トミーウォーカー、新作PBW「エンドブレイカー!」を発表
ブラウザとメールで遊ぶPBW最新作は、城塞都市が舞台のファンタジー

1月10日開催

会場:東京都立産業貿易センター



 ブラウザとe-mailを使って冒険を楽しむロールプレイングゲーム“プレイ・バイ・ウェブ”(以下、PBW)を提供している株式会社トミーウォーカーは、1月10日に都内で開催された、PBW「シルバーレイン」のオフラインイベント「東京オフ会」で新作PBW「エンドブレイカー!」の詳細を発表した。

 「東京オフ会」はPBW「シルバーレイン」のプレーヤー有志によって開催される恒例のオフラインイベントで、ゲームマスターやイラストマスターも参加してプレーヤーとコミュニケーションを楽しむというもの。当日会場には約400人が訪れた。

 このレポートではPBWという聞き慣れないゲームジャンルの紹介と、イベントで発表された「エンドブレイカー!」の内容についてお届けしたい。


トミーウォーカー代表のうえむら氏グループSNE代表の安田均氏グループSNEの江川晃氏
グループSNEの安道やすみち氏メインイラストレーターの左氏トークショー形式で行なわれた発表会の様子



■ 自分の冒険が小説になる。ネットを使った新しい遊び「プレイ・バイ・ウェブ」

現代の日本が舞台のPBW「シルバーレイン」

 ルールブックを元に、テーブルを囲んで、ゲームマスターとプレーヤーが物語を作っていくテーブルトーク・ロールプレイングゲーム(以下、TRPG)は、PCやゲーム機で遊ぶロールプレイングゲーム(RPG)の元になった遊びだ。参加者間の会話を通して物語が進んでいくため自由度が非常に高く、想像力の分だけ冒険が存在する。コンピュータゲームのRPGはずっとこのTRPGの自由度を目標に進化してきたといっても過言ではない。

 そんなTRPGから、もう1つのゲームジャンル「プレイ・バイ・メール(PBM)」が生まれた。手紙で遊び方を宣言し、その結果を手紙で受け取るというこのゲームは欧米で始まり、日本でも1980年代にいくつかのコンテンツが展開された。「プレイ・バイ・ウェブ」はそんなPBMの流れを汲みながら、手紙がEメールになり、ネットで参加者同士が直にコミュニケーションを取れるよう進化した。

 遊び方は、基本的にはPBMと同じだ。プレーヤーはキャラクターを作り、ステータスやクラスを決める。キャラクターの外見はルールの範囲内で、プレーヤーが好きに設定できる。そうやって作ったキャラクターの行動をテキストとしてメールで送ると、ゲームマスターがそれを小説形式にしてくれる。完成した小説は、ゲームに参加している全てのプレーヤーに公開され、ゲーム世界に大きな影響を与えることもある。

 このPBWを提供しているトミーウォーカーでは、プレーヤーが作ったキャラクターをイラストマスターと呼ばれる専属のイラストレーターが絵に描いてくれる。このイラストをアバターにして、掲示板で他の参加者と交流をはかったり、パーティーメンバーを結成する。

 例えば、同社が運営している「シルバーレイン」では、「能力者」と呼ばれる存在になって日本各地で発生するゴースト事件を解決していく。プレーヤーは、公式サイトで公開されている、事件のあらましが書かれた「オープニング文章」を読んで、自分のキャラクターが挑む「ゴースト事件」を選択する。

 プレーヤーが選べる職業は42種類もあり、それぞれにステータスや特徴が設定されている。さらにキャラクターの生まれなどを細かくキャラクターを作り上げることができる。キャラクターが完成したら、そのキャラクターで参加する冒険を選ぶ。概要とスタート日が書かれたリストから冒険を選んで、参加表明をする。参加できるシナリオには、1回限りの冒険となる「ノーマルシナリオ」と、連続した事件を扱う「シリーズシナリオ」、世界全体に関わる大きな事件が発生した場合参加できる「全体シナリオ」、お祭りなどの催しに使用される「イベントシナリオ」、「結社」という集団で自分たちのオリジナルな冒険を作る「結社シナリオ」などの種類がある。

 冒険が始まると、プレーヤーは「プレイング」と呼ばれる文章で自分の行動を登録する。「マスター」と呼ばれる作家陣は、パーティーメンバー全員の行動を呼んで、その成否を判断した上で、キャラクターの活躍を「リプレイ」という小説の形態にして、公開する。冒険が終わると「リプレイ」の難易度や、行動の成否に応じてキャラクターはステータスポイントや報酬を得る。様々なシナリオに参加することでキャラクターを成長させるとともに、物語自体もどんどん動いていくというわけだ。

 トミーウォーカーでは、キャラクター作成は無料でできるが、そこにイラストをつけたり、シナリオに参加したりするのは有料という、部分課金のシステムを採っている。


「シルバーレイン」のNPCキャラクター「雛森イスカ」「シルバーレイン」のNPCキャラクター「夜取木楓」
「シルバーレイン」の使役ゴースト「モーラットッピュア」「シルバーレイン」の使役ゴースト「シャーマンズゴースト」



■ 新作「エンドブレイカー!」は城塞都市が舞台のファンタジー

「エンドブレイカ-!」のイメージイラスト

 トミーウォーカーの新作PBW「エンドブレイカー!」は、「星霊建築」という魔法の力を持った構造物が集まる城砦都市を舞台にしたファンタジー冒険RPGだ。本作は、「シルバーレイン」のTRPGプロジェクトを手がけているゲームクリエイター集団 グループSNEとの共同製作という形で開発が行なわれた。

 1月10日に東京の浅草で行なわれた「シルバーレイン」のオフ会で、その詳細が発表された。発表会は、ゲストにトミーウォーカー代表のうえむら氏、グループSNE代表の安田均氏、「エンドブレイカー!」のメインシナリオを担当している、グループSNEの江川晃氏、そして「シルバーレイン」のゲームデザイナーをしている、グループSNEの安道やすみち氏らが参加して、トークショー形式で行なわれた。

 うえむら氏によると「エンドブレイカー!」とは、瞳をのぞき込むことで、その人が近々迎える事になる結末を読み取ることができるという特殊能力を持つ者たちのことで、「例えば、おまえはもうすぐ死ぬ。仕方ないから助けてやるとか、もうすぐ宝くじが当たるから俺も仲間に入れてくれ、みたいなことをして日銭を稼いでいる人たちです」(うえむら氏)らしい。

 基本的なイメージを、イラストレーターの左氏が描き起こし、そのイメージに沿って世界観の構築が行なわれた。左氏は「かなり自由に描かせていただいて、非常に楽しくやらせてもらっています。うえむらさんは結構奇抜なアイデアも出してくるのですが、それは無茶といっても本当に無茶ではなくて、大胆という言葉が似合うもので、投げかけてもらった私の方でも、困るというよりそれならこうした方がどうですか、と提案できます。赤い髪でゴーグルをつけて、長い三つ編みを編んだキャラクターがサイトにいますが、あれは実はうえむらさんのアイデアです」と共同作業の様子を語った。

 プレーヤーが作成できるキャラクターのクラスは、スタート時点では「城砦騎士」、「軍龍士」、「スカイランナー」、「魔法剣士」、「星霊術士」、「デモニスター」、「魔曲使い」、「狩猟者」の9種類。それぞれの特徴などはまだ公開されていない。種族は当初は人間のみだが、物語の進行に合わせてエルフのような種族も仲間になっていくようだ。選択できるクラスはそれぞれ専用のアビリティを持っており、レベルを上げることでアビリティの種類が増えたり、力が強くなったりする。

 本作の特徴は、戦闘でアビリティが使い放題というところだ。「シルバーレイン」ではCPというゲージがあり、アビリティはその数値の範囲内でしか使えなかったが、「エンドブレイカー!」では、好きなアビリティを1度に2つ使うことができる。アビリティの効果は表にまとめられており、組み合わせによっては、時折「ダブルトリガー」という状態になる。この状態では、アビリティを一度に4~16回使った派手な攻撃が可能だ。

 また本作ではキャラクターの行動を「プレイング」と「パフォーマンス」に分けて記述することができる。「プレイング」には他のプレーヤーと相談した作戦を反映した行動を書き込むが、「パフォーマンス」には自分がやりたいことを何でも書ける。「パフォーマンス」に書いたことは、それが作戦を邪魔しない限り採用される。「例えば、俺は高い所から現われる、と書いてそれがリプレイに反映されていたら、その行動によって作戦が失敗することはないわけです。失敗するなら、採用されません」(うえむら氏)ということだ。

 「エンドブレーカー」は1月29日にキャラクター作成をスタート、同日にシナリオのβ版が公開される予定だ。イラストの発注なども同じ日に始まる予定なので、公式ホームページをのぞいて見て欲しい。


「エンドブレイカー!」の舞台は城塞都市


うえむら氏が原案を出したキャラクターホームページにも登場している女の子キャラクター



■ 質疑応答では、キャラクター作成を念頭に置いた熱心な質問が続出

 説明会後に質疑応答が行なわれた。参加者の多くは熱心にメモを取りながら聞いていて、すでにどんなキャラクターを作ろうか考え始めている様子で、質疑応答にも積極的だった。主な質問は以下の通りだ。

Q:亜人種族は出ますか?

A:人間の形をしていないものは、出るかどうかわからないです。

Q:回復系のアビリティも使い放題なのですか?

A:回復系のアビリティだけは、使う時に「ガッツ」を必要とします。このゲームではHPの代わりに「ガッツ」という概念がありまして、肉体の強さや精神力、魂の強さをすべて現わします。基本的にはこの「ガッツ」の値までダメージに耐えられるということになります。逆境に陥ったら「ガッツ」が増えたりもします。だから永遠に回復し続けて無敵ということはあまりないという形になります。

Q:作れるキャラクターの年齢に上限はありますか?

A:だいたい6歳から50歳くらいまでになるでしょう。

Q:転職はありますか?

A:ジョブなどのチェンジシステムはあります。

Q:城砦都市同士の関係はありますか?

A:都市国家はそれぞれ単体で成立しています。なぜかというと、都市国家の間には「辺境」とよばれる地域があるのですが、ここは強いモンスターが闊歩しているので、強い冒険者でなければ交流が図れないからです。

Q:戦争やPvPはありますか?

A:いまのところ予定はありません

Q:どのくらいの文字数が書けますか?

A:β版で様子を見る予定ですが、現在のところ「プレイング」で400文字、「パフォーマンス」で200文字を予定しています。

 イベント終了後も、うえむら氏はじめスタッフはファンに取り囲まれて質問に答えていた。MMORPGなどでも、プレーヤーが企画やキャラ設定に参加できる機会やイベントなどはあるが、これだけ主体的にプレーヤーが動いている姿はあまり見かけず、新鮮さを感じた。

 オンラインゲームではクエストの文章を全く読まなくてもプレイできるし、大規模なストーリーイベントでも1度プレイしてしまえば2度目からは繰り返しになる。だが、PBWでは同じことは2度と起こらない。常に新しい冒険が生まれ続け、そこに自分が主体的に関わっていける。そんなオリジナリティが既存のゲームでは飽き足らない人たちを引きつけているのだろう。イラストレーターやマスターの募集も行なわれているので、絵を描くのが好きな人や、小説家志望者も1度覗いてみてはどうだろうか?


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(2010年 1月 12日)

[Reported by 石井聡]