Taipei Game Show 2010現地レポート
Lager Network Technologies本社訪問レポート
戦闘・生産スキルの専門家が力を出し合うMMORPG「Funtasy Online」
Lager Network Technologiesは日本ではベクターからサービスされている「童話物語」を開発しているメーカーである。2009年の東京ゲームショウでは台湾パビリオンに出展して自社タイトルをアピールしていた。弊誌ではゲームショウの際にレポートしており、今回、台湾訪問の機会にさらに詳細に話を聞くべく取材を行なった。
Lager Network Technologiesでは台湾で3月からサービス予定で、日本でのサービスも決定した新作タイトルMMORPG「Funtasy Online」の話を聞くことができた。「Funtasy Online」は「童話物語」の100年後を描く作品で、かわいらしく明るい世界観と、プレーヤー達の協力要素にフォーカスした作品となる。実在の遊園地のアトラクションをゲーム内で再現するというユニークなアイデアを含め、様々な要素が明らかになった。
■ 台湾オンラインゲーム市場の最初期から開発・運営を行なってきたLager
Lager Network Technologies(以下、Lager)は英語の「large」から意味をとった社名で、大きな会社になるという願いを込めた社名だという。Lagerは現在、自社タイトルを4本、パブリッシングタイトルを4本運営している。
Lagerは1999年という台湾オンラインゲーム業界の最初期から自社開発のオンラインゲームの開発・運営を行なっている。1番最初は「King of Kings」というタイトルでファンタジー世界を舞台にしたテキストベースのRPGだったという。プレーヤー達がチャットでキャラクターになりきり会話を中心に交流していくシステムだったが、1年後同じタイトル名「King of Kings Online」という2DのMMORPGとしてサービスをスタートした。
Lagerにとって「King of Kings Online」は看板といえるタイトルで、世界観を継続した新しい作品を投入することでファンを増やし続けている。2008年12月からサービスを開始した「King of Kings III Online」は累計会員数が50万人を突破した。「King of Kings Online」シリーズはデータの引き継ぎなどはないが、PvPを中心とした展開、共通する世界観などファンの願いを叶える形で成功しているタイトルだ。海外へのパブリッシングも好評でタイや香港でもサービスが行なわれている。
現在のLagerでの2番人気は韓国INTIV SOFTが開発する「TARTAROS Online」で25万人の累計会員を獲得しているという。この他、3本の中国メーカーの開発タイトルを運営している。台湾ではパッケージをコンビニで発売する方法が一般的で、Lager のタイトルは攻略本を同梱したり様々なパッケージを販売している。「TARTAROS Online」ではゲームコントローラー同梱版も発売している。
Lagerは台湾メーカーの中ではいち早く自社タイトルを開発し、運営を行なってきたメーカーだ。独自の技術的蓄積、各国からのフィードバックによって各国向けのコンテンツを作ることができるノウハウも昨今のオンラインゲームメーカーに比べて優れている。日本でもサービスが行われている「童話王国」は2003年からサービスを開始している。開発会社として他国からの意見を取り入れ方、パブリッシャーとして開発会社とユーザーの橋渡しも行なうことで様々な経験と技術的な知識を得てきている。
Lagerは多くのオンラインゲームに変化をもたらした「基本プレイ無料+アイテム課金化」への移行も体験している。「童話王国」や「King of Kings Online」など当時月額課金制で運営していたタイトルは全て基本プレイ無料+アイテム課金へ移行し、現在のタイトルも同じビジネスモデルを前提としたゲームデザインとなった。ちなみに「King of Kings III Online」ではランダムボックスと経験値増加、一時的に能力をブーストするアイテムが人気で、課金率は20%で、平均で2,000台湾ドル(約6,000円)の売り上げがある。売り上げはタイトルによって違い、「童話王国」のプレーヤーの月額平均は200台湾ドル(約600円)とのことだ。
Lagerは現在250人ほどの社員がおり、そのうち150人が開発スタッフだ。1999年にスタートしたときは50人ほどだったが、現在は「King of Kings Online」シリーズ開発チーム、「童話物語」チーム、そしてMMORPGの「天外」というシリーズを開発する3つのチームがあり、さらにネットワークの基礎研究や、ブラウザゲームの研究なども行っているという。
そして現在Lagerで正式サービスに向けて準備を進めているのが「童話物語」の世界観を受け継ぐ新たなMMORPG「Funtasy Online」である。様々な新しいアイデアを詰め込んだ作品で、前作のテイストを受け継ぐかわいらしい雰囲気の作品となる。今回はプロデューサーの謝祟輝氏にインタビューを行なった。
Lagerは行政府など政治的な施設が多くある延平地区にある。2つのフロアに開発・運営の250人のスタッフがいる |
■ かわいらしく、盛りだくさんのアバター、プレーヤー達の協力が楽しい「Funtasy Online」
プロデューサーの謝祟輝氏。「Funtasy Online」は「童話王国」で日本からの意見も多く取り入れているという |
汽車に乗って街を眺める。MMORPGでは街で座って会話するプレーヤーも多い。アトラクションはMMOの楽しさに新しい味を加えてくれそうだ |
多彩なスキル。選択していくことで自分だけのキャラクター像を追求できる |
「Funtasy Online」は人間の想像力が生み出した、「童話世界」を舞台としたMMORPG。その世界は世界中の童話をモチーフに作り出されている。物語は、前作にあたる「童話王国」から100年後に始まる。プレーヤーは「人間」、「ダークエルフ」、「ドワーフ」から種族を選んでキャラクターを作り、冒険していくこととなる。
キャラクターは頭身の低い目の大きなかわいらしいデザインだ。ドワーフは他の作品のような髭をたくわえた小型体型ではなく、子供のような体型をしている。ダークエルフは褐色の肌ととがった耳を持つ、ちょっとクールな雰囲気のデザインだ。モンスターのデザインもかわいらしいものが多く、暖かでかわいらしい雰囲気の作品となっている。
「Funtasy Online」は台湾で2009年12月末に前作のプレーヤーを含む300人のユーザーを対象にしたクローズドβテストを実施、3月にはオープンβテストを予定しており、そのテストで問題がなければ、1週間ほどで正式サービスに移行するという。基本プレイ無料+アイテム課金を予定しており、最初は1万人程度のユーザーを視野に入れた規模でサーバーを準備する。ちなみに現在パブリッシャーは未公開だが日本でのサービスも決定している。
本作ではスキル制を採用しており、プレーヤーはレベルアップ時に得られるスキルポイントを消費して多彩なスキルを獲得していく。スキルは「戦闘スキル」と「生産スキル」が用意されている。戦闘スキルには「近接スキル」や属性によってわかれる「魔法スキル」、より強力なペットを捕獲できる「幻獣スキル」といった8系統がある。
プレーヤーは多くのスキルからいくつかを選んでキャラクターを強くしていく。スキルはツリー形式のものも多く、前提スキルを習得することでより強力なスキルを獲得できる。スキルの取り方によって戦い方が全く違うキャラクターを作り出すごとができる。戦闘はコマンド形式のターンバトル制で、プレーヤーが協力することでより強い力を発揮できる。
生産スキルも「木製品」や「鉄製品」といったジャンルがあり、採取、材料加工、制作と別々のスキルが必要となる。生産ではプレーヤーの手によって強力なアイテムを作り出すことができるが、1人のキャラクターで全ての生産スキルは習得できない。よい製品を作り出すには別々のスキルを持ったキャラクター達の協力が不可欠だ。「Funtasy Online」は「プレーヤー達の協力」にフォーカスされたデザインのゲームとなっている。ギルドが持つことができる「宗家」もギルドマスターが効果を選ぶことができる。特定の生産スキルの向上など、ギルドの性格を強調した「生産ギルド」を作りやすくなっている。
この他にも、ペットシステムも充実しており、育てることで「ペットスキル」を獲得させ、同じ外見でも能力の全く違ったペットに育てられる。使わなくなったペットを封印して複数のペットを所持することも、ペット同士を融合させて新しいペットを作ることもできる。またプレーヤーキャラクターの装備にペットを宿らせることで様々なプラス効果を得ることができる。レベルの高いペットは幻獣スキルの高いプレーヤーの力が必要となる。ペットスキルとの連携を考えることで、「主人と弱点をフォローし合うソロプレイ向きのペット」、「プレーヤーキャラクターの特徴をさらに強化するパーティー向きのペット」など多彩な組み合わせも楽しめそうだ。
ちなみに「Funtasy Online」の台湾でのタイトル名は「彩虹汽泡」。日の光を浴びて7色の輝きを表す。その名の通りゲームの雰囲気は暖かくカラフルで、アバターやエモーションも充実しており、かわいらしいキャラクターが好きなプレーヤーの心を強くつかむ。手を振ったり、喜んでジャンプしたりというエモーションと、着ぐるみなどのユニークなアバターもよくマッチしている。
アバターは充実させる方針で、1年半先まで見越して作っているということで、サービス初期から多彩なアバターが登場し、次々と追加されていくとのことだ。またキスやハグ、膝枕など2人でできるエモーションは他ゲームだと「恋愛値を高めなければできない」というものが多いが、「Funtasy Online」では同性でも最初からできるということで、アバター、エモーションの「スタッフのサービス精神」にも期待したい。
「Funtasy Online」はキャラクターだけでなく、フィールドにも開発者のこだわりが感じられる。今作の大きなセールスポイントとなっているのが「乗り物システム」だ。「Funtasy Online」の世界の中心となる街は様々なアトラクションがある。街の中心を囲むように汽車が走っていて、中央の池にはスワンボートが浮かんでいる。ゲームでは券を買うことでこれらの乗り物に乗り観光を楽しむことができるのだ。NPCから乗車券を買うとプレーヤーは順番に乗り物に転送され数分の小旅行を楽しめる。整理券システムにより自分の待ち時間を確認することも可能だ。
世界の中心の街では汽車とスワンボートに加え、天馬のひく馬車にも乗れる。これらの乗り物には友達や恋人と乗るのもいいし、たまたま乗り合わせた人と雑談するのも楽しいだろう。乗り物は「名所案内」の側面もあり、乗ることで銀行や各NPCが街のどこにいるかわかるようになっている。この他にも冒険の拠点の1つである港では「空飛ぶほうき」に乗り、港や街の空中散歩ができる。今後もアトラクションはどんどん追加される予定で、特にユニークなのは、「台湾の遊園地とタイアップし実在のアトラクションをゲーム内で再現する」というプランだ。どんなアトラクションがどう実装されるのか、日本のサービスの際には、ぜひ日本の遊園地ともぜひ進めてもらいたいアイデアである。
プロデューサーの謝祟輝氏は最後に「『童話物語』を5年以上サービスさせていただいたことで、私達はたくさんのことを日本のユーザーさんに教えてもらいました。『Funtasy Online』はいただいた意見を活かした作品です。特に『プレーヤー達が協力して何かを作る楽しさ』をフォーカスしています。この作品が、日本の皆さんにも受け入れてもらい、感動させる体験を生み出してくれる作品になってくれればと思います」と語った。
スキルとペットの組み合わせによる個性的なキャラクター像の追求、仲間の協力要素、ギルドの特性も含めた生産システムと、「協力」にフォーカスしたゲームシステムは魅力的に感じた。随所にこだわりを感じるかわいらしいアバターは協力要素と童話をモチーフとした世界観とマッチしていると感じた。様々なアトラクションもゲームのイメージを象徴する要素として人気を集めそうだ。プレイするのが楽しみなタイトルである。
http://member.lager.com.tw/
□「Taipei Game Show」のホームページ(中国語)
http://tgs.tca.org.tw/
(2010年 2月 8日)