米Bethesda、「Bethesda Gamers Day 2010」を開催
id Softwareの“id Tech 5”採用次世代FPS「Rage」を初披露


4月21日、22開催(現地時間)

会場:The Palms Casino



 米Bethesda Softworksは4月21日と22日の両日、米国ラスベガスにてプライベートイベント「Bethesda Gamers Day 2010」を開催した。

Bethesda Softworksを代表して挨拶を行なうPR&マーケティング担当副社長のPete Hines氏

 「Bethesda Gamers Day 2010」は、米Zenimax Mediaグループのゲーム部門であるBethesda Softworksの2010年度以降のラインナップを、E3に先駆けて披露するというプライベートショウ。全世界から20以上のメディアが招かれ、2日間かけて最新ビルドを使ったデモンストレーションが行なわれた。

 今回お披露目されたタイトルは、開催地からも想像できるように2010年度の主力タイトルである「Fallout」シリーズ最新作「Fallout: New Vegas」を筆頭に、GDCで発表された新IPのアクションゲーム「Hunted: The Demon's Forge」、そして2009年に子会社化を発表して世界を驚かせたid Softwareの最新作「Rage」の3本。

 本来は、上記に加えてSplash Damageが開発している新作FPS「Brink」の新ビルドのお披露目も予定されていたが、アイスランドの火山噴火による火山灰の影響でロンドンからスタッフを派遣できず、デモそのものが中止となるアクシデントもあった。

 本稿ではid SoftwareがBethesda Softworks傘下になってから初披露となった「Rage」を中心にお伝えしていく。「Fallout: New Vegas」、「Hunted: The Demon's Forge」は別稿にてお届けしたい。


【Bethesda Gamers Day 2010】
エヴァ中尉を救出してからの左右の画面に注目。屋上の囚人をうまく引き付けておくことがポイントだ

【バギーアクティビティ】
本稿で紹介しているid Softwareの最新作「Rage」は、標準的な移動手段としてバギーが利用されるが、それを実際に似たようなシチュエーションで体験してみようというアクティビティが、カンファレンス終了後に実施された。場所はラスベガス郊外の砂漠地帯。何があっても自己責任という旨の誓約書にサインし、ヘルメットを装着してバギーに搭乗。インストラクターの先導のもと砂漠地帯を爆走し、尻を浮かせ、ヘルメットをフレームにガンガンぶつけながら、2時間あまりのバギー走行を楽しんだ



■ ついに姿を現わしたid Softwareの最新作「Rage」。マルチプラットフォーム向けに2011年発売予定

デモを行なったid Software「Rage」Creative DirectorのTim Willits氏
「Rage」のゲーム画面。質感の高いメリハリの効いたグラフィックスが好印象。圧倒的な運動能力で攻めてくるバンディットをいかに撃退するか

 「Rage」は、「DOOM」、「Quake」等で知られるFPSの老舗中の老舗デベロッパーid Softwareの最新作。その発表は古く、2007年までさかのぼる。この間、ActivisionからElectronic Artsへパブリッシャーを変更し、EAタイトルとして開発が進められていたが、2009年6月にBethesda Softworksの親会社であるZeniMax Mediaがid Softwareを買収したことで、パブリッシャーがBethesda Softworksへと変更となったというやや複雑な経緯がある。北米での発売時期は2011年を予定し、発売プラットフォームはプレイステーション 3、Xbox 360、Windows PCの3機種を予定。日本での取り扱いは未定となっている。

 「Rage」の最大の特徴は、id SoftwareのJohn Carmack氏が手がけた最新ゲームエンジン「id Tech 5」を採用した初のタイトルであることだ。id Tech 5は、俗に「DOOM III」エンジンと呼ばれるid Tech 4の後継となるOpen GLベースのゲームエンジンで、「Unreal Engine」、「Cry Engine」に並ぶ、先端のゲームテクノロジーが搭載されている。

 わかりやすい特徴としては、Windowsはもちろん、Mac、Linux、そしてPS3、Xbox 360までカバーしたマルチプラットフォーム対応と、id Software独自の技術である単一の超特大テクスチャでフィールドを表現するMegaTextureの発展系と言われるVirtualTextureの採用などが挙げられる。またコンシューマー向けFPSでは珍しい60フレーム表示を、PS3とXbox 360の両方で実現するとしている。もちろん、詳細未定ながら、マルチプレイモードも搭載予定だ。

 id Tech 5採用タイトルには「Rage」に加えて、「DOOM 4」が発表されているが、今回のショウでは新しい発表はなかったため、順当に行けば「Rage」がid Tech 5初採用タイトルになる見込みだ。「Rage」は、「Unreal Engine」でいうところの「Gears of War」シリーズ、「Cry Engine」でいうところの「Crysis」シリーズのような、最新技術満載のFPSになるということだ。

 さて、肝心の「Rage」のゲーム内容だが、荒廃した未来の地球を舞台にしたFPSになっている。ステージクリア型ではなく、ある程度の枠内でオープンなフィールドをバギーで行き来できるような自由度の高いフィールドデザインを採用しており、世界観や自由度の高さはBethesdaの「Fallout 3」や、2K Gamesの「Boderlands」に近い印象だ。

 デモは、小屋のようなところから始まり、待ち受けていたバンディットとの銃撃戦や、バギーに乗りながらの銃撃戦を経ながら、やがてトタンで囲まれた街「Wellspring」にたどり着く。途中、櫓を破壊するシーンもあり、ノンリニア破壊が取り入れられていることが確認できた。バギーはこの世界における一般的な移動手段で、プレーヤーだけでなく、バンディットも利用している。このためフィールドではお互いバギーに乗った状態での銃撃戦が発生するほか、レースに参加することもできるという。自分のバギーは、改造して性能を強化するだけでなく、乗り換えることも可能。クエスト等で稼いだお金の使い道は、武器やアーマーの強化のほかに、このバギーの強化に消費されていくことになるようだ。

 さて、やや長いローディングを経て街に進入すると、武器やメニューが消えすっきりした画面構成に。街ではバトルは発生しないため余計なものは表示させないようにしたという。街では様々なNPCがいてアイテムを売買したり、情報を集めたり、クエストを受けたりすることができた。感心したのは、細部まで描き込んだ街の表現と、そこで暮らす人々の表現の豊かさだ。特にキャラクターのモーションの豊かさと自然さは、これまでのid Softwareにはなかったもので、首だけこちらに向けて話をしたり、手を挙げたり、体を動かしたりなど、ひとつひとつの仕草が非常に自然でなめらかだ。Hines氏によれば、キャラクター性の強化と共に、ストーリー性の強化も今回の新たなチャレンジ項目のひとつに掲げているという。

 クエストでは、「ラジコンバギーを使ってバンディットを倒してほしい」というもので、「The Well」と呼ばれる無数の敵が待ち受ける地下水道地帯でのバトルとなった。バトルシーンは、オーソドックスなシューティング要素に加えて、クエストの過程で獲得したラジコンバギーのようなガジェットを使った特殊攻撃+偵察行為、そしてクロスボウやショットガンといった各種武器を切り替えながら戦うことになる。クロスボウはボルトの種類が複数用意されており、水域に潜む相手にエレクトロボルトを使って感電させるといった、「Bioshock」シリーズ(2K Games)のようなギミックも用意されていた。

 このバトルシーンにおいても感心させられたのはやはりキャラクターの表現の豊かさだ。キャラクターのキネマティクスとAI、物理表現がしっかりしており、バンディットたちは隠れながら射撃してきたり、こちらの銃撃を避ける動きを見せたり、壁を使って三角飛びのような攻撃をしてきたり、手すりを使ってよじ登ったりといった実に豊かな動きを見せる。攻撃の仕方も単に銃撃や鈍器の類を振り回すだけでなく、巧みに地形を利用し、回し蹴りのような体術まで駆使してくる。こちらが仕掛けたSentryBotを蹴り壊そうとするシーンなども確認でき、感心させられることしきりだった。

 グラフィックス的な印象としては、とにかくテクスチャの質感が抜群に良く、テクスチャの継ぎ目が存在しないフィールド表現は見事の一言。太陽光のまぶしさ、砂漠地帯ならではの埃っぽさ、ダンジョンでの地響きのたびに天井から砂埃が落ちる表現など、ディテールの表現もリアルかつ自然で、id Tech 5の深淵を見せつけられた気がした。発売は来年と言うことで少し先の話になるが、Bethesdaの「The Elder Scrolls」シリーズ、「Fallout」シリーズに並ぶ有力フランチャイズになるのはほぼ間違いなさそう。今後の発表に引き続き注目していきたいところだ。


【Wellspring】
Wellspringの街並み。細長い街路が四方に広がっている。動画で紹介できないのが残念だが、NPCの表現が非常に豊かだ。街では武器やアーマー、バギーのカスタマイズが可能だという

【バトルシーン】
敵は人型が多いようだが、id Softwareの展開からいって人型に留まらないのは確実だろう。人型の敵に対しては、人体の部位を攻撃することで、その部位の能力を低下させることができる。デモでは足を狙って銃撃することで、敵を転ばせるといったテクニックが可能だった


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(2010年 5月 4日)

[Reported by 中村聖司 ]