東京ゲームショウ2010レポート

ガマニア、「Langrisser Schwarz」、「POWER DOLLS(仮)」開発スタッフインタビュー
日本の名作ゲームを世界で戦えるオンラインゲームに


9月16日~19日 開催(16日、17日はビジネスデイ)

会場:幕張メッセ

入場料:1,000円(一般/前売り)、1,200円(一般/当日)、小学生以下は入場無料


ガマニアデジタルエンターテインメト商品開発部部長の市崎裕康氏

 ガマニアデジタルエンターテインメントが「TGS2010」で発表した新作タイトルの中には、日本の往年の名作をオンラインゲーム化したものが目立った。「Langrisser Schwarz」はシミュレーションRPGの名作「ラングリッサー」をベースにしたアクションMO、「POWER DOLLS(仮)」は工画堂のPC向けシミュレーションゲーム「POWER Dolls」の世界観を踏襲した作品だ。

 これら日本タイトルを原作に持つゲームは、日本のガマニアから企画が提出され、それぞれの原作メーカーが協力するかたちで日本の面白いゲームで世界に勝負をかけるという意図のもと開発が進められている。それぞれのゲームが、どんなゲームなのか。どうしてこれらのタイトルが選ばれたのかなどを、ガマニアデジタルエンターテインメト商品開発部部長の市崎裕康氏に聞いてきた。



■ アクション性とシミュレーション要素が融合したオンライン版「Langrisser Schwarz」

9月17日のTGSブースイベントで、代表取締役社長の浅井清氏からプレゼンテーションが行なわれた

編: まず最初に、どうして「ラングリッサー」というタイトルを選んだのですか?

市崎裕康氏: 基本的には、うちの浅井を含めてスタッフがみんなファンだったからです(笑)。

編: 皆さんプレイされたことがあるのですか?

市崎氏: 何かを始めようとする時に色々な話し合いをしていると、それが脱線して昔の思い出話になってしまうことがよくあるのです。「あのころの98ゲームは面白かったなあ」とか「スーファミのこのゲームが楽しかったよね」とか、そんな中に必ず出てくるタイトルの1本が「ラングリッサー」だったわけです。そして「今『ラングリッサー』をオンラインゲームとして作ったらどうなるのだろう」という話になったのが、そもそものきっかけです。オンラインゲームなら帝国軍でも闇の勢力でも光の勢力でもプレイすることができますから。

編: 確かにコンシューマ版では敵だった勢力でのプレイなど、楽しそうですね

市崎氏: そうでしょう? やってみたくなりますよね。「ラングリッサー」は世界観がしっかりしているので、その中で別のストーリーを作ってみたいねと言う話になり、さすがにオンラインゲームでターン制シミュレーションは無理だろうけれど、アクションゲームにしてもコンシューマ版にあった3すくみや地形効果などの面白さは活かせるのではないかと考えました。

編: ゲームショーの試遊を見る限りでは、シミュレーションの要素はほとんど残ってないように見えました

市崎氏: あれは1人で遊んでいるからそう見えるのですが、ゲーム全体の大きな流れは国取りバトルなのです。全体マップの中にいくつかの戦場があって、その戦場や拠点の城を奪い合い、全国制覇を争っていきます。

ブースイベント。「帝国」、「光の勢力」、「闇の勢力」に分かれて領土争奪戦を行なう

編: ゲーム自体はシミュレーション的なのですね。領土争いはどういった形で行なうのですか?

市崎氏: 戦場にはクエストが用意してあって、そのクエストをクリアした勢力が国を所有することになります。しかし当然ほかの勢力のプレーヤーもそこへきますから、取ったり取られたりの中で自分たちの陣地を増やしていくことになります。戦場は道でつながっていて、ときどき拠点となる城があります。ここではPvPが発生して、勝利すると城を手に入れることができます。

編: その城がプレーヤーの拠点となるのですか?

市崎氏: 拠点となる国は別にあって、この城は国境線のようなものです。城を取ることで、相手が持っている次のエリアにも攻め込むことができるようになります。

編: クエストとはどういったものがあるのですか?

市崎氏: たくさんあります。原作にあったような護衛任務とか、ストーリーと連動しているクエストもあります。声優さんがしゃべってくれるストーリーがあって、そのクエストの結果が国取り要素にも関係してくるわけです。クエストにはソロでクリアできるものもありますし、仲間を集めていかなくてはならないものもあります。

 例えば光の勢力が城を持っている状態で、闇の勢力や帝国軍のプレーヤーがそのマップでクエストを何度もこなしていきます。それらの勢力がクエストで勝利した数が、光の勢力の数を超えると所有する勢力が変わります。

「光の勢力」の拠点となる街の様子。拠点は戦闘フィールドに入る前のロビー的な場所になる

編: リアルタイムに変動するわけですか?

市崎氏: どんどん変わっていきます。城で勢力が変わると「なんとか歴何年に、どこそこがここを制覇した」という年表が作られていくような機能も用意しています。用意されたストーリーを遊ぶだけではなく、プレーヤーが歴史を作っていくのがオンラインの楽しみだと思います。

編: メインストーリーのようなものはないのですか?

市崎氏: ストーリーはあります。チュートリアルでもあるので、戦い方を覚えるまでは1人でストーリーを進めていくのが判りやすいと思います。ストーリーをクリアするのは国取り合戦に参加していることにもなりますから。




「プレーヤーが自分たちで歴史を作っていけるのはオンラインゲームならでは」と市崎氏

編:オンラインならではで追加されたものはありますか?

市崎氏: 「騎士団」というギルドですね。単純に集まればいいというものではなくて、騎士団を作ることで得られる楽しさがあります。騎士団の集会場所であったり、攻略戦の時に騎士団の活躍が重要だったり、そういったことがオンラインの楽しみの1つだと思います。

編: 騎士団の集会場というのは?

市崎氏: 騎士団を作ると、専用の部屋がもらえるようにしようと考えています。まだ企画段階なのですが、この部屋は戦争に勝つと広くなったり豪華な設備になったりする予定です。城を取る時に一番活躍した騎士団に対するご褒美です。それとは別に、国の拠点となる街も土地をたくさん所有することで変化していきます。

編: どのようになるのですか?

市崎氏: 建物が豪華になったり、新しいショップができたりします。また戦場には個性があって、特定の戦場には所有していることで国に恩恵がある場所もあります。そう言った戦場は大きな騎士団が死守しようとするでしょうから、どんどんクエストを行なうことになるでしょう。

編: 拠点となる場所はどのような所なのですか?

市崎氏: 外の戦場はMOですが、街では大勢のプレーヤーがコミュニケーションをとったり、ショップがあったりというMMO的な場所になります。

編: 1度に遊べる人数は何人ですか?

市崎氏: 今のところは最高で5対5までの戦闘が可能です。プレーヤー1人につき、最低でも5体以上の傭兵を持たせようと思っていますから、傭兵とプレーヤーを合わせて数10人での戦いになります。

編: 5体以上、ということは今後増えて行くのですか?

市崎氏: ビデオカードなどとの折り合いではありますが、増やしていきたいですね。

編: 試遊で動いていた傭兵は歩兵ですか?

市崎氏: 今回連れていたのは最初に雇える傭兵です。自分のジョブが変わったり、クラスチェンジしたりすると強い傭兵が雇えるようになります。彼らは強いのでもちろん頼りになります。

東京ゲームショーに出展されたバージョンは、ゲームパッド対応だった
試遊ではソロで傭兵を連れて巨大なメカドラゴンと戦うことができた

編: 1回の戦闘はそれほど長くないのですか?

市崎氏: 長くても20分から30分程度です。PvEでも1つのマップは同じくらいの時間で終わるはずです。同じマップでも護衛任務なら連れて行くだけなのですぐに終わるだろうし、4カ所ある拠点のうち3カ所を押さえればクリアというものなら、それもやり方によってはすぐに終わるかもしれない。同じマップでも勝利条件が複数あるので、同じ攻略法はないですね。

編: 原作にあった「指揮範囲」が今回もあるということですが

市崎氏: ある一定の範囲の中で傭兵が動いてくれます。守れ、自分に追従しろ、攻撃しろ、などの命令によって陣形が変わる。その陣形に従ってAIが歩兵だったら前へ前へ、弓兵だったら後ろへといった形で攻撃を仕掛けてくれます。

編: それは画面の真ん中あたりにある大きめのカードっぽいアイコンですか?

市崎氏: あれは特殊な召喚カードですね。戦場に持っていくことができるカードが存在していて、それを発動させると全員の体力が回復したり、一時的に攻撃力が上がったりします。左側にあるアイコンが傭兵への指示アイコンですね。

編: 自分のキャラクターは自分で操作するのですか?

市崎氏: アクションゲームですから当然自分で操作します。ただそれほど難しいアクションはありません。難しい2段ジャンプなんかないです(笑)。基本的に誰を攻撃するかを選んでゲームパッドならボタンを押して、マウスならクリックして攻撃します。

編: クラスですが、どんなクラスがあるのでしょうか?

市崎氏: まだ細かくは発表できないのですが、いわゆる原作にあったクラスの相関図のようなものがあります。1つのジョブから、だんだん枝分かれしていく感じです。隠しジョブもありますから、楽しんで頂けると思います。情報的にはもう少ししたら相関図を全部出せると思います。僕の手元にはあるので、今年中にはお見せしたいですね。

装備と、クラスツリーの一部もトークショーで紹介された

編: 装備品はどういったものを扱われる予定ですか?

市崎氏: 装備できる箇所は15カ所あるのですが、変えただけでは強くならないのです。例えば肩当ては装備しただけでは強くなりませんが、装備しているとレベルアップした時の腕力の伸びが変わってくるという効果があったりします。装備に直接ステータスが付いているわけではなく、能力を発揮しやすくなったりとか、ジョブチェンジをしやすくなったり、スキルを発揮しやすくなったりするような装備を予定しています。

 強い武器を高いお金を出して買ったら強くなるってすごく嫌じゃないですか。そういうことは避けようと思っています。もちろん有料のアイテムを買えば有利にはなりますけれども、お金をかけると即強くなるということはないようにしようと思っています。

編: 生産もあるということですが?

市崎氏: 例えば自分の部屋であったり、騎士団であったり、そこでしか製造できない武器を作ろうと思っています。部品を売ることも考えていますし、武器や防具を合成する場所を作ってあげることも考えています。そして合成の成功率を上げるにはこの土地を占領しなければならないとかいう形にしようと思っています。戦闘のゲームなので、戦闘を繰り返すことで騎士団を発展させたり、自分の装備の強化などにつながるようにしたいです。

編: 自分の部屋があるのですか?

市崎氏: 作る予定です。戦利品を飾っておきたいじゃないですか。まだ企画段階なので、作る予定ですということで。騎士団もそうです。正式サービスまでに入れたいですね。




「闇の勢力」のイメージイラスト

編: イラストを一新したのはなぜですか?

市崎氏: 今回漆原さんの絵をあえて使わなかったのは、幅広い人に遊んでもらいたいからなのです。元の絵だとどうしても固定ファンだけになってしまうので。僕らが欲しかったのは「ラングリッサー」のファンの方の支持だけではなくて、「ラングリッサー」の世界観であり、「ラングリッサー」の面白さをオンラインにしたかったので敢えて漆原さんの絵は使わなかったのです。そして新しいものを創造したかったので、2Dシーンはほぼ使っていません。

編: キャラクターはしゃべらないのですか?

市崎氏: しゃべりますよ。声優さんを使って画面の中の3Dキャラがしゃべりかけてくるという、いわゆるMMOのタイプの会話になると思います。

編: 演出的なカットシーンはあるのですか?

市崎氏: 今のところ、基本的には入れないつもりです。それが主ではないので。せっかくオンラインなので、MO部分を遊んでいただきたいです。みんなと遊ぶというところに力を置いておきたいのです。それにストーリーを絡ませることはありますが、主ではありません。でもやっぱり出せと言われて、変わるかもしれませんが(笑)。

編: 先ほどスペックの話をされていましたが、低スペックで動くゲームになるのですか?

市崎氏: 2世代くらい前のビデオカードでも動きます。デュアルコアがあればいいですが、シングルコアでも何とか動くようにしたいなと思っています。

編: 低いスペックのPCでも遊べるようにした理由は?

市崎氏: もちろんたくさんの人に遊んでもらいたいからです。最先端のエンジンを使ってすごいものを作るのって、できないことはないけれども、やっぱりゲームなのでたくさんの人に遊んでもらいたいし、仕事でしかPCを使わなかった人にも遊んで欲しいのですよ。

編: 開発はすべて海外で行なっているのですか?

市崎氏: 開発は上海の開発チームです。日本では全体のプロデュース、ゲームコンセプト、監修。企画は上海と日本で詰めて、上海で実際の開発といった感じでしょうか。

編: 企画はすべて日本で立てているのですか?

市崎氏: 全部ではありません。下手すると僕らよりも「ラングリッサー」をよく知っているラングリッサー大好き人間が向こうで作っています。日本のゲームですし、まず日本でサービスということを考えているので、日本人だったらこうすれば面白いよというのは絶対に世界でも受けると思っていますから、そんな作り方をしています。

「『ラングリッサー』が好きな人間が作ったので、面白くないわけがない」と市崎氏

編: 「ファントム・ブレイブ」は日本一ソフトウェアさんが直接関わっていますが、「Langrisser Schwarz」はファンが作った「ラングリッサー」という感じのものですね

市崎氏: 「ファントム・ブレイブ」もたぶんそうなりますよ(笑)。基本的にうちの部署はやりたいものを好きに作っていい部署だと勝手に思っています。内緒ですが(笑)。今は家庭用はどんどん作り辛くなってきています。シリーズものが増えて、新しいものを世に出すのが難しくなってきて、システムも判り切ったものになってきてつまらないなあと思っていたのですが、オンラインならできることが色々あることに気付いて、それで作っています。

 僕らが楽しいものを作っているので、絶対に楽しいものができるだろうと。僕も昔は家庭用のゲームを作っていて、こういうのがやりたい、ああいうのがやりたいというものが商品になっていました。それがだんだんやりにくくなってきているのです。オンラインなら今はまだチャンスがたくさんある状況だと思っています。まだそういうゲームが世に出ることができるのです。もちろんブラウザゲームなんかもそうですね。

編: ビジネスモデルですが、基本無料のアイテム課金ですか?

市崎氏: そうなります。

編: 今後のサービス予定を教えてください?

市崎氏: 来年の初頭くらいには、クローズドβテストの段階になっているはずなのですよ。一昨年の秋から作っているので、今で開発状況は70%くらいでしょうか。ただまだチェックできていないシステムもあるので、まだこれから2転3転するかもしれないですが。



■ 「POWER DOLLS(仮)」は協力プレイが基本のPvEバトルゲーム

17日のステージイベントで、浅井氏が新作webタイトルとしてサプライズ発表した

編: 「POWER DOLLS(仮)」について、こちらも「Langrisser Schwarz」に負けず劣らずマニアックなタイトルですね。こちらはなぜこのタイトルを選ばれたのですか?

市崎氏: 先ほども言いましたが、「昔のタイトルって面白かったよね」と。シミュレーションゲームはその中でもやりこみの度合いが高いので思い入れがあるのです。RPGはたくさんオンライン化されているんですが、シミュレーションゲームは意外とオンラインゲームになっていないんです。シミュレーションゲームをオンライン化すると、主人公がいるRPGになりがちです。そうではなく、あのシミュレーションゲームの楽しさをオンラインにしようと考えた時にブラウザゲームはハマるのではないかと。

 オンライン化するための1つの答えは「ラングリッサー」のように戦闘部分をアクションにしてしまうこと。そうでなければ、シミュレーションゲームで一番面倒な部分を自動にしてしまうというブラウザゲームのやり方。1つの答えは「ラングリッサー」でやったので、もう1つの答えを選んだのが「POWER DOLLS(仮)」です。

 題材はマニアックなのですが、ロボットがいて女性の兵士がいて、司令部があってというそれだけで面白いゲームになりそうでしょう。それを全くの初心者でも遊べるようにして、以前に遊んだことがある人には、時間がかかりすぎて遊べなかった部分をより簡単な形で遊べるようにしたいと思っています。

編: こちらも今開発中ですか?

市崎氏: そうです。でも年内には何かお見せできると思います。CBTになるか、いわゆるユーザーテストになるかはわかりませんが、何か遊べる形で提供したいと思っています。反応を見たいですから。

「web恋姫+無双」の画面。城を作って、資源を貯めて兵士を訓練するというオーソドックスな対戦ゲーム
「POWER DOLLS(仮)」の画面。兵士の訓練やローダーの製造という点は似ているが、PvEがメインのゲームとなる

編: 「Web 恋姫†夢想」は原作が三国志ということもあり、トラビアンタイプに相性が良かったですが、「POWER DOLLS(仮)」は全くタイプが違いますね

市崎氏: 「POWER DOLLS(仮)」の場合は隣の基地を攻めるのではなく、共通の敵に向かって協力プレイをしていきます。ですから基地と基地の距離感は問題になりません。でも、自分だけのドールズやローダーユニットを使って力比べはしたいと思いますから、闘技場のような場所は作っていこうと思っています。

編: 対人戦がメインのゲームではないのですか?

市崎氏: PvPは基本的にはゲーム進行には関係ない所で遊ぶ形にしようと思っています。

編: ゲーム自体はPvEの攻略がメインになるわけですか?

市崎氏: いわゆる最終戦争に向かってストーリーが進んでいき、その中でどのくらいの協力体制が作れるかを競うゲームになります。ギルドのような大きな集団が敵対する勢力をどうやっつけるか、またはそれに小さなギルドがどう協力できるかという形でゲームが進んでいくようにしたいです。今のブラウザゲームって4カ月から6カ月で一応エンディングがあるゲームが多いじゃないですか。その形はストーリー性のあるゲームを作りやすいのです。

編: そのスパンの中でストーリーが1つ終わるということですか?

市崎氏: 「POWER DOLLS(仮)」は敵対する組織同士の戦いですから、それをだいたい4カ月から6カ月で1つのストーリーを終わらせようと思っています。1つの物語が終わると、続編ではなくまったく新しい話が始まります。サーバーは、例えば9月にサーバーをオープンしたら、次は10月、それから11月にと、時期をずらしてオープンしていくことで、いつ始めても新しいサーバーでプレイすることができるような形で考えています。

 ですからMMOよりもストーリー性は強くなりますね。日本人はエンディングがあるゲームに慣れているので、エンディングを見るために、ローダーの部品を集めたり、作ったり、女性の兵士を鍛えたり、女性の兵士とローダーの相性があるので、どの兵士をどのローダーに乗せて戦うのが一番いいかを試しながら戦闘を繰り返していくことになります。自分のチームだけで参加できるクエストもありますし、隣の基地に声をかけなければクリアできないようなクエストも用意してあります。

編: 動かすことができるユニットの数はいくつですか?

市崎氏: まだ未定ですがそれほど多くはありません。一度に大量に出しても把握できなくなりますから。

女性兵士たちが乗り込むロボット兵器「ローダー」

編: 戦闘は自動で行なわれるのですか?

市崎氏: そうです。例えば司令部から「A地区で戦闘が起きているのでローダーを10対派遣して欲しい」といったようなクエストを受けます。それに対して自分の手持ちが2台あれば、2台でもいいし1台でもいい。偵察任務だから1台でいいと言われたら、1台だけ出せばいい。そんな感じのクエストが用意されているわけです。

編: 数は多い時には、周りの人に声をかけて一緒に出してもらうわけですね?

市崎氏: 友達に頼んでもいいし、そこで初めて知り合った人と一緒に出て行ってもいいし、ということですね。

編: オフラインの「POWER DOLLS(仮)」はユニットのキャラクター性が非常に濃い作品ですが、そこは引き継がれるのですか?

市崎氏: 原作に登場している女性兵士は全員出ます。さらにオリジナルの女性兵士と、ローダーもオリジナルのものを作ります。

多彩なクエストをこなしつつ、4~5カ月で1つのストーリーを楽しむことができる

編: キャラクターとの対話のような演出はあるのですか?

市崎氏: そういったものはないですね。あくまでも指令を出して戦いに行ってくれという感じですので、そこは脳内で補完していただければ(笑)。

編: こちらもイラストの雰囲気がガラリと変わっていますが、イラストを変えたことに理由はあるのですか?

市崎氏: ゲームによっては「恋姫」のようなイラストが好きな方もいますし、そうではない人もいるので色々なイラストがあってもいいのではないかと思いました。

編: 海外市場のための路線かと思いました

市崎氏: もちろん海外は狙っていますが、イラストはあまり関係がないです。例えば「恋姫」のイラストはアメリカでも引き合いがあります。意外と評判がいいのですよ。




「POWER DOLLS(仮)」のイラストは原作から一新された
「web恋姫+無双」のイラストはアメリカで意外に好評なのだそうだ

編: PC以外の展開はどうなるのでしょうか?

市崎氏: 携帯でもプレイできるようにします。携帯電話で全く同じプレイをするのはコマンド的にも画面的にも無理があるので、携帯をゲーム中の装備として持ち出すというイメージです。「POWER DOLLS(仮)」では基地の秘書から戦況が送られてきたら楽しいでしょう。「誰々がどこどこでこんな状態で負けてしまいました」という報告が携帯にメールで届くのですから、そこはもう戦場(笑)。それは電車の中でも会社でも。そうするとそれを読んで、何かしなくちゃいけないですよね。例えば治療でもいいし、壊れたローダーの修理でもいいし。そういった報告に対応したコマンドを出せるような機能を用意します。「恋姫」では「矢文」が時代を超えて届いたりすると楽しいかな。

 うちのブラウザゲームはFlashを一切使っていないので、iPhoneでもXperiaでも動きます。「POWER DOLLS(仮)」はモバイル機を意識して画面の横幅を狭くしてあるので、ほかのタイトルに比べてさらに遊びやすくなっています。色々な人が色々なプラットフォームで遊べるようにしたいです。

編: 今回はたくさんのタイトルが発表されましたが、今後もこういった路線で行く予定なのですか?

市崎氏: 路線は、実はあまり考えていません。候補はたくさんあるのですが、企画会議で「このゲームをブラウザゲームにしたらこうなるんじゃない」とか、「MMOにしたら面白いよね」という中から、じゃあ今回はこれでいこう、今回はブラウザゲームにしようという形で展開をしていきたいと思っています。

編: ジャンル的にはブラウザゲームにはシミュレーション系が多いですね

市崎氏: ブラウザゲームはシミュレーションと相性がいいと思います。今はまだ具体的な話ではありませんが、経営シミュレーションも可能性があると思っています。昔は経営シミュレーションがたくさんあったのに、今はあまりありませんから、ああいったゲームが楽しかった人に向けて何かを作れる気がします。後は単純に建設するだけのゲームも可能性は高いと思っています。それをただ作るだけではつまらないので、オンラインなのでどうほかの人が作った建物と絡ませていくことができるか、そこの企画が上手くまとまれば作れると思っています。

編: そういったタイトルをオリジナルではなく、日本の既存タイトルと絡ませていくことになるのですか?

市崎氏: 僕らのアイデアは「昔はあれが楽しかったよね」から始まっていたりするので、あの作品のキャラクターたちを乗せたら、このゲームはもっと楽しくなるよね、だったらお話ししてみようかなという形になることも多いですね。

編: 今回、工画堂スタジオさんはどういった形でサポートされるのですか?

市崎氏: 世界観を提供していただくということと、デザインの元になるものを提供していただきます。これはそういう契約とかいう話ではなくて、工画堂さんもオンラインをやってみたいとおっしゃられているので、オンラインにするならこういった形はどうですかというざっくばらんな意見交換をさせていただいています。

編: オンラインゲームのノウハウが欲しいということでしょうか?

市崎氏: どうでしょうね。PCゲームは今中々辛い状況にあるじゃないですか。そういう意味ではオンラインゲームは次のチャンスと捉えていらっしゃるのかもしれませんね。だから一緒にやることで、今度は工画堂さんが企画を立てられて、うちがお手伝いをすることもありえるのかなと思っています。

編: 近年、ソーシャルゲームが大きな話題になってきていますが、そちらの方面はどうなのでしょうか?

市崎氏: どれをソ―シャルゲームと言うかという問題はあると思いますが、僕らは最初からコミュニケーションを考えなくてはいけないゲームを作ってきたわけで、最初にソーシャル的なコミュニケーションがある場所へゲームを持っていくのか、ゲームの中にソーシャルを持ってくるのかで違うと思います。うちはゲームの中にコミュニケーションを作ることしかやってこなかった。だからソーシャルコミュニケーションがきあがった環境の中にゲームを持っていくというのは、試してみたいとは考えています。

編: 間もなくDeNAとヤフージャパンによる「ヤフーモバゲー」のサービスも始まりますが

市崎氏: 実はお話しはさせていただいています。まだ具体的に何かが決まったわけではありませんが。

「将来はたくさんのプラットフォームでプレイしていけるようにしたい」と市崎氏

編: 可能性としては、全くないというわけではない?

市崎氏: そうですね。先ほども言いましたが「POWER DOLLS(仮)」に関してはゲームサイズをヤフーモバゲーやmixi、Facebookに提供できるようなサイズで作っています。僕らはゲームのなかでコミュニティを作ってもらうような作りかたしか知らないので、やってみたいことではありますが、僕らが持っていないノウハウが必要なのも事実ですから、勉強させていただければと思っています。

編: 今後そのあたりに関する発表もありそうですね。

市崎氏: そうですね。近々できるかも(笑)。もちろん提携関係にある他社のポータルへも提供していくことになると思います。日本はまだFacebookがそれほどシェアを持っていないので、Facrbookに向けて作るのはなかなか難しいのですけれども、世界に向けていくのであれば可能性としては高いですよね。ただソーシャルゲームとして遊んでもらえるためには、見直さなくていけない部分がたくさんあると思うのです。それをすべて見直すことができれば持っていけるかなと思います。

 例えばソーシャルゲームでは、自分の知人をゲームに招待することでポイントをもらったりするのは、僕らのゲームにはないシステムです。僕らはゲームの中のランキングは作りますが、友達同士のランクはありません。ですからそういった部分をきちんと作っていないと、持って行っても遊んでもらえないと思っています。遊びとして近いものがあるとは思っています。どこかで歩み寄らなければならないから、どこかで融合することがあるとは思っています。

編: 最後のファンへのメッセージをお願いします

市崎氏: ガマニアの商品開発部は自分たちが楽しんでゲームを作っています。この楽しみたいからゲームを作るという基本は全社共通です。それが特に現れているのが、今回発表されたすべてのタイトルです。面白くないわけがないので、楽しみに待っていただいて損はないと思います。期待してください。


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(2010年 9月 21日)

[Reported by 石井聡]