G-Star 2010レポート

【G-Star 2010】NEXON開発者インタビュー
劉備や曹操を配下に自分だけの三国志を作る「三国志を抱く」
「マビノギ英雄伝」の新キャラクター・カロックの秘密とは?




11月18日~21日開催

会場:釜山国際展示場(BEXCO)

入場料:大人4,000ウォン(前売り2,000ウォン)
学生2,000ウォン(前売り1,000ウォン)


 G-Star 2010開催中に、NEXONの新作タイトル「三国志を抱く」を開発するNDOORS常務理事キム・テゴン氏と、「マビノギ英雄伝」の開発を統括しているdevCAT Studioイ・ウンソク室長にインタビューを行なった。

 「三国志を抱く」はシミュレーションとMMORPG、ソーシャルゲームを融合させたブラウザゲームということだが、発表会ではゲームのディテールは明らかになっていない。また、「マビノギ英雄伝」の新キャラクター「カロック」はパワフルさは伝わってくるものの、どんな性格で、どんなバックストーリーを持つかなど謎に包まれている。インタビューではこういったポイントを質問した。



■ 有名武将を配下に、理想の国を作る。プレーヤーそれぞれが求める三国志を実現

「三国志を抱く」を開発するNDOORS常務理事キム・テゴン氏
「三国志を抱く」ではストーリーは200名以上の武将が登場し、ドラマを繰り広げる

 最初に質問をしたのは、現在の「三国志を抱く」の開発状況についてだ。「三国志を抱く」の韓国でのサービススケジュールは2010年上半期にクローズドβテストを行なう予定だ。今回、G-Starに出展したバージョンはクローズドβテストに出展するバージョンを完成度100%として考えて、70%ほどだという。開発側としては、クローズドβテストの時点で当初予定した要素をきちんと盛り込んだゲームとして遊べる状態にしていくつもりだとキム氏は語る。

 現在の状態ではプレーヤーの「立ち位置」がまだわからない。プレーヤーは1兵士なのか、それとも武将としてスタートしていくのか、それとも最初から君主なのだろうか? キム氏は「プレーヤーは君主であり、将来的には劉備や曹操ですら配下にできます」という。プレーヤーは中原に登場する英雄達とストーリーを進めながら彼らを従え、中原に自らの力を示すべく戦っていくことになるのだ。

 正史での君主である劉備や曹操を配下にもできるが、プレーヤー全てが国の王となり、無数の国家に分裂するというわけでなく、プレーヤーは魏、呉、蜀の3つの国のどこかに所属し、戦っていく。武将の中は必ずしも国に縛られている訳ではないので、プレイをすることで自分だけの軍隊、武将、国での地位を得て、「自分だけの三国志」を紡いでいくことになるのだ。

 シナリオそのものは、「三国志」に準じたものになる。本作のモチーフは多くの三国志もののように「三国志演義」をモチーフするのではなく、史実に近い「三国志」を求めていくという。三国志演義は劉備や孔明を主人公に据え、時代と共に様々な脚色や演出が加えられていった物語だ。

 MMORPGである以上、他プレーヤーと世界を共有する。例えば1人のプレーヤーが張飛を配下にしたら他のプレーヤーはできないのだろうか? キム氏は「開発の段階でそこは何度も話し合いました。他のゲームでは限られた武将を所有することこそがステータスであり、ゲームの目標というタイトルも多いですから。しかし私達がゲームでユーザーさんに楽しんで欲しいのは『きら星のような武将達を自分の配下にする』というところです。このため、PvPを行なう場合、同じ武将がぶつかることもある。プレーヤー1人1人がそれぞれ違う三国志を作っていく。『三国志を抱く』というタイトルは、自分だけの三国志、という意味を込めて付けた名前なんです」と語った。

 自分の配下は最終的に100人を超えるという。登場武将の総数は現在は200名ほどだが、今後さらに増えていく予定だ。戦闘で自分が連れて行ける武将は5人だが、内政をさせたり、他の土地を攻めていく部隊、偵察する部隊など多数の部下が必要となる。勢力が大きくなると、100人でも足りなくなるかもしれないという。

 MMORPGとしてリアルタイムでパーティーを組み、友達と一緒に戦闘をすることもできる。1つの強大な的に仲間と力を合わせて立ち向かうというのは「三国志」でよく見られるシチュエーションであり、本作でも欠かせない。また、孫権を配下に持つプレーヤーと劉備を配下に持つプレーヤーがいて、一定の条件を満たすと「赤壁の戦い」のイベントが始まったりと、協力要素も用意されている。

 「三国志を抱く」は自分の陣地を充実させ、他のプレーヤーと競争する「陣地育成シミュレーション」の要素がある。こういったゲームの場合、先行プレーヤーがその力で周囲を占領し、さらに強力になっていくという流れを生むが、「三国志を抱く」ではユーザーが持てる陣地を制限することで先行プレーヤーが強力になりすぎないようにしていく。

 また、中原の城を奪いあう攻城戦の場合、いくつかの強大なギルドが城を占有してしまう場合がある。「三国志を抱く」は武将と同じように、城もまた他のギルドと奪いあうのではなく、ギルドで協力して城を増やしていく。「自分たちだけの三国志」を求めていくのだ。「ユニークな所有物を奪いあう、独占する」という要素はないという。

 最後に、三国志の英雄達が目標に掲げた、「最終的にプレーヤーは中原を統一できるのか」という質問をぶつけてみた。キム氏は「三国志の終わり方そのものが統一という形で終わっていない。プレーヤーが体験していく挑戦の中では統一を目指していくというものがありますが、統一の完了がゲームの終わり、ということにはなりません」と応えた。

「私はコーエーのシミュレーションゲーム『三國志』シリーズが大好きです。しかし本で読む三国志とゲームではちょっと違うのではないか、と思うこともありました。このゲームは私なりに三国志の世界を再現しようと挑戦したゲームです。日本のユーザーさんにもぜひ『三国志を抱く』プレイして、自分のイメージする三国志を探してみてください」ユーザーへのメッセージとしてキム氏はこう語った。


【「三国志を抱く」プロモーションムービー】

「三国志を抱く」の画像。プレーヤーは三国から一つを選び、英雄達と戦っていく。戦闘はシミュレーション形式で、5つのユニットを使うことができる



■ 「マビノギ英雄伝」の新キャラクターカロックはキュートな一面も持つ謎のジャイアント?

「マビノギ英雄伝」の開発を統括しているdevCAT Studioイ・ウンソク室長
イメージキャラクターのボブサップ。武器の柱を持って登場

 イ・ウンソク氏に最初に尋ねたのは「『マビノギ英雄伝』はいつ日本でサービスするのか」という質問だ。イ氏は「前作に当たる『マビノギ』は日本の皆さんに大変好評をいただいていており、『マビノギ英雄伝』も期待してもらっています。だからこそ、完成度を上げてしっかりした形で日本でサービスしたいと思っています。私自身もできるだけ早く日本の皆さんにプレイしていただきたいと思っています」。開発側が、日本のサービスに向けて積極的な姿勢を見せていることが改めてわかった。

 「マビノギ英雄伝」は韓国でサービスしてから、およそ1年になる。韓国でこの1年半の間サービスされたタイトルの中では一番人気になった。ユーザーからはコンシューマーゲームのようなアクション要素を盛り込んだゲーム性、美しいグラフィックスの評価が高い。

 その一方で、ユーザーからは「コンテンツが足りない」という声が強い。ユーザーのコンテンツ消費速度は非常に速く、常に新しいコンテンツを求めている。「マビノギ英雄伝」は“エピソード”という単位でアップデートを行なっており、3カ月に一度、コンシューマータイトル1本分とも言える量のコンテンツを追加しているのだが、ユーザーはそれを1カ月で消費してしまう。

 「マビノギ英雄伝」はステージ1つとっても、モンスターの挙動、ダンジョンのデザイン、仕掛け、グラフィックスとこれまでのゲーム以上の労力を込めて開発しており、このクオリティーの高さを維持するのにも苦労しているという。アップデートは1カ月に1度コンテンツを追加していく短期チームと、長期的にコンテンツを追加していくチームにわけている。今後もより早いコンテンツ追加を目指し、チーム構成を試しているという。

 新キャラクター「カロック」は、実は“前倒し”して導入したキャラクターだという。「マビノギ英雄伝」はでは最初に5人のキャラクターを予定していた。最初に2人、次に魔法使いの小さな女の子「イビー」、そしてもう1人追加してから最後にカロックを入れるつもりだった。

 しかし、アメリカでのローンチにあたり、アメリカのユーザーから「なんでこのゲームのプレーヤーキャラクターは美男美女しかいないのか」という声が大きく、マッチョなカロックの導入が決定した。欧米では来年に導入予定だ。アメリカでの「マビノギ英雄伝」は韓国とは3カ月ほど遅れてコンテンツを実装しているという。

 イメージキャラクターとしてボブ・サップを起用したのは、パワフルさだけでなく、コミカルでキュートな部分も併せ持っている幅のあるキャラクター性を持っているところだ。カロックはパワフルなだけでない、意外な一面も持っているという設定であり、ボブ・サップはそのキャラクター性にぴったりだった。アメリカ、そして日本を含む東アジアでの知名度も起用の大きな一因だ。

 「マビノギ英雄伝」では現在まだプレーヤーキャラクターの設定を掘り下げる方向ではストーリーが進んでいない。カロックは設定として「南国のジャイアント」だが、現在は詳しく語られていない。現在カロックは「傭兵」としてストーリーに登場する。街に住む人たちはカロックの過去については全く知らず、「ジャイアント」という人間とは別種族の存在ということも知らない。NPCはプレーヤーキャラクターによって話す内容や反応が違う。カロックの場合、街の住人がおびえている様なニュアンスがあるという。

 ジャイアントという種族は「マビノギ」にも登場する。「マビノギ」のジャイアントは氷の大地に住む体の大きな種族で、“黒い肌を持つ南国のジャイアント”のカロックとは全く違う。現在のところ、「マビノギ英雄伝」と「マビノギ」の関係もまだ明らかになっていない。ジャイアントという異種族の設定がストーリーにどう絡んでいくかも注目したい。ちなみに、カロックは武器として巨大な柱を使う。これは「常人には扱えない巨大な武器は何か」というテーマから考え出された武器だという。

 最後にイ氏は日本のファンに向かって「できるだけ早く『マビノギ英雄伝』を日本でサービスするために、現在も努力しています。日本のスタッフとも話を進めています。がんばっていきますので、よろしくお願いします」と語った。


【「マビノギ英雄伝」プロモーションムービー】

新キャラクターカロック。柱を武器として使い、敵の攻撃を受け止めるパワフルなキャラクターだ

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(2010年 11月 22日)

[Reported by 勝田哲也]