻本氏自身のキャラクターが公開されたり、小島監督とのコラボレーション時の裏話が聞けたり、ファン達はとても楽しそうだった
エントリーしたチームで腕を競った「モンスターハンターポータブル 3rd」大会。上位入賞者にグッズが手渡された


■ 「メタルギア ソリッド ピースウォーカー」と、「キャッスルヴァニア ロード オブ シャドウ」イベントでは、菊地由美さんも登場!

続けて登壇した小島秀夫監督。「キャッスルヴァニア ロード オブ シャドウ」では監修を行なった
小島監督の作品で様々なキャラクターを演じる声優の菊地由美さん

 小島秀夫監督はさらに「メタルギア ソリッド ピースウォーカー」と、「キャッスルヴァニア ロード オブ シャドウ」のイベントにも声優の菊地由美さんと共に登壇した。小島監督は今回が台湾を訪れるのは3回目で、前日に台湾映画「モンガに散る」の監督を務めたニウ・チェンザー氏と会うことができたという。「台北を満喫しています。ますます好きになりました」と語った。

 菊地由美さんは「メタルギア ソリッド ピースウォーカー」ではストレンジラブというAIキャラクター、「キャッスルヴァニア ロード オブ シャドウ」では、ヴァンパイアの少女のローラというキャラクターを演じている。菊地さんは「メタルギア ソリッド4」のイベントで2年前に台湾に来ているという。

 このイベントでは、事前に集められた様々な質問が小島監督と菊地さんに寄せられ、これに応える形で様々な両氏の想いが語られた。小島監督はTwitterでファンと交流しているが、台湾の熱心なユーザーは日本語で会話をしてくれるので、より深い交流ができていると感じているという。菊地さんは、小島監督として仕事をしていて、「メタルギア ソリッド4」でモーションキャプチャーの時一緒に演じたことが印象に残っているという。

 「演じてみたいキャラクターはいるか」という質問には、「メタルギア ソリッド ピースウォーカー」ではガルベスの右腕(義手)か、ボーカロイドと答え、菊地さんから「人じゃないし!」と突っ込まれていた。さらに菊地さんが「私はタフな女性のザ・ボスを演じてみたい」という答えに、即興で2人は演技を披露した。小島監督は「スネーク」役で「ボスうぅぅぅぅ」と叫ぶと、菊地さんは渋く「帰れ!」と劇中のやりとりをコミカルに演じた。

 「キャッスルヴァニア ロード オブ シャドウ」は、スペインのMercurySteamが開発し、小島監督は監修という形で関わった。ワールドワイドへの市場に対応するため、あえて海外のデベロッパーを起用したという。「他のチームに作らせるというのは、自分を出せない、あんまり深く入れないというスタンスを持たなくてはいけない。これは難しく、ストレスがたまりました。距離を置いて作る、というのは難しかったです」と小島監督は語った。

 声を当てる部分でも、違いがあった。これまでの小島監督の作品は声優が1つの場所に集まり掛け合いをして声を収録し、それに合わせて映像を作っていくという。菊地さんは、「キャッスルヴァニア ロード オブ シャドウ」では映像と英語音声を聞きながら日本語での演技を乗せていく、洋画と同じ方式だったのが新鮮だったと語った。この作品では小島監督は「チュパカブラ」というキャラクターを演じているが、菊地さんは「ぜひ台湾の人たちも小島監督の演技をチェックしてください」とアピールした。



 どちらのイベントもたくさんのファンが会場を訪れ、登壇者に熱い声援を送り、彼らの声に熱心に耳を傾けていた。Taipei Game Show では、他のオンラインゲームメーカーはステージ上からグッズを投げたり、セクシーな衣装の女の子のダンスなどでユーザーを呼び込んでいるが、SCETブースでは「ゲームの開発者をひと目みたい、彼らの言葉を聞きたい」というファンの強い想いが感じられた。

 ゲームへの熱意を持つユーザーの姿を見ていると、今回のSCETの様なゲームの作り手との交流の機会となるイベントは、ゲーム市場の活性化に確実に結びつくと確信できた。明日以降のイベントも楽しみだ。


即興の演技の掛け合いをしたり、作品のエピソードを披露。抽選で選ばれたユーザーに2人の手からグッズが手渡され、こちらでもサイン会が行なわれた

(2011年 2月 20日)

[Reported by 勝田哲也]